中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

中小企業経営のための情報発信。中小企業から日本を元気に

やる気のある社員を離職させないために

おはようございます。
昨日の新規感染者は全国で3万5190人で、GW後でも増えることなく、3万人台で推移しています。GW後に感染爆発が起きるのではないかと懸念されていましたが、ある程度感染状況は落ち着いてきています。政府は水際対策の緩和やマスク着用緩和など出口戦略に向けた適正緩和が行なわれようとしています。これまで、新しい感染の波が起こるたびに、つぎ接ぎのように後手後手の対策を行ない、助かるべき命も救えず多くの方がなくなりました。今、落ち着いている時期にこそ、これまでの対策を見直し、想定外の事態が起こったときにでも対応できる制度や体制を整える必要があると思います。これが危機管理の基本です。

さて、今日は、東洋経済オンラインの「『やる気のある社員』から会社を辞める当然の事情」という記事を取り上げます。

厚生労働省の雇用動向調査によると、令和2年の離職者数が入職者数を上回りました。今、企業にとって、離職対策は喫緊の課題となっています。離職率が高い会社というのは、給料が安いということだけではなく、他にも理由があるのです。
1.離職理由

 会社が把握している離職理由として、次のようなものが挙げられます。

  • キャルアアップしたい
  • 仕事が自分に合っていなかった
  • 実家や親族、有人の仕事を手伝うことになった
  • 家庭の事情で働くことが難しくなった
  • 給料や労働条件に不満があった

 ただ、離職に当たってゴタゴタを起こしたくないため、角が立たない離職理由を会社に伝えており、これらの理由が必ずしも本音であるとは言えません。本音としての離職理由には次のようなものがあります。

  • 上司や同僚など、職場の人間関係がうまくいかなかった
  • 仕事が面白くない、やりがいを感じない
  • 会社や業界に将来性を感じない
  • 成長が感じられない、さらなるチャレンジをしたい

 とりわけ、「上司との関係がうまくいかない」といった人間関係が大きな理由を占めています。ビジネスは人と人との関係である以上、職場の人間関係がうまくいかないと仕事に影響が出るのみならず、個人の成長にもやる気・モチベーションにも大きな影響を与えます。

 以前にも書きましたが、人財育成の基本は「教育」「評価」「環境」の3つを整備することです。きちんと教えて、正しく評価し、環境を整えることです。この「教育」「評価」「環境」を整備して、きちんと実施すると辞める理由は少なくなります。

 多くの企業では働く人の欲求(Want to)は必ずしも満たされていません。当人に働く意欲がないのではなく、会社や上司がそれを引き出せていないのです。

 「やりがいを感じられる」というのは、辞めない理由の一つです。しかし、やりがいも多様化しています。出世を求める人もいればワークライフバランスを重視する人もいます。、それぞれのやりがいに応じた環境や制度を作る必要があります。

 「人間関係が良い」という職場は風通しの良い職場です。特に重要なのは上司のコミュニケーション能力です。部下の気持ちや思いに寄り添い親身になって聞くことで、より良い人間関係・信頼関係が築けます。

2.人間が抱く根源的な3つの欲求

 この記事では、「人は人間が根源的に抱く欲求が満たされないときに離職を考える」と言っています。人が会社を辞める理由はまちまちですが、あながち間違いではないように思います。

 人間には、生存欲求、関係欲求、成長欲求の3つがあります(クレイトン・アルダファー)。

 「生存欲求」は、安心・安全に生きていきたいという欲求で、給与や雇用環境が影響します。「関係欲求」は良好な人間関係を築き、人から認められたいという欲求です。「成長欲求」は、苦手を克服し、得意分野を伸ばし、自らの可能性や才能を発揮したいという欲求です。

 人は、「十分な給料を払ってくれて、良好な人間関係の中で、周りが自分を認めてくれて自分を成長させてくれる会社で働きたい」と思っているのです。この3つのうちの1つでも満たされなければ、離職するかどうかは別として不満が生まれ、離職を考える理由になるのです。

 重要なのが、人によって重要度は違いますが、バランスよく3つの欲求が満たされることが必要なのです。

3.意識の高い社員を離職させないコツ

 先ほども書きましたが、社員が辞めないようにするには「教育」「評価」「環境」を整備し、きちんと実施することにつきます。

 特に意識の高い社員は、成長欲求が高く、生存欲求を下げてでも(給料が下がってでも)自分が成長できる会社に転職しようとします。こうした意識の高い社員は、会社の将来を担う人材であり、こうした人材の離職は会社にとって痛手です。離職は給料の多寡によって決まるわけではありません。生存欲求・関係欲求・成長欲求のどれかが満たされないことによって起きるのです。

 人によって、何を最も重視するかも異なります。社員一人一人が何を求めているのかを的確に把握して各人に応じたマネジメントを行う必要があります。

この記事では、離職率の高い会社の社長に次のような質問をしています。

  • 辞めた人は、会社の中で良好な人間関係を築けていましたか?
  • 上司はその人を認めるコミュニケーションをとっていましたか?
  • その人が成長できるような仕事の任せ方、関わり方をしていましたか?

ほとんどの社長が、「できていなかった」と回答しています。これらの取り組み(関係欲求・成長欲求の充足)を行わないまま、「高い給料が払えないから」とあきらめているのです。

中小企業は大企業のように高い給料で優秀な人材・やる気のある人材を雇うことはできません。しかし、大企業にはない「関係欲求」「成長欲求」を満たせる余地は十分あるはずです。