中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

中小企業経営のための情報発信。中小企業から日本を元気に

休日の本棚 経済学的思考のセンス

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で3574人、そのうち東京1128人、神奈川547人、埼玉345人、千葉301人、愛知69人、大阪283人、兵庫71人、京都34人、福岡99人、沖縄99人、北海道118人などとなっています。検査数の少ない休日のデータとしてはかなりの数字で深刻な状況です。五輪関係者からも毎日のごとく感染者が出ておりますが、国籍や競技名が公表されないので感染ルートも明らかになりません。穴だらけのバブル方式で、このままでは五輪終了後に全国に感染拡大し、緊急事態宣言を全国的に発令しなければならなくなりそうです。ワクチン接種がスムーズに進行することを願います。私事ですが、昨日2回目のワクチン接種を終えました。自衛隊の大規模接種会場なのでモデルナ製で、1回目の時も腕の痛み・倦怠感が4日続きましたが、今朝から接種部位が腫れ固くなり、腕を上げようとすると痛みが走ります。また倦怠感も1回目の時よりもひどく若干微熱があるように感じます。90歳の両親はファイザー製のワクチンを接種し、特に副反応は見られませんでした。モデルナ製とファイザー製の違いなのか体質なのかわかりませんが、しばらく安静にしていくつもりです。

さて、今日は大竹文雄著「経済学的思考のセンス」(中公新書を紹介します。

著者の大竹氏は、大阪大学社会経済研究所教授で、労働経済学、行動経済学が専攻です。この本は、「お金のない人を助けるには、どうしたらいいのですか?」という小学5年生の問いをもとに、お金がない人を助ける経済学的意味を考える、身近にある経済格差を考えるものです。アベノミクスにより社会が分断され、持てる者と持たざる者に二分化され、コロナ禍でさらにその格差が広がってきているように思います。

大竹氏は、身近にある経済的格差を考えるキーワードは、「インセンティブ」と「因果関係」であると言います。インセンティブというのは誘因、意欲、動機付けのことで、人々の努力を促すために賃金格差を設けているというわけです。努力した人の賃金は高く、努力しなかった人の賃金は低いということなのですが、人事評価が適切でなければ不満を生むだけになります。運・不運による成果の差が努力の差と間違われてしまうリスクが高まるのです。そうなると運・不運のせいだと考える人は努力をしなくなります。また、逆に賃金格差をなくしてしまうと誰も努力しなくなります。所得再分配が難しいのは、このリスクとインセンティブトレードオフがあるからです。

社会にある様々な現象をインセンティブを重視した意思決定メカニズムから考え直すことが経済学的思考法で、そうした経済学的センスを身につけることは日常生活でも役立つはずです。

この本では、女性が背の高い男性を好む理由からオリンピックの国別メダル獲得数まで、私たちの周りにある運や努力、能力によって生じるさまざまな格差や不平等を取り上げ、それを解消する方法を、人々の意思決定メカニズムに踏み込んで考えようとしています。

かつて女性は「三高」を求めました。そのうち高学歴は高収入と密接な関係を持っていますが、高身長と高収入の関係はどうか、これを調査した研究者・大学教授がいます。それによると、身長が1インチ高いとイギリス人男性で時間当たり賃金が22%高くなり、アメリカの白人男性で18%高くなるというデータがあります。また、日本でも大阪大学大学院で同様の調査を行ったところ、学歴・勤務年数・企業規模が同じでも1センチ身長が高いと0.8%給与が高いという結果が出ています。女性は、こうしたことを本能的にわかっていて三高男性を選んでいるのではないかという説もあるくらいです。

次に「美男美女は得か」ですが、これにも研究結果があって、現実に美男美女の方が就職でも給与においても優遇されているようです。そうしたこともあって、女性に限らず男性でも就活前に美容整形を行う人が増えてきているようです。

こうした容貌による格差を是正する方法として、ハーバード大学のハロー教授は、半分冗談でしょうが、「美男美女税」「不器量補助金」などを提唱しています。

また、「いい男は結婚しているのか?」では、いい男が結婚しているかどうかは別として(いい男かどうかの基準があいまいです)、「まともな男は結婚している」「結婚している男は経済力がある」というのは事実のようです。これについては一卵性双生児の兄弟を比較したデータがあり、一卵性双生児全体でみると結婚している方が結婚していない者よりも19%給与は高く、また一組の兄弟で見るとたまたま早く結婚した方が後で結婚した者よりも26%給与が高いということになっています。外見も遺伝子レベルでも能力が同じ二人を比較していることから「給与が高く経済力があるから結婚した」のではなく「結婚によって責任感が生じ労働意欲が高まり生産性が高くなった」のではないかと考えられます。

ちょうどオリンピックが開幕しましたので、オリンピックの国別メダル獲得数について書きます。オリンピックでは毎回各国のメダル争いが関心を呼び、賭けもなされるくらいです。ダートマス大学のバーナード教授とカリフォルニア大学のビューズ教授は、計量経済学的分析により、シドニー・オリンピックの時に予測されるメダル数を発表しました。彼らによると、メダルの獲得を決定する要因は、一人当たりGDPと人口の両方だというのです。それに開催国、旧ソ連・東欧諸国、共産主義国という説明変数が加わります。さらに、一つ前の大会のメダル獲得数の比率を説明変数として加えるのです。しかし、必ずしも彼らの予測メダル獲得数は当たっていません。予測というのは水物です。

そのほかに、本書では、プロゴルファーは賞金が高くなるとモチベーションが上がるとか、若者が年金未納するのは将来受給できなくなる可能性があることに対する若者の逆襲であると書かれています。

そもそも所得格差の拡大は問題でしょうか? ヨーロッパでは不平等感が高まると幸福感を感じなくなりますが、アメリカでは不平等感が高まっても幸福感には影響しないと言われます。それは、アメリカでは所得階級間の移動率が高いので現在貧しいことが将来の貧しさを意味しないからです。日本では、実際それほど大きな格差がないのに関心がもたれているのは、所得階層簡の移動が困難な社会になっているからです。確かに、転職・起業などで新たなチャレンジを行う人は増えてきています。しかし、日本型の雇用形態では、いまだに逆転が難しくなっています。特に高齢者は若年者に比べて、将来の逆転の可能性は低いです。所得階層間の移動が小さくなると、生涯にわたる所得格差はさらに大きくなります。労働市場のさらなる整備と能力開発を促進し、将来逆転が可能な社会にしていくことが急務です。若年層に広がる閉塞感、低所得のフリーターからの脱却できるような仕組みを作らなければなりません。

社会は金銭的インセンティブだけで成り立っているわけではありません。非金銭的なインセンティブも重要で、両者のバランスが大切です。

経済的なセンスを身につけるためにはインセンティブと因果関係の観点から考えていくことが重要なのです。こうした経済学的思考のセンスを身に着けるのに、この本は面白く読めて役に立ちます。

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休日の本棚 成功するための8つの法則

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で4225人、そのうち東京1359人、神奈川652人、埼玉401人、千葉334人、愛知69人、大阪379人、兵庫61人、京都53人、福岡52人、沖縄100人、北海道79人などとなっています。休日で検査数が少ないにもかかわらず首都圏の感染者数は増えています。こうした中、昨日東京五輪の開会式が執り行われました。東京の繁華街の人出は減少したものの、五輪避難で東京から逃げ出した人たちで各行楽地の人出は増加しています。五輪期間中は外出自粛・テレワークと言われていますが、国民の中止の声を押し切りオリンピックを強行開催しながら、このようなことを言っても、誰も聞く耳を持ちません。しかし、こうした行楽地への人流増加が地方へのコロナ感染拡大につながらなければいいのですが・・・しっかりと感染対策を行い節度ある行動をとるようにしましょう。

さて、今日は、リチャード・セント・ジョン著「世界の一流だけが知っている 成功するための8つの法則」(新潮社)を紹介します。著者のリチャードは、成功に関する分析を行うアナリストで、ジェフ・ベゾスビル・ゲイツセルゲイ・ブリンラリー・ペイジなど500人以上の一流の成功者にインタビューを行い、著者がTED(テクノロジー・エンターテイメント・デザイン)カンファレンスで行ったスピーチ「成功者だけが知る、8つの秘密!」がウェブ上に公開されると660万回以上再生されました。このスピーチをもとに書かれたのがこの本です。

リチャードは、500人もの一流の人とのインタビューを通じ、「成功者が共通して行っている習慣があることを知りました。そこから導き出した"成功するための8つの法則“は、どんな分野においても成功の核になるものです」と言っています。

その8つとは何か、各章立てで見ていきます。

第1章 成功者に共通する8つの特徴を身につける出発点 PASSION

情熱は、あなたのスイッチをオンにする。仕事のために早起きも厭わず、夜になってもまだ眠りたくないと思うようになるはずだ。

第2章 汗で溺れた者はいない WORK

一生懸命に働いてかいた汗は成功に向かってあなたを運び、泳がせてくれる川のようなものだ。

第3章 失敗したければ集中しなければいい FOCUS

虫眼鏡で太陽の光を集めたら、燃え出すぐらいのエネルギーを生み出せる。同じ原理をあなたの人生にも生かそう。

第4章 自分を奮い立たせ、内面のバリアを克服せよ PUSH

自分で自分を後押しして、自分の中の境界線を越えよう。限界を越えよう。周囲の予想を超えてしまおう。

第5章 アイデアを生み出す魔法はない IDEA

いくつかのシンプルなこと―問題解決に取り組む、人の話を聞く、観察する、別々のものを結びつける、ひらめきを書き留めておく、真似をする―を実行するのみ。

第6章 自分自身と自分の仕事を改善することが自分を導く光となる IMPROVE

よい仕事をすることに、エネルギーのすべてを注ぎ、継続的な改善を行っていれば、成功や賞、感謝、お金といったものは勝手についてくる。

第7章 成功とは、まさに自分の人生が人の役に立っていると実感することだ SERVE

自分のことは忘れて、仕事をする相手に焦点を合わせよう。相手の立場に立とう。相手の視点に立とう。相手の話に耳を傾けよう。相手のために懸命になろう。

第8章 批判、拒絶、逆行、偏見を乗り越えてやりぬけ PERSIST

短期的にはせっかちに、長期的には辛抱強くなること。それが成功への長い道のりを歩み続けるための戦略だ。

そして、この本の各章ではでは、「成功するための8つの法則」を実行するための91のアドバイスが挙げられています。

1.情熱 自分のやっていることが好きだということ

  • 情熱を注げるものなら必ず成功する
  • どんな分野でも成功者は自分のやっていることが大好き
  • 情熱を注げるものを見つけたら、ダメ人間もデキる人間になる
  • 最大の難関は情熱を見出すこと
  • 天職にはまる
  • 財布に従うな、心に従え
  • 好きなことを追求しろ、お金はそのうちついてくる

2.仕事 成功者(一流の人)は懸命に働いているということ

  • 成功者は懸命に働いている
  • 成功者はワーカホリック(仕事中毒)ではなく、ワーカフローリック(仕事を楽しんでいる)
  • 成功者は仕事を楽しんでいる
  • それは誰にもできる簡単なことではない
  • 成功には長時間の労働も必要
  • 花金(TGIF Thank God It`s Friday)なんてくそくらえ、「自分は今働いている」そのことに感謝を(TGIW Thank God I`m Working)
  • 努力は才能に勝る
  • 成功者は仕事への強い倫理観(価値観)を持っている
  • 懸命に働けば、いつかは必ず報われる

3.集中・・・これをやるんだと決めて、一つのことに集中すること

  • ひとつのことに集中する
  • 最初は広い視野で、そして絞り込んでいく
  • なまかじりはダメ!集中しなさい
  • ひたすら集中
  • 集中するために気が散るものは取っ払え
  • 集中するためには、その対象に興味を持つこと

4.奮起・・・自分で自分を後押しすること

  • 自分を奮起させる
  • 引っ込み思案を克服する
  • 引っ込む事案を克服しながら、その利点は持ち続けよう
  • 引っ込み思案を克服するには、人前へ自分自身を押し出せばいい
  • 自信のなさを克服する
  • 自信のなさをすべて取っ払う必要はない。それは成功への後押しとなることもあるから
  • 自分を奮起させるために―目標を持とう
  • 自分を奮起させるためにー挑戦しよう
  • 自分を奮起させるためにー締切を設定しよう
  • 自分を奮起させるためにー規律を守ろう
  • 自分を奮起させるためにー後押ししてくれる人活用しよう
  • 自分を奮起させるためにー競争しよう
  • 自分を奮起させるために、苦しみを与える人を持とう、そして自分をサポートしてくれ、助言を与える人を持とう
  • 安全地帯を飛び出す

5.アイデア・・・アイデアは心のエネルギーを生み出す泉

  • イデアが成功への道を照らす
  • 誰だって素晴らしいアイデアを思いつくことがある
  • イデアを生み出すためにー問題を抱える
  • イデアを生み出すためにー周囲を観察する
  • 耳はアイデアをつかむためのアンテナ
  • 質問がアイデアにつながる
  • イデアを借り、それを新しいアイデアに組み立てる
  • イデアを生み出しためにーつながりを持とう
  • ミスと失敗が素晴らしいアイデアにつながる
  • イデアは書き留める
  • イデアを生み出す魔法はない シンプルなことを実行するのみ

6.改善・・・常に自分自身と自分がやっていることを改善すること

  • 改善を続ける
  • 自分のやっていることを得意にする
  • どんどん磨きをかける
  • 自分のベストを尽くそう
  • 練習、練習、とにかく練習
  • 何度も何度も繰り返すことが成功につながる
  • 自分の強みに集中しよう、弱点なんて忘れてしまおう
  • 自分の弱点は人に任せよう
  • よい仕事を行うことにエネルギーを注ぎ、継続的な改善を行う

7.人の役に立つ・・・人のために価値あることをする

  • 人のために価値のあることをする
  • 誰のために働くのか?
  • どんな価値を提供するのか?
  • 人の役に立つことをすれば、幸せ・満足・感謝・貢献・承認・豊かな人生が得られる
  • 人の役に立つことをするーそれがお金持ちになる方法
  • お金持ちになるための公式
  • 自分のことは忘れて、仕事をする相手に焦点を合わせよう
  • 相手の立場に身を置こう
  • 相手の視点に立とう
  • 相手の話に耳を傾けよう
  • 大きなエゴを抱えていると、人の役に立つことはできない
  • 相手のために懸命になろう

8.最後までやり抜く・・・粘り強くなる

  • 粘り強くなる
  • どんなに時間がかかってもやり抜く
  • 一夜の成功なんてありえない
  • どんなに失敗しても、やり抜く
  • 失敗から学ぼう 失敗によって自分を葬ってはダメ
  • 大きな成功のためには、大きな失敗をしよう
  • ミスにめげずに、やり抜く
  • どんなに批判されても、やり抜く
  • 率直な批判に注意!
  • どんなに拒絶されても、やり抜く
  • 拒絶を名誉の印と考えよう
  • やり抜くための戦略ー小さなステップを積み重ねる
  • やり抜くための戦略ー投げ出し恐怖症
  • やり抜くための戦略ーあきらめない
  • やり抜くための戦略ー跳ね返す力を持つ
  • やり抜くための戦略ー頑固さを貫く
  • やり抜くための戦略ーせっかちで辛抱強い
  • やり抜くための戦略ー後ろを振り向かない
  • やり抜くための戦略ー仕事とプライベートのアンバランスを乗り越える
  • やり抜くための戦略ー絶え間ない前進

ここで書かれている成功するための8つの法則や91のアドバイスは、どれをとっても極めてごくありきたりのシンプルなものです。リチャードも言っていますが、「成功の秘訣は、秘訣など何もないと知ること」です。

最も難しいのは、シンプルなことを実践することです。しかし、この本に書かれている、シンプルな法則を実践し成功を収めた人々の言葉を読むとやる気や勇気が湧いてきます。情熱を注げるものを見つけ、それの心を集中させて懸命に働き、常に改善してやり遂げ、人の役に立つことを行う、という成功法則は、シンプルなので、できることから取り組んでいけばいいでしょう。実践する価値はあります。

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休日の本棚 ロングテール

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で5397人、そのうち東京1979人、神奈川631人、埼玉510人、千葉343人、愛知146人、大阪461人、兵庫139人、京都71人、福岡139人、沖縄153人、北海道140人などとなっています。全国で5000人を超えるのは5月22日以来2カ月ぶり、神奈川では1月22日以来半年ぶりに600人を超え、埼玉も1月16日以来約半年ぶりに500人を超えました。首都圏だけでなく関西圏、さらには大都市と、全国的に感染拡大しもはや第5波突入と言っていいような状況になっています。菅首相や政府はオリンピック開幕にうつつを抜かし、まともな対策を全くとらず、人々もコロナ慣れして、駅や行楽地はヒトであふれています。これでは、この先、コロナが収まるとは到底思えません。ワクチン接種の影響で高齢者の感染者数・重症者数は減少しましたが、コロナに感染した中年層が肺炎を引き起こし重症化し入院するケースが増えています。今後もワクチン接種を終えていない年代の相当数が重症化する可能性があります。感染者数が多い地域を重点的にできるだけ迅速にワクチン接種を全年代に実施すべきではないかと思います。

さて、今日は、クリス・アンダーソン著「ロングテール 『売れない商品』を宝の山に変える戦略」(早川書房を紹介します。

著者のクリス・アンダーソンは「ロングテール」という言葉を始めて世に知らしめたワイアード誌の編集長です。

ロングテールというのは、簡単に言えば、販売機会の少ない商品でもアイテム数を幅広く取りそろえること、または対象となる顧客数を増やすことによって、総体として売上を大きくするという手法又は概念です。オンラインDVDレンタルの大手ネットフリックスやアマゾンのビジネスモデルを説明するために、アンダーソンが提唱し、世界に広まったものです。

アマゾンを例にとって説明します。

これまで一般のリアル店舗の売上は、売上成績上位20%の商品が全体の売上の80%を占めるという「80対20の法則」が支配しています。これは、従来型の店舗を構えた形態の販売店では、商品棚の容量や物流上の制限など売上成績の良い売れ筋商品を主体に販売するように努め、売れ筋以外の商品は店頭に並べられないことが多いからです。

しかし、アマゾンのようなオンライン小売店では、無店舗による人件費と店舗コストの削減に加えてIT活用による在庫の一元化やドロップシップの導入などによる物流コストの極小化を進めた結果、従来型の小売店の制約に縛られず、普通で考えれば年に1個しか売れないような商品も顧客に提供することで、店舗を構えていた時には実現不可能であった大きな販売機会の取り込みを可能にしたのです。

ロングテールを語る際には、「ヘッド」と「テール」という言葉が使われます。「ヘッド」というのは現存する最も大きな小売店に置いてある商品の集合体を指し、「テール」はそれ以外の商品の集合体を意味します。

オンライン店舗では、売れ行き順に商品を横軸に並べ、販売数を縦軸に取ったグラフを描くと、「ヘッド」部分には売れ筋商品の高いグラフが描かれ、そのあとに非ヒット商品の低いグラフが描かれて長い尻尾のように延々と続きます。これが「ロングテール」です。

この本は、現象としてのロングテールとそれを取り巻く状況を現代の成功企業の実例を交えて詳細に解説し、これからのビジネスのカギを探求しようとしています。

この本は次の14章と結びで構成されています。

  • 第1章 ロングテール ―大衆市場から無数のニッチ市場へ
  • 第2章 ヒットの興亡 ―融通が利かない文化に縛られて
  • 第3章 ロングテール小史 ―通販カタログからショッピングカートまで
  • 第4章 ロングテールの3つの追い風 ―つくる。世に送り出す。見つける手助けをする。
  • 第5章 新たなる生産者たち ―生産手段を手にしたアマチュア・パワーをあなどるな。
  • 第6章 新しい市場 ―ヘッドからテールまで吞み込む集積者
  • 第7章 新しい流行発信者 ―蟻がメガホンを手に入れた。
  • 第8章 ロングテール経済 ―不足の経済と80対20の法則の終焉
  • 第9章 短いヘッドの世界 ―商品スペースですべてが決まる。
  • 第10章 何でも手に入る時代 ―選択肢が湾幸あるのはいいことだ
  • 第11章 ニッチ文化とは ―ロングテールに生きるということ
  • 第12章 無数のスクリーン ―ポスト・テレビ時代の映像とは
  • 第13章 エンタテイメント以外のロングテール ―ニッチ革命はどこまで広がるのか
  • 第14章 ロングテールの法則 消費者天国を作るには
  • 結び テールの未来

リアル店舗では、次のような制約があります。

  1. 商品を陳列できるスペースが限られているので、販売数の稼げる商品に特化した方が有利
  2. 人気商品以外のその他大勢の商品に広告費や宣伝費をつぎ込むとコストが膨大になる
  3. 販売員にその他大勢の商品すべてのせーっるストークを習得させるのは事実上不可能
  4. 商圏が限られており、潜在的な顧客数が限られる。

しかし、インターネットの進歩によりオンライン店舗になると上記の制約が破壊されました。

  1. 陳列スペースに制限がなく人気商品だけでなく何万点の商品でも同時に販売できる
  2. ニッチ商品でも商品の紹介ページさえ作れば、こky宅が見つけてくれ、広告費や宣伝費が安価で済む
  3. リアル店舗のように労力と人件費をつぎ込んで販売員に莫大な数の商品のレクチャーを行わなくてもいい
  4. 日本全国・全世界の人間を相手に発信できるので、ニッチ商品でも十分な顧客を獲得できる

これによって、これまで上位20%の人気商品で全体の売上の80%を稼がなければならなかったのが、「80%のその他大勢の『売れない商品』で全体の売上のかなりの部位分を獲得できる」ことになったのです。

あるオンライン音楽配信サービスでは、ダウンロード数で上位2割に入らない残り8割の商品が全体の売上の半分を占め、アマゾンでも『売れない8割』が売り上げの3分の1を占めているのです。

従来のリアル店舗のように、一部の人気商品に売上のほとんどを頼る戦略の場合、ブームの終了や競合商品の登場で、その人気商品の売り上げが落ち込むと、壊滅的なダメージを受けることにもなりかねません。一方、ロングテールの場合には、売上を多数の商品で分散して稼いでいるので、1つの商品の売上が落ち込んでも、全体へのダメージは軽減されます。従来型の人気商品を軸にした販売戦略よりも長期的に安定的な売上を積み上げることができるのです。

また、導入に際しては在庫の仕入れ以外に初期費用がほとんどかかりません。サイトを作るコストのみで始められます。さらに、ロングテールは売れない商品に目を付けたもので、不良在庫という概念がなくなります。サイトや環境を整えて多くの商品を陳列すれば、集客が見込まれて売上も上がるのです。

しかし、半面、次のようなデメリットが考えられます。

1つは即効性がなく短期的な売上が小さいということです。ロングテールの主役である『売れない商品』はニッチなニーズしかないので、爆発的な売上を期待できません。短期的な売上へのインパクトは小さいのです。ロングテールを軸にした戦略は長期的な目標設定が必要で短期目標の達成には困難です。

また、ロングテールの場合は多くの種類の商品を販売できる大企業に有利です。ニッチな商品を販売する場合、ニッチな顧客に見つけてもらわなければ始まりません。ニーズを持っている顧客がグーグルなどの検索エンジンを通して見つけてくれないと販売につながらないのです。そのためにはホームページなどで、商品ごとに頁を作って紹介しないといけません。結果を出すのに手間や労力がかかるのがロングテールの弱点です。

ロングテールで成功した企業は、この本で多く紹介されています。しかし、ロングテールにはリスクもあります。人気商品から売れない商品まで在庫を抱えなければなりませんし、先ほども書いたように長期戦略です。利益を十分に上げる前に、大量の在庫を抱えて倒産という事態になっては元も子もありません。

ロングテールを始めるにあたって欠かせないのがグーグルの検索エンジンです。グーグルでは、今までの履歴や登録している内容からその人に合ったページが表示されます。そのため新しいページが表示されず集客につながらないのです。

長いテールの部分でニッチ商品の販売量を稼ぎその総和で利益を上げようというロングテール戦略ですが、成功例は多いものの、かなりのリスクを抱えており、これからも通用するかどうかは全くの未知数です。しかし、上手くロングテールを使いこなすことができれば、大きな強みとなるでしょう。コロナ禍で混迷した時代に、ニッチな市場でロングテールを生み出し新たなチャレンジができればビジネスチャンスがもたらされるかもしれません。

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休日の本棚 世紀の愚行

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 おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で4943人、そのうち東京1832人、神奈川522人、埼玉381人、千葉302人、愛知109人、大阪491人、兵庫120人、京都80人、福岡136人、沖縄169人、北海道118人などとなっています。東京では1月16日以来の1800人超えで、全国的にも感染者が爆発的に増加し極めて深刻な状況なろうとしています。東京五輪の開幕、夏休み、お盆の帰省と人手が増加する時期が重なり感染者を抑え込むことは極めて困難でしょう。そうした中、菅首相は、「状況が変われば有観客」「パラリンピックは有観客」「挑戦するのは政府の役割だ」などと述べています。あまりにも現実を見ていない・見えていないとしか言いようがありません。ビジネスにおいても挑戦することは極めて大事なことですが、それには前提があります。それは、現状をしっかりと認識・分析したうえで最適と思える方法で行うこととしっかりとした体制の下で、危機管理を行い、いつでも切り替える(軌道修正する)ことができるということです。菅首相・菅政権にはこうした前提が欠落しています。常に場当たり的で何ひとつ考えていない、まさに無為無策、無知無能です。東京五輪延期で1年の猶予期間があったにもかかわらず、後手後手の対策ばかりでこの1年で何一つ真面な対策は行っていないのです。菅首相の思い付きの挑戦で国民が犠牲になることだけは避けたいものです。政府の無分別な楽観論で第二次世界大戦に突入した時のような状況にはなりたくありません。

さて、今日は、太田尚樹著「世紀の愚行 太平洋戦争・日米開戦前夜」(講談社文庫)を紹介します。この本は副題として「日本外交の失敗」とあります。

以前、「失敗の本質 日本軍の組織論的研究」という本を紹介しましたが、この本は破綻する組織の本質・特徴を明らかにし、組織の経営に常に必要な戒めを学べる指南書でした。本日紹介する「世紀の愚行」は日本外交の失敗の本質を明らかにするもので、経営的な視点ではなく歴史的な視点で失敗の本質を明らかにしようとしています。日本の太平洋戦争における失敗を経営論的視点から考える前提として、当然歴史的視点は必要です。

今年で戦後76年、戦後世代が全国民の約85%となり、戦争の記憶が薄れています。私も戦後生まれなので、戦争の記憶はありません。しかし、唯一の被爆国である日本・日本人が平和を希求し続けるために戦争の記憶を消し去ってはいけませんし、語り継がなければなりません。そして、太平洋戦争の失敗を繰り返さないようにその本質を理解し、二度と失敗しないように教訓として生かさなければなりません。ところが、今回のコロナ禍での国民や世論を無視したオリンピック強行開催は、太平洋戦争突入時の状況に酷似しています。歴史の教訓が生かされているとは思えません。

そこで、再び「世紀の愚行 太平洋戦争・日米開戦」を歴史的に学ぶ必要があるように思います。

日本は、GDP4倍であるアメリカに挑み、全国を焦土とし、推計戦没者軍民310万人、戦死者の約6割が病死・餓死という最悪の事態を引き起こしたのですが、最後通牒とされたハルノートをたたき台に日米交渉を継続していれば、戦争回避が可能だったかもしれません。それにもかかわらず、なぜ日本は日米交渉を打ち切り、真珠湾攻撃という奇襲攻撃に打って出たのでしょうか。

以前「経済学者たちの日米開戦」という本を紹介した時に書きましたが、軍部(陸軍)は、昭和15年に秋丸次郎中佐が日本の戦力と米英の戦力を比較するために、通称秋丸機関を作り、東京大学経済学部教授有沢広巳らの経済学者を中心に研究を行わせます。その秋丸機関が日米間の経済交戦力の巨大な格差を指摘する報告書を作成します。

問題は、秋丸機関が、日米間の軍事的・経済的格差を指摘し、「開戦すれば高い確率で日本は敗北する」と警鐘を鳴らしたにもかかわらず、なぜ軍部はそれを無視して戦争に突入したのでしょうか。

行動経済学の立場から言えば、人間は不合理で、「合理的な行動はしない」ということです。秋丸機関が指摘した「開戦すれば高い確率で日本は敗北する」という言葉が、逆に「だからこそ低い確率にかけてリスクをとってでも開戦しなければならない」という意思決定の材料に置き換わってしまったのです。

これは、まさに、専門家の意見を無視し後手後手の新型コロナ対策に終始し、更にオリンピックを強行開催をする菅首相・菅政権の思考そのものです。

日本が日米開戦に突き進んだ社会心理的要因として、当時日本にはリーダーシップが取れる人物がいなかったことが挙げられています。当時、日本における戦争指導は、海軍、陸軍、政府の三鼎立の合意妥協によって決められていました。

二二六事件以降、陸軍は統制派が主流となり全体主義に傾斜し、海軍にも条約派艦隊派のせめぎあいがありました。政府は日独伊三国同盟を捨てきれず、こうした三者三様の思惑の中、妥当な判断ができずに負けることが必定であった戦争に突入するのです。

こうした状況では、思想の統一、思索の決断と一貫性が欠如します。また集団的意思決定の場合、個人が意思決定するよりも結論が極端になることが社会心理学では言われています。慎重な人たちが集団決定すればより慎重な決定がなされ、危険を厭わない人たちが集団決定すれば、ますます危険な方向に舵取りすることになるのです。

日本の現在の政局もまさにその通りの状況です。

この「世紀の愚行」の中で、太田氏は、日本がどこをどう読み間違えて戦争に突入したのか、何が足りなかったのかの根本は「外に向けた日本人の思考構造が原因していた」と言っています。情報が命であった遊牧民を先祖に持つ欧米諸国と、さしたる情報を必要とせず、視界内の事象に最大の注意を払っていればよい農耕民族を先祖に持つ日本人の特質の差が、近代戦・情報戦に不向きになったという面もないわけではありません。

これはコロナ禍でも言えるように思います。欧米諸国がしっかりとしたデータに基づいて感染防止対策を行っているのに、日本ではデータよりはその時々の雰囲気や空気に流され後手後手の対策が取られていることからもうかがえます。

太平洋戦争突入前夜、学者や文化人は国粋的思想の持ち主から攻撃を受け、治安維持法による弾圧は、戦前・戦中の、個人よりも国家・国体を優先する風潮やムードをゆるぎないものにします。当局による締め付けが強まる一方で、多くの国民は大陸進出や回線の熱に浮かされ、戦時体制に進んで協力し、その世論が開戦への最大の圧力になるのです。

確かに現在のコロナ禍で、飲食店を敵のように扱い、営業自粛、酒類禁止などで規制を強め国に協力を要請することは戦前・戦中に似ているように思いますが、多くの国民が五輪開催に反対であったにもかかわらず強行開催に踏み切った点は似ていません。簡単に言えば、世論操作に失敗したということですが、菅政権としては、中止しても地獄、開催しても地獄なら、リスクをかけてでもテイクが大きい方をとろうとして強行開催に踏み切ったのだと考えられます。中止したとしても菅政権の評価や支持率はそれほど変わりませんが、開催して成功すれば評価や支持率が大幅にアップし、秋の衆議院選挙に弾みを付けることができるとの考えからでしょう。

さて、この「世紀の愚行」ですが、「日本外交失敗の本質」とありますが、研究書や論文というよりも、小説のように読める物語です。1932年の満州国建設に始まり、1941年11月の日米開戦前夜までが物語的に語られています。面白く読めるように思います。真珠湾攻撃については、半藤一利著「真珠湾の日」(文春文庫)、開戦後のミッドウェー開戦から沖縄線までは「失敗の本質 日本軍の組織論的研究」(中公文庫)終戦については半藤一利著「日本のいちばん長い日」(文春文庫)で語られています。これらを読めば、太平洋戦争の失敗の本質はすべて理解できると思います。

そうした失敗を学ぶことは、ビジネスにとっても大切なことです。日本企業において、 戦略の無原則性は臨機応変な対応を可能にしてきましたが、コロナ禍のような急激な変化に対する適応力が欠如しています。

すべての組織において、今は、主体的に独自の概念を構想し、新たな分野に挑戦し、新たな時代を切り開くことができるかどうかが問われているように思います。

日本軍や当時のトップリーダーの失敗に至った思考を学ぶことが、組織のあり方やリーダーの思考方法、リーダーシップのあり方の参考になるのです。

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経営層に必要なスキルと経験

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で3758人、そのうち東京1387人、神奈川433人、埼玉314人、千葉199人、愛知94人、大阪313人、兵庫129人、京都39人、福岡91人、翁w154人、北海道104人などとなっています。全国的にリバウンドして感染が再拡大し、第5波が徐々に近づきつつあるように思います。イギリスでは、変異株による感染拡大で1日4万人感染者が出ているにもかかわらず、規制が緩和されています。ワクチン接種が進み死者数が激減していることでコロナウイルスとの共存を目指そうということです。今後新たな変異株の出現や国民の意識や行動によってどうなるか分かりません。今のところ規制緩和が妥当な判断なのかは誰も分からないのです。イギリスは規制解除という新たな挑戦・賭けに打って出ましたが、ワクチン接種が思うように進まない日本では、まだまだ先のようです。それどころか東京五輪によって亡国への道を突き進んでいくかもしれません。

さて、今日は、NIKKEI STYLEの「上場企業の経営層に不可欠なスキルと経験とは」という記事を取り上げます。この記事は、東京証券取引所が定めているコーポレートガバナンスコードを参考に、経営層に出世するための指針を考えてみるということで書かれています。しかし、ここで書かれている内容は上場会社の経営層だけでなく、中小企業の経営者にも参考になることではないかと思います。

1.コーポレートガバナンスコード改訂

 今年、東京証券取引所によるコーポレートガバナンスコードが改訂され、6月11日から施行されています。

 コーポレートガバナンス改訂の目的は、「取締役たちが、株主の『利益を得る権利』を守るために、株主以外のステークホルダーたちと協働すること、そのために、隠し事のないように経営の透明性を確保し、適切なリスクテイクによる企業価値向上を目指すこと」です。上場企業を前提として東京証券取引所が作成・改訂している以上、「株主の利益」が前面に出てくることはやむを得ないところです。しかし、「経営の透明性」と「リスクテイク」は、コロナ禍の混沌とした経済環境の下では、上場企業に留まらず非上場企業、中小企業にも重大な意味を持つように思います。

 コーポレートガバナンスコードの主な改訂の内容は次の通りです。

  1. 取締役の機能発揮・・・①プライム市場において、独立社外取締役を3分の1以上選任 ②指名委員会・報酬委員会の設置 ③経営戦略に照らして取締役が備えるべきスキルと、各取締役のスキルとの対応関係の公表 ④他者での経営経験を有する経営人材の独立社外取締役への選任
  2. 企業の中核人材における多様性の確保・・・①管理職に置けり多様性の確保 ②多様性の確保に向けた人材育成方針・社内環境整備方針をその実施状況と合わせて公表
  3. サステナビリティを巡る課題への取組み・・・①プライム市場上場企業において、TCFD又はそれと同等の国際的枠組みに基づく気候変動開示の質と量を充実 ②サステナビリティについて基本的な方針を策定し自社の取組みを開示

2.透明性の確保

 「透明性の確保」というのは、取締役たちが隠し事しないようにするための規制です。規制しても抜け道があるので、具体的な基準で透明性を担保しようというのが「取締役の多様性」「取締役の独立性」です。

 取締役がグルになって隠そうとしても、多様性があればそこで意見は分かれますし、独立性があれば隠そうとする行為に対して反発するだろうということです。

 上場会社においては、株主に対して情報公開を行い、経営の透明性を確保するということは当然のことですが、非上場企業・中小企業においても従業員や顧客に対する情報開示は極めて重要です。インターネットが発達した現代では隠し事がバレれば顧客はすぐに離れてしまいます。不祥事があれば公表し謝罪し、対策を明らかにするということは、上場企業だけでなくすべての企業に求められるところです。それがきちんとできなければ企業の存続すら危ぶまれることになるでしょう。

3.リスクテイク 

 経営層からすれば、わざわざリスクを取ってまで成長を目指さなくてはいいだろうと思う場面も多々あります。しかし、株主の立場では、資金を引き揚げて成長している企業に投資したくなるものです。

 「適切なリスクを取れる人材を経営層において、ちゃんと成長戦略を描きなさい」ということで、株主が投資先を選べるようにしようということです。

 企業はゴーイングコンサーンでなければ意味がありません。企業は継続していくということが前提なのです。多くの企業は、コロナ禍で、存亡の危機に立たされています。企業が継続していくためには持続的な成長が不可欠です。それは上場企業に限ったことではありません。中小企業も零細企業も個人商店も同様です。コロナ禍のような危機的状況においては、過去の実績や旧態依然としたやり方・経営方法に固執していたのでは、生き残ることはできません。きっちりとした成長戦略を立ててイノベーションを起こせるかがカギです。

4.経営層に求められるスキル

 【透明性の基準】

  • 取締役の多様性・・・①ジェンダー ②年齢 ③グローバル経験 
  • 取締役の独立・・・①ファウンダーとの関係 ②株主との関係

 【リスクテイク基準】

  • 事業成長・・・①自社理念への共感 ②リスクテイク経験 ③商品・顧客開発
  • リスクマネジメント・・・①財務・ファイナンス ②法務・知財 ③人事・労務

 以上がこの記事で書かれている経営層に求められるスキルですが、あくまでも投資家目線・投資家の視点に基づくものです。しかし、これらの多くは、上場企業だけでなく、すべての企業で必要なスキルでもあります。

 特に、リスクテイク基準の中で挙げられているものは、ビジネスパーソンが積んでいくことができるスキルです。

 自社理念の共感というものは、上層部との対話を通じて学び、周りに広げていくことで確実の身につけることができます。昨日も書きましたが、エンゲージメントを高めるためには、会社が進むべき方向、ビジョンを理解し(理解度)、互いに仲間意識をもって協力し合い(共感度)、仲間との目標達成を最大のモチベーションとして行動する(行動意欲)ことが重要です。

 また、リスクテイク経験は、厳しい経営環境において自ら意思決定の現場に携わることで経験していくものです。人間は失敗の中でしか成長はできません。自ら小さな失敗を繰り返し修正して成功へとつなげていくことで成長するものです。

 商品開発や顧客開発も同じです。ポジショニングやセグメントを決めて顧客ニーズを把握しながら、失敗をして軌道修正や方向転換を繰り返しながら、行っていくしかありません。

 財務、法務、人事についても経験を積んで企業価値の観点から語れるようになれば十分に認められます。当然実務の経験とともにスキルアップのための学習も必要です。

激変する時代の中で、経営層に求められる基準は今までと大きく変わっています。しかし、本質はシンプルで、上記のスキルを身につければよいのかもしれません。

ただ、「休日の本棚 『仕事ができる』とはどういうことか?」で書いたように、経営層になることが上がり、ゴールではないのです。「自分は経営層になって『何がしないのか』」という「行動」が表明できなければなりません。その行動表明・意志表明も、昨日書いたように自分の腹からの言葉で行わなければならないのです。それらはスキルではありません。センス、その人自身に備わっている人間性です。

スキルだけを持った経営層では企業の持続的成長・発展はないと思います。スキルとともにセンス・人間性を磨くことです。それは人と人との人間関係、信頼関係を築き上げることで磨くことはできます。「この人ならばついていきたい」「この人のために働きたい」と思えるような関係性を築き上げることです。

そういう経営層になることで、個人のモチベーションは高まり組織のエンゲージメントも高まり、危機的状況でも成長発展できる企業になるように思います。 

 

リーダーは腹から信じる言葉で組織を導け

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で2329人、そのうち東京727人、神奈川412人、埼玉199人、千葉234人、愛知36人、大阪224人、兵庫39人、京都29人、福岡46人、沖縄35人、北海道70人などとなっていたす。検査数の少ない休日のデータですが、先週の日曜日に比べ、東京では225人、神奈川132人、大阪119人など全国で823人増えています。全国的に感染拡大、感染のペースが加速しています。確かに、ワクチン効果もあって、感染者数は増加していますが、高齢者の感染者数は減っています。しかし、中年・若年層の重傷者が増え、東京ではステージ4に迫りつつあります。こうした中、3日後には五輪が開催されます(明日から予選が開催される競技もあります)。また、選手や関係者に陽性者が出ており、濃厚接触者になれば国民には課せられる14日の健康観察(自宅待機)が免除され、6時間前のPCR検査で陰性であれば試合にも出られるという特別ルールが設けられるようです。相変わらず、国民無視・五輪優先です。安心・安全な大会よりも重要なのは、国民生活の安心・安全です。国民に根拠なき楽観論を振りまいて五輪開催に特攻していく政府の姿勢は、客観的データを軽視しご都合主義的な戦略策定で戦争に突入、日本を敗戦に導いた太平洋戦争に類似しています。このことは、多くの歴史家も指摘するところですので、あえて書きませんが、太平洋戦争では、近衛文麿前首相は自決、東条英機首相は東京裁判で絞首刑となって責任を取っています。万が一、東京五輪で感染が拡大し日本が「コロナ敗戦」となった場合、菅首相をはじめ強行開催に踏み切っいた責任者たちは、命を賭して責任をとるべきでしょう。中小企業の経営者は、自らの資産を担保(個人補償)に融資を受けて経営を行い、万が一失敗すればすべてを失います。多くの経営者は命がけで経営に携わっています。政治家は命はもとより財産も取られることなく好き放題です。失敗しても退陣・辞職すればいいだけ、リーダーとしての責任がないのです。本来リーダーというのは、ビジネスでは、自らの命・財産を犠牲にしても、従業員の生活を守らなければなりません。政治で言えば、自らの命を賭けてでも国民の生命や財産を守らなければならないはずです。そうした覚悟がある政治家が皆無であるというのは嘆かわしいことです。怒りに任せて長々と書きすぎました。まだまだ人間ができていませんね(笑)。

さて、今日は、ダイヤモンドオンラインの「リーダーは腹から信じる言葉で組織を導け」という記事を取り上げます。

この記事は、ビズリーチなどを運営するビジョナル創始者南壮一郎氏に影響を与えたとされる現USEN=NEXTホールディングス副社長島田亨氏へのインタビュー記事です。

1.メンバーを同じベクトルに向かわせる「ミッション」の大切さ

 組織を動かすとき、メンバ緒全員が同じ方向性に向かわせる必要があります。本来ならば、目的地までの地図を渡さなくても、自然にメンバーが目的地に辿り着くことができるというのが理想ですが、実際にはどこが目的地か、目的地にどうやって辿り着くかを理解しているメンバーや組織はそうありません。それにも関わらず、トップ、リーダーが「なんで俺の目指す方向が分からないんだ」と言っても、それはトップやリーダーの手抜きです。

 島田氏は、ミッションや目指すべき方向を共有する仕組みが必要だと言っています。その方法はいろいろありますが、ミッションやビジョンを言語化する作業が必要です。

 日本では暗黙の了解、阿吽の呼吸と言うことが言われますが、暗黙知形式知にして共有するためには、言葉にする(言語化)必要があります。

2.「錦の御旗」となるような言葉を定める必要がある

 島田氏は、「ビジョンやミッションというのは、人と相談して決めていくようなものではなく、事業を預かった最高責任者が自分の言葉で示すものだ」と言っています。

 それは、リーダーやトップが、自分の思いや心の声も含めて言葉にしなければならないということです。誰か他人が書いた原稿や言葉では聞く人の琴線に触れることはありません。その人が心から信じ、心の声として発する言葉でなければならないのです。

 リーダーは、自分の腹から思っている言葉で方向性を示すこと、そうでないと、言葉だけが浮きまくってしまいます。

 正視せず俯いたまま他人が書いた原稿を読み、時に間違えるような菅首相の言葉が国民の心に響かないのは当然のことです。

3.シンプルな言葉を使うことの重要性

 事業は誰のためにやっているのかが明快でなければダメです。誰が、何のために、いくらのお金を払って、何を買おうとしているのか、どんなサービスを受けようとしているのか、といったことが、シンプルで明確な言葉で説明できなければなりません。

 お客様のニーズは何なのか、そのニーズを満たすために自分たちは何を行っていけばいいのか、という経営の方向性が決まれば、組織のコンフリクト(衝突)を減らすことができ、仮にコンフリクトが起きても解決の基準が示されるのです。

先日も書きましたが、仕事ができない人は地位や経歴という「状態」がゴールになっていて「何がしたいのか」という「行動」が欠落しています。優れたリーダーは、「何がしたいんだ」という「行動」を表明しなければなりません。この意思の表明が経営なのです。この意思の表明は、借り物の言葉でなく、自分の言葉で真摯に心の叫びとして訴えるものでなければ、誰も共感することはありません。

コミュニケーションスキル、プレゼンスキルがもてはやされていますが、これらはあくまでもスキルです。スキルを磨くことも大切ですが、こうしたスキルを磨いたとしても心がこもっていなければ、「上手いね」で終わってしまいます。

コミュニケーションというのは相手とのキャッチボールで成り立つものです。

これまでの繰り返しになりますが、経営は人で成り立っています。そして、そこには人と人との人間関係、信頼関係が最も重要です。心と心の通い合う状態です。

先日、エンゲージメントを高めるために必要なものを3つ挙げました。繰り返しになりますが、それは、

  1. 理解度 会社が進むべき方向、ビジョンを理解し、ともに達成しようとする姿勢
  2. 共感度 互いに仲間意識をもって協力し合い、家族のように愛着と誇りを持つ
  3. 行動意欲 仲間との目標達成を最大のモチベーションとして行動する意欲

です。エンゲージメントは、上司や経営者の指示・命令によって高まるものではなく、経営陣や上層部とに信頼関係によって高まるものです。

そのためには、経営陣やリーダーは、この記事にあるように自分の腹から出た強いメッセージに自分の思いを込めて伝えなければならないのです。そうすることで、従業員は経営陣やリーダーが考えていることを理解し、自らもそれに共感し、行動意欲を高めていくのです。

 

最強の仕事術GTDとは

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で3103人、そのうち東京1008人、神奈川460人、埼玉287人、千葉254人、愛知94人、大阪262人、兵庫75人、京都51人、福岡79人、沖縄70人、北海道107人などとなっています。検査数の少ない休日のデータなのにかなりの数になっています。全国的に感染が再拡大しつつあることは明らかです。選手村の滞在していた南アの男子サッカー代表の選手に陽性者が出ました。穴だらけのバブル方式で、東京五輪の感染防止対策が十分でないことを露呈した形になりました。各国で五輪期間中に感染が蔓延するのではないかとの懸念が高まっています。菅首相のアホの一つ覚え「安心安全な大会」、バッハ会長の「日本にリスクは持ち込まない」がいかに見通しの甘い空虚な発言であるかが明らかになってきています。南アの選手の感染について、当初、組織委員会は国名・競技名を秘匿していましたが、南アが公表したために明らかになりました。このような秘密主義で、国民の安心・安全が担保できるとは到底思えません。このままでは、東京五輪は「安心・安全な大会」どころか「不安・混乱の大会」になり、日本がウイルスを世界にまき散らす「ハブ」となって「コロナ五輪」となりそうです。

さて、今日は、現代ビジネスの「本当に『生産性が高い人』が『効率』よりも大事にしていることとは?」という記事を取り上げます。

ビジネスで重要視される「生産性」ですが、この「生産性」と「効率」とはどのような関係にあるのでしょうか? 「生産性」を高めるために「効率」をアップさせることが必要だと考えている人もいます。しかし、この記事では、「効率」よりも持った大事なものがあると言っています。

1.「生産性=効率」と勘違いしていないか

 「生産性」という言葉は多くの場合で「効率」と同義語のように使われています。しかし、生産性というのは一人当たりの付加価値のことです。詳しく言えば、労働・設備・原材料などの投入量と、これによって作り出される生産物の産出量との比率のことです。つまり、生産量を生産要素の投入量で割った値で、モノを作るにあたってと投入したお金がどれだけ効果的に使われたかを示す数字です。

 これに対して、「効率」というのは、「機械作業などをする際に、その仕事量とそれを行うのに要したエネルギーとの比」(大辞林)のことで、ビジネスの場面では「一定の目的を達成し、期待される結果をもたらすために行われる諸活動の評価基準」「一定の時間内にすることのできる仕事の割合」(大辞林)、つまり「仕事のはかどり具合」のことです。

いくら効率的にやったとしても、間違った方向に進んでいるだけだったら意味はなく、生産性は向上しません。

 生産性を高めるために、効率を考えるよりも前に効果を考えることが大切です。そして、効果を上げる際に最も大切なことは、「ゴールは何か?」ということです。

2.「ゴールは何か?」を問い続ける

 効率的に仕事をすることは重要ですが、常に効果を考えることが何よりも大切です。そして、「ゴールは何か」を考えることです。ゴールが分かっていなければ何の意味もありません。効率的に行っても違ったところに到達したのでは意味がないのです。

 ゴールというのは目標意識・目的意識です。とにかくゴールの設定を明確にして、仕事をしながらそれをずらさないことです。ゴールが明確に設定できていれば、そこに向かって走れば最短で仕事を終わらせることができます。

 ここで「ゴールの設定を明確にする」と言っていますが、ゴールの設定は難しいものです。ゴールの設定によってアプローチの仕方も違ってきます。

例えば、今月の売上を立てることをゴールにするのか、数か月後の売上アップを目指すのか、成果を最大化して長期的な利益につなげるのか、によって取るべきアプローチも違ってくるのです。

 従って、「ゴールは何か?」「何をゴールにするのか」を真剣に考えなければなりません。「効率」よりも、まず「効果」を考え、効果を上げるために「ゴールは何か」を考えることが重要なのです。

3.最強の仕事術「GTD」とは?

 「効果」を考えたうえで、次に考えるのが「効率」です。効率を上げるノウハウは、業務改善のフレームワークECRSの原則」などがありますが、ここではGTD=Getting Things Done」が紹介されています。これは、物事を完了させる仕事術で、生産性向上コンサルタント、デビッド・アレンが提唱した方法です。

 GTDは、タスクやプロジェクトを整理して管理する仕組みのことです。直訳すると「仕事を成し遂げる」となりますが、単に「成し遂げる」だけでなく「効率よく成し遂げる」ことができるように導くやり方です。

 頭の中には、複数のタスクが存在します。

  • 今すぐアクションに移すべき仕事
  • 後で取り組もうとしている仕事
  • 他部門との調整が必要な仕事
  • 何かのついでにしようと思っている軽微なもの

 これらのタスクを頭の中に抱えたまま目の前のタスクに取り込むのはなかなか難しいことです。GTDは、自分が抱えている仕事やタスクを効率よく管理し、常に頭の中を整理して目の前のやるべきことに集中できる環境を作り出すのです。

GTDの前提は、①われわれは無能である ②だから、脳内メモリをできるだけ節約しよう、ということです。「いま考えるべきじゃないことを考えるのは、まったく無駄である」という発想から来ています。

GTDは。5つのステップで成り立っています。

  1. ステップ1=収集・・・最初に自分の頭の中で整理していたすべてのタスクを可視化する。①取り掛かろうと思っていたこと ②検討課題として保留していたもの ③いつか役に立つだろうと頭の隅に置いていたもの ④新製品やサービスのアイデア ⑤毎朝こなしている特定の業務などをすべて書き出す。インボックスにすべて書き出して頭の中を空っぽにすることが重要。
  2. ステップ2=処理・・・ステップ1で収集したランダムな箇条書きを分類・処理する。この際、①今すぐにやるか、後でやるか ②自分がやるか、他人に任せるか ③重要なタスクか、優先順位はどうか、といった指標で分類・処理する。 
  3. ステップ3=整理・・・上の基準で分類・処理しただけでは不十分。ステージ分け、優先順位をつけ整理しなければならない。
  4. ステップ4=レビュー・・・一度収集、処理、整理すれば終わりではない。いったん処理したタスクや未処理のタスクを俯瞰して見直す必要がある。定期的なタスクのレビューを行うことで、最新の課題が把握でき、情報更新で常にすっきりする。
  5. ステップ5=実行・・・優先順位の高い者から着実に実行する。やるべきことが明確に把握できたらあとは自分の持っている力を100%投入するだけ。

 GTDは上のようなステップでやるべきタスクを可視化しているだけで、効率よく仕事をこなせる仕事術と言えます。頭の中にあるタスクをすべて書き出し、整理整頓するという手間はかかりますが、これらを惜しまずに行えば、効率よく仕事ができ、ストレスからも解放されます。

 この記事を要約すれば、「生産性=効率ではない。生産性を高めるために向課と効率のいずれも大事だが、より大事なのは効果である。効果を上げるために『ゴールは何か』を常に考えることが大事。効率的な仕事にはGTDが役に立つ」ということです。 

休日の本棚 ゼロからのMBA

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で3886人、そのうち東京1410人、神奈川539人、埼玉318人、千葉244人、愛知75人、大阪380人、兵庫122人、京都52人、福岡60人、沖縄81人、北海道111人などとなっています。首都圏・関西圏だけでなく、北海道や鳥取(29人、過去最多)など地方でも感染ペースが加速し、第5波が全国的に広がりつつあります。東京五輪まで5日となり、今日バッハ会長らIOC幹部の歓迎会が40人規模で開かれます。国民には不要不急の外出は控え会食も4人までと要請している状況で、何を考えているのかと腹立たしさを覚えます。先日も岸田派の政治資金パーティーが200人規模で開催され、日本の政治家は馬鹿ぞろい、自分らだけ国民と違う、上級国民・貴族と思っているのでしょう。開いた口がふさがりません。

さて、今日は、佐藤智恵著「ゼロからのMBA」(新潮文庫を紹介します。著者の佐藤さんは東京大学教養学部を卒業後、NHKに入社しディレクターとして何不自由なく生活していました。ところが27歳のとき、佐藤さんは「アメリカに入学して自分を成長させたい」との思いで留学予備校の門を叩きます。そこで「将来何をやりたいか分からないなら、MBA留学がいい」と予備校講師に勧められ、佐藤さんの人生が変わるのです。

佐藤さんは一念発起、壮絶な受験勉強の末、1年未満で名門コロンビア大学経営大学院に合格し、NHKという安定した職場を手放し、アメリカに留学するのです。

貯金もなく学費等1000万円近くを借金し、おまけに経済や経営の知識もほとんどなく、30歳でHNK・仕事を辞めてコロンビア大学経営大学院に入学、MBA(Master of Business Administration 経営学修士を取得するのですから、大したものです。

この本は、佐藤さんのアメリカ留学記、MBA取得体験記です。面白く勇気がもらえる本です。私も、もっと若ければ留学体験したいところですが、国内でもスキルやセンスを磨く方法はいっぱいあります。死ぬまで勉強だと思い頑張ります。

MBAで学ぶべき内容については、以前「10日で学ぶMBA」「Personal MBA」という本で紹介しています。もっと手っ取り早く、要点が知りたいという人には「図解 わかる!MBA」(PHP文庫)が要領よくまとまっています。先ずこの本から簡単に紹介しておきます。

  1. 戦略・・・⑴戦略なくして勝利なし ⑵何のための会社なのか ⑶限られた資源をどう使うか ⑷自社内にある競争優位の源泉は? ⑸強さと弱さを冷静に見極める ⑹差別化と集中でトップをねらえ ⑺攻撃か防御かを見極めよう 
  2. マーケティング・・・⑴マーケティングとは何か ⑵周囲の変化にどう対応するか ⑶狙うべき顧客とそれ以外を峻別しよう ⑷最も効率的な組み合わせを考える ⑸顧客は商品に何を求めているのか ⑹値段のつけ方で大きな差がつく ⑺潜在的顧客を掘り起こせ ⑻流通を制する者が市場を制す ⑼ブランドの威力をあなどるな ⑽結果のブレは前提に戻って対応せよ
  3. 組織・・・⑴強い組織はどうしたら作れるか ⑵組織のどこに注目するのか ⑶あなたの会社に最適な組織の形とは ⑷スピードと効率を追求するために ⑸強い組織は文化を育て、文化に育てられる ⑹真に組織が変われば、結果もついてくる ⑺いかに社員にやる気を出させるか ⑻社員は正当な評価を欲している ⑼経営者は「夢」を語れ!
  4. 会計・・・⑴会計を知らずして意思決定はできない ⑵この期間、いくら稼いで、いくら損をしたのか ⑶会社の財産は今どれくらいあるのか ⑷キャッシュ(現金)は会社の血液 ⑸会社の実態を把握して問題点をあぶりだせ ⑹どのくらいの製品を販売すればいいのか
  5. コーポレート・ファイナンス・・・⑴将来、どれくらいの価値を期待できるのか ⑵会社の資本コストをつかむ ⑶投資に対して、どれくらいの収益が期待できるか ⑷この会社は、将来売りか買いか ⑸何をもとに銘柄を評価するのか ⑹一体現金でいくら儲かりそうか
  6. トピックス・・・⑴物流が戦略ツールになった ⑵顧客のためにどう品質を管理するのか ⑶ベンチャー精神を忘れてはならない

この本では、経営の基本的な教科が、トヨタソニーといった有力企業を実例として、図を使って分かりやすく解説されています。MBAの学位を持っていなくても、ここでの知識はすぐに仕事に活かせます。

さて、佐藤さんの「ゼロからのMBA」に戻ります。

佐藤さんがMBA留学を行った時期と比べ、現在はMBAがブームとなり、多くのビジネススクールが乱立し、十分な教育も行わずMBA学位だけを与えるようなところもないわけではありますん。こうした状況から、MBA不要論やMBA有害論が生まれているのも事実です。MBAというのは学位であって資格ではありません。要は経営修士を終えたというだけであり、それだけではそれほど意味がありません。重要なのは、MBA学位を有しているかどうかではなく、MBAで教えられるような知識を有し、それを縦横無尽に駆使して仕事ができるかということです。有名大学を卒業した人がすべて優秀かというとそうでないのと同様、MBAを持っている人がすべて優秀というわけではありません。昨日書いたように、スキルとともにセンスがないといけないのです。

佐藤さんも言われるように、「MBA留学というのは、その人のこれまでの延長線上にあるわけだから、MBA留学したからと言って、急に社長になったり、億万長者になるわけでもない」のです。ただ、MBA留学によって、貴重な体験ができ、人生に選択肢が与えられることも事実でしょう。要は、人生を変えるか変えないかは、その人次第なのです。

さて、佐藤さんが、コロンビア大学ビジネススクールで履修した科目は次の通りです。

  1. 1学期(必修)・・・⑴ファイナンス ⑵マーケティング ⑶会計Ⅰ ⑷統計 ⑸ミクロ経済学
  2. 2学期(必修+選択)・・・⑴オペレーション(必修) ⑵マクロ経済学(必修) ⑶会計Ⅱ(半期・必修) ⑷意思決定モデル(半期・必修) ⑸キャピタルマーケットと投資(選択) ⑹真のプリンスを探して(選択)
  3. 3学期(選択)・・・⑴インタ-ナショナルビジネス戦略 ⑵トップ・マネジメント・プロセス ⑶広告戦略 ⑷リテーリング ⑸交渉術
  4. 4学期(選択)・・・⑴戦略から見たミクロ経済学 ⑵エグゼクティブ・リーダーシップ ⑶ターンアラウンド・マネジメント ⑷上級ファイナンス ⑸映画プロデューサーへの道

佐藤さんはNHKの出身ということもあり、「メディアやエンターテーメントの授業を多くとりたい」との思いもあって広告や映画の授業を履修していますが、MBAの基本的な科目については、上記の「10日で学ぶMBA」「Personal MBA」「図解 わかる!MBA」で十分に基礎は学べます。

ただ、ビジネススクールの授業で重要なのがケース・メソッドです。ケース・メソッドは、経営学を机上の学問に終わらせないために、ハーバードビジネススクールが開発した実践的な学習方法です。前半で物語風に会社の概要や悩みが語られ、後半に財務諸表や関連データが載っているペーパーが配られます。授業では徹底的に議論がなされた後、教授が、その会社の経営陣がどのような判断をしたのか、その結果どうなったのかを解説してくれるというものです。概して日本人はこうしたケース・メソッドに基づく議論が苦手です。大学の授業にしてもほとんどが受け身であり、自分の頭で考え積極的に議論に参加しようという人が少ないのです。これでは、知識を得ることはできても、実践に活かすことができません。結局日本の教育では薄っぺらな知識を得ることができても、実践に役立てることができません。

昨日の話からすれば、ケース・メソッドで具体的なケースを扱い、それを自分の頭の中で抽象化し、そこで得られた論理を頭の引き出しに入れ、それを引き出して具体的な問題や課題に対処するという「具象と抽象の往復運動」のトレーニングができるということです。このトレーニングによって、スキルと共にセンスも磨かれていくのでしょう。

この本は、佐藤さんのMBA留学体験記ですが、MBA留学をしようという人には大いに刺激になって役に立ちます。また、留学など考えていないし、MBAも関係ないという人にとっても、佐藤さんの熱意と苦労は、大いに刺激になって、頑張ろうという気を引き起こしてくれます。

数学も苦手、経済も苦手という佐藤さんの思い切った挑戦ですが、同じことができるでしょうか? 佐藤さんはトップ10の学校を目指します。それは「目標は高い方がいいから」という単純な理由からです。この単純な理由こそが重要です。「身の丈に合った人生」を求めていたのでは成長はありません。高望みするということも必要なのです。

林真理子さんは「やった後悔は日に日に小さくなるけれど、やらなかった後悔は日に日に大きくなる」と言っています。佐藤さんも「冒険のない人生ほどつまらないものはない」と言います。

一度きりの人生ですから、とにかくやってみることです。

人生いくつになってもチャレンジと勉強です。お互い頑張りましょう。

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休日の本棚 「仕事ができる」とはどういうことか?

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で3432人、そのうち東京1271人、神奈川446人、埼玉290人、千葉277人、愛知67人、大阪254人、兵庫81人、京都38人、福岡58人、沖縄76人、北海道73人などとなっています。東京、神奈川、埼玉、千葉の4都県で感染が拡大し、3県はまん延防止等重点措置の対象区域を拡大、神奈川は神奈川版緊急事態宣言として酒類の提供禁止を要請しました。大阪、兵庫でも感染者数は増加傾向にあり、早晩緊急事態宣言発令を要請することになりそうです。こうした中、東京五輪まで6日となりました。大会組織委員会がとるバブル方式は穴だらけ、ルール違反の選手、大会関係者、マスメディアが多数存在し、これらの人が感染拡大の一翼を担わないことを願います。

さて、今日は、楠木建&山口周著「『仕事ができる』とはどういうことか?」(宝島社新書)を紹介します。

楠木建氏は、これまでも何度も紹介していますが、「ストーリーとしての競争戦略」などの著者で一橋大学ビジネススクール教授です。また、山口周氏は、ライプニッツの代表で一橋大学大学院経営管理研究科非常勤講師、「世界のエリートはなぜ『美意識』を鍛えるのか?」などの著書があります。

この本は、楠木氏と山口氏が対談形式で、「仕事ができるとはどういうことか?」について語られています。ここで語られているのは「仕事ができるためにどうすればいいか?」ではありません。楠木氏が言われるように、「仕事ができるための方法」、つまりHOWについては答えがありません。それは一人ひとりの置かれた状況、性格、仕事の内容によって違ってくるでしょう。確たる答えはないのです。ここで語られているのはWHATです。WHATが明らかになればWHYについての理解も深まります。また「仕事ができる人とはどういう人か?」、つまりWHOについても語られています。WHOを知ることで、WHATの正体に近づくことができるからです。

楠木氏は、「仕事ができる」ということは「成果を出せる」ことだと言います。「頼りになる」「安心して任せられる」「この人なら何とかしてくれる」もっと言えば「この人じゃないと駄目だ」と思わせる人が「仕事ができる人」です。

これまでの多くの本は、「仕事ができる」ための方法についてスキルを重視してきました。それでハウツー本として人気を博したものもあります。しかし、果たして「仕事ができる」というのは単にスキルの問題でしょうか。スキルが役に立たないというつもりはありません。私も、スキルが仕事ができるために重要な要素であることは否定しません。しかし、いかに優秀なスキルを持っていてもセンスがなければ成果を上げることはできません。仕事能力の本質はスキルを超えたセンスにあるのです。と言っても、スキルは育てることができますが、センスを育てるこれと言った方法はありません。だから、人はスキルに飛びつくのです。しかし、センスを磨かなくして成果を上げること、つまり仕事ができる人にはなることはできません。

この本は、そのセンスの正体を明らかにして、センスを磨くにはどうすればいいのかについて語ってくれています。

この本は、4つの章で構成されています。 

第1章 スキル優先、センス劣後の理由

  • アートとかセンスには、アカウンタビリティ(示せる・測れる)がない。スキルは、「できる・できない」「資格を持っている」など他者に容易に示せる。これに対してセンスというのは一例で言うと「女性にモテる」。特定の尺度で測れないし、すぐにモテるという状況を見せられるわけでもない。スキルはエビデンスとして言語化・数値化して示すことができるが、センスのエビデンス言語化・数値化が難しい。スキルと違って「定型的・標準的な方法」がない。
  • スキルは正しい方法の選択と努力、時間の継続的投入さえ間違わなければ、間違いなく、以前よりは「できる」ようになる。一方、センスは、ない人が頑張ると、ますますヘンなことになってしまう。要するに努力と得られる成果の因果関係が極めて不明確である。
  • 昨今では「役に立つ」というものがそもそも求められなくなっている。「役に立つ」から「意味がある」にシフトしてきている。日本の企業の多くは「役に立つ」ことで世の中に価値を生み出してきた。相変わらず「役に立つ」という軸での価値創造からシフトできないでいると、そのうち逆に「役に立たないもの」を生み出すことになる。「役に立つ」という軸から離れられないのは、「役に立つ」はスキルとサイエンスで何とかなるけれど、「意味がある」にはセンスとアートが必要になるからだ。
  • 商売というのは本質的に問題解決である。一つひとつ問題が解決されれば、いずれはすべての問題が解決され、商売もネタが尽きるように思える。ところが、商売には終わりがない。問題解決自体が新たな問題を生み出すからだ。新たな問題設定というのはセンス・アートの領域に入ってくる。
  • 論理と直観はそれぞれ異なった性質を持っているが、論理(スキル)は直観(センス)を必要とする。つまり、出発点においては問題を発見・設定するためには必然的に直観が求められる。先ず直観がなければ論理というものはあり得ない。起点委はスキルではなくセンスがある。
  • スキルとかサイエンスというのは、常に価値基準が外在的にはっきりしているので、いいこともあるが、それゆえ限界もある。「個性の時代」とか「多様性の時代」とか言われるが、多様性や個性はスキルとは折り合いが悪い。弱い人ほど「法則」を求めたがる。
  • 自分自身で形成された価値基準があること、それに自覚的であること、これが「教養がある」ということ。どんなに多くのことを知っていても、世の中の出来合いの価値基準に乗っかっているだけでは教養があるとは言えない。教養形成の本質はアートでありセンスにある。

第2章 「仕事ができる」とはどういうことか?

  • スキルは必要だが、スキルだけだとその人に固有の価値とはなりにくい。スキルを高めれば仕事ができるようになるが、それは特定のスキルセットが対応した領域にはまった時に「できる」という話で「仕事ができる」というわけではない。
  • 仕事ができるというのは、この人だったら大丈夫、どうしても必要とされている状態のこと。これは、スキルの単純延長線上に必ずしもあるわけではない。スキルのある人は掃いて捨てるほどいる。代わりになる人はいっぱいいる。このレベルだとマイナスがないだけでゼロの状態。ゼロの状態からプラスを作っていくのはその人のセンスにかかっている。これが仕事ができるということ。
  • スキル的な競争は「希少資源の取り合い」である。センスは千差万別なので、そもそも競争にも乗らない。強いて言えば、過去の自分との比較競争である。自分で練り上げていくしかない。試行錯誤しながら自分の身の置き所を定めてそこで自分に独自のセンスを深堀りするしかない。
  • スキルの場合は事前に自ら意図して「こういうスキルを身につけよう。だからこういう方法をとって」となるのに、センスとか才能は「自分にはこんな才能があったんだ」とある瞬間に気づくという面がある。事前の計画どころか自己認識や自己評価もできないという面がセンスにはある。
  • 全方位的にセンスがあるという人はいない。本当にセンスがある人は単にセンスがあるだけでなく、自分のセンスの「土俵」がよく分かっている。これが自分の仕事なのか、そうじゃないのかという直観的な見極めが実にうまい。しかし、スキルならば自分の土俵化は先験的に分かるが、センスの場合その仕事が自分の土俵かどうかの見極めは難しい。そこを見極める力というか五感が大事。

第3章 何がセンスを殺すのか

  • 若いうちは運動エネルギーでガンガン走っていても、それが徐々に位置エネルギーに転換していき、社長になると位置エネルギーが100%、運動エネルギーがゼロになる。これがビジネスパーソンの「エネルギー保存の法則」。実力主義の社会では人は能力を発揮できなくなるまでは出世するので、組織の上層部はやがて必ず無能な人によって占められ、下層部にいるまだ能力発揮の余地のある人によって駆逐されるというのが「ピーターの法則
  • 自分の地位や経歴に固執して位置エネルギーを求めるのは人間の性である。仕事ができない人は、エネルギー保存の法則にはまって、行動ではなく位置(状態)を求めて、本来持っているはずのセンスを殺してしまう。状態ばかりを指向する人は、生き残る為の「状態」がゴールになっていて「生き残って何がしたいのか」という「行動」が無視されている。リーダーは「何をしたいんだ」という「行動」を表明すなければならず、この意思の表明が本来の経営である。
  • 「仕事は仕事」と割り切りというのもセンスがある人の一つの特徴である。仕事ができる人というのは、もちろん仕事は情熱を持ってやるが、一方で仕事をしている自分を客観視し、ちょっと醒めたところがある。仕事ができる人は、仕事人たる以前に一人の人間、生活者であるという意識が伝わってくる人が多い。
  • 仕事ができない人は箇条書きが好き。To Doリストが好き。並列的な思考を持っている。並列的な思考の問題点は、時間的な奥行きがなくなることである。並列的な思考がセンスを殺す。「So What?」が捨象されてしまう。並列的な思考だと成果への繋がりという論理展開がなくなってしまう。論理というのはあることと別のこととの間の因果関係だから、そこには必ず時間がある。論理は常に時間を背負っている。
  • 「初めからシナジーなんかない。それは自分で作るんだ。」結果的にシナジーを手に入れたとしても、それは自分がいろいろな物事をある時間配列の中で組み立てていった結果としてできるものだ。
  • 思考や構想には時間的な奥行きがあり、論理でつながっている。順列で考える優れたリーダーには人がついてくる。そこにストーリーがあるからだ。数字や目標では人はついてこない。
  • 戦略はすべて特殊解であって、すべてが文脈に依存していて一般的な解はない。逆に言えば、論理を積み重ねていきついた解が他者と同じであれば、それは論理的に正しくても最適解ではない。「独自のストーリー」があるから、同じものでも違って見える。
  • ビジネス書でも「必殺技伝授の書」が実に多い。ストーリーやシークエンス抜きにひたすらワンフレーズ理解とかキーワード理解になっている。なぜ、飛び道具や必殺技のようなものを求めるかと言うと、仕事のできない人は、だいたい「アウトサイド・イン」の思考様式だからだ。最適な解がどこかに落ちているはずだからと幅広く外部にある者にサーチして、そこからいいものをピックアップして問題を解決しようとする。こうしたアウトサイド・インにセンスを殺す要因がある。
  • 仕事ができる人の思考の軸足はインサイド・アウトにある。完全な未来予測はできない。情報は不完全でも、自分なりのロジックやストーリー、自分なりのハッピーエンドみたいなものが見えている。もちろん知らないことはいっぱいあるけれど、「分からなかったら後で取りに行けばいい」というのがインサイド・アウトの考え方である。
  • 競争優位を左右する要因としてはヒト、モノ、カネの中でも、やっぱり人が大事である。それも人の能力やスキルよりもモチベーションが大事になる。アウトサイド・インではなくインサイド・アウトのベクトルの熱量の強さである。

第4章 センスを磨く

  • センスはフィードバックがかからないので、ない人はないままいくことになる。これがセンスの怖いところである。センスのない人はそもそも自分のセンスがないということをわかっていない。フィードバックに気づくということもセンスである。
  • センスというものの本来の性質に戻ると、極めて相対的だったり、全体だったり、綜合的なものである。裏を返すと、センスというものはその人の一挙手一投足に表れている。センスのある人の一挙手一投足、メモの取り方、商談相手への質問の仕方、会議の回し方、デスク配置、食事の食べ方、鞄の中身などすべてにセンスが含まれている。一緒にいれば何でも学びになる。センスのある人が身近にいればその人をよく視る、これが一番手っ取り早いセンスの錬成法である。大切なのは「全部視る」こと。その人と一緒にいたい、好きになることができれば、全部視ることは苦にならない。
  • センスというのは生得的、先天的なように思われがちだが、実際には事後的、後天的なものである。それぞれに試行錯誤をかけて練り上げていったものである。
  • 大きな人こそ自分を小さく考えている。だからこそ他者に対して注意が向く。相手の立場に立ってものを考えることができる。自分に都合がいいように考えない。自己中心的に考えない。これが人間洞察の基本にある。器が小さい人は自分が大きい。自分のことが頭いっぱいで、自己を客観視できない。自分が小さい人は頼りにされても安易に人に頼らない。貸しが多いのに回収しない。
  • センスというものの中身は「具象と抽象の往復運動」である。ビジネスというのは、結局のところ具体じゃないと意味がない。具体じゃないと指示できないし、結果は絶対に具体的で、どんな問題も具体的に表れる。しかし、超具体を見ても「要するにこういうことだな」という抽象化が頭の中にあって、そこで得られた論理を頭の中の引き出しに入れている。この引き出しがやたらに充実しているのがセンスのある人である。
  • センスのある人は、すごく具体的な問題があっても、まず自分の頭の中の引き出しを開ける。「これってこういうことじゃないか」と該当する論理を取り出してくる。「どうもこの問題の本質はここにありそうなので、こうやったら解決する」となって最後に具体的な指示が出る。これが「具象と抽象の往復運動」である。優れた経営者は日常の仕事の中でこの往復運動を呼吸するようにやっている。超具体の問題が「要するに」という一言ですごく高いところまでいく。この揺れ幅の大きさと頻度、スピードがセンスである。
  • ビジネスにおいては未知の新しい減少が響出てくる。ところがそれを一度自分なりの論理というか抽象の方に上げている人にとっては、「いつか来た道」「いつかどこかで見た風景」になっている。だから新しい事象についても確信をもって素早く判断できる。「ブレない」「意思決定が早い」ということ。

この本は、スキルよりもセンスが重要と言っているわけではありません。スキルとセンスのどちらが重要かは、その時々の状況によります。両者はともに重要ですが、その重要性は文脈や立ち位置によって変化するということです。

今流行りの「スキル」の獲得だけに注力するのではなく、「センス」も磨きましょうということです。

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リーダーのあり方

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 おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で3418人、そのうち東京1308人、神奈川403人、埼玉328人、千葉253人、愛知74人、大阪324人、兵庫77人、京都32人、福岡71人、北海道85人などとなっています。首都圏を中心に急増しており、神奈川も緊急事態宣言の発令を政府に要請するようですが、埼玉・千葉・大阪も緊急事態宣言を発令してよいような状況になっています。確かに、病床使用率など医療体制は第3回目の緊急事態宣言の時よりもひっ迫していませんが、オリンピックが開催され人々の気が更に緩むと感染者の爆発的な増加につながり、当然重症者数も増加します。東京都のモニタリング会議では4週間後に新規感染者2400人との試算が出ています。これは第4波のピークの数を上回る数字です。それにもかかわらず、IOCのバッハ会長は、菅首相に対し「感染状況改善なら有観客で」「日本国民にはノーリスク」などと日本人の命など意に介さず、さすが「ぼったくり男爵」と言われるだけのことはあります。空気が読めないことに関しては、菅首相と甲乙つけがたく、先日の会談など茶番劇、同類相憐れむと言ったところです。

さて、今日は、NIKKEI STYLEの「組織・個人の責任ハッキリ 社員に求める仕事の顔」という記事を取り上げます。

この記事は、2018年に三菱商事からアシックスの社長に転じた広田康人氏にインタビューしたものです。広田氏は、社内の意識改革に取り組み、「自分の仕事は誰よりも自分が熟知している。仕事師になれ」と言います。プロフェッショナルな意識の醸成によって組織の一人ひとりの責任を明確にすることが重要だということです。

1.リーダーの条件

 広田氏は、「『これがリーダーだ』という明確な答えはない。個性や人柄によっても違う。ただ最低限の条件はある」と言っています。その最低限の条件というのが

  1. 前向きであること
  2. ブレないこと
  3. 健康であること
  4. 好き嫌いではなくパフォーマンスで人を判断すること
  5. 約束を守る
  6. 遅刻しない
  7. 成果を出す

などです。リーダーは、最低限、これらの基本は守っていかなければなりません。基本を徹底することは、部下の安心感にもつながり、「この人について行って大丈夫」という意識が生まれます。

2.責任を明確に、組織も改変

 「自分の仕事を誰よりもできることが大事」です。自分の仕事がどういうものでどう回っているのか、しっかりと把握することが重要なのです。それが「仕事師になれ」ということです。そのために重要なのが役割分担です。自分がどのような仕事をしていて、どのような役割を担っているのかをしっかりと把握することです。それによって自分の責任も明確になります。

 それは組織についても同じです。組織・チームとしての役割分担も明確にすることで、組織・チームの責任も明確になります。

3.ブレないこと

 企業には多くのステークホルダーがいます。これらのステークホルダーの意識や考えは千差万別です。ステークホルダーから色々な意見や反応が入ってきます。これらに答えようとすれば、終始一貫せず考えがブレてしまいます。自分の考えをブレずに貫き通すということはなかなか難しいものです。人間なので、感情もあれが色んな考えがわいてきます。だから瑣末なところでブレるのはやむを得ないことですが、判断の基軸がブレてはダメなのです。

次に、プレジデントオンラインの「橋下徹『結果を出せるリーダーが必ず守っている3つのポイント」を取り上げます。

橋下氏は、「ビジネスにおいては、決断するための手続き・ルールがはっきりと決まっていないことが多々ある。リーダーは決断に至るまでのルールを自分で作り上げていかなければならない」と言い、手続き的正義に沿った決断するためのルール作りのポイントを3つ挙げています。その3つとは

  1. 立場、意見の異なる人に主張の機会を与える
  2. 期限を決める
  3. 判断権者はいずれの主張の当事者にも加わらない

です。まず、お互いの主張が出尽くすまで、徹底的に議論させることです。そして、いつまでもダラダラしていては決断が先延ばしになるだけなので、期限を設けなければなりません。そして最後に判断するのはリーダーです。リーダーが下した結論が絶対に正しいという保証はありません。しかし、手続き的な正義・プロセスに則った決断なので、納得が得られやすくなります。

橋下氏が、大阪市長大阪府知事時代に行った多くの決断が、本当にこのようなルールに則って行われたものか、その判断が間違っていなかったのかについては、私見は差し控えます。

確かに、橋下氏が言うように、手続き的正義・プロセスに則ったルールに従って判断権者であるリーダーが決断しなければならないことは間違いありません。しかし、手続きさえ踏めば、リーダーが恣意的にどんな判断をしてもよいのかというと、それは間違いです。

企業で言えば、どんな企業にも企業文化があり、ビジョンや理念があります。リーダーは、常に企業文化、ビジョンや理念を念頭に置いて自分の考えを発信しなければなりません。リーダーと全社員が企業文化やビジョン、理念を共有していることが重要です。先ほど書いたようにリーダーはブレてはいけません。自分の考えに、しっかりとした信念や基軸を持っていなければならないのです。リーダーの意思決定・判断は、常に企業文化やビジョン、理念に合致したものでなければならず、リーダー自身の基軸からブレてはいけません。