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休日の本棚 マネジャーの仕事

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で50人と今年最少になりました。休日のデータとはいえ、悦ばしいことです。世界的に感染が再拡大し、ロックダウンを行う国がある中、日本だけがコロナを抑制できていると言って過言ではありません。なぜ、ここまで減少し再拡大させることなく押さえ込んでいるのか、専門家も首を傾げているところですが、減少したからと言って油断することなく感染対策を取り続けていきましょう。

さて、今日はハーバード・ビジネスレビューに掲載されたヘンリー・ミンツバーグ著「マネジャーの仕事」という論文を紹介します。ミンツバーグ氏は、言わずと知れた世界的なマネジメントの権威で、カナダのマギル大学教授・経営学大学院教授です。

マネジャーの仕事は何かと問われれば、ほとんどが「計画し、組織し、調整し、統合すること」と答えます。しかし現実にマネジャーがしている仕事を見ると、この4つの言葉ではほとんど説明できません。ミンツバーグ教授は、この4つの言葉は「せいぜいマネジャーが仕事をするときに考えている、曖昧な目標を暗示する程度のものである」と言っています。

ミンツバーグ教授は、半世紀以上にわたって、「マネジャーは何をしているのか」といった根本的な問いかけをしてこなかったことを指摘し、「それではどうやってマネジャーのための計画や情報システムを設計できるのだろうか」「どのようにして経営のやり方をカイゼンできるのだろうか」と疑問を呈しています。

そこで、ミンツバーグ教授は、この論文で、この4つの単語から引き離し、もっと根拠のある、そしてもっと役に立つマネジャーの仕事について説明しようとしています。

1.マネジメント業務についての伝説と事実

 ミンツバーグ教授は、多種多様なマネジャーたちがどのように自分の時間を使うかについて観察し、それらを分析しまとめています。ここで得られた事実が、これまで我々が受け入れていた神話の大部分に疑問を呈することになったというのです。

 マネジャーの仕事についての神話が4つあり、観察分析の結果、事実は神話と異なると言っています。

神話1】 

  • マネジャーは内省的で論理的な思考をするシステマティックな計画立案者である

事実

 マネージャーはたゆみないペースで仕事をし、その行動は簡略、多様、不連続を特徴とし、更に行動に出ようとする強い志向を持っていて内省的活動を好まない

神話2

 効果的なマネジャーは、遂行すべき決まった職分を持たない

事実

 例外的事態を処理するほかに、マネジャーの仕事には儀式や式典、交渉、それに組織を周りの環境に結びつけるソフトな情報処理など、数多くの決まった職分の遂行が含まれている

神話3

 シニア・マネジャーが求めるものは集計的な情報であり、それを提供するのに最適な手段は公式のMIS(経営情報システム)である

事実

 マネジャーは口頭のメディア、すなわち電話と会議を重視している

神話4

 マネジメントは科学であり、専門的職業である。現在はそうでないとしても、少なくとも急速にそうなりつつある

事実

 マネジャーのプログラム―時間の配分や情報の処理、意思決定などーは、マネジャーの頭脳の奥深くにしまい込まれている

 マネジャーの仕事について様々な事実を考察すると、それが非常に入り組んだ、困難なものであることが分かります。マネジャーに課せられた義務は大変重いが、仕事を委譲することは容易くありません。そのため、マネジャーはオーバーワークになり、多くの仕事を皮相的にこなすようになります。簡略、細切れ、そして口頭のコミュニケーションが仕事の特徴となるのです。しかもこうした特徴こそが、マネジャーの仕事を科学的に改善することを拒んできたのです。

 2.マネジャーの仕事の基本

 ミンツバーグ教授は、まず最初にマネジャーを「組織、あるいはそのサブユニットを預かっている人物」と定義します。

 この定義では、CEOのみならず大統領、総理大臣、宗教指導者、職長、スポーツチームの監督まで含まれてしまいます。

 このような人々は、皆共通するものを持っています。それは、全員が、ある組織単位に対するフォーマルな権限を付与されているということです。その権限から、様々な対人関係が生まれ、その対人関係によって情報にアクセスすることが可能になり、その情報によってマネジャーは自分の組織のために意思決定し、戦略を策定することが出来るのです。

 ミンツバーグ教授は、「マネジャーの職務は、様々な『役割』によって、すなわち、ある職位によって明確になった組織化された行動の集合によって説明することが出来る」と言います。

 フォーマルな権限は次の3つの対人関係上の役割をもたらし、この役割から3つの情報上の役割が生まれます。この2組の役割によって、マネジャーは4つの意思決定に関わる役割を果たすことが出来るようになるのです。

⑴対人関係における役割

  • 看板的役割
  • リーダー的役割
  • リエゾン的役割

⑵情報に関わる役割

  • 監視者としての役割
  • 散布者としての役割
  • スポークスマンとしての役割

⑶意思決定に関わる役割

  • 企業家としての役割
  • 妨害排除者としての役割
  • 資源配分者としての役割
  • 交渉者としての役割

3.より効果的なマネジメントを目指して

 マネジャーの能力は、仕事に対する洞察によって大きく左右されます。仕事をする手際の善し悪しは、職務のプレッシャーとジレンマをいかによく理解し、対応できるかに係っています。したがって、自分の仕事について内省できるマネジャーは、その職務をうまくこなすことが出来ます。

マネジャーの仕事を停滞させる原因は、①権限委譲のジレンマ ②一人の頭脳に集中したデータベース ③マネジメント・サイエンティストとの協力の問題 です。これらはマネジメント情報のほとんどが口頭でのコミュニケーションから得られたものであることで起こりうるのです。

  1. マネジャーは自分が所有する情報を分かち合う、系統だったシステムを確立するように求められている
  2. マネージャーは、表面的な仕事に追いやろうとするプレッシャーを意識的に克服するために真に関心を払うべき問題に真剣に取組み、断片的な具体的情報ではなく、幅広い上京を視野に収め、更に分析的なインプットを活用するよう求められる
  3. マネジャーは義務を利点に変え、やりたいことを義務に変えることによって、自分の時間を自由にコントロールできるように求められている

4.マネジャーの教育

 マネジャーになるには重要な知識を十分に消化吸収しなければなりませんが、頭で理解しただけでは泳げないのと同様、知識学習だけでは人材は育ちません。

 マネジメント・スキルというものは、実際にも理論的にも実行とフィードバックを通して学ぶべきものなのです。

 重要なマネジメント・スキルとしては、同僚との関係の育成、交渉の遂行、部下の動機付け、心の悩みの解決、情報ネットワークの構築と情報の発信、不確実な状況下での意思決定、資源配分など様々ですが、マネジャーは実務を通じて学び続けるように、自分の仕事について内省的でなければなりません。

ミンツバーグ教授は、最後に「マネジャーの職務ほど企業にとって大きな重みを持つものはない。社会が我々に事えてくれるのか、あるいは、我々の能力や資源を浪費するのかを決定するのはマネジャーである。今こそ、マネジャーの仕事に関する神話から脱皮するときだ」と言っています。