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部下に対する質問方法

おはようございます。
これまでも部下の育成に関して書いてきました。部下の育成方法もさまざまです。中には、「部下の指導・育成は上司の仕事ではない」というのまであります。確かに、上司も自分の仕事を抱え、部下の指導にのみ関わっているわけにはいきません。しかし、自らが率いる組織やチームが成果を挙げなければなりません。そのためには部下が成果に貢献できるように指導・育成することが不可欠です。
今回のコロナ禍で、テレワークやリモートワークがニューノーマルとなれば、『空気を読む』『阿吽の呼吸』が難しくなれば、適切な言葉に落とし込む力(言語化力)とパワフルな言葉で問いかける力(質問力)の必要性はますます高まっています。テレワークやリモートワークでなく出社形態の勤務においても、言語化力や質問力は上司・リーダーには必要なスキルです。
部下の育成においても、上司が正解を教えるのではなく考える道筋を与えることが重要です。そのためには部下の話を聞き、適切な質問を繰り出してその回答を考えさせる中で部下自身が自ら成長できる環境を作ることです。部下自身が自分で考え行動できる環境を整えることで、部下の力を引き出し成果を出すことができるのです。
そのためには、部下の力を引き出し、部下自身が自ら成長できる質問の出し方が重要です。
メンバーの状況や業務に応じたパワフルな問い、言い換えれば思考を深めたり議論の流れを変えたりできるような適切な問いを発することが大切です。この「パワフル・クエスチョン」の素が誰でも知っている「5W1H」に詰まっていると言っても過言ではありません。
5W1Hをマネジメントで効果的に使うためのポイントは、1つ一つの意味(本質)をしっかりと理解することです。その上で、部下の視点、意見、提案に対し、
・When(時間・過程軸)・・・「時間的インパクト(変化)」を問う。
・Where(空間・場所軸)・・・事象の「全体像・重要箇所」を問う。
・Who(人物・関係軸)・・・明確な「ターゲット」の視点を問う。
・Why(目的・理由軸)・・・より上位の「目的・未来の姿」を問う。
・What(自称・内容軸)・・・「だから何?違いは何?」を問う。
・How(手段・程度軸)・・・「施策の判断基準・実行の難所」を問う。
部下とのやり取りも、「どう思う?」ではなく、以上の6つの軸に則った質問を繰り返すことで部下に考えさせることが重要です。部下にさまざまな思考を促す問いかけが必要なのです。
そう言っても、現場では中々うまくいきません。うまくいかない原因は、その問いかけが ①「質問」ではなく「尋問」「詰問」になっている 答えにくい「質問」になっている からです。ここで重要なのは「Why?(なぜ?どうして?」です。いきなり「なぜ?どうして?」と問いかけられても、聞かれている方はそれを「尋問」なり「詰問」ととらえ、何をどう答えればいいのか分からなくなってしまいます。
こうしたマネジメント方式では、長期的にはメンバーの自主性や自律性をそぐことになり、上司の気にいるような独創性のない「正解探し」にばかり走ってしまいます。これでは部下を育てることにはなりませんし、成果を上げることもできません。
問題解決の場面では、「原因探し」の前に「場所探し」、つまり「Why?」という原因追及の前に「Where?」という場所探しから入ることがポイントとなります。
「なぜミスが起こったのか」を問う前に「ミスの発生場所はどこか」、あるいは「どうして売り上げが落ちたのか」を問う前に「売り上げのどの部分が特に落ちているのか」を問うことです。つまり問題の所在を様々な切り口によってできる限り特定するということを先に行うのです。
「なぜ?なぜ?」と原因ばかりを問い詰めるのではなく、「どこ?なぜ?」と部下の思考を深めて問題解決を促していくことこそが重要です。
話は変わりますが、トヨタでは通常の5W1Hとは異なる5W1Hがあります。これは「Why? Why? Why? Why? Why? How?」です。ひたすら「Why?なぜ?」を問い続けるのです。これは徹底して原因を突き止めることを目的としています。徹底して原因追及(Why)することで本当の原因を洗い出し、真の対応・解決方法(How)が明確になるというものです。
このトヨタ式5W1Hは、クレーム対応や組織・チームの問題解決の場面では、全社員に問いかけることで「Why?」を徹底的に集めることができ、それらを検討することで真の解決方法(How)が見つかることにつながります。一方で、部下個人の状況や問題解決には普通の5W1Hが有効だと思います。先ほども書きましたが「Why?」を連発すれば部下は「詰問」されているように感じ委縮します。この場合には「Where?Why?」という問いかけが有効なのです。
このように考えると、普通の5W1Hとトヨタ式5W1Hをうまく使い分けることが重要ではないかと思います。