中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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休日の本棚 成し遂げる力

おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で2万5761人で、一部地域を除き全国的にも減少傾向にあります。悦ばしいことですが、海外では、BA.2の変異株であるBA.4、BA.5、BA.2,12.1が広がり、特にアメリカではBA.2.12.1画像化し、再拡大の原因となっています。これらの亜種は今のところ日本では見つかっていませんが、政府が進める水際対策緩和で日本国内に流入するのも時間の問題です。BA.2.12.1は、従来のBA.2よりも25%感染力が強く、BA.1の感染で獲得した免疫から回避できる可能性があり、ワクチンの効果が低下する可能性も指摘されています。こうした変異株の流入を食い止めることが大切ですが、これまでの変異株と同じく、必ず流入してきます。我々一人一人にできる対策は、これまで通り手洗いや蜜を避けるといった基本的なことを愚直に実践するしかありません。

さて、昨日は、稲盛和夫氏の「アメーバ経営」を紹介しました。今日は、永守重信氏の「成し遂げる力」(ダイヤモンド社を紹介します。

永守氏については、これまでも紹介しているので、経歴等を紹介しませんが、先月に、日本電産のCEOに返り咲きされました。昨年6月に就任したばかりの関潤氏のCEO職を解き、自ら再びCEOに就任しました。「永守による経営指導体制の下、日本電ワン本来のスピード感のある経営を行い、2023年売上10兆円の実現をより強固にするため」と説明されましたが、永守氏は経営者として「カリスマ性」を帯びる一方で、「本人の能力がすごすぎて、人をコーチングできない。社長やCEOをやらせてみてはダメ、はい次、となる」と厳しい批判や指摘もあります。確かに、最近、いくつかの企業でカリスマ経営者の老害が出ているように思いますが、さりとて彼らのカリスマ経営者としての実績やすごさは揺るぎません。

永守氏の「成し遂げる力」も、昨日の稲盛氏の「アメーバ経営」同様、中小企業経営者にとっても役に立つ本です。

この本では、永森氏の生い立ちと、その経営哲学が描かれています。今や、世界一の総合モーターメーカーになった日本電産ですが、決して順風満帆の道のりをたどってきたわけではありません。むしろ困難の連続、そうした困難に地道に逃げることなく向き合ってきた結果、それを乗り越え、チャンスをつかむことができたのです。

永守氏は、「経営の世界では『運が7割、努力が3割』」と言います。ここで永守氏が強調したいのは「運がすべてではない」ということです。「3割の努力」が重要なのです。「運が7割」もあるからと言って「運任せ」ではいけないのです。チャンスを逃さないためには、普段から相応の準備と努力が欠かせません。運も十分の準備と努力によって自らつかみ取るものです。待っていれば、向こうからやってきてくれるものではないのです。

この本には「努力」という言葉がいたるとことで現れます。努力を惜しまず、出てくる課題や問題にまっすぐに向き合い、果敢に挑戦する姿勢が重要だということです。

この本に書かれていることから、役に立つと思われるところを紹介します。

1.今は一番が一人勝ちする時代

 今は、シェア一番が独り勝ちする時代です。GEのCEOであったジャック・ウェルチは「ナンバーワン・ナンバーツーの戦略しかやらない」と言いました。これはポジショニング戦略ですが、中小企業も、生き残りをかけた戦いに勝つためには、ジャック・ウェルチと同じようにNO1かNO2以外はやらないという覚悟・勇気は必要なのです。

 永守氏は、「2番でもいいと言っていたら、あっという間に三番手以下に成り下がってしまう厳しい世界だ」と言います。「一番以外はビリ」なのです。そうした覚悟をもって、事業に取り組むことが大切なのです。

2.真似だけでは人を超えることはできない

 1番を目指すためには、その分野のトップランナーを詳細に研究して真似ることが大切です。しかし、真似るだけでは、トップを追い抜くことはできません。ここでは、日本電産のモーターを例にとって説明されています。市場のトップシェアの他社製品を入手し、分解し、どの性能が優れているのか、顧客が魅力を感じているところはどこかを徹底的に分析します。実際にまねて作り、技術的難易度も実感するのです。そのうえで、最先端のアイデア・技術を加えることでイノベーションを追求して一気に抜き去るのです。

 永守氏は、稲盛氏を師と仰ぎ、時にはライバルとして、背中を負い続けてきました。この本でも、稲盛氏の「アメーバ経営」が取り上げられています。アメーバ経営について、「現場にコスト意識・経営意識を植え付け、会社全体を活性化させる素晴らしい手法である」と絶賛していますが、日本電産にはなじまないと判断し、「アメーバ経営を参考にして『事業所経営(各工場を拠点に仕入れから生産に至るまで一貫した体制を敷き、各事業所の損益を明確にする独立採算制)』を浸透させ、事業所の責任者が営業・開発・製造の各部門のバランスを取りながら全体最適を目指すことができる」ようにしたのです。

3.できないと思うより先に「できる:と百回唱え

 創業間もないころ、大手メーカーが二の足を踏むような無茶な注文を受け、どうすればできるか図面を引き、試行錯誤を繰り返し、発注元が指定した性能には及ばないものの技術水準の高い試作品を仕上げ、注文を受けることができたのです。それ以来、日本電産は、発注元から無理難題を言われても「できると百回唱えよう」と呼びかけることを繰り返しているのです。

4.すぐやる習慣が、命運を大きく分ける

 日本電産の「三大精神」は「すぐやる、必ずやる、できるまでやる」です。筆頭に「すぐやる」があげられているのは、「開発段階において、いかに短期間で実験を繰り返すかが勝敗を大きく分ける」からです。つまりスピードが成功への大きな要素となるのです。

5.素早く、粘り強くチャンスをつかみ取る

 創業当初、日本電産は系列や実績重視の日本企業に創業間もない零細企業が入る余地はないと判断し、アメリカの3M社がカセットテープを高速でダビングできるカセットディプリケーターの小型化を模索しているとの情報を得て、小型モーターのサンプルを持参します。相手の技術部長が「性能を落とさず、小さくできますか」と聞いてきたので即座に「3割資伊作します」と返答して、試行錯誤を苦r4位返しながら、半年後に小型化に成功し、3Mに持参し、注文を取り付けました。この受注が日本電産の評価を急上昇させ、世界一のモーターメーカーへの第一歩となったのです。

 相談を受けたときに「考えさせてください」と一定小田野では、その後の展開はなかったかもしれません。「3割小さくします」と即答し、「やる」と言った以上は「必ずやる」「できるまでやる」ことで、チャンスをつかんだのです。

6.明るい言葉を使えば明るい未来が見えてくる

 世の中「ダメだ、できない」と否定の言葉から物事を考える人が多いのです。特に高学歴のエリート、IQの高い人にその傾向が見えます。彼らは頭がいいので、先を見越して判断しているのです。しかし、彼らの判断が必ずしも正しいわけではありません。特に混迷で先が見えない時代には、初めから「ダメだ、できない」とわかるようなことなどありません。

 つねに明るい言葉を使い続ければ、どんな逆境の中でも明るい兆しを見つけることができるものです。

7.料理人の修行に学ぶ「下積みの大切さ」

 料理人のように、現場で経験を積む中で、自分の頭で考えて答えを見つけ出していくというのは、かつて日本の様々な分野で見られました。ところが、最近の若者、機械工学卒業の社員に「はじめはモノづくりを経験するのもいいぞ」と勧めると「現場で働くために大学院を出たわけではありません」と返答する者もいます。第一線の現場で働く人と苦労を共にすることが、将来どれだけ役に立つか理解できないのです。

 体で覚えることの大切さを身をもって経験することです。

8.ぎりぎりまで重ねた努力が運を呼び寄せる

 「運が7割」というのは、極限までの努力がベースにあってこそ、初めて運がついてくるということです。

9.足下を悲観していれば将来は明るい

 「足下悲観、将来楽観」の言葉通り、永守氏は、常に足下を悲観して準備を怠らず、変化した市場に一番乗りすることを目指しました。いやなことが1回あれば、よいことが2回帰ってくる、人生の成功を手に入れるためには、苦労してもひげ出さない、やれるところまでやるという信念を持つことが大切です。

10.チャレンジした人が評価される「加点主義」を貫く

 世の中には、減点主義(スタート時点の点数から減点していく)の会社が多いのですが、日本電産は加点主義(失敗しても原点はない、敗者復活のチャンスがあるだけ)をとっています。

 日本では失敗したら責任を取って下手をするちと会社を辞めることになります。トン等の責任を取るということは、やめることではなく、その失敗から学び、糧にして次の成功につなげることです。失敗よりチャレンジしないことのほうが問題なのです。

11.トップは自ら進んで「御用聞き」になれ

 「部下が報連相に来てくれない」と悩む管理職がいます。上司を敬遠して近寄ってこないが、内心では声をかけてくれるのを待っているのです。「最近、調子はどう?」などと、声をかけ、自ら足を運び、伝え、道宇びくことが大切です。そうすることで、部下とのより良い人間関係・信頼関係が構築されます。

12.世の中を見る「鳥の眼」と「虫の眼」をもて

 世の中の流れをつかみ対処していくには、はるか上空から地上を見下ろし全体を一望のもとにつかむ「鳥の眼」と、地面に張り付き、どんな小さな変化をも見逃さない「虫の眼」の両方が必要です。

13.ゆでガエルになるな、時代の変化に対処せよ

 物事には代えてはならないものと、変えるべきものの両面があります。容易に変えてはならないものが、会社の根っこ(土の下)である理念・社是・基本精神です。土の上の葉は春夏秋冬、装いを変えて身の丈に合った新しい服装によって時代の最先端を走り続けなければなりません。

 周囲を見渡すとゆでガエル人間が多く、彼らは「マンネリ、あきらめ、怠慢、妥協、おごり、油断」の六悪の特徴を持っています。この病理現象は順風満帆の時ほど蔓延しやすく気が緩み緊張感を失い、会社は自滅します。

 「脱皮しない蛇は死ぬ」ということわざの通り、周囲の変化に先行して自己改革しなければ「負け組」に入り結果自滅します。

14.「現場・現物・現実」を見ることなく経営を語るな

 経営の基本中の基本は、「現場・現物・現実」を正しく把握することです。これをしない机上の空論を振り回す人は、評論家が経営しているようなものです。

15.大きな課題も「千切り」すれば必ずできる

 困難な大きな課題に直面した時、線に切り刻むように小さくして課題を抽出し、根気よく考えて解決法を見つけるのです。最初からゴールを目指して走るのではなく、コースを細切れんびして走ることで、人よりも早くゴールに到達できるのです。

16.人間としての器を大きくする方法

 これからの日本社会は、従来の偏差値の高い高学歴人材の重用、つまりIQ値で示される優秀さより、EQ値の高さが求められます。それは、情熱・熱意・執念で困難に立ち向かう能力、他人の苦しみを深く読み取り、人心を束ねる納涼区、いかなる風雪にも耐えうる強い心です。人間力を高めるには、人間としての器を大きくしていくことが大切です。永守氏は「仕事以外に飲み歩く、趣味に没頭するなどしていては、一番の目的である『仕事の器』を大きくすることはできない」と言っています。必ずしもそうではないのではないかと思います。

17.すべてが自分ごとになると、人生が変わる

 人としての器を大きくするということは、自分の周りの出来事を「自分ごと」ととらえて、責任を持つということです。困難から目をそらし、正面から対することを怠っていてはいけません。困難から目をそらすということは、解決策からも遠のきます。どんな困難に直面しようと、「自分ごと」と受け止め、対処していくことに人は強さを身に着け、人間的にも成長するのです。