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人間中心の経営

おはようございます。

昨日、京都で、先日逝去された稲盛和夫氏のお別れの会が執り行なわれました。

日は、日経ビジネスに3回にわたり掲載された稲森和夫氏とジャック・マー氏の対談について取り上げます。第1回目では「企業経営者は常に謙虚であるべき」という考えで一致し、第2回目では、創業時の苦労で「ビジョンと使命感で仲間を集めた」という点で共通項を見出しています。3回目では、「リーダーが語るべき言葉」「苦境の時にリーダーが語るべきこととは何か」について両氏が語り、「人間中心の経営」の重要性について一致しています。

稲森和夫氏は京セラ、KDDIの創業者であり、ジャック・マー氏はアリババの創業者です。稲森氏の考えについては、これまでも「稲森経営12箇条」などで紹介してきました。

稲森氏もマー氏も、「どんなに美しい言葉であっても、そこに魂が宿っていなければ人の心に響かない。トップは常に会社の健康状態に気を配り、危機に際しては全身全霊で社員に語り掛け、不況を次の成長の糧に変えていかなければならない」と言います。

それは政治においても然りです。菅元首相や岸田首相にはコミュニケーション能力、コミュニケーションスキルがないことは誰もが認めるところです(管元首相については、安倍前首相の国葬での弔辞で少しは見直しましたが)。今更能力やスキルを身につけろと言っても不可能です。問題は、発する言葉に魂がこもっていないということです。いくら口下手でも、言葉が稚拙であっても、全身全霊で自分の思いを伝えるということ、そうすることで、どんな稚拙で幼稚な言葉でも魂が宿り、人の心に響き人を惹きつけるものになるのです。

政治であってもビジネスであっても、リーダーは全身全霊を打ち込む魂を込めた言葉を発しなければならないのです。

1.語るべき言葉とは「音声」ではない。

 稲森氏は、「心で思ったことを頭で考え、それを音声にするだけでは、人を説得したり勇気づけたりすることはできない」と言います。日本では「言霊」という言葉があるように、言葉に魂を込めること、信念をもって言葉に魂を入れなければ、心に響かず、人は動きません。

 さらに、稲森氏は、「今のような厳しい経営環境の時こそ、自分が話すことに対して責任を持つ。命と魂を込めて訴えていくことがとても重要なのだ」と言うのです。

2.経営者の役割とは「会社のセメント」である

 マー氏も「言葉の本質は、表面的な美しさにあるのではなく、心の声にある」と言います。きれいな言葉でなくてもいいから本質を語ることで、人の心に響くのです。

 マー氏は、会社の成長を人間の成長と同じようにとらえます。人間は年齢とともに体の状態や行動パターンが変わり、時には病気になります。病気になって治療が必要な時もあれば、軽い症状を放置しておいていつの間にか悪化するということもあります。会社も同じです。経営者は常に会社の健康状態や心の状態を把握しておかなければなりません。会社の経営に綻びが見えれば、すぐに改善し修正していかなければなりません。それを放置していたのではその綻びがさらに大きくなり修正できなくなり、最悪倒産・廃業という憂き目に遭います。

 マー氏は「自分(経営者)はセメントである」と言います。経営者は、セメントのように色々なものをくっつけて一つにするということです。ヒトであれば団結させ、物であれば大きくしていく、これが経営者の役割なのです。

3.稲森和夫が「不況時に社員に語った4つのこと」

 稲森氏は、日本航空の社長に就任し、日航再建に関わり、日航を立て直しました。稲森氏は、不況時には常に次の4つを社員に語っています。

  1. 確かに大変な時期だけれども悲観的になるのはやめよう・・・不況時こそ、ネガティブではなくポジティブでなければなりません。 
  2. 一致団結しよう・・・不況になると社内に不協和音が生じますが、不況時こそ社員が一丸とならなければなりません。
  3. みんなで創意工夫して少しでも経費を減らす努力をしよう・・・売上を最大限にして、同時に経費を最小限に抑える創意工夫を徹底的に続けていく姿勢こそが高利益を生み出します。不況の時こそ徹底的に経費を減らさなければなりません。
  4. 全員が営業マンという気持ちで注文を取ろう・・・今までの得意先だけでなく、行ったことのないお客様の扉を叩く、こうした創意工夫を重ねることが次の発展につながります。

4.中国が学ぶべき「人間中心の経営哲学」

 稲森経営12箇条を見ると、どれもが経営者の強い意志や思いが根底にあり、それに従業員が共感することが大切だということが分かります。稲森経営哲学は「人間中心の経営哲学」なのです。稲森経営12箇条については、5月21日付のブログで紹介していますので参照してください。

 企業の成長には3つの段階があります。

  1. 創業期・・・生き残ることに賭ける段階
  2. 成長期・・・経営管理のレベルを高め、事業モデルをきちんと確立する段階
  3. 発展期・・・技術面でも資金面でも充実し、飛躍する段階

 マー氏は、アリババの成長段階に応じて様々な経営者を手本にしてきたと言います。そして「今、最も関心を寄せているのは、人間そのもの」と言っています。

 人間とは、企業とは、何のために存在しているのか、社会に対してどのように貢献すべきなのか、こうしたことを稲森経営哲学から学んで、アリババの経営に生かしていこうというのです。

経営資源は「ヒト、モノ、カネ、情報」と言われますが、その中心は「ヒト」です。「ヒト」というのは、顧客、従業員、ステークフォルダー、すべての人です。

経営というのは、稲森氏の「人間中心の経営哲学」に基づいたものでなければなりません。そして、人とのより良い関係、信頼関係を構築するにはコミュニケーションが大切なのは言うまでもありません。そして、コミュニケーションに必要なのは、心のこもった言葉です。特にリーダーは、美辞麗句ではなく、稚拙であっても全身全霊を打ち込んだ魂のこもった言葉で、話しかけなければなりません。 そうした魂のこもった言葉が人の心に響き、人を動かすのです。