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休日の本棚 本当に使える戦略 使えない戦略

おはようございます。

今日も過去に紹介した本のブログを貼り付けます。

若干古い本ですが、山田修著「本当に使える戦略 使えない戦略」(ぱる出版)です。1今でも十分に役に立ちます。「久々に面白いビジネス書を読んだ」「絶対おすすめ」「これまでの常識が一変した」などとの反響を呼んだ名著です。著者の山田氏は外資4社、日本企業2社の社長を務め「企業再生経営者」と評された人物です。机上で経営学を研究してきたのではなく実践で鍛え上げられた見識は素晴らしいものがあり、実際の経営に役立つと思います。

山田氏によれば、経営セロリーには流行りがあり、流行って人気のあるセオリーでもすべてが正しいわけではありません。どこかに偏りがないか、実際のビジネスにそぐわないところはないか、そんなところに気をつけながら理解しながら学ばなければならないのです。

使える戦略として挙げられるのが、「バーニーの経営資源」「ストーリーとしての競争戦略」「ランチェスター戦略」です。

バーニーの経営資源論(RBV)」は、新しい経営資源の獲得や追加がその企業に次の段階の発展をもたらすという構造があります。その判断に使われるのが「VRIOフレームワーク」です。

V=Value(経済価値)、R=Rarity(希少性)、I=Inimitability(模倣困難性)、O=Organization(組織)の4つの条件で判断します。本書ではユニクロの成功とコダックの倒産が例として挙げられ説明されています。

ストーリーとしての競争戦略」は以前から紹介しています楠木建氏の本を基にしたコンセプト経営です。ここでは星野リゾートが例として挙げられています。

ランチェスター戦略」も以前から紹介している日本流「選択と集中」です。これはランチェスターの法則を応用したもので、弱者の戦略と強者の戦略があります。弱者の法則では、弱者は強者の手薄な地域や市場セグメントにマーケティング手段を集中したり差別化を徹底司し強者との直接対決を避け、強者の法則では、強者は全国地域や全セグメントで戦い物量にものを言わせた広域戦で戦います。これは田岡信夫氏が唱えた和製戦略です。

使えない戦略として挙げられているのが「エクセレント・カンパニー」「コア・コンピタンス」「ビジョナリー・カンパニー」「ブルー・オーシャン」「ゲーム・セオリー」です。

この中で「エクセレント・カンパニー」と「ビジョナリー・カンパニー」は実際に成功している企業を抽出して、共通的な経営行動を観察することで有効な戦略を読み取ろうとするものです。これらの企業が長期的に反映していたかというとそうではなくこれらの本に挙げられていた企業の中には既に姿を消しているものも多数あるのです。成長し反映している企業をまねるということは別段悪いことではありません。真似ることで成長できる面もあります。問題はこれらの本が「良い経営をするために重要な経営行動はこれだ」と決めつけてしまったことです。

コア・コンピタンス経営」にしても「ブルー・オーシャン戦略」にしても、それ自体が間違っているわけではありませんし、全く使えない役に立たない戦略かというとそうではありません。私自身の考えは山田氏とは若干異なります。これらも使い方によっては十分に役立ちます。「中長期的に戦っていける中核的能力(コア・コンピタン)を養え」とか「競争という殺戮が絶えないレッド・オーシャンにとどまっていないで、真っ青な美しいブルーオーシャンに出よ」という表面だけをとらえるところに問題があります。自社が「コア・コンピタンス経営」や「ブルー・オーシャン戦略」に向いているか個々的に判断しなければいけないのです。

すべてのセオリーが自社に向いているということはありません。戦略やセオリーに向き不向きがあります。ある企業には使えない戦略も別の企業では使える戦略になりえます。

また、使えるとしても限定的な戦略として「ポーターの競争戦略」「クリステンセンの破壊的技術」「ウェルチ選択と集中」が挙げられています。

「ポーターの競争戦略」については以前触れましたが、ポーターの競争戦略は競争要因を分析し、競争上有利なポジショニングを見つけることに主眼が置かれています。ファイブ・フォース分析などフレームワーク化されモデル化されているために使い方自体が限定的になります。しかし、すべての戦略理論は限定的です。

クリステンセンの破壊的技術」も「イノベーションのジレンマ」に触れた際に説明しました。これも限定的なのは当然です。

「ウェルチの選択と集中」についても以前に書いています。「ナンバーワン、ナンバー2戦略」や手掛ける事業領域を極端に絞り込む戦略は当時のGEには有効でしたが、それがすべての企業に有効かというとそうではありません。

どのような戦略もすべての企業に有効というものはなく、自社の適した戦略をとるしかないのです。

本当に使える戦略か使えない戦略かは一概には言えないのです。企業や業界によって異なります。自社にとってどのような戦略が適しているか、向いているか、役立つかを知るためにもいろいろな戦略に目を向けておく必要があります。そのために本書は参考になるでしょう。