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休日の本棚 THINK AGEIN  発想を変える、思い込みを手放す

おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で2万1628人ですが、昨日も書いたようにGW中なので安心はできません。GW明けに爆発的に増加することが予想されます。最長10日のGWが後2日となりましたが、行楽地はどこも人で溢れかえり、まるでコロナ禍でないような状況です。経済を回すことも大切ですが、経済と感染対策のバランスが重要です。政府は入国制限を緩和するようですが、まずは国内の活動を通常に戻すことが優先され、外国人観光客の受け入れはその後です。

さて、今日は、アダム・グラント著「THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す」(三笠書房を紹介します。これまで紹介した、「GIVE&TAKE」「ORIGINALS」に続くグラント氏の最新作です。この本も楠木建氏が監訳を務めています。楠木氏は、「『知ってているつもり』がもたらす知的な怠慢――学び続ける人の指針がここにある」と言っています。

著者のグラント氏は「『脳の処理速度が速い』からといって、『柔軟な思考の持ち主』であるとは限らない。人は疑うことの不快感よりも、確信することの安心感を好む。既存の考え方を新たな観点から見つめ直しことがいかに大事であるか、それを伝えるのが本書の目的である」と言います。

「THINK AGEIN」というのは日本語で言えば「再考」という意味ですが、人間は一度決めたことを変えるということができない生き物です。この本に紹介されているブラックベリーの衰退やスティージョブズiPhone の発売に難色を示していたという例は、まさに思い込みの典型的な事例です。これまでの前例を変える必要性がないという思い込みは何が正解か分からず変化の激しい時代にはもはや通用しません。それにもかかわらず、今なお人は思い込みから逃れることができないのです。

この本で「ゆでガエル理論の誤謬」について指摘されています。「ゆでガエル理論」というのは、変化が徐々に起きると、それに気づかず致命傷になることの比喩的寓話として挙げられるもので、カエルを水からゆでると、熱さを感じることなくゆであがって死んでしまうというものです。実際は、カエルを熱湯に入れると瞬時に全身火傷で死に、水からゆでると飛び出して逃げてしまいます。このゆでガエルの寓話を聞いて人は「そういうものか」と納得して試そうとしません。グラント氏は、これを「怠惰な認知」と呼びます。

私たちの思考の基盤となる物事の見方は、グラント氏が言うように、感情による判断で成り立っているのです。確証バイアスと言われますが、自分が支持する情報に注意が傾き、自分と合わない意見や考えには同じだけの注意を向けないことから起きえる偏見です。私たちは、自分のものの見方や考え方を守るために、無意識的にそれらに賛同する事例ばかりを集め、それが現実だと信じて考え直すことをしないのです。

確かに変化の激しい時代で、スピード感のある決断が必要なこともありますが、考える時間と同じくらい再考にも時間を掛けることが重要です。そして、再考した結果、前に行なった決断が間違っていると感じたなら、軌道修正する必要があるのです。決めたことにいつまでもこだわっている時代ではありません。間違っている、あるいはちょっとおかしいと違和感を感じたなら、スパッと変えることも必要なのです。

グラント氏は、「時代遅れで自分のためにならない知識や意見を手放し、自分は誰かという問いの答えを、恒常でなく柔軟に見つけること」が本書の真の目的であると言っています。

私は、今、千葉雅也著「現代思想入門」(講談社現代新書を読んでいますが、千葉氏は「現代思想を学ぶと、複雑なことを単純化しないで考えられるようになります。単純化できない現実の難しさを、以前より『高い解像度』で捉えられるようになるでしょう」と言います。現代という時代は、秩序化・ルール化に向かっていて、複雑なものを単純化しようとする傾向にあります。複雑なものを複雑なままで受け入れることも必要なのです。このことは、千葉氏だけでなくグラント氏も指摘しているところです。

グラント氏は、複雑な時代を生きるに当たり、あまりにも容易く簡単に結論を出し、その決定に固執することの危険性を、さまざまな角度から論じています。要点だけを箇条書き的に列挙します。

【Part1 自分の考えを再考する方法】

  • 悲劇は、私は偏見にとらわれていないと思い込んでしまう「バイアス」で、賢明な人ほど陥りやすい
  • 自分を疑うことが最強で最大の知性だ。・・・寓話「裸の王様」を持ち出すまでもなく、権威を持つようになればなるほど、自分は間違っているのではないか?成功体験から得た信念にしがみつきすぎていないか?を能動的に再考しない限り、この罠から逃れることはできません。
  • 私たちが学ぶのは、時分の信念を肯定するためではなく、信念を進化させることだ。
  • 「自分が間違っていると分かって心から嬉しい。私の間違いが一つ減ったのだから」(カーネマン ノーベル経済学賞受賞者)・・・本当に私たちが目指すべきは、自分自身を成長させることです。

【Part2 相手に再考を促す方法】

  • 人を変えようとするのではなく、彼らが自力で変わるように、動機を見つける援助をすることだ。

【Part3 学び、再考し続ける社会・組織を創造する方法】

  • 現実が複雑であるとは、知性を獲得し、進歩し続けるための新たな好機だ。
  • 向上していくためには、終点のベストではなく、ベタープラクティスを常に探すべきだ。・・・昨日のベストは今日のベストではありません。完璧主義を捨て、及第点主義を目指す時代です。
  • 心理的安定性があっても、説明責任がないと、コンフォートゾーンに留まってしまう。・・・エドモンソン教授が唱えているように、心理的安定性は、ぬるま湯的な状況ではありません。

【Part4 結論】

  • 幸福はゴールではなく、熟達と意義から副産物的に得られる(ジョン・スチュアート・ミル)。幸福以外の何か他の目的に心を傾けている者だけが、幸せを感じるのだ。幸せは目標ではなく、目標に向かう道のりで見つけるものだ。
  • 再考は私たちの思考を自由にして、より満ち足りた人生を送るツールだ。

楠木建氏が監訳者あとがきで書いているように、当たり前のことしか書かれていませんが、当たり前でありながら、言われなければ気づかないような「コロンブスの卵」をわかりやすく面白くエピソードを織り交ぜながら、提示してくれているところに本書の魅力があるように思います。期待を裏切らない良い本で、読んで損はありません。