中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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コンサルタントの危険な正論

 
コロナ禍で社会構造やビジネスモデルが変化する今、「生産性」「効率」「成果」が見直されています。そこで必要なのは「仕事の無駄」を見出しそれを排除することです。「仕事の無駄」を排除し、生産性を高めるためどのように仕事について考え進めれば良いでしょうか?
経営コンサルタントの私が言うのもどうかと思いますが、「製品開発を行う」というプロジェクトを遂行するためにコンサルタント会社と契約すると、それが悲劇の始まりとなるということが起こります。プロジェクトの立案者は「今このような製品が求められているのではないか、こういう製品があれば世の中がこう変わる」というような理想をもって企画立案し、役員をはじめ多くの人が賛同しプロジェクトとしてスタートします。ところがコンサルを入れた途端、そのコンサルが「ユーザーの声に裏打ちされた物しか作ってはいけない」と言い出すことが多々あります。そのコンサルの声に引きずられて最初の理想的なプロジェクトがどこにでもある普通の面白みのないプロジェクトに変容してしまいます。確かに「ユーザーのニーズにあった物しか作っては駄目だ」というコンサルの意見は正論と言えば正論です。顧客のニーズがない物を作っても売れません。しかし、何が顧客のニーズなのかということはそんなに簡単に判断できるものではありません。今ある製品を顧客のニーズに合わせて変容・修正させるというなら、現時点の顧客のニーズを把握すればいいですが、全く新しい製品を作るというのなら、顧客のニーズは将来の顧客のニーズです。その把握は容易ではありません。作る側に「こういう製品があったらいいだろうな。楽しいだろうな。ワクワクするな。この製品で世の中はどう変わるかな」といった理想があってもよいのではないかと思います。製品を作る側もある意味将来の顧客になります。作る側が求めるニーズを通じて顧客のニーズを創り出すこともできるはずです。
また、コンサルタントの意見に従うことで権威づけされたような気分になり安心感を得られることがありますが、このやり方だと、個の可能性は型にはめられ、制限されてしまいます。製品やサービスによっては、理想を突き進むプロジェクトであってよいように思います。
また、すでに確立された方法論を濫用してはいけません。例えば、大企業からベンチャー企業や中小企業に転職してきた人が「当社は前に自分がいた企業に比べて何もかもが整備されていない。自分が中心となって、同社の各種制度や規定を変えていきます。当社も一流の会社にステップアップできます」などと言うことがあります。しかし、身の丈に合わない制度や規定を導入しても却って効率が悪く生産性を低下させるだけのこともあるのです。それぞれの企業規模や状況に応じた適切な制度や規定があるのです。それを無理に大企業と同様に変えてみても意味がありません。却って組織が回らず効率が悪く生産性を低下させることになります。
また逆に最新のベンチャー企業から大企業に転職した人が「ベンチャーを中心としたIT企業ではこんな古いやり方をしているところはありません。自分が関わるプロジェクトでは最先端の方法でいきます」などと言い、却って事故を起こしたり関係部署の賛同が得られず孤立したりするケースがあります。これも前職のやり方を機械的に適用しようとした方法論の濫用の事例です。ベンチャーや中小企業と大企業ではやり方・方法論が異なります。ここでもそれぞれの企業に合ったやり方や方法があるわけです。
想像力を発揮し、新規事業やプロジェクトを成功させるのに重要なのは、知識や方法論で武装することではなく、チームメートが同じ方向を向いて進んでいくことです。凝り固まった方法論ではなく、全社員が1つの目標や理想に向けて心を一つにして突き進むことで道が開けることもあるのです。
コロナ禍で先が読めず、ウイズコロナの時代にどのような働き方がよいのか確定的に判断できないときには、新規事業やプロジェクトでも何が正解か答えがないことが多いと思います。そうした状況で過去の知識や方法論にとらわれすぎていると時代の流れを捕まえることが出来ずに後れを取ることにもなりかねません。過去の知識や方法論が全く無意味と言うわけではありません。何も手掛かりがない状況では過去の知識や方法論に頼らざるを得ないこともあるでしょう。問題はそうした過去の知識や方法論に固執するのではなく、状況を見据えて臨機応変に変えていくことが重要ではないでしょうか。