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動かない部下へのマネジメント

おはようございます。
かつては部下の育成・指導は、会社が進むべき方向が明確で、モデルとなる上司像もはっきりしているため、上司の背中を追いかけていくだけでキャリアアップが可能で、会社の成長とともに社員の昇格や待遇アップも約束されているという状態でした。しかし、バブル崩壊後は日本全体がほとんど経済成長しない時代になり、右肩上がりの会社の成長もなくなりました。経営環境が厳しくなると、自分の姿勢を見せるだけでは部下はなかなか危機感を感じて迅速に行動してくれません。動かない部下へのマネジメントをどのように行うべきかということが問題になってきます。
企業や組織の競争力を決める最大のキーワードは「エンゲージメント」です。「エンゲージメント」というのは従業員満足のことです。
労働環境・上司と部下の良好な人間関係・福利厚生などの面から見た職場の居心地の良さを示す言葉ですが、社員個人と会社組織の成長が一体となっていると感じる状態と言ってもよいでしょう。会社の成長のために社員の成長やスキルが犠牲になってはいけませんし、組織の成長に貢献しない個人の成長であってもならないのです。
しかし、日本全体の経済成長が難しく、会社の成長が見込めないところでは社員のモチベーションを上げていくことが難しくなります。アメとムチで部下のモチベーションを上げていくという従来型のマネジメントとでは社員は動かなくなります。現在の社員の多くは、「社会にいかに貢献しているか」「自分の成長やキャリアップにどれだけつながるか」を仕事の生きがいと考えており、やりがいが感じられない仕事には積極的に取り組まなくなっています。目標や実績、それに対応する人事評価や処遇といった要素だけでは動かなくなってきいるのです。そのために、会社が目指す方向と部下の担当する仕事が、いかに社会に貢献するものか、いかに部下自身の成長やキャリアアップにつながるかを、自分の言葉で丁寧に伝えることが必要です。ここでも必要なのはコミュニケーション力です。コミュニケーション力を高めることが重要です。コミュニケーションというのは人と人との関係で成り立つものです。そのためにも、普段から部下がどのようなことに興味関心があり、何がモチベーションを上げるかを知っておくことが大切になります。
また、部下一人ひとりの強みを把握し、それをさらに磨くことが成果を上げ、どのように組織に貢献できるかを示す必要があります。ここでも、部下の現状を細かく知るために雑談を含めたコミュニケーションが重要です。
かつての管理職と今の管理職とでは、以下の3つの社会変化が起きているために、その負担やマネジメントの難しさが大きく増加しています。
1.情報社会になったことで経営トップから新人社員まで情報格差が少なくなったこと
 かつては会社の上層部ほど重要な情報を持っており、それを中間管理職への指示を通じて全社員に少しずつ伝えて浸透させるという方法が採られていました。しかし、現在は、インターネットの普及により組織内の「情報のフラット化」が進みました。そのため「情報を小出しにして部下を従わせる」というマネジメントは成り立たなくなってきています。しかし、インターネットの情報には偏りがりフェイクもあることからビジネス書での最新のテーマで体系的な知識を得ることと、新聞・経済誌などの情報もチェックするということが必要です。アナログとデジタルの情報をバランスよくとることが重要になります。
2.経営環境の変化が早く激しい「先の読めない時代」になり、正解が分からない
 先が読めない時代にポイントとなるのは「仮説を立てること」です。予め絶対の正解が分かるという場面は少ないので、7割程度は正しいだろうという仮説を立て、行動してみる、やってみて結果を検証しながら上手くいかなかった部分を修正するということが必要になります。先が分からず、急激に変化する社会環境の下では、PDCAを高速で回し早く結果を出すということが重要になります。そのために指示待ちするような人材ではなく、自分から考えて仮説を立て、まずは動き出すことができる人材が求められる時代になっています。
3.ビジネスモデルを根本から変えるイノベーションが求められている
 「デジタル・ディスラプション」という言葉がありますが、これは、デジタルの進展が既存のビジネスモデルを破壊してしまうほどの影響を及ぼすことを指す言葉です。こうした状況はどのような業種や会社でも起こり得ます。それをできるだけ早く予測し、イノベーションを起こしていくことが生き残りの条件にもなってきています。イノベーションの鍵の一つは組織内における多様性です。マネジメントの観点から見れば、組織のメンバー一人ひとりの個性や独自の強みをいかに発揮してもらうかが重要になります。インターネット情報では、自分がよく見るコンテンツによって似たコンテンツばかりがリコメントされ、似たような情報ばかりが上位に表示され、情報の偏りが起きるのです。多様な価値観をぶつけ合い議論するということが重要になります。
あるアンケートによれば、コロナ禍で経営者が社員に習得してほしいスキルトップ3は
第1位 チーム力(周りと協力する力)
第2位 業務遂行力
第3位 多様性・困難を乗り越える力
となっています。「困難を乗り越える力」を求める理由として「様々なことが不確実で、未来が予測できないから」「以前の常識が常識でなくなる可能性があるから」が挙げられています。
個人の成長が企業の成長につながります。チーム力、業務遂行力、多様性・困難を乗り越える力は、コロナ禍で最も重要なスキルです。このようなスキルを持つ人材を育成することが企業に求められますが、その根底にあるのは、上司と部下との人間関係、コミュニケーションにあるように思います。