中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

中小企業経営のための情報発信。中小企業から日本を元気に

休日の本棚 モチベーション・リーダーシップ

おはようございます。

今日は、小笹芳央著「モチベーション・リーダーシップ 組織を率いるための30の原則」(PHPビジネス新書)を紹介します。
この本は、「リーダーシップとは、決して天性のものではなく、磨こうと思えば磨くことができる」という考えのもとで、「モチベーション」を切り口にして、実践的な、今すぐ効果の出るリーダーシップの考え方やノウハウを30の原則で説明しています。
リーダーたちは組織を活性化するため、組織を変革するため、組織の競争優位を確立するために真剣に悩み、苦悶しています。そして彼らは孤独です。こうしたリーダーと接する中で、著者はリーダーシップについて次のような考えに至りました。
Ⅰ:リーダーシップは、内部環境であるメンバーや外部環境であるマーケットの相互作用である。リーダーシップだけを切り離して「正しいリーダーシップとは?」を考えても意味はない。求めるのは内外環境に即した「適切なリーダーシップ」である。
Ⅱ:「適切なリーダーシップ」を発揮するための原理原則が存在する。リーダーを取り巻く内外環境は、一定の法則に従って変化する以上、この環境変化に適応していかなければならないリーダーシップにも原理原則があるのである。
Ⅲ:リーダーシップは、天性の資質で決まるものではなく、スキルである。原理原則を知り、実践で鍛えれば確実に伸びる。
Ⅳ:リーダーシップは、立場や役割を超えた行為である。ある状況下でリーダーシップを発揮する人がリーダーであり、「マネジメント」とは異なる。
この本では、リーダーシップをモチベーションを主な切り口として論じています。つまり、モチベーションや影響力という観点を中心に置き、リーダーシップを「ある一定の目的に向けて人々に影響を与え、その実現に導く行為」と定義づけているのです。
この本の構成は、第1章から第5章までの5章立てで、その中で計30の原理原則が挙げられています。
第1章 リーダーシップの条件ーどうすればメンバーを統率して、成果を上げることができるのか
原則1 イカンパニー リーダーは「自分株式会社」の経営者というスタンスをもつ――優れたリーダーは、強い自立心を持ち自分自身を「自分株式会社=アイカンパニー」の経営者ととらえ、日々経営努力を積み重ねてエクセレント・カンパニーを作ろうとする。
原則2 ビジョン わかりやすく魅力的なビジョンを描く――ビジョンがなければ、人を導いたり束ねたりはできない。人を魅了し、人のエネルギーを引き出すような迫力のあるビジョンは、リーダーの「内的体験」から来るものである。
原則3 葛藤 芸術的センスを発揮して対立事項を統合する――リーダーには①効率VS感情 ②受容VS支配 ③短期VS長期 ④論理VS感覚 ⑤分化VS統合 という5つの葛藤がある。リーダーは一定の成果を出すために、互いに相克する対立時効を統合していく活動がリーダーシップであり、それは芸術的活動とすら言える。
原則4 影響力 5つの影響力でメンバーを動かす――ビジョンを描き、その実現のために様々な矛盾を統合することがリーダーの使命である。自らの責任において決断を下し、成果に向けて組織を導く。その際、リーダーにとって不可欠なものが「影響力」であり、①専門性 ②人間性 ③返報性 ④一貫性 ⑤恐怖心 と言う5つの影響力の源泉がある。リーダーはこの5つの影響力を持ち、それを高いレベルで保持しなければならない。
原則5 スイッチ 「スイッチ法」でメンバーの行動を変える――優秀なリーダーはメンバーから望ましい行動を引き出すために彼らに新たな気付きを与える「スイッチ法」を活用し、彼らに変化のきっかけを与える。スイッチ法には①タイムスイッチ(時間軸を切り替える) ②ズームスイッチ(メンバーの視界を切り替える)③ゴールスイッチ(目的・目標に立ち返らせる)④ロールスイッチ(違う立場や役割を経験させる)の4つがある。
原則6 マネジメント 4領域のマネジメントでリーダーシップの成果を高める――組織の成果を最大化するために、「環境」「モチベーション」「ルール」「コミュニケーション」という4つの領域でマネジメントすることが大切である。
第2章 環境をマネジメントする―リーダーは環境とコミュニケートしなければならない
原則7 メッセージ ビジネスとは、つまり「コミュニケーション活動」――リーダーシップを発揮し組織を一定の方向に導く行為自体も、他者との影響関係を育むことに他ならない。リーダーシップも突き詰めるとコミュニケーション行為であり、ビジネスは環境との間で価値を交換することと考えると、これもまたコミュニケーション活動である。
原則8 選択と集中 多様なマーケットニーズに応えてはならない――リーダーが行うべきは、すべての顧客の多様なニーズに対応することではなく、①多様化しているニーズの中から自分たちが対応するニーズを取捨選択すること ②多様化しているニーズを統合して1つのコンセプトに束ねることである。
原則9 オンリーワン オンリーワンのポジションを追求する――リーダーは「低コスト」「高価格」「大量販売」を実現するために、市場においてオンリーワンのポジションを追求する、言い換えれば、オンリーワンのメッセージを発信しなければならない。
原則10 リーダーシップ・スタイル 「農耕型」と「狩猟型」を使い分ける――正しいリーダーシップというのはあり得ない。環境との間で適切なリーダーシップを発揮するように努めるべきである。リーダーシップのスタイルを決める要因として「メンバーの特性」は重要だが、同じように「市場環境の特性」も重要。リーダーは常に環境変化に敏感でなければならない。自分が向き合っている環境が農耕型か狩猟型か複合型かを見極め、状況に応じて、環境にマッチした采配を振るわなければならない。
原則11 シフトチェンジ 組織内のモチベーション不全症を克服する 企業は草創期→拡大期→多角期→再生期という発展段階をたどる。企業のステージ変化はリーダーシップの真価が問われる場面である。企業の成長プロセスの移行期には、様々な問題が起こるため、強いリーダーシップを発揮して、シフトチェンジを成功させなければならない。
 原則12 顧客価値 顧客の購買モチベーションを誘発する――商品やサービスにどのような特徴を持たせ、顧客のどの購入モチベーションを誘発するかによって、リーダーの内部組織へのアプローチは大きく変わる。
第3章 モチベーションをマネジメントする―メンバーにとって魅力的な目標や報酬は何か
 原則13 マーケティング メンバーのモチベーションをマーケティングする――リーダーに求められるのは、モチベーションマーケティングによって、メンバーが組織に「何を求めているか」「何に満足して何に不満を抱いているか」というモチベーションの方向や強弱の状態をしっかり把握することである。
原則14 入口 マネジメントで共感の接点をつくる――「組織の入口管理」エントリー・マネジメントは、具体的には、人材採用において、組織と個人が「相互理解」を図り「相思相愛」の状態に至るようなオープンなコミュニケーションを行うことである。リーダーがリーダーシップを発揮するための環境を整えたいと願うなら、エントリーマネジメントに十分な時間やコストをかけて、人材との間で確固たる「共感の接点」を作り出すことである。
原則15 出口 イグジット・マネジメントで組織を活性化する――エントリー・マネジメントが「関係構築」のマネジメントなら、㋑疑似っと・マネジメントは「関係解消」のマネジメントである。環境変化の激しさが増す時代においては、「組織の新陳代謝」は重要な経営テーマであり、イグジット・マネジメントによる適切な代謝促進で企業組織を息づかせることが重要である。
原則16 モチベーション・メカニズム モチベーション・クリエイターになる――リーダーには組織の入り口と出口という境界線のマネジメントを強め、メンバーのモチベーションの方向性や強弱に関してマーケティングを行うことが求められる。最終的にリーダーに必要なのは、一人一人のメンバーのスキルを高め、そのスキルが最大限に発揮されるようにメンバーのモチベーションを誘発する具体的技術である。メンバーが「やりたい」と思えるような目標を設定してやること、メンバーがどうしても手に入れたいと思う報酬を設定してやること。そして、メンバーが目標を達成できる可能性を高めてやること。これがモチベーション・クリエイターとしてのリーダーの役割である。
原則17 目標 4つのモチベーション効果で「目標の魅力」を高める――目標の魅力を高めるには4つの処方箋・モチベーション効果がある。それは①ラダー効果(上位の目的を示すことで義務を意味づける)②オプション効果(自己選択の機会を増やす)③サンクス効果(貢献実感を持たせる)④スポットライト効果(個人が表彰される機会、名前を刻む機会を設ける)である。
原則18 可能性 4つのモチベーション効果で「達成可能性」を高める――達成可能性を高める処方箋・モチベーション効果も4つある。それは①マイルストーン効果(途中目標を明確に設定する)②フィードバック効果(取組みや結果を評価する)③ロールプレイング効果(役割演技で視点を移動させる)④ナレッジ効果(専門家や経験者からの伝授、ノウハウを共有する)がある。
第4章 ルールをマネジメントするールールを使ってメッセージを伝える
原則19 メディア 意図を伝えるメディアとしてルールを活用する――ルールは、個々人の活動をある方向に規定するため、組織内の複雑性を縮減するために設けられるものであるが、「リーダーの意図をメンバーに伝えるメディア」という役割がある。様々なルールを活用することで、リーダーは隅々まで自らの意図、舵取りの方向を示すことができる。組織を変革したい場合には、様々なルールを互いに矛盾を生じさせることなく一斉にある方向に改定することで、メンバーの思考や行動を変化させることができる。
原則20 ブレイクスルー ルール・マネジメントで発展段階をブレイクスルーする――組織を変革させなければならないステージでは、強いリーダーシップを発揮することができるか、そしてブレイクスルーを実現できるかにリーダーの真価が問われる。無用な混乱を避けるために、リーダー自身が新たなビジョンを指し示し、変革が実現できた時の理想の状態を語り続けることで、「変革への疑心暗鬼い」「変化を恐れるゆえの抵抗」を最小限に食い止める。
原則21 適材適所 業務特性とメンバーの指向をマッチングさせる――リーダーの葛藤はビジョンに向けた「組織としての最大効率の追求」と「個々人のモチベーションの極大化」という対立時効の統合である。この2つの相反する事項を同時に実現させるために「適材適所」を追求すること、つまり個々人のエネルギーを最大限引き出せるようにメンバーの役割をデザインしなければならない。
原則22 ポートフォリオ 欲求タイプと報酬内容をマッチングさせる――4つの欲求特性(①ドライブ欲求 ②ボランティア欲求 ③アナライズ欲求 ④クリエイト欲求)に合わせてメンバーへの報酬をデザインする。自分が率いる組織が、どんなポートフォリオで成り立っているのかを分析し、環境に照らして適切なのかを問う、更には、彼らのモチベーションを誘発する報酬要素と現在の方異臭内容は間っ死しているかを見直すことが重要である。最適な人材ポートフォリオの実現は、生産性の向上と報酬原始の節約という効果をもたらす。
原則23 罠 ルール・マネジメントの3つの罠に注意する――ルールはリーダーの意図を伝える絶好のメディアであり、ルールを上手くマネジメントすることでメンバーの思考や行動を望ましい高校に変え組織の成果を高めることができるが、ルールにおもデメリット・リスクがある。ルールに隠されている3つの罠は「不透明性」「非効率性」「硬直性」である。これらの罠にはまらないようにルールをうまく活用しなければならない。
原則24 信頼 精緻なルールを作るよりも信頼の創造に努める――ルールの根底には信頼というインフラが不可欠であり、そのインフラがアプリケーションとしてのルールの成否を決める。ヒトを惹きつけるリーダーはルールでメンバーの思考や行動を制御するのを最低限にとどめる。信頼関係をもとに組織メンバーを制御できるような関係づくりに多くのエネルギーを費やす。
第5章 コミュにおケーションをマネジメントする―情報流通経路のデザイナーとしての役割を果たす
原則25 間 「間」に生ずる問題を解決する――リーダーは「間」に生じている問題をいち早く発見し、その「間」に良好な関係を回復させるべくコミュニケーション機会を作らなければならない。
原則26 血流 コミュニケーションという組織の血流を止めない――組織の活動効率とメンバーのモチベーションは、その組織の中を血液のように流れるコミュニケーションのコンテンツによって大きな影響を受ける。
原則27 報酬 コミュニケーション報酬を提供する――メンバーは「構成員として組織への貢献活動を行う見返り」として「個人の欲求を満たせるだけの報酬」を求める。報酬がメンバーにとって満足できるものならば、貢献活動へのモチベーションは最大限に引き出せるし、不満足なものであればそのモチベーションを喚起することはできない。働き甲斐を実感させてくれる「コミュニケーションを報酬と捉える」この新しい発想が組織の活力を生み出すと同時鬼リーダーシップの成果を大きく左右する。
原則28 言葉 自らの「言動」と「新たな言葉」で組織を変える――組織の変革の原動力となるのは、リーダー自身が言動を変えることと、新しい言葉を創造することである。リーダーは、言葉の威力を知り、変革に望ましい新たな概念を組織内に定着させるように努めなければならない。
原則29 契機 「変革の契機」を積極的に作り出す――優秀なリーダーは常にきっかけを探している。光の当て方によってあらゆるぞ症を経んj核にできることを知っているからだ。
原則30 変革 臨界点を超えるまで徹底する――リーダーは変革への第一歩を踏み出した後、臨界点を超えるまで決して歩みを止めないことだ。そうして初めてダイナミックな組織変革を味わえる。
この本はビジネスリーダーをターゲットとして書かれていますが、ビジネスだけでなく、政治をはじめあらゆる分野の組織においても同じ原理原則が妥当するように思います。リーダーになろうとする人は、この本に挙げられている「リーダーシップの原理原則」を理解し、それを実践してスキルを磨くことです。