中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

中小企業経営のための情報発信。中小企業から日本を元気に

ビジネスに必要な数学的思考

おはようございます。

このごろ「数学の学び直し」に関する本やビジネスパーソン向けの数学関連の本が書店で目に付きます。以前学生時代に苦しんだ数学を学びなおしたいという知的欲求からか、AIやITを理解するためか、ビジネスパーソン数学を学びなおそうというモチベーションが高まっています。決算書類を読み解くためにも数学的な素養は必要ですし、ビジネスの場で論理的に物事を考えるためにも数学的な見方・考え方は重要です。

1 まず、数学という学問は「言葉の使い方を学ぶ学問だ」です。多くの人は数字を使って計算するのが数学だと思っていますが、計算は電卓やエクセルなどが計算してくれます。ビジネスパーソンにとって必要なのはこうしたデータ処理ではなく、その計算に至る道筋を作り上げることです。例えば、ある商品やサービスの商談を行うとき、なぜその商品やサービスを推奨するのか、購入すればどのようなメリットがあるかを筋道を立てて説明できなければなりません。こうした筋道に必要なのが論理的思考、すなわち数学的な見方・考え方なのです。

  • AすなわちB :ある事実を基に主張するとき
  • AなぜならB :主張と根拠をつなぐとき
  • AゆえにB  :因果関係を説明するとき
  • A一方でB  :相対する概念を持ち出すとき
  • A以上よりB :結論を示すとき

 こうした数学的見方・考え方を示す言葉の使い方を学ぶことによって、主張が明確となり、分かりやすく説得力をもった話し方になるのです。

 重要なのは「どう解くか」ではなく「どう説明するか」です。数学の問題を解いて正解を出すことが目的ではなく、どのように論理的に説明できるかです。「解」を出すだけなら機械に任せればいいのです。重要なのは「解」に至る道筋を相手に分かりやすく説得力を持って説明できるかです。

 『数学を学ぶ』のではなく『数学を通じて学ぶ』のです。数学を学んだところで、決算書を読み解いたり企業分析をしたり経済事象を理解したりするには役立ちますが、多くのビジネスパーソンにとってはそれほど役に立つものではありません。むしろ重要なのは数学が持っている論理です。

2.数学的な思考・論理

 ビジネスの世界では、問題分析や意思決定の基本は論理的に考えることです。ビジネスの場面で論理的に説明する、論理的に企画を組み立てることは当然のことです。これらが論理的にできなければ、仕事がうまくはかどらず、企画が失敗に終われば信用も低下します。

 ビジネスを医師が患者を診断し病名を判断し治療方法を決めるプロセスになぞらえてみます。

  1.  病状を確認する ⇒ 結果(情報の確認)
  2.  病名の特定   ⇒ 原因(問題分析)
  3.  治療方法の決定 ⇒ 意思決定(問題解決)
  4.  事後評価    ⇒ 評価(ノウハウとしての経験の積み上げ)

 原因分析(病名の特定)ができると処方箋がほぼ決まるのと同じく、ビジネスの場面でも問題の原因分析ができると問題解決方法がほぼ見えてきます。ところが、患者が自ら思い込みで病名を特定し間違った病状を医師に告げ意志を混乱させるということが往々にしてあります。ビジネスの場面でも、結果と原因を混同して会議が混乱することが見られます。結果としての真偽の確認は重要です。原因の分析には論理的な能力とスキルが必要になります。

 こうした論理的な能力やスキルにとって、集合の基本や論理の基本を学ぶことも重要です。数学における集合論数学基礎論は純粋な論理の世界で哲学の世界の記号論理論に似ています(似ているというか同じです)。

⑴ 集合の基本

  1. 集合とは・・・物の集まりを集合と言い、集合する個々のものを元または要素と言います。集合Aを構成する元がa,b,c,dであるとき、A={a,b,c,d}で表します。
  2. 部分集合・・・2つの集合A、Bがあるとき、Aの元がすべてBの元に含まれるときAはBの部分集合と言います。
  3. 共通集合・和集合・・・2つの集合A,Bに対し、AとBどちらにも属する元の元全体の集合を共通集合、少なくともどちらか一方に属する元全体の集合を和集合と言います。
  4. 補集合・・・全体を占める大きな集合Uが存在しその中に集合Aがあるとき、Aを除いた部分(集合Uで集合Aに属さない部分)を補集合と言います。

⑵ 論理の基本

  1. 命題とは・・・一般に「正しい」あるいは「正しくない」と客観的に判別できる文章や式を命題と呼び、命題が正しい時、その命題は「真である」といい正しくないときは「偽である」といいます。例えば、「正三角形は二等辺三角形である」(真の命題)「二等辺三角形は正三角形である」(偽の命題)
  2. 命題の否定・・・命題Pに対して「Pではない」という命題を「Pの否定」といいます。 
  3. PかつQ、PまたはQ・・・「かつ」は「and」、「または」は「or」
  4. PならばQである・・・「Pが真ならばQも真である」を表しています。

⑶ 必要条件、十分条件必要十分条件

  1. 命題P,Qに対して「PならばQである」が真であるとき、QはPであるための必要条件であるといい、PはQであるための十分条件であるといいます。
  2. 命題P,Qに対して、「PならばQである」「QならばPである」がともに真であるとき、QはPであるための必要十分条件であり、またPはQであるための必要十分条件になります。

⑷ 演繹法帰納法

  1. 演繹法・・・前提から論理的に結論を導き出す手法です。代表的なものが三段論法です。大前提:AならばBである。 小前提:BならばCである。 結論:よってAならばCである。
  2. 帰納法・・・観察された複数の事象の共通点に注目して、妥当性のある結論を導き出す手法です。事象1:今年の梅の開花は遅い。 事象2:今年の推薦の開花は遅い。事象3:今年の冬は例年に比べて寒い。結論:今年はほとんどの花の開花が遅れている。

⑸ 仮説と検証

 問題解決の焦点を絞り込んで、解決にかかる時間を短縮するだけでなく、問題をより詳細に検討することが出来るため、仮説を立てて、その仮説は妥当性があるかどうかを検証する手法がビジネスの世界でよく使われています。

以上、論理的な思考に役に立つ数学的な集合論や論理を羅列しましたが、興味があれば詳しく学んでください。本の紹介ではありませんが、「ゼロからわかるビジネス数学」(日本経済新聞出版社)などがあります。