中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

中小企業経営のための情報発信。中小企業から日本を元気に

マネジャーが陥る罠

久しぶりの投稿です。今日もブログを御覧いただきありがとうございます。
新年度が始まり早2ヶ月が経ちました。この4月から新しく管理職・マネジャー、リーダーになった人もいると思います。
以前「プレイングマネジャーになってはならない」と書いたことがあります。リーダーやマネジャーの仕事は、特定の目的を達成するためにあらゆる要素を制御することが仕事です。簡単に言えば、自分が仕事をするのではなく、他の者(メンバー)を率いて仕事をさせることが役割です。
ところが、出世してリーダーやマネジャーになってもこれまで通り同じ仕事を続けようとしている人が多いのです。
1.プレイングマネジャーが陥りやすい罠
 確かに日本の企業の管理職の大半はプレイングマネジャーです。人(部下やメンバー)を動かすマネジメント業務と自ら動くプレイング業務を両立していかなければなりません。ここで重要なのは、マネジメント業務とプレイング業務のどちらに軸足を置くかということです。
 多くのマネジャーはプレイング業務に走りがちです。何をやらかすか分からない部下に仕事を任せるよりも、自分でやった方が安心ですし、時短になるからです。
 このやり方は、短期的には効果がありますが、いつまでもこのやり方を続けていては部下が育ちません。部下が育たないということは、将来的に組織の成果を出しにくい状況を作っているということです。 
 リンダ・ヒルが『昇進者の心得』の中で語っている「成果を上げられない管理職が陥る5つの落とし穴」というのがあります。
Ⅰ:隘路に入り込む
 Ⅱ:批判を否定的に受け止める
 Ⅲ:威圧的である
 Ⅳ:拙速に結論を出す
 Ⅴ:マイクロ・マネジメントに走る
2 5つの罠に陥らないために
 5つの罠に陥らないために2つの方法が考えられます。
 その1つが「M理論」です。PM理論は、三隅二不二博士によって提唱されたリーダーシップ論で、Pはパフォーマンス、Mはメンテナンスの頭文字です。
 リーダー行動には「リーダーシップP行動(集団の目標達成の動きを促進し、強化するリーダー行動)」と「リーダーシップM行動(集団や組織の中で生じた人間関係の過度な緊張を解消し、激励と指示を与えて、自主性を刺激し、成員の相互依存性を増大させていくリーダー行動)」の2つの次元で捉えます。
 この理論では、
 ➀P、Mともに強いリーダーシップ(PM)のもとでは生産性もモラール(士気)の両方とも最高となった。
 ②P、Mともに弱いリーダーシップ(pm)のもとでは生産性とモラールの両方とも最低であった。
 ③Pが強くMが弱いリーダーシップ(Pm)やPが弱くMが強いリーダーシップ(pM)のもとでは、生産性やモラールは中間知を示し、前者の方が後者より生産性が高くモラールは低かった。
のです。
 この理論から言えることは、リーダーには、業績を達成するパフォーマンス機能と人間関係を良好に保ち人と組織をまとめるメンテナンス機能の両方がバランス良く備わっていることが必要だということです。業績への関心だけでなく、人への関心を持つリーダーに進化する必要があるのです。
 もう一つが「マネジリアル・グリッド理論」です。「マネジリアル・グリッド理論」はR.R.ブレークとJ.S.ムートンによって提唱された理論で、『人への関心』『生産への関心』という2つの次元をそれぞれ9段階尺度で構成し、全部で81のリーダー行動を仮定します。基本的な考えはPM理論と同じです。 
 人への関心並びに生産への関心がともに最高のリーダー行動(9.9型)が最もこみゅにけーしょんを妨害されず明確な者となり、無益な葛藤は解消し、仕事への打ち込みが得られ想像力が発揮されるというのです。ここでも、業績と人へも最大の関心を持てるリーダーが理想的だというわけです。
3.メンバーへの関心を持つために
 業績のみならず、人への関心を持つためには、これまで何度も言っていますようにコミュニケーションをとることです。コミュニケーションは「言葉と思いのキャッチボール」で、相手を知ることが重要です。心理学者ロバート・ザイアンスによれば、「人や物に何度も触れることで警戒心が薄らぎ、関心や好意を持ちやすくなる(ザイアンス効果)」のです。
 人への関心を持つためには、こまめなコミュニケーション機会を作っていくことが大切なのです。日頃の挨拶、声がけ、報連相や面談機会等、コミュニケ――ション機会をこれまで以上に増やすことです。コロナ禍で、テレワークやリモートワークでコミュニケーション機会が減っていますが、意識的にリモートでの1on1面談、テレビ会議での雑談機会など意図的に行なっていきましょう。

休日の本棚 企業変革力

おはようございます。久しぶりの投稿です。申し訳ありません。
今日は日曜なので本の紹介をします。以前紹介した本ですが、役に立つと思われるので再度紹介します。ジョン・P・コッター著「企業変革力」(日経BP社)という本です。この本は、タイムズ紙で「企業経営に最も影響を与えた25冊」に選ばれています。
コッターは、「企業変革の落とし穴」という論文の執筆者で、弱冠33歳でハーバード・ビジネススクールの教授に就任したリーダーシップ論・企業変革マネジメントの第一人者です。
コッター教授は、「変革の進め方には間違いが多い。しかし、変革には定石がある」といい、この本でその定石を説明してくれています。
コッター教授が、より競争力の強い企業に生まれ変わろうとする100を超える企業に注目し、その企業の変革事例から得られた教訓を元にしています。この100を超える企業には、大企業もあれば中小企業もあり、アメリカ企業だけでなく他国の企業もあり、倒産寸前の企業もあれば高収益を上げている企業もあります。
ところが、コッター教授の分析によれば、企業変革に成功した企業はほとんどなく、また失敗した企業もほとんどないということです。ほとんどのケースが成功と失敗の中間にあり、どちらかと言えば、失敗に近いところに位置付けられているというのです。
これらの事例から得られる教訓が2つあると言います。
Ⅰ:変革プロセスは、いくつかの段階を踏まなければならない。通常、最後まで辿り着くには相当長い時間が必要である。途中にスピードアップを図り一部省略すると、満足いく成果を上げることはできない。
Ⅱ:どの段階であれ、致命的なミスを犯すと、変動運動はその勢いをそがれる。これまでの成果は台無しとなり、決定的なダメージを被りかねない。
今後、競争が激化するビジネス環境において、この教訓は極めて有益です。
ウイズコロナ・アフターコロナ時代の激動のビジネス環境においては、変革は必要不可欠です。厳しさを増す新しい競争環境に対応するために、ビジネスのやり方を抜本的に改革していかなければなりません。変革を成功させるためには、まずは個人あるいは社内グループが自社の競争状態、市場シェア、技術トレンド、財務状態などを徹底的に検討することから始めなければなりません。そして次に、これらの情報、特に直面する危機、潜在的な危機、あるいはタイムリーで大規模なビジネスチャンスなどについて、広範かつ効果的に社内に浸透させる方法を考えなければなりません。変革プロセスを立ち上げるだけでも、多くの社員の積極的な協力が必要不可欠です。モチベーションのないところに協力は生まれません。
企業変革には段階があり、その段階を着実に踏んでいかなければなりません。
企業変革には、次の8つの段階があります。
Ⅰ:緊急課題であるという認識の徹底・・・①市場分析を実施し、競合状態を把握する。②現在の危機的状況、今後表面化しうる問題、大きなチャンスを認識し議論する。
Ⅱ:強力な推進チームの結成・・・①変革プログラムを率いる力のあるグループを結成する。②1つのチームをして活動するように促す。
Ⅲ:ビジョンの策定・・・①変革プログラムの方向性を示すビジョンや戦略を策定する。②策定したビジョン実現のための戦略を立てる。
Ⅳ:ビジョンの伝達・・・①あらゆる手段を利用し、新しいビジョンや戦略を伝達する。②推進チームが手本となり新しい行動様式を伝授する。
Ⅴ:社員のビジョン実現へのサポート・・・①変革に立ちふさがる障害物を排除する。②ビジョンの根本を揺るがす制度や組織を変更する。③リスクを恐れず、伝統にとらわれない考え方や行動を推奨する
Ⅵ:短期的成果を上げるための計画策定・実行・・・①目に見える業務改善計画を策定する。②改善を実現する。③改善に貢献した社員を表彰し、報奨を支給する。
Ⅶ:改善成果の定着と更なる変革の実現・・・①勝ち得た信頼を利用して、ビジョンに沿わない制度、組織、政策を改める。②ビジョンを実現できる社員を採用し、昇進させ、育成する。
Ⅷ:新しいアプローチを根付かせる・・・①新しい行動様式と企業全体の成功の因果関係を明確にする。②新しいリーダーシップの育成と引き継ぎの方法を確立する。
企業変革を成し遂げるには、上記の8つの段階を順次進めていけばいいのですが、それぞれの段階に落とし穴が待っています。
1.第1ステップの落とし穴:「変革は緊急課題である」ことが全社に徹底されない
 人間は、悪いニュースを避けようとするバイアスが働きます。成功事例では、変革推進チームのメンバーが不愉快な事実、すなわち新たなライバルの出現、利益率の低下、市場シェアの縮小、売り上げの伸び悩みなどといった不利益な事実を受け入れ、忌憚のない議論ができる環境が構築されていたのです。危機意識が十分に浸透していなければ、変革は不可能です。この記事では、経営幹部の75%程度が「このままビジネスを進めていては絶対だめだ」と本気で考えている必要があると言います。そして、変革を推し進めるには強力なリーダーシップが必要です。変革を成功に導くには、まずは経営幹部が危機意識を持ち、それを全社的に共有し、強力なリーダーが率先して推し進めていく必要があるのです。
2.第2ステップの落とし穴:変革推進チームのリーダーシップが不十分
 大がかりな変革プログラムでも少人数でスタートすることが多いのです。しかし、トップが積極的なサポートしない限り、大規模な変革は実現できません。
 経営陣が変革の緊急性を十分に認識していれば、変革推進チームの結成は容易ですが、誰かが音頭を取って、チームメンバーをまとめ、自社の問題点やビジネスチャンスに関する認識を共有させ、必要最低限の信頼関係とコミュニケーションを築き上げなければなりません。ここで失敗する企業の多くは、強力な変革推進チームの重要性を侮っていることにあります。
3.第3ステップの落とし穴:ビジョンが見えない
 変革に成功した企業は、例外なく変革推進チームに、顧客や株主、社員に説明しやすくかつアピールしやすい未来図を持っています。ビジョンは、単に5年計画のような数字を羅列したものではなく、自社が進むべき方向性を明確に指し示したものでなければなりません。熟考に熟考を重ねた分析と理想が反映され、素晴らしい出来栄えのものとなってはじめてビジョンを実現できる戦略も策定できるのです。
4.第4ステップの落とし穴:社内コミュニケーションが絶対的に不足
 企業内部の多くの人たちが進んで協力してくれない限り変革は不可能です。信頼に足るコミュニケーションなくして、社員の心や関心を集めることなど不可能なのです。
 変革に成功した事例では、ビジョンを広く知らしめるために、経営幹部がありとあらゆるコミュニケーション手段を駆使し、説明し、社員からの質問を受けてこれに応えることを行っています。コミュニケーションは言葉と行動の両方が必要であり、特に行動はもっとも説得力のある手段です。
5.第5ステップの落とし穴:ビジョンの障害を放置してしまう
 変革推進チームが新たな方針を効果的に伝えられれば、ある程度は社員に新しい行動を起こさせることができます。しかし、それだけでは不十分で、イノベーションを実現させるには障害を取り除くことが必要です。
 新たなことを起こそうとすれな、当然多くの障害が立ちふさがります。最も厄介なのが、変革を拒み、全社の動きとはそぐわない要求を突き付けてくる管理職です。
 どんな組織でも、変革プロセスの前半では、すべての障害を取り除くだけの力も勢いもありません。それでも重大な障害と対峙し、場合によっては、それが人間でも、泣いてでも斬らなければならないときがあるのです。 
6.第6ステップの落とし穴:計画的な短期的成果の欠如
 変革はそんなにたやすいことではなく、時間がかかります。その際、短期的な目標を設定しておかないと、変革の勢いを失速させることにもなりかねません。短期的に何らかの成果が上げられなければ、多くの人は投げ出してしまいます。
 短期的に成果を上げることと、短期的に成果を上げたいということとは別物です。後者は受動的であり、前者は能動的です。順調に進んだ変革の成功例を見ると、経営陣が業績が明らかに改善しうる手段を積極的に模索し、年度計画に目標を設定し、目標達成に貢献した社員を積極的に表彰したり昇格させたりしています。
 「変革には時間がかかる」という意識が社員に広がると、「変革は喫緊の課題である」という事実がなおざりにされてしまいます。短期的な成果を出すという責務を課すことで、緊急性を意識しつつもビジョンに磨きをかける努力が後押しされるのです。
7.第7ステップの落とし穴:早すぎる勝利宣言
 経営者としては、変革の勝利宣言を早く出したいと焦るのも無理はありません。個々の成果を祝うのは結構ですが、この段階で勝利宣言をすると、誰もの気が緩み、今までの努力が台無しになることにもつながります。少なくとも5年、10年かかります。変革の道のりは険しく、途中で気が緩んでしまえは脆くも崩れ去り、後退の可能性が生まれます。しっかりと、一歩ずつ段階的に進めていくことです。勝利宣言を焦るべきではありません。
8.第8ステップの落とし穴:変革推進チームのリーダーシップが不十分
 会社を人間に例えると、変革という血液が身体の隅々にまでいきわたってはじめて「変化個の成果」が定着したといえます。新しい行動様式が社内の規範や価値観として根を下ろさない限り、変革の圧力が弱まるや否や廃れてしまいます。
変革を企業文化として制度的に根付かせるには2つの要素が必要だと言います。
新しいアプローチや行動様式、考え方など業務改善にどれくらい貢献しえたのか、社員に意図的にアピールしていくこと
次世代の経営陣に新しい考え方がしっかり身につくよう、十分な時間をかけること
企業変革は、どのようなものであれ、時間がかかるものですし、経営トップが中心となり全社を巻き込んで行わなければ成功することはできません。だからと言って、この激動の時代、VUCAの時代において、変革を行っていかなければ、企業も持続的成長を遂げることも生き残ることもできません。
「変革で最大の障害は古い企業文化だ」と言われることがあります。古い企業文化を変えなければ変革は不可能だということです。しかし、コッターは「それは間違っている」と言います。企業文化は長年にわたって培われてきたものなので、簡単に変えることはできませんし、操作もできません。企業文化を変えようとするよりは、まずは人々の行動を変えることです。行動を変えることで成果が出ることを認識して貰うことです。人々の行動が変われば、少しずつ企業文化も変わっていきます。企業文化を変えるのは変革の最初ではなく、最終段階です。
企業変革を行なう人にはマネジメント能力だけでなく、リーダーシップも必要です。変革にはマネジメント力とリーダーシップ力がバランス良くあることが大切です。どちらかに偏っていてはダメです。変革が進まない企業では、マネジメント力を持つ人材はたくさんいても、リーダーシップを持つ人材がいません。これでは「船頭多くして船山に登る」になり、明後日の方向に行ってしまいます。変革が進むはずはありません。
そして、変革を成功させるには人々を借りた立てる単純明快なビジョンが必要で、そうしたビジョンを掲げることができれば、ミスを起こす確率を減らすことができ、変革の可能性は高まるはずです。この単純明快はビジョンを立て、実現に向けて人々を駆り立てることができる能力がリーダーシップなのです。

休日の本棚 デール・カーネギー「人を動かす」

おはようございます。
今日は、デール・カーネギー著「人を動かす」(創元社を紹介します。著者のカーネギーアメリカの作家で自己啓発成功哲学の書物も多く、本書「人を動かす」は1936年に出版され、未だに読みつながれている名著です。カーネギーと言えば、鉄鋼王アンドリュー・カーネギーを思い浮かべる人がいますが、全くの別人です。
カーネギーの著書は「他者に対する自分の行動を変えなければ、他者は変わらない」という考えが根底にあります。本書「人を動かす」でもこの考えが柱になっています。
この本は、人を動かすことの本質、つまりマネジメントの本質について、さまざまなエピソートを交え、「原則」としてまとめています。
人を動かす3原則」「人に好かれる6原則」「人を説得する12原則」「人を変える9原則」について、具体的なエピソード・物語を交えながら示されていきます。詳しくは直接本書を手に取って読んでください。為になります。
1.人を動かす3原則
盗人にも五分の理を認める・・・どれだけ自分が正しくても、相手が間違っていようとも相手を認めることから始めます。たとえ泥棒であっても、「自分が間違っている(悪い)」とは認めたがらないものです。そのような者にいくら正論を言っても意味がありません。状況が悪化するだけです。相手を批判したり非難もせず、苦情も言わず、まずは相手を認めることです。
重要感を持たせる・・・人は誰しも「重要な存在になりたい」という欲求を持っています。相手の優れている点をストレートに伝え、相手の自己重要感を満たすことです。お世辞ではなく、相手の心に響くように本音で伝えることです。これは、率直で誠実な評価を相手に与えることを意味します。
人の立場に身を置く・・・自分のことではなく、相手の立場に立って、相手が何を望んでいるかを考え、それを手に入れる方法を教え、相手の利益と自分の利益を一致させることです。
 以上の3つ、つまり、①どんな相手であっても非難せず相手を認め、②相手に心からの賛意を示して自己重要感を満たし、③相手の立場に立って相手の望みが何かを考えそこに自分の望みの標準を合わせることが、人を動かす原則ということです。
2.人に好かれる6原則
誠実な関心を寄せる・・・人は自分に関心を寄せてくれる人に関心を寄せるようにできています。人に好かれるためには、自分から相手の誠実な関心を寄せることです。
笑顔を忘れない・・・笑顔が多い人の方が好かれます。笑顔は伝染するので、笑顔を心がければ、相手も楽しく嬉しい気分になります。
名前を覚える・・・人は名前を覚えてくれ、自分の名前を呼んでくれる人に好意を寄せます。
聞き手に回る・・・人は自分の話をしているときは気分が良いもので、相づちを打ち、ときに質問をはさみながら熱心に聞いてくれる人に好感を抱きます。
関心のありかを見抜く・・・人は自分の興味があることに共感されると、その人に好感を覚えます。
心から褒める・・・相手を心から称賛することで、相手の自己重要感を満たすことです。
 上の6つが相手に好かれる6原則ですが、簡単なようで難しいものです。これらはよりよい人間関係・信頼関係の構築やコミュニケーションのあり方に通じます。
3.人を説得する12原則
議論を避ける・・・議論はほとんどの場合建設的でなく、双方の自尊心を傷つけるだけで終わります。自分の意見や考えが正しいと思っても、相手が議論をふっかけてきても、それに応じない心構えが大切です。
誤りを指摘しない・・・相手が間違ったことを言ってきても、鬼の首を取ったような対応はNGです。相手の意見を真っ向から否定したり、断定的に自分の意見を主張したりすれば、あとで相手を説得できなくなります。
誤りを認める・・・誰でもミスを起こします。自分がミスを犯したときは素直にミスを認めることです。こちらが下手に出れば、相手も寛容になり、説得するための土壌はできます。
穏やかに話す・・・自分の意見を断定的に述べるのではなく、相手を尊重する姿勢が重要です。穏やかな口調で、物腰を柔らかく話すことです。
エスと答えられる問題を選ぶ・・・相手が納得できない、簡単に返答できない問題を選んでしまうと、相手は警戒します。まずは相手が「イエス」といえる問題を選んで、何度も「イエス」と言わせることで警戒感を和らげ、肯定的な方向へと向かわせるのです。
喋らせる・・・聞き役に徹して、相手に喋らせることで、相手の自己重要感を満たすことです。
思いつかせる・・・考えや主張をすべて伝えれれば相手に自分の主張を押しつけることになります。相手にキーワードやヒントを与え、最後は自分で気づくように仕向けることです。
人の身になる・・・「相手の立場だったらどう思うだろうか」と相手の立場に立つことが何事においても重要になってきます。つまり相手の行動にフォーカスし、コミュニケーションすることが大切です。
同情を寄せる・・・相手に同情することで、相手の敵愾心をほどき、そこから相手の食い違った意見を修正していくのです。
美しい心情に呼びかける・・・相手の美しい心情に呼びかけることで、こちらがして欲しい行動を訴えかけ、相手に行動させることです。
演出を考える・・・単に事実を伝えるだけでなく、相手が興味を持つような演出を考えて、相手を楽しませるようにすることです。
対抗意識を刺激する・・・回りと比較することで、相手の対抗意識を芽生えさせ、仕事の質やスピードを増大させることです。
 人を説得する12原則では、人を動かす3原則、人に好かれる6原則をベースに具体的な方法が書かれています。対立することを避け、相手の立場と考えを尊重し、穏やかな言動で接することで、相手はこちらの意見を受け入れやすくなります。その上で、相手の良心に訴え、相手が興味を引き楽しめるような演出をすることによって、結果的に相手がこちらの望む行動を取るようになるのです。
 ここでも、「自分が変わることによって相手も変わる」というカーネギーの考えが忠実の示されています。
4.人を変える9原則
まず褒める・・・相手に優れたところがあればしっかりと褒めることで、相手の気分を良くすることです。その上で直すべきところに触れることで、相手は真摯にこちらの意見を聞き入れます。
遠回しに注意を与える・・・苦言を呈するときは、直接的な表現は避け、遠回しに言うことです。「~するな」「~しろ」と言うのではなく、それとなくこちらの意見に気づかせるように持って行くのです。
自分の過ちを話す・・・自分の失敗のエピソードを話すことで相手の警戒心を解くことができます。相手も、反抗心を抱くことなく自分の過ちを認め取り組むようになります。
命令をしない・・・命令するのではなく、自主的にやらせることが重要です。「~しろ」ではなく「~してはどうか」と言うように一つの提案という形をとることです。
顔を潰さない・・・相手の顔をしっかりと立て、相手のプライドを傷つけないことです。
わずかなことでも褒める・・・人は「褒められて伸びる」ものです。褒められると嬉しくなりやる気になります。どんな些細なことでも褒めるべきところは褒めることです。
期待をかける・・・人は期待がかけられるとやる気になり頑張るもの相手を信頼し期待を掛けていることを伝えることです。
激励する・・・人は激励されると、その期待に応えようとパフォーマンスを上げるものです。
喜んで協力させる・・・相手が喜びそうな肩書きを与え、こちらに協力してくれるように持って行くのも重要な技術です。相手の自己重要感を満たしてあげることで、こちらに協力させることができるのです。
「人を動かす」と言うことはビジネスにおいても日常生活においても難しいものですが、基本はよりよい人間関係の構築です。そのためには、相手の立場に立って、心底相手を思いやるということが大切になります。
相手を変えようと思っても、思い通りに相手を変えることはできません。まずは自分が変わることです。自分が変わり、相手の心に響く言葉を掛け、相手の立場に名って相手を思いやるようになれば、相手も自然と変わっていくものです。
 85年以上も読み継がれている名著です。一読の価値は十分あります。
 この本の巻末に「幸福な家庭を作つくる7原則」が添付されています。参考にしてください。
幸福な家庭をつくる7原則
・口やかましく言わない
・長所を認める
・あら探しをしない
・褒める
・ささやかな心づくしを怠らない
・礼儀を守る
・正しい性知識を持つ

スタンフォード式生き抜く力

おはようございます。
昨日は「激動の時代を生き抜く力」と題して書きました。本棚を見ていると星友啓著「スタンフォード式生き抜く力」(ダイヤモンド社)という本がありました。休日ではないので本の紹介ではありませんが、昨日に続けて「生き抜く力」について書いていきます。
1.「同調圧力」が絡み合う日本で生き抜く方法
 以前にも「同調圧力」について書きましたが、同調圧力は、三省堂大辞林では「集団での意思決定の際に多数派の意見に同調するように作用する暗黙の圧力」とされています。自分の考えや意見と異なる判断基準を他者から押しつけられ、その押しつけられた判断基準に基づいて行動するときに感じるものです。それは押しつけた側が多数派であり、多数派の判断基準に従わないと何らかの不利益を被るかも知れないと感じてしまうことから生まれます。
 「自分の意見は大事だ」と言われますが、積極的に自分の意見を口にすると白い目で見られるのが日本社会です。上司や顧客な痔、周りに気を配り、周りとうまく調和していこうとすれば、自分の意見は飲み込んで相手の合わせるしかありません。多くの人は、自分の意見がないわけではなく、相手や周りとの調和を乱すのを恐れて敢えて口にしないのです。
 しかし、ビジネスの世界は、ある意味、弱肉強食の世界です。特に現在のような多様性が求められる時代には、自分の意見を主張しなければ生きていけなくなります。一方で、自分の意見ばかりを口にする人は、自己中心的、自分勝手を思われてチーム内で孤立し、人間関係や信頼関係は築けません。
 「相手との関係を保ちながら自己主張すること」が求められているのです。
2.自己主張の2つのハードル
 自己主張には2つのハードルがあります。
 その1つは、自分の意見を主張したとき、相手の反応に対する不安や緊張です。相手にどう思われるか、否定されてしまうかも知れない、そんな気持ちを持つことです。
 もう1つは、緊張や不安をうまくコントロールできても、自分が実際に発したことで、その場が気まずくなるというリスクです。
 自分の意見を主張しながら、円滑に会話をするというのは簡単ではありません。
3.ケンカしない論点整理話法
 「スタンフォード式生き抜く力」では、この2つのハードルを克服するために「ケンカしない論点整理話法」が挙げられています。
 この話法の基礎にあるのは、「あなたの人格と相手の人格のガチンコ対決」にならないようにする配慮です。あくまでも、意見と意見との違いを建設的に議論していることをはっきりと印象づけるのがカギです。
 人格VS人格ではなく、あくまでも意見VS意見であって、目標達成という共通目的に向けて建設的な課題解決を図ることなのです。互いの人格は全く関係ありません。しかし、議論が白熱すると相手の人格批判にまで及んでしまうことがあります。これは絶対にしてはいけないことです。
 人格対立に発展するケンカを避けるには、意見の違いは考え方の多様性であって、人格対立ではないという明確なメッセージを相手に発進し続けることです。
 そのためには、自分も相手も全体像を見渡せるように「論点を整理しながら」俯瞰的に全体を見渡しながら会話を進めていくことです。このように、自分の意見も相手の意見も整理しながら、各意見の根拠や問題点を見渡す視点を自然と出しながら会話を進めていくのが「ケンカしない論点整理話法」です。
4.論理の平和利用
 通常、論理的に考えるために気持ちを平静に整えようとします。この「ケンカしない論点整理話法」は、論理的な視点を持つことで、感情的にならず、冷静にいられる視点を保てるという考え方です。論理的に考えるための冷静である必要があるのか、論理的に考えることで冷静になれるのか、どちらが先かは関係ありません。
 論理的な視点を自然に会話に採り入れ、建設的な対話の姿勢を促すことが大切です。
 論理的な姿勢をスマートに取り入れることで、人格対立から切り離し、ガチンコのケンカを避ける、これが「論理の平和利用」です。

 

激動の時代を生き抜く力

おはようございます。
今は、変化が激しく、先が読めず何が正解か分からないような時代です。行動を起こせば失敗することもあります。だからといって「何もしなければ、傷つかない」「何もしなければ失敗しない」などと考えるのは大間違いです。
これまで何度もエジソンの言葉を紹介して、「失敗は成功の母」といわれるように「失敗の中に成功の芽である」ということを書いてきました。中には「失敗は失敗にしか過ぎない」という人もいます。確かに失敗しないに越したことはないのかも知れませんが、失敗しない人なんていません。失敗しないという人は行動を控えて挑戦していないだけです。挑戦し続けていれば、必ず失敗します。その失敗の原因を探求し改善することで、次の挑戦で成功することができるのです。もちろん、過去の失敗にとらわれていたのでは前に進めません。過去の失敗の原因を探り解決方法が分かったならば、過去の失敗は忘れて未来を向いていくのです。多くの人は過去を起点に、過去⇒現在⇒未来と志向します。以前「ぶっとんだ目標」のときにも書きましたが、未来を起点として志向するのです。多くの人は、過去を起点にするので、過去の失敗に引きづられて未来においても更に大きな失敗を犯してしまいます。未来を起点に考えれば、未来から逆算して目標を設定できるので、過去の失敗に引きづられて大きな失敗することはありません。失敗するとしても小さな失敗で修正・改善可能なものばかりです。
1.修練すべき時に修練できないのは大きな損失
 先ほど書いたように「はじめから何もしなければ失敗しない」という人がいます。しかし、何もしなければ得られるものはありません。失敗から生まれる成功もなければ、偶然の成功も、理由ある失敗もありません。それは極めて大きな損失です。
 また、「何もしない方がラク」という人もいます。「失敗するくらいなら何もしない方が怒られることもなく気がラク」というワケです。何もせず挑戦しなければ、修練・経験も積めないため、成長を感じられず、いつまで経っても不安で自分に自信が持てないままの人生になってしまいます。
 失敗を恐れて何もしないことは、新しいことに挑戦できないし、挑戦できないと言うことは成長もしないということです。
 以前にも紹介しましたが、Amazonが開発した「Fire Phone」というスマートフォンがあります。このスマホは、カメラで撮影した商品や音声認識された音楽や映像を特定し、ウェブページに飛んで瞬時に購入できるという機能を搭載していました。Amazonの「世界をすべてのショールーム化する」という野望が詰った製品でした。ところがAmazon(ベゾス)が考えるほど反応はなく、販売1年ほどで発売停止に追い込まれました。ユーザーがスマホに期待していたのは、電池の持ち時間や通信量の改善であり、買い物が少し便利になったからといってそれ程魅力に感じなかったのです。ユーザーのニーズとAmazonのビジョンの間に大きなズレがあったのです。Amazonは自社が描くビジョンにばかり目がいってユーザーの視点が欠落しユーザーのニーズが把握できていなかったのです。
 しかし、Amazonはこの失敗経験を見事に活かし、AIアシスタントの「Alexa(アレクサ)」を搭載した「Amazon Echo(アマゾンエコー)を大成功に導きました。
 ベゾス氏は、「会社の規模が大きくなるにつれて、失敗の規模も大きくなる必要がある」と言っています。会社の規模が大きくなっているのに、失敗の規模も大きくなっていなければ革新的な発明や製品はできないということです。
 大企業は、失敗をすれば大きな損失を出すかも知れない大きな挑戦を続け、成長し続けているのです。
2.挑み続ける力が「変化の時代を生き抜く力」に
 今は激動の時代で、何が正解か分かりません。正解が分からないからと言って手をこまねいているわけには生きません。行動を起こすしかないのです。何もせずにいれば時代に取り残され成長するどころか衰退、ひいては潰れるしかありません。
 絶えず前に向かって前進するしかないのです。物事は諦めて辞めた時点で失敗となります。1度や2度のミスで辞めてしまえばそれはただのミスで、失敗と評価されます。1度や2度のミスで諦めずに、その経験を糧として修正・改善していくことで成功への道筋が生まれます。
 物事を進めていると、何処かで停滞する時期が現れます。成長が停滞してしまうことを「プラトー(高原)現象」といいますが、右肩上がりだった成長曲線が平らになり、高原のようになるのです。この時期にもうダメだと諦めてしまえば、それで終わってしまいます。それでは失敗です。
 ここで一踏ん張りできれば再び右肩上がりに成長できます。何事も右肩上がりで順調に行くことなどありません。多くの場合、乱高下を繰り返しながら少しずつ成長していくものです。落ちたときに落ち込んで辞めてしまえばそこまでです。辛抱強く努力していくことで成長していくのです。
 ケンタッキーフライドチキンカーネル・サンダースは、転職を繰り返し、40歳過ぎに「サンダースカフェ」という小さなレストランをオープンしますが、火事に遭い倒産します。次に、運転手向けのレストランで再起を図りますが、新しいハイウェイができクルマの流れが変わったことで再び倒産します。残ったのは、ケンタッキーフライドチキンのレシピのみです。レシピに自信のあったサンダースは、レシピを販売してロイヤルティを受け取るビジネスを思いつきます。自分で店を開業する資金がなかったから思いついたアイデアです。しかし、レシピを売り込んでも断られてばかりで、うまくいきません。それでも諦めずに売り込みを続けた結果、少しずつレシピを買ってくれる店舗が増え、アメリカ全土だけでなく、世界中に広がり大成功に導いたのです。サンダースがこのビジネスを始めたのは65歳の時でした。
 サンダースは「失敗とは、再始動したり、新しいことを試したりするために与えられた機会だ。私はそう信じている」と言っています。
 何事にも始めるのに遅いと言うことはありません。サンダースは65歳から新しいビジネスを始め大成功しています。また、途中で諦めなければ必ず成功することを教えてくれています。
 転んでも諦めずに起き上がる力、転んでもピンチを好機に変える力、これが激動の時代を生き抜く力となるのです。 

 

休日の本棚 BCG戦略コンセプト

おはようございます。
今日は、水越豊著「BCG戦略コンセプト」(ダイヤモンド社という本を紹介します。
BCGはボストンコンサルティンググループの略称で経営戦略に特化した世界最初のコンサルティングファームです。
新型コロナの影響で、経済の不況が長期化し、経営環境の厳しさが増している昨今、企業の経営者には巡り合わせの悪さや不運を嘆くよりも独創的な施策を講じた事態を打開すべく行動を起こすことが必要です。現代のように変化が激しく何が正解か分からない時代には、先行企業に追随し真似ようとしても、それが正しいとは限りません。自分の頭で考えて自分なりの独自の切り口を見つけそこから切り込んでいくしかありません。そのための深い示唆や多角的な視点などを与えてくれるのが戦略コンセプトです。
BCGは経営戦略コンサルティングを主業務としながら、ユニバーサルに通じる普遍的理念の追求も行い、「経験曲線」「PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)」など経営学をかじったことのある人なら聞いたことのある多くのコンセプトを生み出しました。
この本は、こうしたBCGが打ち出した戦略コンセプトの中から、戦略経営の全体像を描き、最終的には3つの視点から、6つのコンセプトを取り上げ紹介しています。
1.競争優位の6つの視点
 これまでの日本の経営戦略は「それなり」戦略、つまり戦略はそれなりに他社並みのものを作って、後は現場改善の積み重ねでうまくいっていました。しかし市場の成長は何十年も前に止まり「それなり」経営では生き残ることはできなくなっています。そこで「ならでは」戦略、つまりわが社ならではの強みを打ち出していかなければならなくなっています。
 「それなり」経営を脱し「ならでは」経営に転換するためには、差別化を追求した方向性を打ち出すことが必須です。自社「ならでは」の経営を行うためには、自社の強みがどこにあるのかが分かっていなければなりません。自社の「ならでは」の強み考え抜くフレームワークが戦略コンセプトです。先日、フレームワーク思考について書きましたが、フレームワークを使ったからといって絶対的な正解が出てくるものではありません。フレームワークは思考の枠組みを与えてくれるだけで、それをどう使うかによって出てくる答えは千差万別です。
 この本でも「戦略とは選択することであるといっても、戦略的フレームワークから、これは絶対にうまくいくという答えが必ず出てくるかというと、こうした打ち出の小槌的な答えは決して出てこない。また、このやり方でやると何%は成功するといった予言師的な答えも出てこない。そこから導き出されるものは、こういうやり方だと成功する確率が極めて高い、あるいは失敗する確率が高いという要件である。もう1つはフレームワークを通じて考えると、どうやったらより成功する確率が上がるかが分かる。しかし、どちらも絶対的な唯一の正解というわけではない」と言っています。
 企業が競争優位を築くために突き付けられている問いは大きく3つあります。
Ⅰ:誰に対してどのような価値を提供して勝つのか(価値創造)
 Ⅱ:どのような儲けの仕組みを構築するのか(事業構造)
 Ⅲ:どのような勝ちパターンを永続されるのか(競争要因)
 価値創造についてですが、「誰に対して価値創造するのか」という考え方を追求していくと、この価値創造の優位性こそが他者に対しての優位性となります。ここでは①株主価値と②顧客価値という2つの視点が重要です。
 次に、他社と同じようなことをしていても競争優位は生まれません。これまでのビジネスの仕組みを変え、新たな事業構造を構築することこそ戦略経営の中心課題です。ここでは、③競争優位を築き持続させるためのバリューチェーンと④事業構造についてのポートフォリオ・マネジメントの視点が重要です。
 企業の競争要因には品質、コスト、時間、ブランドなど様々なものがあります。見失いがちな競争余蘊を再定義することで、競争優位の持続を盤石なものにすることができます。ここでは⑤コスト優位と⑥時間優位という視点が重要です。
この本の第2章からは、上述の6つの視点で戦略コンセプトが説明されています。
第2章 株主価値 ― バリューマネジメント
 バリューマネジメントの本質は「経済合理性の観点から事業のポートフォリオを見直し、各事業の競争力を強化していく。その結果として企業収益が上がり、株価も上がる。企業はその実現を通じて顧客、従業員との新しい関係を構築していく。その意味で株主価値は日本企業再生のための新しいドライバーとなり得るコンセプトである」ということです。ここでは、バリュー・ポートフォリオマトリックスによる事業分析やバリュー・マネジメントによる現場改革の手法が紹介されています。
第3章 顧客価値 ― セグメント・ワン
 効率的・効果的な企業活動を行うには個別バラバラの消費者を、その属性、ニーズ、行動様式をベースにある程度の塊にグルーピングし、どのグループにどんな製品・サービスをどのように提供していくかを考える必要があります。このセグメントをとことん突き詰めていくと「あなた1人のためのサービス・商品」というところまでカスタマイズするのが「セグメント・ワン」戦略です。これまでは、個別ニーズを充足するためには多くにコストがかかってきました。しかし、IT技術の進歩による生産高コストや個別DMの費用も掛からなくなってきています。このように大きな追加費用を掛けずに顧客1人ひとりに個別の製品やサービスを提供することで競争優位を確立しようとするのがセグメント・ワン戦略です。
  バリューチェーンというのは、企業の事業活動全体を機能ごとに、どの機能で付加価値が生み出されているか、どの機能に強み、弱みがあるかを分析し、事業戦略の有効性や改善の方向を探るものです。これによって、企業活動のどの部分で付加価値が生み出されているかが分析できます。特に経営分析における内部分析に活用でき、自社がどの機能に強みを持ち、また弱みを持っているかがわかります。この自社の強みをどのように活かすかが戦略として重要であり、バリューチェーンは、経営戦略の向t陸に活用できます。さらに、企業がコスト競争あるいは差別化競争をするときの事業戦略を検討するためにも利用できます。
 デコンストラクションと言うのは、もともとは哲学用語で「文章を吟味して定説となっている従来の解釈とは異なる意味を見出すこと」を言います。無事ネスにおいても、これまで当たり前と思っていた常識が根底から覆され、既存のビジネスモデルは役に立たず事業崩壊が起こり、一方で次々と新しい事業が生まれるという事業創造が起きました。「今まで当たり前と思っていた事業の定義や競争のルールが従来と異なる視点でとらえなおすことで、新しい定義や新しいルールに生まれ変わること」がデコンストラクションです。レイヤーマスター(専門特化型企業)、オーケストレーター(外部機能活用型企業)、マーケットメーカー、パーソナルエージェントなどといった斬新なビジネスモデルが生まれています。
第5章 事業構造 ― プロダクトポートフォリオ(PPM)
 PPMは自社内の事業を市場成長率と相対マーケットシェアの2軸で評価し、事業を4つの領域に分類し、各事業の規模を表す円を描くことで、事業状況を俯瞰します。事業は以下の4つに大別できます。
Ⅰ:花形事業(スター):高成長率・高シェア=市場が成熟すれば「金のなる木」になる。
 Ⅱ:金のなる木:低成長率・高シェア=市場はやがて小さくなるので、それまでのキャッシュを稼ぐ。
 Ⅲ:問題児:高成長率・低シェア=成長は期待できるので、「金のなる木」の稼ぎを元手に、シェアを高めて「花形事業」に
 Ⅳ:負け犬・低成長率・低シェア=撤退を検討すべき。
第6章 コスト優位 ― エクスペリアンス・カーブ
 エクスペリアンス・カーブ(経験曲線)は、ある製品の累積生産量が増加するほど、単位当たりのトータルコストが低下していくという傾向を示した曲線です。ヨコ軸に累積生産量、縦軸に単位当たりのコストをとったグラフで、たいていの場合に右下に」カーブした曲線になります。現象のメカニズムや因果関係は明確ではありませんが、学習、専門化、規模、投資など位の総合的な影響と考えられています。経験曲線に従えば、累積生産量を増やすことで、コスト競争力を維持することができるようになります。
第7章 時間優位 ― タイムベース競争
 コスト、品質の次なる競争軸として、注目されたのが「時間」すなわちスピードです。企業のマネジメント能力がこれから問われるのは、柔軟性と迅速性です。時間短縮は、①生産性の向上 ②価値向上とそれに応じた価格設定 ③リスクの軽減 ④シェアの拡大と言う4点で企業戦略の上で意味を持ちます。
 タイムベース競争の基本原理は、時間こそが顧客と企業の相補プにとって最も重要な資源であるという考え方です。事実、多くの事業において、消費者の需要には高い時間弾力性があります。同等の価格、品質、性能やサービスであれば、それを届けるまでの時間が短いほど顧客満足度は高く需要は大きくなります。
 この本では、タイムベース競争による戦略立案に当たり次の4点が重要であると言っています。
Ⅰ:ビジネスチャンスは何か?
 Ⅱ:ボトルネックはどこか?
 Ⅲ:時間短縮のオプションは何か?
 Ⅳ:どんなトレードオフがあるか?
 タイムベース戦略にはOODAループ(観察→状況判断→意思決定→行動)を上手く回していくことが重要です。OODAループについてはPDCAサイクルについて書いたときに説明しましたが、OODAは瞬時の判断が必要となる軍事行動における意思決定を対象として考案されたもので、機動性が重視されます。そのためにタイムベース戦略には有用です。
環境変化のスピードが一段と進む現代において、過去の競争優位が将来に通用しなくなってきています。成功したビジネスモデルでさえ、陳腐化するスピードが速くなってきています。BCGの戦略コンセプトが万能なわけではありません。自分の頭で考えて自社なりの独自の戦略を打ち立てなければなりませんが、その際の考え方のフレームワークとしてはBCG戦略コンセプトは有用だと思います。

会議におけるファシリテーションの本質

 
日本企業では、極めてムダな会議が多いのです。それは、会議を開くこと自体が目的化してしまっているからです。会議を開けば、参加するだけで仕事をしている気分になり、会議で決まったことなら責任を取らなくてよいことになるので延々と会議が繰り返されるのです。会議というのは、抱えている課題や問題があり、その解決策を検討するために開かれるものです。そうした目的をないがしろにして、ただただ会議を開くことが目的化してしまっています。会議を開けばそれで問題が解決された思い込んでしまっているのです。
こうしたムダな会議に終始符を打つにはどうすれば良いのでしょうか。
1.会議とは「大縄跳び」のようなもの
 会議は「大縄跳び」に似ています。言い得て妙だと思いませんかだと思いませんか。
 両端に縄を持って回す人がいて、その中に、次々と色々な人たちが入っていきます。ファシリテーターが縄を回す人、会議の参加者が飛ぶ人です。
 ファシリテーターというのは「会議や研修、ミーティングなど様々な活動の場で、良質な結果が得られるように活動をサポートする人」を言います。
 大縄跳びには参加者それぞれの個性が出ます。最初に飛び込んでそのままずっと中で飛び続ける人、なかなかタイミングがつかめずまごまごしている人、積極果敢に飛び込んでくるもののすぐに足を引っかけて流れを断ち切ってしまう人など様々です。
 回し手であるファシリテーターは何に気を付けるべきでしょうか?
 大縄跳びの理想は、参加者たちが輪の中に入ったり出たりしながら、心地よく長く飛び続けられることです。中に入ることができない人がいれば入りやすいようにタイミングを計って優しく声を掛け背中を押してあげることです。
 会議にも同じ構図があります。一部の積極的な人ばかりに発言の機会が偏ったり、最後までほとんど発言せずに終わる人もいます。こうした状況はファシリテーターとしては避けるべきですし、こうした会議はある意味失敗です。
 どのような会議でも、冒頭からいきなりフルスロットルのテンションで始まることはありません。序盤はアイドリング状態で、場の様子をうかがい、徐々にテンションが上がっていくものです。
 ファシリテーターとしては、序盤にどれだけ多くの意見を言わせるかにかかってきます。会議の序盤は、議論の材料をできるだけ多く集める時間です。大切なのは、安心して自分の意見を言える場であるという認識を参加者全員に持ってもらうことです。したがって、会議の序盤には他人の意見を否定したり反論したりするのは極力排除すべきです。最初は言いたいことを自由に発言してもらう場で、「反論やご意見がある人は後ほどお聞きします」という姿勢で場を仕切っていくのがいいのです。
 最初はできる限り多くの意見を引き出すことです。そのためには、相手の話を聞くという姿勢が重要です。相手が話しやすいように相槌を打つこと、さらに深めた質問を行い相手が何を考えているのか、なぜそのように考えるのかまですべて話してもらいことで、後半の議論が深まります。
2.話下手は人をさりげなくサポートする方法
 どのような会議でも、話のうまい人や話し好きな人ばかりではなく、話し下手な人や話すのが苦手な人もいます。話し下手や話すのが苦手な人、シャイな人をさりげなくサポートして会議がスムーズに進むように手を尽くすこともファシリテーターの重要な役割です。
 大人数での会議で話すのが苦手な人でも、素晴らしいアイデアや意見を持っているものです。話すのが苦手な人ほど頭の中で色々考えています。話し上手な人や話し好きな人が優秀なわけではありません。
 最初は弁の立つ人を中心に意見を言わせて、ある程度そうした人の意見が出た段階で、話下手な人やシャイの人に「ここまで聞いて何かご意見はありませんか」と緩めに話を振るのがいいのです。それでも相手がしゃべりにくそうなら、打ち切るのではなくて、相手が答えやすいように質問形式で問いかけてあげるべきです。
 進行役のファシリテーターは、必要以上に言葉を重ねるべきではありませんが、間を埋めてあげることは不慣れな発言者に安心感を与えます。これによって、相手も次第に頭の中が整理され発言しやすくなります。これもファシリテーターの重要な役割です。
3.オンライン会議を上手に仕切る方法
 コロナ禍で、働き方が大きく変わり、どこにいてもいつでもオンラインで会議や打ち合わせができるようになりました。これはメリットでありますが、一面「対面でなければやりにくい」「細かなニュアンスが伝えられない」といった意見もあります。
 ファシリテーションもオンラインでは難しくなっています。何か言いたいことがある場合でもどう切り込んでいいかタイミングが掴めなかったり、声がダブルこともあり、オンラインではイニシアティブを握った人だけが延々と発言するようになりがちです。また、名指しされれば何か発言しないわけにはいきませんが、具体的な意見がない人では喋らされることになってしまいます。
 ファシリテーターの役割は対面の場合とそれ程は違いませんが、より話しやすい場・雰囲気をつくっていくことが求められます。そのためには、リアルな場面よりもオーバーなリアクションを心がけるべきかもしれません。相槌にしてもやや大きな声で大きめで頷くことで、相手の話に関心を持って聞いているということを伝えることで、相手に安心感を与えることができます。
 オンライン会議は、自分の声がきちんと届いているか、こういう話でいいのかと誰でも不安になるはずです。相槌を巧みに利用し発言する人に寄り添うことが大切です。
 会議はコミュニケーションの場です。コミュニケーションは人と人との関係です。会議は自分の意見を通して勝つための場ではありません。色々な意見を出し合い、それぞれの意見のメリット、デメリットを比較しながら、みんなが共感しながら、より良い結論をみんなで導き出していくものです。相手に寄り添うという姿勢が重要なことはいうまでもありません。

休日の本棚 運命を拓く

おはようございます。

今日は中村天風著「運命を拓く」(講談社)を紹介します。以前にも中村天風の著書や天風哲学を取り上げたことはありますが、改めて天風の著書を紹介します。

中村天風の説く天風哲学は、一言で言えば自己強化の哲学ですが、東郷平八郎原敬後藤新平山本五十六といった政界だけでなく、松下幸之助稲盛和夫といった財界、そのほか宇野千代大仏次郎広岡達朗など多くの知識人、著名人が天風の薫陶を受けています。以前紹介した「稲盛経営12か条」も中村天風の教えが根底にあるように思います。以前にも書きましたが、天風の生涯を簡単に記しておきます。

中村三郎こと中村天風は、明治9年に旧柳川藩主の遠縁に生まれ、福岡の修猷館中学に入学するも、柔道の試合に敗れた相手から闇討ちに遭ってその相手を刺殺してしまいます。正当防衛は認められたものの退学処分を受けます。負けず嫌いで気性が荒い三郎に手を焼いた両親は、当時政治活動家の集まりであった玄洋社を率いていた頭山満に三郎を預けます。生涯の師となる頭山満の薫陶を受けた三郎は、諜報活動の手ほどきを受けて、日露戦争では満州にわたりスパイ活動を行う軍事探偵として活躍します。軍事探偵113人のうち日本に帰還できたのは三郎を含めたったの9人でした。三郎は帰還後軍事通訳を務めますが、奔馬性肺結核に罹ります。北里柴三郎の治療を受けますが症状は悪化し、名医の北里も匙を投げ死期を待つだけになりました。「不治の病にかかったとき、心はかくも弱くなるのか、弱い心を強くしたい」という思いで、人生探求の旅に出ます。アメリカ、イギリス、フランス、ドイツの高名な医師や学者を訪ね教えを請いますが納得のいく答えを得ることができません。失意のうち岐路に立った船の中でヨガの聖人カリアッパ師と邂逅し藁をもすがる思いで弟子入りしヒマラヤのカンチェンジュンガ山麓のゴーク村で2年半の修行に取り組みます。この修行を通じて「人間とは強いものである。信念をもって積極的に生きるとき、軌跡をも起こす」という真理を発見し、それとともに病を克服したのです。

帰国後は、東京実業貯蔵銀行頭取、大日本製粉重役など5つの企業の経営に携わり、その決断力と精力的な行動によって、次々と事業を成功に導きます。それゆえ、三郎は、次代の日本の経営を担う人物と目されますが、三郎の心は晴れません。

大正8年に、三郎は財産や社会的地位をなげうって、「統一哲医学会」を創設し、その日から上野公園や芝公園で辻説法を行います。最初は聞く人はいませんでしたが、次第に人が増え、統一哲医学会は発展し、現在は「財団法人天風会」となっています。

神渡良平著「中村天風『幸せを呼び込む』思考」(講談社+α文庫)では「『先が見えない時代』を照らす『暗夜の灯火』」とあります。天風哲学は、コロナ禍で先が見えない混沌とした時代を強く生き抜くためには役に立つように思います。天風の言葉は、人生だけでなくビジネスにも役立つものだと思います。

そこで、この「運命を拓く」に書かれている天風哲学の言葉をいくつか紹介します。

  • 我は今、力と勇気と信念とをもって甦り、新しき元気をもって正しい人間としての本領の発揮と、その本分の実践に向かわんとするのである。我はまた、我が日々の仕事に、溢るる熱誠をもって赴く。我はまた、欣びと感謝に満たされて進み行かん。一切の希望、一切の目的は、厳粛に正しいものをもって標準として定めよう。そして、常に明るく朗らかに統一道を実践し、ひたむきに、人世のために役立つ自己を完成することに、努力しよう。
  • 私は力だ。力の結晶だ。何ものにも打ち克つ力の結晶だ。だから何ものにも負けないのだ。病にも、運命にも、否、あらゆるすべての物に打ち克つ力だ。そうだ!強い、強い、力の結晶だ。
  • 甘えは、自分を不幸だと思っているのか。おい、よく考えろ、もっと奥を。苦しい病に虐げられながらも死なずに生きているではないか。その生きているという荘厳な事実を、なぜ本当に幸せだと思わないのだ。苦しいとか、情けないとか思えるのも、生きていればこそではないか。生きているということは、造物主がまだころす意思がないから、守って下されているのだ。それを幸せと思わないのか。お前は罰当たりだ。
  • 私は今後かりそめにも我が舌に悪を語らせまい。否、一々我が言葉に注意しよう。同時に今後私は、もはや自分の境遇や仕事を、消極的な言語や、悲観的な言語で、批判するような言葉は使うまい。終始、楽観と歓喜と、輝く希望とはつらつたる勇気と、平和に満ちた言葉でのみ活きよう。そして、宇宙霊の有する無限の力を我が生命に受け入れて、その無限の力で自分の人生を建設しよう。
  • 病は忘れることにとって直る。病になろうと、不運になろうと心の態度は崩さぬことだ。どうせ人間生まれた以上死ぬ時が来れば死ぬ。いくら嫌だと言っても駄目だ。自分の心ん持ち方さえ積極的であれば、その心の中にいただいている生命の力というものは逃げやしない。心を積極的にしさえすれば、健康も良くなり、運命も立ち直るようにできているのだ。だから、もっと自分の心を磨きなさい。
  • およそ宇宙の神霊は、人間の感謝と歓喜という感情で、その通路を開かれると同時に、人の生命の上にほとばしり出ようと待ち構えている。だから、へおそできるだけ何事に対しても、感謝と歓喜の感情をよりよく持てば、宇宙霊の与えたまう最高のものを受け取ることができるのである。かるがゆえに、どんなことがあっても、私は喜び、感謝だ、笑いだ、雀踊りだと、勇ましくはつらつと人生の一切に勇往邁進しよう。
  • 自分の分を知らなけりゃ、卑しい希望や汚れた宿望を炎と燃やしていても、碌な仕事はできないし、不渡りを喰らうだけである。この生命の本来である創造意欲は、常に価値の高い目標で定めねばならない。もっと目標の高いものを標準として、自分の創造意欲に情熱の日を藻やs田なければならない。それは第一に自己向上ということである。自己向上を正しく念願しないでいて、仕事なり、運命也を向上させようとすることは、力足らずなのである。十貫目持ち上げる力しかないのに、十五貫目のものを持ち上げようとしているのと同様である。十五貫目の者を持ち上げたかったら、それだけの力をつけなければならない。だからそうしない者は事業などで思わざる失敗をやってしまうのだ。
  • 信念、それは人生を動かす羅針盤のごとき尊いものである。したがって、信念なき人生は、ちょうど長途の航海のできないボロ船のようなものである。かるがゆえに、私は真理に対しても純真な気持ちで信じよう。否、信ずることに努力しよう。もしも疑うているような心持ちが少しでもあるならば、それは私の人生を汚そうとする悪魔が、魔の手を伸ばして、私の人生の土台石を盗もうとしているのだと、気をつけよう。
  • 私はモ羽田何事をも恐れまい。それはこの世界並びに人生には、いつも間然ということ以外に、不完全というものの内容宇宙心理ができているからである。否、この心理を正しく新年して努力するならば、必ずや何事といえども成就する。だから今日からはいかなることがあっても、また、いかなることに対しても、仮にも消極的な否定的な言動を夢にも口にするまい、また行うまい。そして、いつも積極的で肯定的の態度を崩さぬよう努力しよう。同時に、常に心をして思考せしむることは、”人の強さ”と”真”と”善”と”美”のみであると心がけよう。たとえ身に病があっても、心までは病すまい。たとえ運命に非なるものがあっても、心まで悩ますまい。否、一切の苦しみをも、なお楽しみとなす強さを心に持たせよう。
  • 第一に必要なことは心の安定を失ってはならないことである。そして心の安定を失うことの中で、一番戒むべきものは恐怖観念である。この恐怖観念なるものこそは、価値なき消極的の考え方で描いているシミだらけの醜い一つの絵のようなものだ。否、寸法違いで描いた設計である。今日から私は断然私の肺gpに、私を守りたもう宇宙霊の力のあることを信じて、何事をも恐れまい。
  • 勇気は常に勝利をもたらし、恐怖は常に敗北を招く。断じて行えば鬼神もこれを避く、陽気の発するところ金石もまた透る。たとえどんなことがあろうとも勇気を失うことなかれ。私はもう何事が自分の人生に発生しようと、決していたずらに心配もせず、また悲観もしないように心がけよう。それはいたずらに心配したり悲観したりすればするほど、その心配や悲観する事柄がやがてはいつかは事実となって具体化してくるからである。
  • 私は、私の求むるとことのものを最も正しい事柄の中に定めよう。そして、それをどんなことがあっても動かさざる山のごとき盤石の信念と、脈々として流れ尽きざる、あの長い川のごとく、一貫不断の熱烈なる誠をもって、その事柄の実現するまで、いささかも変更することなしに、日々、刻々、はっきりと、心の中に怠りなく連想していこう。ちょうど、客観的に看察するがごとくに・・・私は、もはや、消極的の思想や観念やまたは暗示に感じない。また、そうしたものは、私を動かすことはできない私は、もはや、あらゆる人生の中の、弱さと小ささとを踏み越えている。そして、私の心は、今、絶対に積極的である。おおそうだ。私の心は勇気と信念とに満ち溢れている。したがって、私の考え、私の言葉、それはいずれもさっそうとし、いつも正義である。だから、私には、人生のあらゆる場面に奮闘し得る、強い強い力が溢れているのだ。そして、私の人生は、どんな人の世の荒波に脅かされても、あの大岩の上に屹然と立つ灯台のように、平静と、沈着と、平和と、光明とに、輝きひらめいているのだ。

中村天風の言葉は力強く響いてきます。天風哲学は、松下幸之助や稲森和夫にも大きな影響を与えました。経営者、ビジネスリーダーやビジネスパーソンにとっても、天風の言葉は胸に響くと思います。

休日の本棚 組織戦略の考え方ー企業経営の健全性のために

おはようございます。
今日は、沼上幹著「組織戦略の考え方ー企業経営の健全性のために」(ちくま新書という本を紹介します。
著者の沼上氏は一橋大学大学院商学研究科教授で、選考は経営戦略論、経営組織論などです。
日本において、バブル期には「日本型経営は優れている」という基本路線が継承されていましたが、バブルが崩壊すると「日本企業は駄目だ。アメリカに学べ」と言われるようになりました。果たして、本当に日本型経営は間違っているのでしょうか?
著者は「日本の組織が劣化していくことがよくあるのを知っているけれど、日本の組織の本質的な部分を維持しながら、どうにかこうにかダメにならずに経営を続けていくにはどうしたらいいのか」という問題意識に基づいて議論を展開していきます。本書は、流行りのカタカナ組織論とは一線を画し、日本的経営を前提に極めて常識的な論理を積み上げて組織設計の考え方を示してくれていますので、分かりやすく理解しやすくなっています。
組織設計にしろ経営戦略にしろ経営というものは「こうすればうまくいく」というような明確な答えはありません。ビジネスパーソンなり経営者なりがその場その場で自分の頭で考えて答えを導き出すしかありません。「経営学は何の役にも立たない。実践的でなく実務に役立たない」と言われますが、概して社会科学とはそういうものです。政治学や経済学が現実の政治や経済に直接役立っているように見えないのと同じです。
社会科学系の学問は、現実問題を直接解決するものではなく(刻々と変化し続ける問題状況の中でできるはずもありません)、どのようにすれば問題となっている背景を把握し分析しどのように解決していくのかという基本的指針を提示してくれ、思考の道筋や手掛かりを与えてくれるものです。
経営学も答えを与えてくれる学問ではなく、経営学で培われた理論的思考が、現実の経営の場面で現れる問題や課題を解決するための指針となってくれるのです。
本書は、「第1部 組織の基本」「第2部 組織の疲労」「第3部 組織の腐り方」の3部構成になり、全10章で構成されています。
1.組織の腐り方
 本書の構成の順序とは異なりますが、「第3部 組織の腐り方」から取り上げます。
 「会社の寿命は30年」と言われることもありますが、明確にこのような法則があるわけではありません。しかし、「組織は何も手を加えなければ時とともに腐る」のは間違いなさそうです。
 本書では、組織の腐敗傾向をもたらす2つのメカニズムとして「ルールの複雑怪奇化」「成熟事業部の暇」が挙げられます。
 「ルールの複雑怪奇化」とは、組織において、新陳代謝が起こりにくく古いものはそのまま残り、古いものの上に新しいものが付け加えられ、その結果古い組織ほど複雑怪奇なルールを持ってしまうということです。
 「成熟事業部の暇」というのは、皆が仕事に慣れていて仕事遂行能力が余りその余った時間で内向きの無用な仕事が次々と生み出されてしまうことです。この2つが徐々に組織の健全性を蝕み、「知らないうちに宦官のような社内政治家を増やし、売上や利益を外の世界から獲得してくる武闘派の社員を窒息させてしまう」というのです。
 そして、この「ルールの複雑怪奇化」「成熟事業部の暇」という状況、つまり腐敗は伝播するのです。今、大丈夫と思っていても、とりわけ顧客企業や他の部署が腐敗してくると、知らないうちに自分の会社も部署も腐敗するのです。
 それでは、腐敗にいち早く気づくにはどうすればよいのでしょうか?またその対応策を進めるにはどうすればよいのでしょうか?
 組織腐敗のチェックポイント1―社内手続きと事業分析のバランス・・・手続き論や筋論に時間がとられすぎるようになると問題。時間配分の健全性が重要。新規事業開発にしろ新規商品開発・既存商品の改良にしろ、事業内容の検討が重要なのに社内の反対や批判の対処に時間を取られるようなら論外。
 組織腐敗のチェックポイント2―スタッフたちのコトバ遊び・・・皆がどれだけ暇で、その暇がどれだけ内向きの仕事に向けられているかをチェックする。社員の雑談の質をチェックする。
 では、腐敗から回復するにはどのようにすればよいのでしょうか。
 1:既存の秩序をできる限り徹底的にきれいに破壊すること・・・「重要な伝統」「社員に与える不安感が心配」という声にも一理あるが、組織がある程度腐敗してしまうと回復軌道に乗る唯一のチャンスはトップダウンによる乱暴な現状は回しかない。
 2:この既存秩序の破壊に伴って、社員の注目が一時的に社内に向いてしまうのを、新規事業や既存事業の利益水準の回復に向ける・・・①既存秩序を破壊し、新しい組織デザインへ移行するシナリオをについて、コア人材たちに明確な論理で説明すること ➁できるだけ簡潔に組織デザインの話を切り上げ、社員の意識を外向きに無理矢理にでも方向付ける。
 3:暇と忙しさのメリハリをつける・・・暇な人と忙しい人のメリハリをつける=組織が腐りかけているときには優秀な人とそうでない人を明確に分けるのを恐れてはならない。仕事のできない人を暇にしてはならない。仕事ができる人が暇になると新事業開発や更なる省力化など利益に直結する新しい仕事を考案できるようになるとともに、意識が外向けに方向づけられる。こうした循環が重要。
2.組織設計の基本
 次に、「第2部 組織の基本」からいくつか取り上げます。ここでは組織設計の基本が語られています。
 まず、組織設計の基本は官僚制にあるというのです。確かに、「官僚制」という言葉を聞くと悪いイメージしか湧いてきませんが、官僚制が組織設計の基本中の基本です。カタカナの組織論にかぶれてそれを振りかざすのは危険です。日本の場合、官僚制組織が基本にあるのですから、それを基本としつつ問題点をあぶりだし改革していけばよいのです。著者は、長期的に望ましい組織設計と短期的に望ましい組織設計とは相相反すると言っています。短期的には垂直分業や職能別分業が効率性を発揮できるが、長期的には経営者として大きな視野を持つ人材の育成に失敗することが多いのです。官僚制を基本としつつ、不確実性が高まるにつれて、官僚制に新たな工夫が付加され汐式が複雑化し、また人材育成のことを考えて垂直・水平両方向の分業を緩やかに若干追加的に修正していくのがよいと言っています。
 日本の企業の組織を見ると、メチャクチャというか奇妙な組織構造になっていることがよくあります。しかし、奇妙な、メチャクチャな組織に問題があっても、組織変革をやりさえすれば問題が解決するというわけにはいきません。組織デザインは万能薬ではないのです。問題を処理するのは組織ではなく人なのです。
3.組織の疲労
 次に「第2部 組織の疲労」を取り上げます。
 著者は、「企業組織というのは機械ではない。機械なら時折油を刺して、モーターを回して居ればかなり長い間動き続ける。ところがヒトが作りだしている組織は、そうはいかない。組織としてまとまりを保ち続けるように誰かが努力しないと直ぐにガタが来る」と言っています。その通りです。「企業組織には常に水の中の足掻きが必要」なのです。企業組織の邪魔になる無用で有害な厄介者と社内野党を押さえ込んでおかないと組織は正常に動かないのです。特に中間層にインセンティブを与えるようにしないと彼らが「厄介者」になってしまいます。エリート層だけでなく、中間層についても動機付けが重要であり、中間層の活性化を太く深く議論しておかないと、精神的にも肉体的にも多くの組織が病んでしまいかねません。
 権力=パワーの源泉が何であり、それをどのように配分して組織設計すればよいかも重要です。組織にとって重要な問題が発生している部署に情報・知識をベースとした権力があり、そこに正当性パワーと賞罰パワーを一致させておけば、組織設計上は最適解になるはずだと言われます。これほど単純であれば問題はないはずです。しかし権力というのは人の欲が背後にありどろどろとしたもので、権力の源泉はさまざまです。それほど単純化できるものではありません。トラの権力とトラの威を借るキツネの権力という比喩も面白いです。スキャンダルの裏側で権力者が生まれるという指摘もなるほどと思わせてくれます。
 奇妙は権力者を生まないためには、①トップ・マネジメントの数を減らすこと ②トップ・マネジメントの評価に、内向きの評価基準は使わないこと の2つが重要です。
全体的に抽象的な話になりましたが、興味のある人は読んでもらえば具体的な事例を使ったり図解されていたりと分かりやすく理解しやすい内容です。カタカナの組織論に違和感を感じていた人にはお勧めです。

 

休日の本棚 限界は頭の中にしかない 小さなアクションで最大の成果を引き寄せる

おはようございます。
今日は、ジェイ・エイブラハム著「限界はあなたの頭の中にしかない 小さなアクションで最大の成果を引き寄せる」(PHP研究所を紹介します。著者のジェイ・エイブラハムは、「フォーブス」誌が2000年に全米トップ5の経営コンサルタントに選出した実践マーケティングの巨匠です。「7つの習慣」の著者スティーブン・R・コヴィー博士も「ジェイは、私が知りうるもっとも偉大なビジネスとマーケティングマインドを持つ人物」と絶賛しています。
この本の帯に「落ちこぼれは、いかにして1兆円を生み出す伝説のコンサルタントになったか」とあります。
ジェイは、高校を卒業してすぐに、ガールフレンドから妊娠したと告げられます。ADD(注意欠陥障害)で大学進学も就職もできていない時です。結婚して子供を育てるために仕事を見つけますが、すぐに集中力がないとの理由で解雇されます。その後は学歴もなく定職にもつけず複数のアルバイトを掛け持ちで子供を育てていかなければならないジェイを絶望が襲います。こうした中、ある人物から「君がおしまいと思っているからおしましなだけだよ。君の人生は本当は無限大なんだ」という言葉をかけてもらいます。この言葉を深く考え、ジェイは「どん底にいると気づけば、あとは上に伸びていくしかない。自分に限界を課しているのは自分自身なのだと気づけば明るい未来が広がっている」と考えるようになったのです。そして、ジェイは、この言葉を信じ、行動に移すのです。
ジェイは言います。
・あなたが授かった能力や、あなたの中に眠る偉大さ、あなた方の人に与えられる価値は、本当は無限なのです。問題は、あなたが、自分には無限の能力があると認めるかどうかなのです。それを認めたら、次はそれを活用するかどうかです。活用すると決めたら、あとはそれが最も力強く、最も生産的な方法で活かされているかを、自分に対して監督指示することです。
・あなたはどのように生きるか、あなた自身で決めることができます。そして、そのような人生を生きているかどうか、自分自身で常に分析し、評価し、軌道修正を行い、自分に指示するのです。あなたの人生はあなたが決定すべきです。あなたの理想はあなたにしかわかりません。あなた以外の人があなたが理想に向かっているのかいないのか、判断することはできません。
ジェイは「人生は単なる瞑想によって成し遂げられる成果よりも、行動によって成し遂げられた成果の方が、より多い」とも言っています。瞑想の力や熟考することを軽視しているわけではありませんが、人生における方向性と行動を変えなければ大きなことは成し遂げられないということです。
また、ジェイは「手段ではなく理念を重視する」という強いこだわりを持ってビジネスを行っています。理念が明確になることで、どこに向かおうとしているのか、またその前後逆まで含めてとても明確にコントロールすることができるようになります。進むべき目的地、道のり、途中の通過点、そして進むべきではない方向まで、きちんと把握し、戦略的にコントロールでき、迷いがなくなるのです。手段や手法を必死で追いかけても結果は変わりません。理念は行動であり、活動であり、決断であり、信念体系のこと、それがより高いレベルの結果やより高い成果に導くと言っています。
多くの本を読み、良い考えを持っただけで人生やビジネスが変化することはありません。理念を変え、信念を変え、そこからくる行動を変えることで、結果が変化するのです。自分自身が立ち上がって行動しない限り、何も起きないのです。
この本の構成は次のようになっています。
 第1章 あなたの人生をコントロールするのは誰か
 第2章 成功者は皆、「他者」から学ぶ
 第3章 あなたのいちばんの味方は、あなた自身
 第4章 なぜ、あなたは働くのか
 第5章 「問題解決力」が人生を好転させる
 第6章 ビジネスを突き動かす「基本原理」
 第7章 マーケティングは死んだ
 第8章 善なる経営
 エピローグ 気高く生きる
この本の中から、ビジネスに関係することで、経営者やビジネスパーパンにとって役に立つと思う言葉をいくつか紹介します。
1:消費者は戦場の兵士ではありません。あなたがどんなに高度な戦略を練り、マーケティングファネルを構築したところで、あなたの指示通りに動いてくれるわけではありません。あなたが消費者の「心」に寄り添わない限り、それはやがて見透かされてしまいます。どんなに熱心に戦略会議を行い、数値分析やグラフを用いてもっともらしく表現したところで、そんなものに本当の人間性は現れないのです。消費者一人ひとり、感情の揺れ動いがあり、悩みがあり、人生があるのです。一人ひとりが存在意義を持ち、価値観の違う個別の人生があるのです。
2:どんなにその商品やサービスの必要性や重要性を信じていても、顧客にとっては何ら重要ではないということです。いかにして顧客に「関係ない」と思っているところから「重要だ」と感じてもらえるかを考えなければなりません。私を重要だと思ってもらうためには、先にその人を重要だと思わなければなりません。そのためには、まず話を聞くことです。人の話を聞くということは、頭の中を白紙状態にして聞き入ることです。言葉の意味だけでなくその内容が意味するところや内容の背景も深く理解することです。そして大事なことは、話し手にしっかり聞いているという合図を出したり、質問を返すことです。しっかり相手の目を見てうなずいたり、相槌を打ったりします。相手の話をしっかり理解しようと集中し、不明瞭な点は確認するために質問するのです。更に詳しく知りたい内容も聞き返します。相手が話を続けているのに、ソワソワよそ見をしたり腕や足を無意識に動かしたりしてはいけません。
3:どんな失敗や危機、ネガティブな事態に陥ろうとも、そこで立ち止まらないことです。経験をバネにして、それをプロペラとして前進し続けることです。そして、必ず、自分へ質問を投げかけることです。自分を振り返り、過去の失敗から何を学んだか、その原因を追究し、受け入れることです。それによって将来をもっとより良いものにコントロールでき、進展していくことができるのです。
4:あなたが働く意味は「あなたの存在を通して、あなたの存在する世界に価値を創出するため」です。あなたは仕事を通して、あなたの職場やお客様やあなたと接する人に何かしらの価値を届けることで、少しずつ豊かになっていきます。より良い価値を創出することに焦点を当ててください。それは素晴らしい笑顔で接客することかもしれません。見えない場所をきちんと掃除し、場の空気まできれいにすることかもしれません。「結果に焦点を当てる」とは、決してお金や数字の結果というのではありません。「どれだけの価値を提供できるか」という意味です。数字を追い求めるのではなく、価値を提供すればするほど、結局、数字としての結果もより良いものになっていくのです。
5:ほとんどの会社が行っているのは手段です。方法論です。戦術です。どのような方法でマーケティングを行い、どこと契約し、どのように顧客にアプローチするのか、どのような価格帯でどのターゲットにどんな製品を届けるのか。これらはすべて手段です。理念によるビジネスは「なぜそのビジネスをするのか」というところからスタートするのです。先ず「なぜ」このビジネスをしているのか、そもそもどんな信念で行っているのか、その現状認識からスタートし、主体的な、なおかつ長期的な理念を考え直さなければなりません。次に、ビジネスにおいて、何に挑戦し、何を成し遂げたり打ち立てたり、維持しようとしているかの信念体系を考えます。そして、どのような大方針を立てれば、追い求める最大の成果を最速で最も長続きする方法で得られるかを考えなければなりません。これらを考えなければビジネスは立ち行かなくなります。このことをしっかり認識する必要があります。
6:「イノベーション」というのは多くの人が技術革新のことだと勘違いしやすい言葉です。技術革新が必要なときもありますが、必ずしも必要とは言えません。イノベーションとは「お客様の生活や状況に、偉大な利益の増大や改善をもたらし、なおかつ、お客様から感謝され、価値を認めてもらるもの」です。お客様が感謝しないのであれば、どんなに製品を10倍速く、うまく作る能力を持とうが何の意味もありません。お客様にコスト削減をもたらしたり、それを加えることによってよい結果を得るということがない場合、たとえ競合の10分の1のコストで生産できる能力を達成しようが何の意味もないのです。
7:多くの人は間違ったビジネスをしています。間違った働き方をしています。ほとんどの人がお客様ではなく、自社の製品やサービスに恋しています。しかし、それは完全に間違っています。自社の製品やサービスと恋に落ちるべきではないのです。恋に落ちるべき相手はお客様です。お客様を恋人のように考えるべきなのです。そうすれば、あなたが行う行動のすべて、あなたが推薦するすべてのもの、あなたが行ってきたコミュニケーションのすべて、さらにはあなたの魂と存在についてのすべてが、恋人にそうであるように、お客様の人生を高め、強化し、より豊かにすることができます。恋人を守るように、お客様を守り、より利益を上げ、より頼れる存在になれるように支援するのです。
8:ビジネスは ①買ってくれる人の数を増やす ②その取引額を増やす ③購買の頻度を増やす というたった3つの要素で成り立っています。お客様は、消費やサービスを買っているのではなく、「得られる結果」を買っているのです。モノを買うことで得られる、その人の人生やビジネスに影響する利点、結果、喜び、保証を買っているのです。お客様にとって最高の商品やサービスを提供しなければなりません。そうすることで購買額も増え購買頻度も増えてきます。また、お客様は消費者ではなくクライアントです。人と人との交流なのです。一人の人間として接することです。それを認識したうえでコミュニケーションをとり、親交を深めることで信頼感を得ることができます。それが購買額や朋輩頻度につながります。
9:マーケティング手法に優れていれば、サービズの質が悪くても、短期的に利益を作ることができます。マーケティングの手法だけが取り入れられ、それが独り歩きし始め、間違った戦略や戦術が広がっています。ビジネスの目的や精神性があってこそマーケティングは正しく機能するのです。アイデアのテクニックだけを取り上げても意味がないのです。お客様を思いやり、理解しているのだということを伝えるためにマーケティングがあります。そこから信頼が生まれ、信頼こそが企業家とお客様の双方に繁栄をもたらすのです。信頼が関係性を保つカギであり、そして、そのすべてです。マーケティングとは、人々に少しでも良い人生を送ってもらうための手助けであり、最も誠実で、純粋な、ビジネス活動の本質なのです。
10:ドラッカーが言うように、ビジネスはマーケティングイノベーションです。小さくはじめ、テストを繰り返し、改善を重ねていくことで、より洗練されたものとなっていきます。ほとんどのビジネスマンは、毎日別の真新しいグランドで、ホームランをいきなり打とうと狙っているようなものです。でも本来は、ビジネスはお客様に手の届く所へ来ていただき、そこから絶対に離さないような関係性を築くことが重要です。そのためには自分の思い込みや熱意だけで押し通すのではなく、テストし、お客様の反応を確かめながら改善しなければなりません。
11:ビジネスにおいて最も重要なのは、そのビジネスを行う目的です。どんなにマーケティング手法が優れていても、どんなの資本金があっても、どんなに優秀な人材を集めても、理念が間違っていれば、そのビジネスはやがて衰退します。中小企業の大半は目的を達成できずに終わります。そもそも明確な、正しいゴールを持っていないのです。それでは達成のしようがありませんし、成功の意味が分からなければ成功のしようがありません。
12:卓越した企業は、常にお客様や潜在顧客に対して、本当に真摯に、善き人生とするために尽くすのだというはっきりとした志と、強い希望を持っています。この希望こそが、顧客と長期的な、誠実な、一生をかけた関係を築くのだという勇気と信念、力や要求を生み出すのです。こうした正しい信念こそが、強いリーダーシップへと駆り立て、会社全体、チーム全体に卓越した意識を鼓舞するのです。
13:家族のようにお客様のことを扱いなさい。お客様に自分は大事にされていると感じていただきなさい。常に感謝し、コミュニケーションをとり、注意を払い、彼らの悩みを聞くのです。お客様の不満を知り、早急に解決し、お詫びをし、また戻ってきていただくように誠実に接するのです。あなたが得る成功は、あなたがお客様やチーム、取引先に届けた価値と同程度です。価値を作り出すことが、成功へ向けての第一歩であり、卓越した存在になる唯一無二の方法です。人間的成熟度がビジネスの成功に比例していくのです。
この本は、ジェイが、自分の落ちこぼれであった過去をさらけ出し、将来に希望を持てず、人生に満足できずに暮らし、強い欲求も確信も目的も持てずに生きている多くの日本人に向けて、希望の炎となる「着火マシン」となるように書かれたものです。
中村天風は「運命を拓く」という著書の中で「我は今、力と勇気と信念を持って甦り、新しき元気をもって正しい人間としての本領の発揮と、その本分の実践に向かわんとするのである。我はまた、我が日々の仕事に、溢るる熱誠をもって赴く。我はまた、よろこびと感謝に満たされて進み行かん。一切の希望、一切の目的は、厳粛にして正しいものをもって標準として定めよう。そして、常に明るく朗らかに統一道を実践し、ひたむきに、人世のために役立つ自己を完成することに努力しよう」という「甦りの誦句」を書いています。
ジェイの考えも全く同じ、同じことを言っていると思います。人生の基本、ビジネスの基本は同じなのです。