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休日の本棚 企業戦略論

おはようございます。

今日も過去に紹介した本のブログを貼り付けます。

昨日は「戦略の立て方」についての過去のブログを貼り付けましたので、今日は、ジェイ・B・バーニー著「企業戦略論」(ダイヤモンド社を紹介した時のブログを貼り付けます。バーニー氏は、オハイオ州立大学経営学部フィッシャー・ビジネススクール企業戦略バンク・ワン・チェアーシップ教授です。

これまで何度か紹介したポーターの戦略論が極めて実証的かつ体系的で、競争戦略のスタンダードであることは否定できません。しかし、顧客重視よりも、ライバルに勝つことに重点があるため、顧客満足を追求することはあくまでも他社に競り勝つためで、あまり重きが置かれていません。また、企業の人間的、文化的側面もほとんど重視されることがありません。

ポーターが競争優位の源泉は企業の「外」にあると考えたのに対し、バーニーは企業の「内」のリソース(経営資源)にこそ競争の源泉があると考えました。どんなに競争が激しい業界でも、好業績の会社はあります。バーニーは「会社の業績は、業界の競争の激しさではなく、会社の経営資源で決まる」と考えたのです。

例えば、他社よりも安く製品を提供できる強みは、ポーターなら原材料の取引先との関係、熟練工の調達など外部の資源を取り込むことで可能になる(5F)と考えます。一方で、バーニーは安く提供できる設備、人材、システムといったリソースが内部にあるからだと考えるのです。

1.RBV(リソース・ベースト・ビュー)

 厳しい業界の中でも好業績を続けている企業は真似されにくい独自の経営資源(リソース)を持っています。企業の競争力を考えるために経営資源(リソース)に注目したのが、バーニーが提唱した「RBV」です。これは、「経営資源(リソース)に基づいた視点(ビュー)」ということです。

 例えば、繁盛しているラーメン店を考えてみます。その店で出しているメニューは容易に真似をすることはできます。しかし、同じ味のラーメンを提供しようとすれば、麺やスープの素となる材料を手に入れ、それを調理するための厨房が必要になり、スープの材料の配合、麺のゆで時間、その他様々な知識や経験が必要になります。これらの知識や経験を持つ人材の確保・育成も必要です。これらが相まって、人気のラーメン店は成り立っているのです。他の店が真似ようとしても簡単にできるものではありません。

 先ほども述べたように、ポーターの競争戦略論が市場の魅力度と競争地位という「外」を重視するのに対し、バーニーのRBVは「内」にある経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を重視し、自社の強みをどんどん強くすることで市場=顧客を獲得していくという発想に転換したのです。

 RBVのエッセンスは3つです。それは、VRIO、資源ポートフォリオ、基本戦略の立て直しです。順次見ていきます。 

2.VRIO

 以前取り上げた「コア・コンピタンス」はRBV視点を取り入れた代表的な戦略論です。コア・コンピタンスでは、属している産業や外部環境をいうよりも、自社の強みをベースに事業を拡大していく戦略論です。

 自社の強みを競合他社と比較して4つの視点から評価します。顧客にとって「資源の価値(Value」があるものか、「希少性(Rareness)」はあるか、「模倣可能性(Imitability)」はあるか、「組織(Organization)」が整備されているか、この4つの頭文字をとったのがVRIOです。この4つの基準に照らして耐えうるものが自社のコア・コンピタンスです。

  1. 資源の価値(V)・・・「その企業の保有する経営資源が、顧客の嗜好、業界の構造、技術動向などに照らして、市場で受け入られ、経済的価値をもたらすか」「その経営資源を持つことで、脅威やリスクが減るか、機会が増大するのか」を問います。
  2. 希少性(R)・・・「現時点で、競合企業のうちどれくらいの企業が、その特定の価値ある経営資源を持っていおるのか」「その経営資源が、ごく少数の企業しか所有していない希少な資源であるのか」を問います。
  3. 模倣困難性(I)・・・「その経営資源は、競合他社がまねできない資源であるかどうか」「競合他社が類似の資源を獲得するために技術開発やチャネル形成、ブランド構築などで莫大なコストがかかるのか」を問います。
  4. 組織能力(O)・・・「経済的価値があり、希少で、模倣困難な資源を活用するための組織能力(組織的方針・手続き、命令・報告系統、マネジメントシステムなど)があるか」を問います。

3.資源ポートフォリオ

 強みとなっている資源をベースに、既存市場での資源の活用と、新市場への参入の検討に役立てることです。BPMの横軸の相対シェアの代わりに経営資源を置き、縦軸に市場・製品を置く資源ポートフォリオを描きます。

 そして、資源の相乗効果や補完性の観点から、資源配分と既存資源の活用を検討します。新市場の参入においても、資源をどう活用していくか資源の展開の可能性を判断するのです。

4.基本戦略の立て直し

 将来の競争を先読みし、目指すべき将来の事業の姿を描き、強みを更に強くすることや今後獲得すべき経営資源を明確にして基本戦略の立て直しを図ります。ここで重要なのは、現状の延長線上の目標ではなく、より大きな目標・ビジョンを掲げ、将来の競争に向けた布石を打ち、資源の拡張をスピーディーに行うためのテコとして、経営資源を集中させることです。

 こうしたRBVの考えが適合しやすいのは、技術革新が市場と競争を激変させるような情報家電、自動車、化学などの産業です。古い事例ではありますが、シャープは98年に「2005年までに国内で販売するテレビをすべて液晶にする」と宣言し、液晶ディスプレイの大型化と量産化に集中して、ブラウン管テレビから液晶テレビへの転換を主導しました。キャノンは「主力事業のすべてが世界ナンバー1」を目標に掲げ、事業の再編成を推し進め、思い切った経営資源の集中を行っています。

5.本当の強みを見極める

 本当の強みを見極めることは難しいものです。

 一つは自分の強みを過小評価するということです。強みは自分にとっては当たり前のことで、自分では気づかないことが多いのです。こういうときには外部の意見が役に立ちます。外部からの客観的な意見です。

 次に、自己の強みを過大評価してしまうことです。例えば、「自社の強みは社員が真面目でスキルが高い」と考える企業は多いのですが、競合他社も同じように考えていますし、客観性が担保されていません。これは強みでも何でもないのです。

 企業の本当に強みは容易には見極めることができません。外部の意見を参考にしながら、じっくりと観察し、関係者と話し合って考え続けることが大切なのです。

 又、どのような強みでも未来永劫続くということはありません。どのような強みでもいずれは真似されてしまいます。真似できない強みというのはそれほどありません。いつかは賞味期限が来ます。自社の本当に強みを明確にしつつ、それを進化させていくことが必要です。