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休日の本棚 ワーク・シフト

おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で10万5584人で、日曜日としては過去最多となりました。一昨日は11万人を超え、8月には40万人に達するとの見方もあります。このまま感染拡大が続いても行動制限はしないというのでしょうか。この3連休は各地で人出が増え、テレビで見ただけですが祇園祭も密になっていました。家の近くで行なわれている夏祭りも人で溢れかえっています。明日以降の感染者の急増が懸念されます。一昨日の島根県丸山知事が言ったように政府には危機意識が欠如しリスクマネジメントの能力もないので、地方公共団体で状況を見極めながら独自の感染防止対策として自粛・規制が必要になる場合もあると思います。

さて、今日は、リンダ・グラットン著「ワーク・シフト 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図(2025)」を紹介します。

著者のグラットン氏はロンドン大学ビジネススクールの教授で経営組織論の世界的権威です。英タイムズ紙の選ぶ「世界のトップビジネス思想家15人」の1人に選ばれています。組織におけるイノベーションを促進するスポッツムーブメントの創始者でもあります。

日本では、コロナ前から働き方改革が叫ばれ、コロナ禍でリモートワークや副業など新しい働き方が普及してきました。しかし、その流れも、コロナ感染者が減少すると従来型の働き方にシフトし、揺れ戻しが生じています。それでも、1990年頃に比べると、めまぐるしく変化しています。今後、働き方の変化も日本だけでなくグローバルに加速していくように思います。今後更に加速する働き方の変化に私たちはどのように受け止めるべきか、そんな未来について語られている本です。

1990年の頃に比較すると、現在は驚くほど変化しています。特にその変化がめまぐるしいのはテクノロジーの分野です。1990年は、携帯電話は普及しておらず、インターネット回線もほとんど引かれていない時代でした。クライアントとは固定電話やファックス、手紙でやりとりしていた時代です。それが今では、世界中どこにいてもテレビ会議が行え、資料のやりとりもメールで簡単に行える時代です。世界中の至る所とインターネットで繋がり、膨大な量の情報に接することもできます。

私たちは、20年後はどのような働き方をしているでしょうか? AIの進化によって奪われる仕事もあるでしょう。むしろほとんどの仕事がAIに奪われるのではないかと言われています。アメリカの発明家で人工知能研究の世界的権威レイ・カーツワイル博士は「AIが人間を超える知能を取得する時期」(シンギュラリティ)を2045年としています。ほぼ今から20年後です。

私たちの20年後の未来は亜ヵ類物となっているのでしょうか、それともAIにこき使われる悲惨な未来になっているのでしょうか?

この本は、テクノロジーの進化だけでなく、グローバル化、エネルギー問題など5つの要素、32の現象から未来の働き方を予測しています。描かれる悲惨で暗い未来を「漠然と迎える未来」、明るい未来を「主体的に築く未来」と表現し、登場人物の未来の生活をリアルに語り、そのうえで、明るい未来を築くために私たちが改めるべき発想を「3つのシフト」と呼んで論じています。

1.未来を形づくる5つの要因

 途方もなく大きな規模の創造的・革新的変化のプロセスが始まろうとしています。コロナ禍で、社会環境の変化が著しくなっています。未来に何が待っているかを知るためには今後数十年を形づくる5つの要因について考える必要があります。

  1. テクノロジーの進化・・・これまでもテクノロジーは常に仕事のあり方と人々の働き方に大きく影響してきています。特に、①テクノロジーが飛躍的に発展しコストが急落すること ②世界の50億人がインターネットで結ばれること ③地球上のいたるところで「クラウド」を利用できるようになること などの現象に注目すべきです。
  2. グローバル化の進展・・・①24時間・週7日休まないグローバルな世界が出現したこと ②中国・インドの経済発展がめまぐるしく人材排出国として台頭してきていること ③世界のさまざまな地域に品子0ン相が出現すること、ナ痔といった現象に注目すべきです。
  3. 人口構造の変化と長寿化・・・社会の人口構造と仕事との間にGは切っても切れ得ない結びつきがあります。特に世代、出生率、平均寿命の3要素の影響が重要です。①Y世代, Z世代の影響力が拡大すること ②寿命が長くなり、ベビーブーム世代の一部が貧しい老後を迎えること ③国境を越えた移民が活発になること、と言った現象に注目すべきです。
  4. 社会の変化・・・①家族のあり方が変わり規模が小さくなること(核家族化) ②女性の力が強くなること ③バランス重視の生き方を選ぶ人が増えること(ワークライフバランス)などといった現象に注目すべきです。
  5. エネルギー・環境問題の深刻化・・・未来をどう生きるかは、エネルギーをどの程度利用できるか、エネルギー利用が環境にどんな影響を及ぼすかという点と密接に結びついています。①エネルギー価格が上昇すること ②環境上の三次が原因で住居を追われる人が現れること ③持続可能性を重んじる文化が形成されること といった現象に注目すべきです。

2.「漠然と迎える未来」の暗い現実

⑴ いつも時間に追われ続ける未来

 この未来では、すべての活動が細切れになり、世界中の同僚と仕事をし、世界樹雲母ライバルと競い合うことになり、分刻みで処理すべき課題がぎっしりと詰り、いつも時間と仕事に追い回される未来です。

 この未来は、通信顛末などのテクノロジーの進化と、24時間休みのないグローバル化が要因となって描かれるものです。

⑵ 孤独にさいなまれる未来

 この未来では、他の人と直接対面して接する機会が減ります。その結果、気楽な人間関係がもとらす喜びを味わうことができなくなります。

 この未来は、エネルギー価格の上昇に伴う移動費の上昇、核家族化、離婚の増加など家族のあり方などの変化が要因となって描かれるものです。なお、新型コロナなどの感染症の拡大もこの未来の要因になります。

⑶ 繁栄から閉め出される未来

 これまでの世界では、どこで生まれたかによって、ある人がどれくらい成功できるかは概ね決まっていました。才能とやる気と人脈が経済的運命の決定要因となり、勝者総取りの社会となってきています。

 この未来は、主にテクノロジーによる雇用喪失、中国・インドなどの新興国の台頭が要因となり、描かれるものです。

3.「主体的に築く未来」の明るい日々

 前述の5つの要因はすべて、暗い未来を生み出す可能性がある反面、明るい未来を生み出す可能性も秘めています。

⑴ コ・クリエーションの未来

 イノベーションはコラボレーション的、ソーシャル的性格が強くなり、多くの人の努力が積み重なって実現するものになります。

 この未来は、50億人がフェイスブックなどのSNSで結びつく後ロー張るか、またはソーシャルな活動の活発化が要因となり、描かれるものです。

⑵ 積極的に社会と関わる未来

 社会活動(ボランティアなど)の比率が高まる結果、仕事、社会補婦氏、育児、地域活動など、生活のさまざまな要素のバランスがとれるようになります。

 この未来は、Y世代やZ世代の台頭、バランス重視の生き方を選ぶ人が増えることが要因となり、描かれるものです。

⑶ ミニ起業家が活躍する未来

 この未来では、世界中で何十億人もの人たちがミニ起業家として働き、他のみに起業家とパートナー関係を結んで、共存するエコシステムを築くようになります。ミニ起業家は自分が夢中になれる対象を仕事としています。

 この未来はテクノロジーの深化による生産性の向上、中国の経済成長などが要因となり、描かれるものです。

4.働き方をシフトする

 明るい未来を築くためには、これまでの固定観念、知識卯、技能、固定パターン、監修などを根本からシフトする必要があります。

⑴ ゼネラリストから「連続スペシャリスト」へ

 未来の仕事の世界で成功できるかどうかは、その時代に価値を生み出せる知的資本を築けるかどうか、とりわけ、広く浅い知識や技能を蓄えるゼネラリストを脱却し、専門技能の連続的拾得者への抜本的なシフトが必要です。

 終身雇用が崩れ始めた今、ゼネラリストがキャリアの途中で労働市場に放り出されるケースが増えています。この労働市場で打ち勝つにはスペシャリストでなければなりません。専門知識や専門技能がなければ勝つことは難しいものです。

 高い価値を持つ技能は ①その技能が価値を生み出すことが広く理解されていること ②その技能の持ち主の希少性が高いこと ③その技能の模倣が困難で有り、機械・AIによっても代用されにくいこと、という条件を兼ね備えているものです。

⑵ 孤独な競争から、「協力して起こすイノベーション」へ

 世界中の人々が結びつく時代の恩恵を受けるには、協力とネットワークとイノベーションについて、根本から発想をシフトする必要があります。

 関心分野を共有する少人数のプレーン集団である「ポッセ」、多様なアイデアの源となる「ビッグアイデアクラウド」、安らぎと活力を与えてくれる「自己再生のコミュニティ」を築くために、意識的に努力しなければなりません。強固な人間関係を育むことができれば、大きなエネルギーが得られます。物質的な豊かさを重んじるあまり、成長と意義と友情をないがしろにしないことが大切です。

⑶ 大量消費から「情熱を傾けられる経験」へ

 やりがいと情熱を感じられ、前向きお出充実した経験を味わえる職業生活への転換を成し遂げ、「仕事の最大の目的はお金を稼ぐこと、人生の目的はお金を消費すること」という発想を転換しなければなりません。

 すべての時間とエネルギーを仕事に吸い取られる人生ではなく、もっとやりがいを味わえてバランスのとれた働き方に転換することです。

 それには覚悟を決めて選択しなければなりません。自分の働き方は自分で主体的に選ぶことです。自分と家族、そして社会全体のために、経済の活力と社会のパン邸のバランスをどのようにとりたいのかS、そのバランスを実現するために、どういう選択を行なうべきか、こうしたことを真剣に考えなければなりません。