選択と集中
おはようございます。
新年を迎えましたが、新型コロナには年末年始も関係ありません。昨日の新規感染者は全国で535人、東京・大阪は2日続けて70人を超えました。渋谷駅前での大晦日の年越しイベントは中止になったにもかかわらず、渋谷に多くの人が集まり、ハロウィン以上の熱狂に包まれ、まるで狂騒といった状況でした。それは大阪ミナミでも同じで、あまりにも酷い気の緩みとオミクロン株への警戒心のなさにはあきれるばかりです。こうした状況が年末年始に続いていけば、確実に感染者は急増します。昨日書きましたが寅年の「強い正義感・新年と行動力」で新型コロナに打ち勝ちたいところですが、気の緩みと無防備さからすれば、今年も、コロナとの戦いは負け続きになるのではないかと懸念します。
さて、大晦日にも書きましたが、2022年は自社の強みを明確にして、その強みを活かすために「選択と集中」を行うことが大切だと思います。
以前に紹介しました、20世紀最大の経営者と賞賛されたGEのジャック・ウェルチですが、GE各部門が展開する各部門の多数の事業を「世界で1位か2位であるか、あるいはそうなる可能性があるか」という基準で選別しました。そうでない事業は「売却か閉鎖」です。そして売却した事業の売却益は残した事業に競争力強化のために投資しました。これは「ウェルチの選択と集中」です。
この「ウェルチの選択と集中」戦略が素晴らしいことはいうまでもありませんが、これを日本の中堅・中小企業にそのまま応用できるかというとそういうわけにはいかないように思います。ほとんどの中小企業は大企業と異なり複数の事業を展開しているわけではなく、単一の事業を展開しています。「選択と集中」する余地がないのです。
しかし、それにもかかわらず、日本の中小企業でも「選択と集中」は大切だと思います。
コロナ禍で今ある事業が行き詰まりを見せているということは多いですし、混迷するビジネス環境で、新たなことにチャレンジし続けなければなりません。これまでの業態を新しい業態に変化する必要もできます。例えば、これまでの店内飲食からデリバリー・テイクアウトを行うようになった店舗もありますし、これまでの店舗販売からネット販売を行うようになった企業・店舗もあります。ウィズコロナ・アフターコロナの時代に、どっちつかずの状態で両方を行い続けるのか、あるいは、どちらかを選択してそこに経営資源を集中させるべきかを考えなければならなくなります。
ここで重要になるのは3Cではないかと思います。3Cというのは、Company(自社分析)、Customers(顧客分析)、Competitors(競合分析)の頭文字をとったものです。顧客の要望(ニーズ)を知り、競合分析と自社分析で把握できた自社の強みを最大限に活かして顧客ニーズに応えるために自社が進むべき方向性を決めるということです。
以前、故田岡信夫氏が提唱した「ランチェスター経営戦略」を紹介しました。これは和製戦略ともいうべきものですが、「ウェルチの選択と集中戦略」にどことなく似ています。日本の中小企業は、このランチェスター戦略を展開すればいいのです。
中小企業も、生き残りをかけた戦いに勝つためには、ジャック・ウェルチと同じように、NO1かNO2以外はやらないという覚悟・勇気が必要なのです。
それでは、どうすればNO1になれるのか?
弱者(中小企業)が強者(大企業)に勝つには一定のルール「原理原則」があります。その基本をランチェスター戦略から学び取ろうというのが「ランチェスター経営戦略」です。
ランチェスター戦略は、第一次世界大戦をきっかけに、イギリスのフレデリック・W・ランチェスターが航空機による空中戦の損害状況を研究したことから始まり、そこでは「同じ武器なら勝敗は兵力数で決まる」と述べられました。これをもとに、アメリカのコロンビア大学のバーナード・クープマン教授により軍事戦略モデルとなりました。これは、戦略に勝る「強者」と戦略に劣る「弱者」とに分け、それぞれがどのように戦えば戦局を有利に運べるかを考えるための戦略論で、経営戦略にも応用されるようになったのです。
ランチェスターの法則には、「弱者の戦略」と呼ばれる第一法則と「強者の法則」と呼ばれる第二法則があります。
第一法則は伝統的な一騎打ちを前提としています。例えば、同じ武器を持つA軍5名とB軍3名が戦った場合、最終的には損害は同じで、A軍が2名残って勝つのです。
第二法則は近代兵器による遠隔戦より広範な戦いを想定しています。この場合、攻撃力は兵力の2乗になり、先の例でいえば、A軍の戦力は25,B軍の戦力は9,A軍が勝って4名が生き残るのです。
したがって、数に勝るA軍は第一法則のような一騎打ち・近接戦を避け、第二法則にあるような広範戦・遠隔戦をした方が損害が少なくて済みます。一方で、弱者は、第二法則のような事態に陥らないように、なるべく接近戦を行うべきだというのです。
ビジネスに関して言えば、強者(大企業)には、物量と価格戦略にて、効率的にビジネスを仕掛け、市場全体で勝利することを図るという戦略が妥当しますが、弱者(中小企業)には、市場をセグメントして、資源を一点集中させ、強者との差別化を図るという戦略が妥当することになるのです。
数で劣る中小企業は大企業に絶対勝てないというわけではありません。強者というのは「マーケットシェア1位の企業」と定義づけされます。そのための戦略は次の通りです。
- 差別化戦略・・・商品をはじめ、会社、人材、情報、サービスの質的な独自性、優位性
- 一点集中主義・・・自社の経営資源を重点配分する
- 局地戦・・・地域や領域の限定
- 接近戦・・・顧客に接近する販売経路、経営活動、顧客志向
- 一騎打ち・・・競合数の少ない競争
- 陽動戦・・・奇襲戦法
もう少しわかりやすく言うと
- 差別化する、人と違うことをする、その勇気を持つ
- 小さな領域でNO1を目指す。1位になれるまで細分化する
- 一点集中、他をやりたくなる誘惑に負けない
- 局地戦で戦う、戦場を広げない、まず半径30分が目安
- 接近戦で戦う、訪問し近くによって触れ合う
- 一騎打ちをする 一人ひとり丁寧に対応する
- 万人受けを狙わない ターゲットを絞り込む
- 価値やすきに勝つ、 競合がないところで静かに勝つ
「経営は戦略がなければやってはいけない。理念がなければやる資格がない。実践しなければ何も生まれない」のです。つまり、「理念」ある「戦略」を「実践」するということです。
中小企業が経営理念を作る場合、①大義名分、何のために仕事をするのか ②将来の夢、これからどうしたいのか ③価値観・毎日の行動指針 何を基準に判断したらいいのか、具体的にどうしたらいいのか、を示していく必要があります。
経営とはお客様に合わせ喜んでもらうことです。経営とは利他行、経営とは社員を守ること、経営とは人に尽くすこととです。社員は金もうけの道具ではありません。経営が社長の理念の実現だとすると、会社とは社長の価値観を共有した人の集まりであり、経営理念を実践する集団なのです。
どのような小さな会社でも、差別化し一点集中で一つのことに根気よく打ち込むことができれば、NO1になることができるのです。これがランチェスター戦略ですが、そこにはお客様や従業員のためという利他の精神と感謝の心がなければなりません。
利他の精神と感謝の心を持って、「強い正義感・信念と行動力」で、差別化し一点集中で一つのことに根気よく打ち込むことができれば、コロナ禍に打ち勝つ事業を展開していけるのではないかと思います。