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休日の本棚 ブランド優位の戦略

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で110人、27県で新規感染者ゼロとなっています。全国的には今年に入って最も低い水準が続いています。しかし、北海道では、8月中旬をピークに減少傾向が続いていましたが、今月に入り前週を上回る傾向が続いています。北海道では気温が低い時期に各地に先行して感染が広がる傾向があり、昨年2月下旬には北海道で国内最初に感染拡大し、その後東京、さらに各地の感染拡大につながりました。専門家も、今後も北海道の動向を注視する必要があると言っています。やるべきことはただ一つです。忘年会・新年会も極力控え、やるとしても少人数で一次会だけ、気を緩めることなく、これまで通りの感染防止対策を続けること、それだけです。

さて、今日は、デービッド・A・アーカー著「ブランド優位の戦略」(ダイヤモンド社を紹介します。著者のアーカー氏はカリフォルニア大学バークレー校ハース経営大学の名誉教授で、マーケティング戦略論の大家です。

デザイン性だけでなく一風変わった技法で快適さや美味しさを追求してきたバルミューダが、スマートフォンの発売を発表しました。4.9インチの小型ディスプレイを採用し、背面も手になじむ質感とカーブで小さく持ちやすいデザインとなっています。

これまでのバルミューダの家電販売も、他とは違った尖った部分を持ち高価格でもそれなりの売上を上げ、まさに優れた「ブランド戦略」を展開しているように思います。

しかし、このスマートフォンのスペックでこの価格(10万円超)は高すぎるように思います。これが成功するかどうかは他とは違う尖った部分が消費者の心をつかむことができるかにかかっていますが、これも一つの「ブランド戦略」であることは間違いありません。

ブランド戦略とは、ブランディングを行うための戦略のことです。ブランディングとは、企業の製品やサービスあるいは企業そのもののコンセプトを明確にして「誰にどのような場面で使ってもらいたい製品・サービスなのか」「自分たちはどのような企業なのか」を顧客に提示することを言います。

ブランド戦略を行うことで得られるメリットとして、⑴競合他社との差別化ができる ⑵顧客からの信頼感(顧客ロイヤリティ)を獲得することで長期的売り上げが見込める⑶多額な宣伝費用をかけなくても集客できる ⑷知名度が上がり新規顧客の獲得がしやすくなる ⑸ブランド自体に価値があるので強気の価格設定ができる などが挙げられます。ブランディングマーケティングの上位にある活動で、明確な戦略の下でブランディングがなされていなければ、マーケチング戦略も方向性を定めることが出来ません。したがって、ブランド戦略は企業経営にとって極めて重要な意味を持ちます。

アーカー氏は、この本の中で、強いブランドを戦略的に作る方法を教えてくれています。

アーカー氏は、ブランドが持つ見えない価値を、「ブランド・エクイティ」(ブランドの見えない資産価値)と名付け、「ヒト・モノ・カネ・情報」といった経営資産の一つと考えています。

1.ブランド・アイデンティティ

 強いブランド・エクイティを作るには、「ブランド・アイデンティティ」を考えなければなりません。ブランド・アイデンティとは「ブランドをどう見られたいのか?」ということです。一方で、ブランド・イメージとは「今、ブランドがどう見られているか」です。

 ブランド・イメージは顧客である消費者側の視点であり、ブランド・アイデンティは作り手の企業側の視点で、ブランド戦略策定者の意思を含んでいます。

 ブランド・アイデンティは、そのブランドが何を目指すのかを決めるものです。

 アーカー氏は、強いブランド・アイデンティを実現するためには次の4つの視点が必要であると言っています。

  1. 「製品」としてのブランド・・・顧客は製品を通じてブランドを実体験します。製品はブランド・アイデンティティの重要な一部です。しかし、製品だけではすぐに真似られてしまいます。ブランドは単なる製品以上のものなのです。
  2. 「組織」としてのブランド・・・組織には経営者をはじめ社員が有する理念・価値観があります。顧客は商品を買うことで、その企業・組織の有する理念・価値観を広めているのです。組織の理念や価値観も、強いブランド・アイデンティティを作っているのです。
  3. 「人」としてのブランド・・・人は強いブランドを、あたかも「自分にとって大切な人」のように感じます。これがブランド・パーソナリティで、ブランドから連想される人間的特性の集合です。例えば、ブランドに若くて男性的なイメージややさしくしとやかな女性のイメージがついているというものです。ブランド・パーソナリティによって、ブランドの購入者は、なりたい自分になれたり、感情を豊かにするわけです。
  4. 「シンボル」としてのブランド・・・ブランドを表現するものは何でもシンボルになります。マクドナルドの独特のMのマーク、マスコットである「ドナルド・マクドナルド」、ケンタッキーの「カーネル・サンダース」、アップルの「スティーブ・ジョブズ」など、これらが、シンボルとして、強いブランドをパワフルに伝えます。

2.顧客にとっての便益

 強いブランドを作るには上の4つの視点だけではまだまだ不十分です。顧客がブランドを信頼し、商品を買うようにするには「顧客にとっての便益」を明確かつ具体的にする必要があります。「顧客にとっての便益」は次の3つが考えられます。

  1. 機能的な便益・・・機能は真似されやすく、差別化が難しいので、多くの場合、企業にとっての「顧客にとっての便益」はこのレベルに留まっています。
  2. 情緒的な便益・・・買ったり使ったりしていい気持ちになれるブランドにはこれがあります。ブランディングで、単に製品属性や機能的便益だけにとらわれていたのでは強いブランドを築くことはできません。顧客は、感情的・情緒的に刺激されることを求めているのです。
  3. 自己表現的な便益・・・顧客は単に気持ちいいだけでなく「これを持つとこういう自分になれる」と考え、そのように行動するようになるのです。

 こうしたブランドの構造を理解し、それに合わせて自社のブランドを構築していけば、強いブランドが出来上がります。

 アップルの商品が高いのは、ジョブズが「自社製品を高級品にしたい」と考えた結果です。もともとアップルのブランド・イメージはパソコンオタク向けに洗練された商品を提供するというものでした。そこで贅沢品を参考に、高額所得者に対して、当時は消費者向けの電子機器には非常識であった「直営店」を通じて販売することで、所有する喜びや「アップル=クール」というキャンペーンを展開し顧客に自己表現を提供してきました。

 アップルのように、、ブランド・アイデンティティを目標にして、現在のブランド・イメージとのギャップを把握し、強いブランドを作る方法を考えるのです。

3.蓄積効果

 ブランド・アイデンティティは、長期間、首尾一貫してキャンペーンをすることが必要です。必要なのは蓄積効果です。ブランド・アイデンティティを頻繁に変えると過去に蓄積されたものは無価値・無駄となり、顧客も「そのブランドって結局何だったのか」と首を傾げるだけでなく混乱させてしまいます。

 同じキャンペーンを首尾一貫して続けることで、強いブランドイメージが作り上げられるのです。首尾一貫すれば、ライバルを圧倒する強いブランドが作られ、ライバルが真似できなくなるのです。

 確かに同じキャンペーンを延々と続けていれば、顧客に飽きられます。しかし、飽きられるということは必ずしも悪いことではありません。世の中に広く受けいられた証拠であり、「飽きた」顧客で今の強いブランドが出来上がっているのです。

 一方で、時代は刻々と変化し、変化のスピードも速まっています。何も変えることなく、過去を引きずっていても、時代遅れで古臭くなることもあります。コアとなるブランド・アイデンティティから離れることなく、時代に合わせることが必要になります。

ブランド構築はそれほど容易なことではありません。わが国で流通する汎用品の平均点は高く、消費者もそのレベルに慣れているので、独自性を有するブランド構築は難しいのです。

「自分たちはこの独自商品で勝負するんだ」「この商品は大企業の汎用品を相手にしても絶対に市場で受け入れられるんだ」と強い意志を持ち、決して揺るぐことなく努力を続けてきた人や企業の商品やサービスが「ブランド」と形容される場所にまでたどり着くことができるように思います。