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後継者選び

おはようございます。

稀代の名経営者ほど『後継者』が決まりません。日本電産永守重信会長、ファーストリテイリング柳井正会長、ソフトバンクグループの孫正義会長を例に挙げます。

永守氏は職業訓練大学校電子科卒で音響機器のティアックに就職、28歳で日本電産を創業し、「ヒト、モノ、カネのどれをとっても大企業には勝てる要素はない。あるのは平等に与えられた24時間。だから競争相手の2倍働く」とがむしゃらに働き今日の日本電産を作り上げました。人の採用方法もユニークで「食事が早ければ仕事も早い」と試験会場で弁当を先に食べ終えた順番で採用したり、「大声テスト」や「便所掃除」で人を選んだりしました。そして採用した人を「叱ったり、怒鳴って、ボロクソに言って、皆の前で恥をかくことによって闘争心や反発心を呼び起こす」方法で育てたと言います。永守氏は後継者にも自分と同じようなたたき上げの人材を求めているのです。

柳井氏は、早稲田大学卒業後ジャスコ(現イオンリテール)に入社、9か月後に退社し父親が経営する紳士服小売りの小郡商事に入社します。しかし、青山やAOKIといった郊外型紳士服店の影響を受けるようになったことからカジュアル衣料の販売を思いつきユニクロへと発展していきます。柳井氏は「支持されるリーダーというのは好き嫌いではない。この人の言うことなら聞いてもいいと思える人。そのためには部下に具体的で的確な指示を出せなければなりませんね。経営はぼんやりとした概念や方針じゃ回りません。具体性、個別性がないと経営は上手く行かない」と言っています。柳井氏も自分と同じような人材を後継者に求めています。

孫氏は、カルフォルニア大学卒業。大学時代に自ら開発した自動翻訳機をシャープに売り込み1億円を手にします。コンピュータ卸業を手始めにアメリカのヤフーへの投資、合弁で日本法人のヤフーを設立し大成功をおさめます。その後日本テレコムを買収し通信事業への布石を打ち、ソフトバンクグループを作り上げていきます。孫氏には、壮大なビジョンを掲げてそれを達成するために全力を傾ける人というイメージが出来上がります。後継者にも自分と同じスーパーマン級の理解力、洞察力、実行力を求めているはずです。

彼ら三人は、世襲を求めていません。永守氏は「同族会社を否定しているので息子には譲らない」といい、柳井氏も「絶対に世襲はない」と公言し、孫氏も「60代で引退する」と語っています。

しかし、後継者をサラリーマンの中から選ぶのは至難の技です。永守氏、柳井氏、孫氏のようなスーパーマンはサラリーマンの中にはいません。もしそのような人物がいたなら自ら起業して第二の永守氏、柳井氏、孫氏になっているはずです。オーナー経営者の場合、自分の立場は盤石でリスクをとって思い切った決断ができますが、雇われ社長の場合リスクの大きい決断をしたらオーナーに解任されるのではないかと恐れ当たり障りのない決断しかできなくなるのです。

その意味では、世襲というのも後継者選びの一つの選択肢です。例えば、トヨタ自動車豊田章男社は2009年に社長就任後長期政権を樹立し大きな改革を進めていて、世襲の成功例でしょう。

中小企業の場合、どうしても後継者を世襲あるいは身内からというケースが多くなります。この場合、しっかりとした後継者を育成しないと会社の存続、成長が望めません。

中小企業、特に小企業の場合、いきなり息子(後継者)を部長・専務あたりの役職につけ、次期社長にするというケースが見られます。しかし、中小企業の経営者にとって必要なものは現場感覚です。後継者でも、現場から段階的に役職を上がっていく必要があります。ただ、一般の従業員は各駅停車でいいでしょうが、後継者は特急で全速力で上っていく必要があります。後継者にはその心構えが大事です。また、いきなり後継者に専務なり部長という役職を与えると、従業員特に古参の従業員から「いきなり部長(専務)か、現場も知らないのに偉そうにして」みたいな反感を買います。取引先や金融機関との関係も同様です。いきなり役員にすれば、社長の息子だという風を吹かし横柄な態度をとるようになります。20代は現場で、20代後半から30代前半は管理者、30代後半は役員、40代で社長職という流れが理想でしょう。ヒラ→主任→係長→課長→部長→役員→社長というように段階的に経験を積ませ昇進させて後継者を育成しましょう。

後継者にとって現場の経験が大事だと言いましたが、現場感覚だけでなくスキルアップが必要です。技術的なことは言うまでもなく、より人間的なスキルアップが重要です。

同じ後継者の人との接触、他業種の人との交流などで人脈を広げることも大切です。その中から多く学べることがあるはずです。すぐには仕事に結びつかないかもしれませんが、人間的な成長にはきっと役立つはずです。ただ、くれぐれも付き合ってマイナスにならない人を選ばなければなりません。