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目標設定理論

おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で、月曜日とはいえ9106人と1万人を下回りました。外国人観光客の受け入れ再開に当たり旅行業者や添乗員向けのガイドラインが今日発表されます。その内容は、①旅行業者はツアー客に、マスク着用など感染対策の徹底や民間医療保険加入を求め、違反者には参加・継続を認めない可能性があることの同意を得る ②感染者が出ても、陽性者と濃厚接触者以外はツアー継続を可能とする ③感染対策は日本人の標準に合わせる。旅行業者は密を避け、対策を徹底した施設を活用する ④添乗員はツアー客の行動履歴を保存する ⑤濃厚接触者を最低限にとどめるため、飲食店などの座席を固定する などです。基本的には、問題はないように思いますが、ガイドラインを守らない旅行業者や添乗員に対する罰則がなければ、結局はザルになってしまいます。

さて、今日は、日本の人事部の「高い成果につなげることができる『目標設定理論』とは」という記事を取り上げます。

目標設定理論」は「ゴール設定理論」とも言われ、目標が人のモチベーションに及ぼす効果について着目した理論です。

1.モチベーション

 モチベーションについては、これまでも書いていますが、日本では「やる気・動機」「士気」などと訳されていますが、モチベーションは人の行動に影響を与えるもので、「人を特定の行動に向かわせ、そこに熱意を持たせ、持続させる」ものです。モチベーションは、「やる気⇒行動」といったシンプルなものではなく、複雑な心理メカニズムが入り交じるので、人を動機付けることは難しいのです。

 モチベーションには、外発的動機と内発的動機の2つがあります。

 外発的動機は、報酬や昇進など外部から与えられる影響で高まるモチベーションで、内発的動機は、外部からの影響ではなく純粋に「楽しみたい」「やりたい」と言った内面から沸き上がるモチベーションです。

 現在では、外発的動機よりも内発的動機の方が個人の行動へのコミットメントや持続性を高めることが、認められています。

2.目標設定理論(ゴール設定理論 goal setting theory)

 目標設定理論は、1968年に、アメリカンの心理学者エドウィン・ロックを中心に提唱されたモチベーション理論です。ワシントン大学のテレンス・ミッチェルズは「目標設定理論はモチベーション研究分野の最も支配的な理論である」と言意、多くの研究者から支持されている理論です。

 この理論では、目標設定がモチベーションを左右すると考えられています。従業員に高い成果を上げてもらうためには、適切な目ひょいウ設定を行ない、モチベーションを高く維持しなければなりません。

 モチベーションに影響を及ぼす要素は3つあります。

⑴ 目標の難易度

 簡単に達成できてしまう目標ではなく、努力することでやっと達成できる目標の方がモチベーションが高まります。しかし、難易度が高ければいいというものでもありません。高すぎる目標は、却って「できるはずがない」と思いやる気をそぐことになります。「頑張ればできる」という程度の目標がいいのです。つまり、設定される目標はその人の能力に見合った範囲内のものでなければならないのです。能力を遙かに超えた目標では失敗にしか繋がらないので満足度は下がります。

 また、「本人が納得している」こがモチベーションに大きく影響するため、上から一方的に突きつけられた目標では効果がありません。本人が腹落ちして自らワクワクしてやりたいと思う目標でなければならないのです。

⑵ 目標の具体性

 曖昧で抽象的な目標より、定量的で具体性のある目標の方が強い動機付けに繋がります。与えられた目標・ゴールが「最善を尽くせ」のように漠然としていたら、何が目的か分からず、どう行動すればいいのか分かりません。目標は具体的であればあるほど、何をどうすればいいかが明確になり、行動のモチベーションに繋がりやすくなります。

⑶ フィードバックの有無

 人は、達成した成果についてフィードバックがあると、よりモチベーションを高めます。成果に対してフィードバック我を受けることで、自分の成果を正確に認知し、満足度を高め、より高いゴールを設定するようになるのです。フィードバックを受けることで、次のステージでの目標内容や困難ども明確にできるので「次はどのような努力をどの程度すればいいか」が予測できます。フィードバックが名外連場、次にどのような目標を実現すべきかが分かりません。

「具体的・チャレンジングな目標設定⇒パフォーマンス」と「パフォーマンスのフィードバック⇒さらなる目標設定」という好循環サイクルが生まれると、人はモチベーションをどんどん高め、パフォーマンスも高まっていくのです。

 早稲田大学ビジネススクールの竹内規彦教授によると、星野リゾート社長星野佳路氏は、旅館の再生において、目標設定理論と親和性の高い目標設定法を採っているようです。例えば、星野氏が静岡県の温泉旅館を再生した際、単純に「顧客を増やせ」「リピーターを増やせ」という目標を立てるのではなく、同旅館のコアなファンが年配の女性客であることに着目し「熟年女性のマルチオケージョン温泉旅館」というコンセプトを導き出し、この層の満足を高めるという具体的な目標を設定しました。更に、コンセプトまでは提示するものの「そのために必要なオペレーション上の取組みは何か」を考えることは、大幅に現場に委譲しています。これは現場にとっては当然チャレンジングなことですが、だからこそ現場のモチベーションは最高に高まり、再生への道を駆け抜けたのです。

 また、星野氏は、軽井沢で運営するホテルブレストコートでは「ミス撲滅委員会」という現場のミスについてのフィードバック機能を持つ組織を作っています。ここでは、①敢えて叱らない ②ミスの報告を褒める というルールを作ることで、ミスについての正確なフィードバックが出るような仕掛けを作っています。

 目標設定理論は「モチベーションは、具体的でチャレンジングな目標設定と恒常的なフィードバックで、人為的に高められる」という点を示したものです。星野氏は、これを重視し実践していると言えるのではないかと思います。