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経営理念を浸透させよ!

 
企業におけるビジョンやミッションの重要性はこれまでにも触れてきましたし、以前紹介した「パーパス経営」でも企業の「パーパス=存在意義」を明確に再定義することの重要性を指摘しました。
本当に企業がビジョンやミッションを明確にできているかは疑問ですが、このあるアンケートで、企業の70.1%が「ビジョン・ミッションを明確化できている」と回答しています。しかし、従業員にビジョン・ミッションが浸透しているかどうか聞いたところ、「従業員に浸透している」と答えたのは「ビジョン・ミッションを明確化できている」と回答した企業のうち22.7%にしかすぎません。
経営者経営トップがビジョンやミッションを明確にしていても、従業員に浸透していなければ何の意味もありません。
今は、環境が激変し先行きが見通せず何が正解かわからない時代です。また、価値観や考え方も様々で多様性の時代でもあります。このようなVUCAの時代、多様性の時代に、社員全員が一致団結して進んでいくためには、ビジョン、ミッション、更にはパーパスを明確にして全員がそれを共有していくことが不可欠になります。従業員がビジョンやミッション、パーパスを共有し「腹落ち」できていなければモチベーションも高まりませんし、組織やチームの生産性向上・成長にもつながりません。
1.理念の浸透
 ビジョンやミッションの浸透には、2つのパターンがあります。その1つは、組織の規範に個を染めていく「組織統合型」、これはトップダウン型と言えます。もう1つは、この確立を促したうえで自由に振る舞えるようにする「自立支援型」で、これはボトムアップ型と言えます。
 先日もトップダウン型組織とボトムアップ型組織のメリット・デメリットで書きましたが、どちらが正解かというのは一概に言えません。それぞれの企業文化や風土に合わせて違ってくるように思います。ただ、両者を上手く使い分けながら行っていくのがいいのではないかと考えています。
 ビジョンやミッションをつくるのは経営者や経営トップです。経営者や経営トップが作った企業理念を中期計画や年度計画につなげ、それに基づいて役員が目標を設定します。さらにこれを全社に公表し、部長陣がこれに基づいて部門の目標を、更には課長陣も同じようにチームの目標を、とつなぎ、個々のメンバーの目標へとつないでいきます。これはトップダウンです。一方で、一人ひとりが「何がやりたいのか」を明確にしてこれを表明する機会を設け、それを上へとつなげていく。これがボトムアップです。
 以前「SF思考」の時に書きましたが、「自分は何のために働くのか」という意思が明確でないまま、上から降りてくる仕事だけこなすのでは、変化はありませんし成長もできません。「何がやりたいか」という意思がなければ前に進めません。
 ビジョンやミッションといった企業の理念は、抽象的な文言で書かれることが多いのです。従業員にとっては、抽象的すぎて日々の業務とはかけ離れてしまうことになります。そのためにビジョンやミッションをより現場に近いところに下ろしてくる必要があります。経営者から役員、部長、課長と下へと順次下ろしてくることで、具体的になり現場との距離が縮まります。そうすれば、個々人が「何がやりたいのか」という意思を明確にできそれにつなげることが出来るのです。
 トップダウンの「組織統合型」でも、ボトムアップの「自立支援型」でもどちらかだけでは中途半端なのです。両者がうまく回ってこそ、ビジョンやミッションといった企業理念は全従業員に浸透するのです。
2.経営理念と人事
 個々人の「何をやりたいのか」という意思を上につなげていくためには人事部が重要になってきます。経営理念を最もイノベーティブに体現しているのは人事部でなければならないのです。
 経営理念は、VUCAの時代、多様性の時代において、益々重要性を帯びてきます。企業はメンバーシップ型からジョブ型へ、プロジェクト型などの組織形態へと広がり、今後は独立して働く人も増えてきます。働き方が多様化する中で、企業が個人を引きつける最も重要な要素は、「ワクワクするビジョン」です。以前何度も書いています「ぶっ飛んだ目標」です。
 人事が組織に理念を浸透していくために、一人一人との社員との面談や採用などの地道な活動を通じて、上からの理念の浸透と、下からの意思の引き上げを行う必要があるのです。人事部が、トップダウンの終着点であるとともにボトムアップのスタート地点でもあるのです。