中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

中小企業経営のための情報発信。中小企業から日本を元気に

マネジメントに必要な能力

おはようございます。
マネジメントの父と言えば、ピーター・ドラッカーです。2005年に亡くなっていますが、今なおドラッカー経営学は読み継がれ実践されています。
以前にも書きましたが、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授は著書「世界の経営学者は今何を考えているのか」の中で、「アメリカの経営学の最前線にいるほぼすべての経営学者は、ドラッカーの本などほとんど読んでいません」と言っています。今の経営学が目指しているのは、科学としての経営学だからです。かつて経済学が科学を目指し、経済事象をモデル化しすべてを数学の式で計算し解を出そうとしたのに似ています。その結果、経済学は現実の経済事象から大きく離れてしまったように思います。学問としての経営学が経済学と同じように、机上の学問になりつつあるように思えてなりません。経営学こそ実務に根差した実践でなければならないはずです。
日本において、ドラッカーの本は流行っています。それはドラッカーの名言が経営者の心にスッと入ってくるからです。現場で経営に携わる企業経営者にとって、必要なのは机上の学問ではなく、日々現場で起こる切実な課題を解決するための指針です。「いかに苦しい企業経営を乗り切っていくのか」「赤字企業を黒字化するにはどうすればいいのか」「売上や利益を上げるために何をすればいいのか」といった問題に指針や心の拠り所を与えてくれるのがドラッカー経営学です。
今日は、ドラッカーの本領である「マネジメント」に関して必要な能力は何かについて書いていきます。
「マネジメント」という言葉は多用されていますが、その意味はあいまいであり時に誤解されています。日本では、「マネジメント=管理」として使われています。この「管理」という訳語は静的で受動的な意味合いが強く、本来のマネジメントの動的で能動的な面が無視されているように思います。ドラッカーによれば、「マネジメントは人間と創造に関わるもの」で「人や組織の強みや創造性を最大限に引き出して経済的・社会的に価値ある成果を上げること」なのです。
マネジメントは、一般に考えられているようなマネジャーの仕事ではなく、リーダーの仕事なのです。マネジメントは1つのプロフェッショナルの仕事であり、特有の能力が必要です。マネジメントに必要な具体的な能力が何か認識していなければ、漫然とマネジメントをこなすことになり、マネジメントの成果は曖昧なものになってしまいます。
1.目標を設定する能力
 マネジメントは、目標に対して、深く広く向き合うことが重要であり、具体的かつ適切に目標を設定する能力が求められます。目標をきっちりと設定するには、目標とはどうあるべきかを知らなければなりません。
 組織で成果を上げるには、全従業員が同じ方故意に向かってエネルギーを集中させなければなりません。その時に大切なのが組織の目標(目的)と価値観の共有です。一人ひとりがてんでバラバラなことをしていたのでは組織としての成果など上がるはずはありません。
 目標には、はじめからチームとしての成果を組み込んでおかなければなりません。チームとしての目標は常に組織全体の目標から引き出されたものでなくてはなりません。つまり、組織としての成果を軸に、多様な視点で適切な目標を設定する能力が必要なのです。またドラッカーは、目標設定の観点について次のものを挙げています。
 Ⅰ:短期的目標
 Ⅱ:長期的目標
 Ⅲ:無形の目標
 Ⅳ:部下の仕事ぶりと態度における目標
 Ⅴ:社会に対する責任についての目標
2.組織化する能力
 マネジメントには、人を束ね、組織として機能させる能力が求められます。組織化する能力というのは、個の集合から全体を創造する力です。
 資源が何かを常に考え、資源を強い力に変え、弱みをそぎ落としながら、全体の組織を昇華させる力が、マネジメントには必要です。
3.コミュニケーション能力
 マネジメントには、組織の成果を上げるための高いコミュニケーション能力が求められます。
 ドラッカーは「コミュニケーションとは、知覚であり、期待であり、欲求であり、情報法ではない」と言っています。
 受け手の知覚能力を考慮しなければ、コミュニケーションは成り立ちません。また、コミュニケーションは期待しているものは受け入られ、期待されていないものは避けられます。コミュニケーションは相手の欲求に左右され、またコミュニケーション力によって相手の欲求も変えることができます。コミュニケーションは単に情報を与えることではなく、きちんと知覚させることが大事だということです。
 相手の期待や欲求を理解し、それを利用しながら、知覚レベルに落とし込むコミュニケーションを行う力がマネジメントには必要なのです。
4.評価測定能力
 マネジメントには、組織を構成する基本単位となっている人を評価し、測定する能力が求められます。人にはそれぞれ、目的・欲求・ニーズがあり、いかなる組織でもメンバーの欲求やニーズを満たさなければなりません。この個人の欲求を満たすものが賞や罰であり、各種の奨励策や抑止策です。
 組織に属する人の欲求やニーズをきちんと評価し、評価に対する具体策を管理することで、組織に働く人は自らの位置づけや役割を理解していきます。
5.問題解決能力
 マネジメントには、問題を見極め、適切に対処する力が求められます。問題というのはネガティブな壁ではなく、組織が成果を出すために考えられるあらゆる可能性です。
人という資源をどのように有効活用できるかがマネジメントの最大の課題であり、マネジメントの腕の見せ所です。ドラッカーは、「本当の資源は1つしかない。人である。組織が成果を上げるのは、人を生産的たらしめることによってである。それは仕事を通じて行われる」と言っています。 
人という経営資源をどのように生かしていくのか、人が生き生きと働き成果に結びついているのかがマネジメントにとって最も大切なことなのです。
ドラッカーは、常に「強み」ということを強調します。「人の強みを活かせ」ということです。「強み」を生かして「弱み」を排除するのです。そのためにマネジメントには上の5つの能力が必要となるのです。

休日の本棚 結果主義のリーダーはなぜ失敗するのか

おはようございます。
今日は、本田有明著「結果主義のリーダーはなぜ失敗するのか」(PHPビジネス新書)という本を紹介します。
「部下には厳しくしている。でもその分、自分だって必死にやっている。『目標必達』を合言葉に皆を鼓舞してきた・・・それなのに、振り向けば誰もいない!? こんな目に遭う可能性は実は『会社に忠実』で『優秀』な管理職ほど高いのです。部下にいろいろ注文を付けているようで、結局は『とにかく結果を出せ』という指示しか出していない。このようなリーダーの隣には、不祥事や部下のメンタルダウンのリスクが常に存在している」のです。
結果を出すこと、成果を上げることは、あらゆる組織の原点であり目標であることは言うまでもありません。
「結果を出せ」という言葉を色々な文脈で用いられます。この本では、
・言い訳をせずに、結果を出せ!
・方法は任せるから結果を出せ!
・法令は順守したうえで、結果を出せ!
・どんな手段を使っても、結果を出せ!
といった意味合いで用いられるとしています。
法令順守=コンプライアンスは企業活動の大前提で、リーダーがこれを無視してまで「結果を出せ!」とは言うはずはありません。しかし、「不正を働け」と口には出さないまでも、それをよく似た文脈で部下を追い込んでいるリーダーがいます。2015年東芝の不正会計問題から三菱電機架空データ問題まで、すべて「結果を出せ」という結果主義・結果至上主義が原因です。
結果主義・結果至上主義というのは、「目的のために手段を択ばず」ということであり、こうした結果至上主義が世の中に蔓延しているのです。
リーダーも部下も、結局は分かりやすい数字(業績)だけを取り上げることになり、結果主義・結果至上主義に陥るのです。そうなると、思考停止の状態で数字の操作だけに邁進し、挙句の果てには不正な領域に足を踏み入れることも厭わなくなってしまうのです。「結果、結果」「数字、数字」とリーダーがアホの一つ覚えのように血眼になっていると、部下の心は倦み組織は疲弊します。その場の短期的な成果につながっても持続的な成長にはつながりません。
結果を標榜するときには、リーダーの立場にある者は、それが意味する中身を具体的に伝えなければなりません。成果を追い求めるあまり忘れがちになる「当たり前のこと」を明確な形で社員に示して、会社全体で共有することが大切です。その一番重要なメッセージが、企業倫理人命の安全法令順守です。こうしたことが欠落しているので、相変わらず企業不祥事が後を絶たないのです。
この本は、「まずは人を育てること。人を育てれば、結果は後からついてくる」という立場です。当たり前のことですが、当たり前だからこそ難しいのです。
この本は、第1章から第6章までの6章で構成されています。その要点を簡潔に引用(要約)します。
第1章 不祥事の温床となる結果至上主義
・1つの部署であれ会社全体であれ、結果至上主義の空気が支配的になると、「できないことはできない」「してはいけないことは決してしない」という単純な理屈が押しのけられる。「組織のため、会社のため」という理屈が、善悪の判断を無視して、まかり通るようになる。これが結果至主義の陥りやすい罠である。
・「何よりも公正の精神を重んじて法令違反の取り締まりに全力を傾ける」と言っても、どこかで撲滅したいのは「不祥事」そのものではなく「不祥事の発覚」になっている。特に隠蔽体質が風土となってしまっているところでは、「発覚することが問題だから発覚しない巧妙なやり方を考えればよい」という悪循環に嵌っていく。
・強欲資本主義や結果至上主義が社会の風潮を形成しているのは間違いない。「法令順守を徹底し、高い倫理観を持って業務に邁進しよう」と本気で言うのであれば、リーダーはそれ相応の覚悟を持たなければならない。 
第2章 結果を出したければ「人」に還れ
経営資源には人・物・金・情報・技術など有形・無形のものがあるが、とりわけ人(意欲・能力)という資源は、リーダーのかかわり方次第で、極大から極小まで、いかようにも伸び縮みする要素である。「人材育成と活用の達人」を目指すことが管理職の重要な任務に他ならない。
・結果を出したければ人に還れ。人材育成と活用の達人を目指せ。それが、目標達成と業績拡大を実現する王道である。
・上司・先輩と部下・新人とのやり取りは、どうしてもすれ違いが生じやすく、コミュニケーションのつもりが一方通行に終始しがちになる。真のツーウェイ・コミュニケーションを実現するためには、共通認識の有無を確認したうえで、個別具体的な対話をしなければならない。
・短くても上司の言葉の中に、承認・感謝・慰労・期待・日頃の目配りなど、良好な人間関係の構築に必要な要素が詰まっている。こうした上司の元では人々は生き生きと働き、生産性も高まる。IQと共にEQ(こころの知能指数)にも優れていることがリーダーの条件である。
第3章 リーダーは「モチベーター」たれ
・仕事ができる自信家のリーダーは人材の育成を怠る傾向にある。何でも自分でやってしまうほうが簡単だし即効性があるように感じるからだ。ここで大切なのは「リーダーの役割」である。チームリーダーや上司にとって大切なのは、自分で何でもこなすことではない。個々人のモチベーションと能力を引き上げてチーム全体の総合力を高く維持することである。
・活性化している職場では承認や称賛の言葉が頻繁に聞かれる。叱責しても相手が素直に聞き入れる関係を築くためには、その何倍も承認・称賛の言葉をかけておく必要がある。人は自分を承認してくれる人に関心を持ち、その人の期待に応えようとする。成果の承認だけでなく、プロセス・行動についても承認・称賛することが大事である。
・大切なのは、「普段からよく観察して相手の長所を知っておく」ことである。アンテナを高く上げておかないと情報をきちんとキャッチすることはできない。
第4章 どんなメッセージを発信するのか
・経営者や幹部が社員にメッセージを伝えようとするとき、漏れや抜けのない全方位的なメッセージを伝えようとして、総花的な項目列挙になってしまう。これではあまりにも具体性の欠けた訴求力のない単なる「挨拶」で終わってしまう。聞いている側にとって大事なのは、要するに何が言いたいのかということ、「あれもこれも」ではなく優先順位を付け、現実的な対応策を明確にすることだ。
・わかったようでわからない指示では、結局何もわからない。あれもこれも式のメッセージなど、現場では物の役にも立たない。
・リーダーにとって大切なのは、お仕着せの課題を与えることではなく、自分たちでそれを見つけさせることだ。問題発見と問題解決とを部下みずからにやらせること。管理者の役割はその道筋をうまくつけることである。初めの方針は管理者が示さなければならないが、そのプロセスは部下たちの参画によって考案した方が実効性の高いものになる。要するに、トップダウン方式とボトムアップ方式をうまく取り入れることだ。リーダーに必要なのは「巻き込む力」である。
・自分が一生懸命に働くのは当たり前のことで、リーダーとしては最低レベルでしかない。また、一握りのできる部下、気の合う部下にだけ仕事を任せるのも最低レベルに毛の生えた程度。できる部下もできない部下も、気の合う部下も気の合わない部下も、全員まとめて自己記録の更新を狙わせること。それが仕事のやりがいなのだと自覚させ、その気にさせること。そこにリーダーの責務と本懐がある。
・「人材育成は人事部門の仕事」と思っているようでは、人づくりが会社のポリシーに根付くことはない。人材育成を会社づくりの根幹に据えるためには、最高経営責任者がそれを宣言し、主導しなければならない。
第5章 残業ゼロへの挑戦が仕事の質を高める
・結果主義の問題を突き詰めていくと、プロセス管理を無視した結果至上主義に行き当たる。業務の改善や人材の育成など、結果を出すための方法をしっかり吟味することなく、「結果、結果」と連呼する。結果を求める最上の方法は、モチベーション・マネジメントの観点に立って人材の能力を最大限に引き出すこと。そこには効率的な業務運営と時間管理を徹底する必要がある。
・業務における効率的な時間管理とは、単位時間の生産性を向上させることであり、結果として残業時間の削減を意味する。可能な限り「残業ゼロ」に挑戦すること、逆説的な言い方になるが、それがモチベーション・マネジメントの要諦であり、正しい結果主義への挑戦にもつながる。
第6章 リーダーの品格と見識を磨く
 ここでは、リーダーの品格と見識を磨く5冊の本が紹介され、解説されています。
・カント「道徳形而上学原論」・・・倫理の観点をカントに学ぶ
渋沢栄一論語と算盤」・・・あらゆる社会人のよりどころとなる書
・アウレーリウス「自省録」・・・人を率いるものの心構え、「帝王学」を学ぶ
幸田露伴「努力論」・・・人材マネジメントへのヒントを提供する
・ベネディクト「菊と刀」・・・日本人に欠落しているものは何か
安直な結果主義に陥らないために、リーダーは品格や見識を磨くことは必要ですが、これまでも書いていますが、経営は「ヒト・ヒト・ヒト」で成り立っています。リーダーの役割は、その人の育成と啓発であり、遠回りに見えても、これが最大の成果を上げる近道です。結果は後からついてきます。

部下の手柄を横取りする上司の思考回路

おはようございます。
部下の手柄を平気で横取りする上司や、自分のミスの責任を部下に平気でなすりつける上司というのはどのような組織、職場にもいるものです。
人の手柄を当たり前のように横取りできる人というのは、全く罪の意識とか悪いことをしているという意識が欠落しています。横取りされた側からすれば、「なんであんなことができるんだろう」と首を傾げるしかありません。
また、人の手柄を平気で横取りする人は、何かまずいことがあった時には平気で責任を人になすりつけます。例えば、上司の指示に従って事を進め、上手くいけば上司が自分の手柄とし、それが上手くいかなくなると「俺はそんな指示をした覚えはない」とはしごを外してしまうというケースです。
「人の手柄を平気で盗む場合」も「平気で責任をなすりつける場合」も、そこには同じ心理メカニズムが働いているのです。
1.自分の貢献を過大視し、自分の責任を過小視する「認知のゆがみ」
 人の手柄を盗んだり、人に責任をなすりつけたりする人は、困ったことに、本人には手柄を奪ったとか責任をなすりつけたとかいう意識が全くないのです。良識ある人から見れば理解できませんが、こうした人は、自分の手柄だとか、自分に責任はないと本気で思い込んでいるのです。だからこそ余計にタチが悪いのです。
 それには、非常に調子のよい認知のゆがみ「利己的帰属」が関係していると言われています。「利己的帰属」というのは、上手くいったときには自分の「関与=貢献」を過大視し、まずいことになったときは自分の「関与=責任」を過小視する「認知のゆがみ」のことです。誰でも自分は可愛いので、多かれ少なかれ多少は「認知のゆがみ」を持っています。無意識のうちに自分に都合がいいように解釈してしまうということはありますが、これも「認知のゆがみ」が関係しているのです。
 人の手柄を盗んだり人に責任をなすりつけたりするのが平気な人は、この「認知のゆがみ」が度を越している人です。自己愛が強すぎて、目が曇っており、そのために人の手柄を横取りしても人に責任をなすりつけても、平気なのです。
 人の手柄を横取りする人は、人からアイデアを聞いたことは覚えていてもその比重を極端に小さく認知し、自分が発想した部分の方が大きいと思い込むのです。もっとひどくなると人から聞いたことさえ忘れてしまっているのです。だから悪びれることなく自分の手柄にしてしまうのです。
 また、平気で人に責任をなすりつける人も、自分に都合の悪い記憶を抑圧し、思い出さず、「そんな指示をした覚えはない」などと本気で思いこんでいるのです。心の中で、自分に都合がいいように事実をゆがめ、悪びれることがないのです。
2.対策は「距離を置く」「証拠を残すようにする」
 このような人物は、都合の良い認知のゆがみによって、自分がずるいことをしているといった意識はなく、罪悪感など微塵もありません。こうした人物に何を言っても、相手に通じることはなく、こじれるだけです。こちらの精神状態が逆なでされるだけでストレスもたまります。
 このような人物と争うのは不毛です。心のエネルギーを無駄に消費するだけです。こうした人物には、適度に距離を置き、必要最小限のかかわりに留めるべきです。
 そうは言っても、このような人物が同僚や上司にいる場合には、距離を置くことはできません。どうしてもかかわらないわけにはいきません。その時には、しっかりと予防策を講じることです。
イデアを盗まれるのを防ぐには極力メールで証拠を残すこと。口頭で意見を求められたり、アイデア交換した場合でも後からそのやり取りを記した確認メールを出すことで証拠が残せます。他の関係者とも情報共有できるCCで送付することも効果的です。責任をなすりつけられないためにも証拠は不可欠です。口頭で指示を受けた場合でも確認メールを送付するのです。
 争いを起こすのは、日本的組織では好まれませんが、いざという時には自分の身は自分で守るしかありません。最小限身を守る手立ては講じておきたいものです。
 利己的帰属で本人が忘れてしまっている場合でも、証拠があれば、それに対して反論もできますし、それ以上に証拠があるということで、気持ちに余裕ができ、イライラすることもストレスを受けることも軽減できるはずです。

失敗から成長するためのステップ

おはようございます。
現在は変化のスピードが速く、先を見通せず何が正解かわからない時代です。政治や経済、ビジネスにおいても、大きな変革が起き、予想もつかない事態が次から次へと現れてきています。こうした中、常に成功するとは限りません。成功体験ばかりを称賛し、失敗を隠そうとする風潮では、成長も発展もあり得ません。むしろ、複雑で混迷する環境の中、生き残ることも難しくなります。
 
失敗は成功につながる学びの宝庫」「失敗は成功の母」などと昔からよく言われることですが、今のように常に変化し続ける環境でこそ、真に活かされる言葉ではないかと思います。
失敗した後に成長するためには次の3つのステップが大切です。
1.少し経ったら、失敗について考える時間を取る
 仕事で失敗した時にどうすればいいのでしょうか? 
 「失敗したことを早く忘れろ!」と言われることがあります。仕事の失敗は誰もが平気でいられないから、そう簡単に忘れることはできません。しかし、失敗したことを気にしてグジグジしていたのでは、先に進めません。いったん失敗したことを忘れて、仕切り直すこと、つまり次の挑戦へと一歩踏み出さなければならないのです。
 しかし、完全に忘れてしまったのでは失敗を活かすことはできません。失敗した後にそこから学ばないのは、チャンスを失うようなものです。
 失敗した直後は、気も動転していてマイナス思考に支配されネガティブな考え方しかできません。そこで、一旦忘れて、しばらく時を置いてから冷静に客観的な目で眺めなおすのです。そうすると失敗をプラス思考でポジティブな視線で見ることができるようになります。
 とはいえ、失敗について再考するまで、あまり時間を置きすぎてもいけません。長く時間を置けば、その間に重要な細部を忘れてしまうことにもなりますし、自分に都合がよいように記憶の置き換えが起きることもあります。
 失敗の発生に近い時期でありながら、今後改善できることについて客観的に考えられるようバランスをとるために、失敗から48時間後くらいを目安に時間を取るのが良いのではないかと思います。一晩ゆっくりと寝て翌日か翌々日に再考するのが冷静で客観的に自分を見つめることができるのではないでしょうか。
2.失敗について書きとめる
 起きたことを考えるだけでは不十分です。その時の状況を書き留めることも重要です。書き留めることで、頭の整理ができ、順序立て、系統立てて考えられるようになります。
 人は自分の考えを書き留めるとき、全体像を確実にとらえたいという思いから、よりじっくりと考えるようになります。書き留めることなく頭の中だけで考えているときには、思考があちこちに飛び回り、深く考えることができず浅く薄っぺらな思考で終わってしまいます。
 さらに、「失敗ノート」をつくることで、後日読み返すことができます。
 人間という生き物は、同じ失敗を繰り返すものです。たとえ一度は失敗を糧として成功に導いたとしても、時が経つにつれて忘れ、再び同じ失敗を繰り返します。「失敗ノート」に書き留め、繰り返しそれを読み返すことで、再び失敗することを減らすことができます。
3.自分の失敗を他の人に打ち明ける
 失敗から学んで行動を起こせるように自分の背中をさらに押したければ、自分の失敗談やそれに対する自分の考えを他人に話すことです。失敗から学ぶためのモチベーションをもう少し高めたいと思っているのなら、失敗を自分の心のうちにとどめていてはいけません。他の人に失敗を打ち明ける目的は、必要に応じちょっとした支えをもらい、自分に説明責任を課して、自分のモチベーションを高めるためです。
 自分の失敗を打ち明けるには勇気がいることです。
 自分の弱みを晒せば、心が解き放たれて、カタルシスを得られることもあります。カタルシスというのは、「心の中に溜まった澱のような感情が解放されて、気持ちが浄化されること」を意味します。自分の心の内面を信頼できる他人に話すことによって、いったん自分が抱えている苦痛を手放し、自分に対して距離を置いた状態でその苦痛を客観視し、解放することによって浄化されていくと考えられています。
 自分の失敗を人に打ち明けるというのは、自己のモチベーションを高めるというだけではありません。
 経験したことを内省し、成功したことも失敗したことも、次の経験に活かせるように言語化・教訓化することで個人の成長スピードを高めることができるだけでなく、個人の経験という暗黙知形式知化して、つまり見える化して全員が共有できるようにすることで、組織全体の成長につながるのです。

休日の本棚 戦略思考

おはようございます。
今日は、牧野知弘著「戦略思考」(SBクリエイティブ)という本を紹介します。「ボストン流どんな時代も食っていける」「先送りできない状況で人は真に考え始める」「そうか、その打ち手があったか!」と帯などに記載されています。
著者は世界的コンサルティング・ファームのボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の出身者です。この本はBCGで学んだ「戦略思考」を紹介してくれています。的確な戦略思考を持てば、どんな業種、業界でも頭角を現すことが出来るというのですが、ここでいう「戦略思考」はスマートなものではなく、実際は泥臭く深く考え抜くことから始まります。
大学卒業後一旦銀行に就職した著者は、先輩の勧めでBCGの門をたたきます。当時の日本BCG代表の堀紘一氏の面接を受けます。堀氏は著者に「今、僕トイレに入ってたんだ。それで考えたんよ。牧野さん、日本でトイレットペーパーって1日でどれくらい消費されるものなんだろう」と質問します。机の上に、レポート用紙と鉛筆、電卓が置いてあります。これが面接なのです。
あなたならどのように考え、どのように答えますか?時間は3分です。
BCGではこのように考える力が要求されます。それも普通に考えるだけでなく柔軟な思考が要求されるのです。
牧野氏は・・・「日本の人口は1億2000人で…赤ん坊や入院しているお年寄りは使わないとして…男女で使う長さも違い…トイレに行く回数は…」と計算して答えを出します。堀氏は「いや、僕も知らないんだけど。どう考えたの?」答えは必要ないのです。考えるということが重要なのです。
それは、マイクロソフト以前にも紹介した以前にも紹介した「ビル・ゲイツの入試問題」と有名になったようにマイクロソフト社の入試問題はまるでパズルです。これも考える能力、柔軟な思考が求められているのでしょう。
この本ではコンサルティング・ファームやコンサルタントの仕事の仕方などが詳細に紹介されていますが、一般のビジネスマンや経営者にとって特に必要ないことです。要は仕事の仕方や考え方で役に立つエッセンスは何かということです。そこで、ビジネスマンや経営者に直接役立つことを紹介します。
・BCGで教わったことの多くは個々の解析ツールというよりも、問題の本質を考えようとあくなき追及をするその姿勢にある。
・スライドとは「読ませるもの」ではなく「見せるもの」⇒タイトルを見て「何が言いたいか」理解させる。理由はあとから。先ず結論ありき。
・議論が好きというよりも議論を戦わせることで自らのロジックを組み立てていく。時には苦手な人とも議論を交わす。
・会議に出席しても何もしゃべらない人は「能無し」。いても意味がない。
・ビジネスに必要なのは「評論」ではなく「意見」。可能性をいくら積み上げたところで「結論」を出して「行動」しない限り、ビジネスは動かない。
・自分の意見だけを主張し続けても駄目。反対意見にも耳を傾け、なぜ反対なのか理解することが大事。相手の意見をただ論破するだけを目的としたのでは、いらぬ対立を招き、結局自分の意見が通ったとしても、期待する社内の協力が得られずプロジェクトが失敗してしまうことにつながる。
・意見を述べるにはまず相手の意見、あるいは自分を取り巻く環境について考える深い意識がなければ、自分の意見は「薄っぺら」なものになってしまう。
・調べたことは正しい。間違っていない。だが、調べた話を延々としても意味がない。世の中に出回っているデータをお行儀よく分析してもそんなものに付加価値は生まれない。クライアントでも「知っていそうで知らないこと、気づいていないこと」に気づいて提示できることが重要。そのためには多くの知見と膨大なデータの分析を通じて問題の本質に迫ること、切口を常に磨き上げて問題をとらえることが重要。
・一生懸命やったから報われる、世の中はそんな「甘ちゃん」の世界ではない。一生懸命なんて当たり前。付加価値を創出するような業種では、一生懸命だけではほとんど全く評価の対象にならない。付加価値を創出して「なんぼ」の世界。
・ほかの業界で、同じようなパターンの事例がないか、そのパターンは自分の業界や会社にも応用できるのか、できるとすれば具体的にどのようなアクションプランを描けばよいのか
・会社の一員として長く勤めていると、自分たちの会社の歩き方が不格好でも、それが「常態」と思ってしまう。だが往々に「会社の常識は世界の非常識」になっている。会社の経営はゴルフのスウィングに似ている。自分では上手にスウィングしているつもりでも自己流になっている。それで勝てる時もあるが、それではいつも勝てない。自分が正しいスウイングをしているか見てもらうことも大事。
・数値は「魔物」である。「シロ」にも「クロ」にも使える「魔法の杖」になる。データを見る時に一番気を付けないといけないのが「いきなりデータを見ない」ということ。次々と押し寄せてくるデータを片っ端から見始めると全体像が見えなくなる。
・トレンドで見ると相撲を取る土俵がなくなる、あるいは相撲のルールが変わることが明確にわかっているのなら、土俵から降りる=事業の領域を変える、あるいは土俵での相撲の仕方を変える=「改革」を実行する、ことが必要になる。
・人間だれしも「うまくいかなかったらどうしよう」「売れなかったらどうしよう」「マーケットが予想と違ったらどうしよう」などと考えるのは嫌なこと。しかし、戦略を立案する際、実は最も重要なポイントは「失敗に耐えられるか」ということ。思い切り「悲観論」から考えてみる。思い切り悲観論から出発するというのはもはや「この下はない」ということ=その事態に陥っても耐えられるなら「失敗に耐えられる」
・どんなプロジェクトでも、決済日前日には難癖をつけて「ちゃぶ台返し」をしてみる。最後のゴールテープを着るとき人間はどうしても甘くなり、ちょっとした間違いや面倒くさいことに目をつぶってしまいがちになる。そこにリスクが潜んでいる。戦略の立案やその実行において、成就する前に一度思い切って「ちゃぶ台返し」をして、今一度「慎重さ」と「緻密さ」で見返してみることが大事。
・車内に転がっている問題でも、意外なことにそれを問題として認識できていない会社が多く存在する。目の前の事象に集中していると「大局」が見えなくなってしまう。自分の周囲だけ知っていればよいという発想はセクショナリズムを招き組織の硬直化につながる。問題は明確に見えるものではなく「藪の中」にある。その問題を明確にするには「藪漕ぎ」が必要になる。
・「実践」と言えばすべて経験に基づくものだと誤解している人がいる。確かに「実践」には経験値が非常に役に立つ場合があるが、その一方で、この経験値が「実践」するにあたって大いなる妨げになるケースもある。「成功の方程式」と言われるものがあるが、「疑う」ことからスタートする。
・失敗の本質を理解することが「戦略」を立案するにあたって非常に大切な要素になる。失敗は時として「もう絶対やらない」というものではなく、バージョンアップして作り直すと、実は「宝の山」に化けたりする。戦略立案には過去の失敗の抉り出しが必要であり、ときとしてこの「失敗」のリメイクが新たな戦略を生み出すことがある。失敗しても、そこに果実がると思えば「手を替え、品を替え」手でも取りに行く、こうした発想が会社を強くする。
・「なぜ?どうして?」が問題解決の近道である。物事の本質を深く考えない場合「当たり前」「ルール」と言うことになるが、世深く考えれば、「当たり前」でもなく、もともと「ルール」なんか存在していないことが多い。
・企業内で重要な事業案件の戦略を立案する場合「高揚感」「使命感」が判断を鈍らせる。「誰もやっていないからチャンス」なのか「誰もやっていないには理由がある」のか、どちらに考えるかで企業の取りうる行動は右にも左にも変わる。常に冷静な判断が必要。両極端に触れてしまうことはないのか、決断を行うにあたってはよく比較検討したうえで決断を行うことが重要。
・会社が今あるのは過去の「成功の方程式」によるのであって、このことは今後の成功を約束するものではない。現在があるうちに未来の「成功の方程式」を常に考えて行ける企業が勝者となる。
・多数決をとることに重きを置きすぎると、どうしても誰しもが反対しない無難な決定ばかりするようになる。これは大企業によくみられる意思決定。会社の大きな発展は「リスクをどのように取るか」に対する判断、決断の連続によって生まれる。良い経営者ほど好奇心旺盛で、リスクに対しる臭覚は鋭敏であり、どこまでリスクをテイクすることが出来るかについて正しい判断をする。
・会社として決めたのなら、そのことに対して悪口は言わない。全員が心を一つにして課題を突破していく。成功か失敗かはこれからは自分たちが決めて行く。
・仕事も、プロジェクトも、ある意味どこまで「冷静な目」で見られるかにかかっている。ロードマップという言葉を思い出してほしい。一つの道の途中でたとえ行く手を阻まれても、あるいは道に迷っても冷静に自分の立ち位置を把握して違うルートを、障害を乗り越えるルートを開拓していく。そんな冷静な心を常に持つことだ。
・今日思っただけで明日実現などしない。仕事とはずいぶんと時間のかかる根気の必要な作業だ。でも毎日無駄にせず、努力する人や会社に対して成功はその扉を開けてくれる。
・良い日もあれば悪い日もある。いちいちその日の結果で一喜一憂していては身が持たない。「切り替え」が大事だ。ビジネスはただ「辛抱強い」とか「反省する」とかだけでなく、悪かった時のことはあっさりと忘れて、次の行動にうつらなければ、とてもでないが継続できない。
・「言い訳」だけでは問題の先送りは出来ても問題の根本的な解決にはつながらない。環境の変化が起こったならその変化にどのように対処するのか、常に考えておく。一番大切なのは犯人を見つけることではなく、まずは問題が発生している原因を突き止めることだ。
・大企業の社員は分析は非常に得意だ。しかし、分析するだけでは問題の解決にはつながらない。アフターフォローの大切さは、商品やサービスの提供が顧客にどのように評価されているかを知り、問題点を発見し、その問題に対するメンテナンスと商品やサービスに対する「改善」「改良」のヒントを見つけることだ。
色々書きましたが他にもあります。それらは本書を読んでみてください。
コンサルタントだけでなく経営者、ビジネスマンにとって役立つ内容です。
最後に牧野氏は「ビジネスという厳しい社会では結果がすべてです。評論する暇があったら、問題解決のための時間を作る方がよほど大事だ」と言っています。自分の頭で考え抜き問題の本質に迫る、そしてそれを実践する、これこそが戦略思考です。

 

休日の本棚 マッキンゼー

おはようございます。
今日はコンサルティング・ファーム「マッキンゼー」に関する本を2冊紹介します。
マッキンゼー&カンパニーは1920年代に創設されたアメリカに本社を置き、欧州、アジア、南米、東欧等世界60か国に100以上の支社を持つ大手コンサルティング・ファーム、戦略系コンサルティング・ファームです。
ダフ・マクドナルド著「マッキンゼー 世界の経済・政治・軍事を動かす巨大コンサルティング・ファームの秘密」(ダイヤモンド社は、世界の頭脳集団といわれ世界中の大企業が頼りとするマッキンゼー&カンパニーの実態に迫ったノンフィクションです。
・何故、マッキンゼーは経済ビジネスの分野だけでなく、政治や軍事の面でも絶大な影響力を持ち続けているのか?
マッキンゼーが関わった企業は本当に業績を上げたのか?
・「マッキンゼー・マフィア」と呼ばれるマッキンゼー卒業者に何故大企業のCEOが多いのか? 
本書はマッキンゼーの生い立ちから変遷、内幕、功績と問題点などを包括的に語り、マッキンゼーが大企業の意思決定にかかわってきただけでなく、アメリカ資本主義そのものの行方を左右してきたことを語る一方で、多くの失敗についても鋭くメスを入れ、結局マッキンゼーは有益なのかという疑問を分析しています。著者は、「クライアントの問題を解決するための客観的で懐疑的、事実に基づいた分析的アプローチを通じてマッキンゼーが世界を効率的で合理的、客観的な場所にしたのは確かだ」としつつも、「伝説になるようなコンサルティングの仕事は全くない」としています。
本書では、主にマッキンゼーの歴史、功績、問題点が語られていますが、それを通じてアメリカの政治・経済、世界経済の動きを理解することができます。マッキンゼー出身者は日本でも大活躍しています。元日本支社長でエンペラーと言われた大前研一氏、著述家の勝間和代氏、DeNAの創業者南場智子氏、ミクシー社長の朝倉雄介氏などです。マッキンゼーにはクライアント企業に対する失策や問題点があるとしても、その影響力には計り知れないものがあります。本書は企業経営に関わるコンサルタントコンサルティングファームの問題点を抉り出し面白いノンフィクションになっています。
次に、大嶋祥誉著「マッキンゼーのエリートが大切にしている39の仕事の習慣」(アスコムを取り上げます。著者はマッキンゼーの出身者です。
本書の序章によれば、「何らかの問題」がスタート点でありそれを「解決すること」がゴールとなり、クオリティーとスピードのどちらも追究しながら2つの点を最短ルートで結んでいくことこそがプロフェッショナルの仕事です。マッキンゼーのエリートたちは時に正攻法で、ときには誰もが思いつかないような方法でクライアントの問題を解決していくのです。こうした仕事の中で、マッキンゼーの優秀なコンサルタントが日常的に大切にしている習慣があると言います。例えば、解決すべき問題を確認するときに「そもそも本当にそれが問題なのか、別のところに問題があるのではないか」という「ゼロ発想」、リサーチの時には片っ端から資料を読み込んだ後に必ず「現場」に行くし、問題点を整理するために「ロジックツリー」を使う、上司に時間をもらうときには「今、1分だけいいですか」と話しかけ「30秒で3つの要点に分けて説明する」など。こうしたシンプルな習慣が、点と点を無駄なくつなぐ原動力になり、マッキンゼーのエリートたちはこうした思考を習慣化しているのです。本書では、こうしたシンプルな習慣を「39の習慣」として紹介されています。
Ⅰ:バリューにこだわる=問題解決の習慣
 ①常に「ゼロ発想」をする 
 ②「鳥の目」で分析して最適解を探す 
 ③「クリティカルシンキング」を身につける 
 ④「雨」が降る前に「傘」を準備する 
 ⑤「現場」に行く 
 ⑥イシューから始める 
 ⑦「バリュー」にこだわる 
 ⑧「効率重視」か「アイデア重視」かを区別する
 ⑨「緊急度」と「重要度」のマトリックスをつくる
Ⅱ:要点は「3つ」に分ける=できる部下の習慣
 ⑩常に「PMA」の姿勢で 
 ⑪上司のタイプを見極めて接する 
 ⑫「1分だけよろしいですか?」と話しかける 
 ⑬30秒で、3つの要点を話す 
 ⑭「事実」をベースに「仮説」を伝える 
 ⑮上司の机を観察する 
 ⑯メールの件名に○○と書く 
 ⑰途中途中で上司に確認を入れる 
Ⅲ:「タスク」を視覚化する=段取り上手の習慣
 ⑱「仕事を頼んできた人」の意図を確認する 
 ⑲マトリックス上にタスクを貼る 
 ⑳いつでも机をきれいに保つ 
 ㉑メールのCCとBCCを戦略的に使いこなす 
Ⅳ:主張を質問に込める=客の心をつかむ習慣
 ㉒対面、メール、電話をうまく使いこなす 
 ㉓相手に「共通点」を探してもらう仕掛けをする 
 ㉔相手が本音を話しやすい「場」を選ぶ 
 ㉕相手と同じ土俵に立たない 
 ㉖自分の主張は「質問」に込める 
Ⅴ:認める、共感する=できる上司の習慣
 ㉗部下に「○○さん」と呼ばせる 
 ㉘認める、共感する、インスパイアする 
 ㉙部下に「仮説」を立てさせる 
 ㉚部下に迷いを打ち明け相談する 
 ㉛思い切って任せる 
 ㉜会議は4種類に分ける 
 ㉝会議の「目的」と「ゴールイメージ」を明確にする 
 ㉞会議中にあえて「ムダ話」をする 
Ⅵ:感情をコントロールする=「働くモチベーション」を高める習慣
㉟「メンター」を見つける
 ㊱ゴルフはプロゴルファーに習う
 ㊲本は最後まで読まない
 ㊳5分間で自分に問いかける
Ⅶ:休む時はしっかり休む
 ㊴心と体を整える
これらの習慣は仕事に携わるすべてのビジネスパーソンに役立ちますし、ビジネスパーソンに限らずすべての人に役立つものもあります。身につけるように努力したいと思います。

心理的安定性を実感できる環境を整える

 
どのような職場では「問題解決」や「アイデア」「新たな取り組み」が求められます。そういうときにチームメンバーの創造力を最大限に引き出すにはどうしたらいいか、優れたアイデアをたくさん生み出す組織の特性は何かについて考えてみます。
数年前、グーグルは成果の低いチームと優れた成果を上げるチームの調査に乗り出しました。その結果、分かったことは、「スター選手だけを集めても、優れたチームになるとは限らない」ということだったのです。つまり、グーグルのチームの特性は個々の才能ではなく、とりわけ重要なのは心理的安全性の状態だというのです。
ハーバード・ビジネススクールのエイミー・エドモンドソン教授によれば、チームにおける心理的安全性とは「チームメンバー間による、このチームでは対人リスクをとっても安全であるという確信の共有」を指すものです。
エドモンドソンの研究によれば、指導力の高い上長や良好な関係性をもたらす上長のいるチームほど、ミスの報告が多いことが分かっています。
リーダーシップの高いチームほどミスが多いとはどういうことでしょうか? リーダーシップが高いチームが決してミスが多いわけではありません。リーダーが有能で良好な関係性を維持できているチームでは、安心してミスの話題を持ち出すことができるのです。それに引き換え、指導力が低く良好な関係性が築けていないチームではミスをしてもそれを隠してしまうのです。
優れたチームは、ミスについて話し合い、そこから学ぼうという意欲が高く、ミスの報告も増えるのです。
チーム内で意見やアイデアを出す、ミスを認める、疑問を投げかけるといったことを安心してできるとメンバーが感じているとき、学習は積極的になり、チームとしてもパフォーマンスが向上するのです。
想像力を働かせるうえで、心理的な安全性が確保されていると、常識にとらわれない策を提示できるようになり、周囲から少々おかしいと思われるようなアイデアであっても安心して口にできるようになり、バカにされる心配がなければ、さまざまな選択肢を提示できるようになるのです。
創造的なことを生み出そうとする過程においては、ミスを素直に話すことが絶対に不可欠です。試作と実験にはある程度の失敗はつきものです。実際にやってみて、失敗と成功を繰り返し、試行錯誤しながら学習する効果を高めていくことが重要です。
チームで作業をするとき、メンバーが失敗を恐れていたのでは、満足度の低い結果しか生まれません。皆無難に乗り切ることだけを考え、限界に挑戦しようと考えないからです。このようなチームでは、上司や役員の顔色ばかり伺い、顧客に目を向けなくなってしまいます。これでは新しい優れたアイデアが生まれるはずはありません。
社員が心理的な安全性を強く実感できる環境を整えるにはどうすればいいのでしょうか? 
その答えは、「リーダーが新しいアイデアや厳しい現実を歓迎する姿勢を示す必要がある」ということです。つまり、
Ⅰ:反対意見を歓迎する。
 Ⅱ:上司が自分自身の失敗について話す。
 Ⅲ:悪い知らせや正直な意見を伝えてくれた誠実さに感謝する。
ということです。そして、形になっていなくてもいいから提案や意見を挙げてほしいと伝えるとともに、否定的なことを口にしても出世や進退に影響しないと明言することです。
経営者やリーダー(上司)の中には、「答えがすべてそろっていないなら持ってくるな」「解決策を示せ」という人がいます。しかし、たとえ答えが分かっていなくても問題を口にしていいという安心感が大事です。「早く、頻繁に、見苦しく。完璧である必要はありません。その方が、格段に速く修正に取り掛かれます。どれだけ事実が見苦しくても、所詮は決断を下すための情報にすぎない」のです。
部下を持つ人は、自分が心理的安全性を脅かす存在であると自覚する必要があります。上の立場の人は、多少弱さを見せた方がいいのです。そうすれば、部下は大胆に思えるアイデアイノベーションにつながる過ちを口にしやすくなります。そこに新たなアイデアイノベーションの芽があるかもしれないのです。やってみて学ぶという姿勢は話しやすい環境の中で育ちます。
リーダーの一番の仕事は、「周囲が素晴らしい仕事ができる経営環境を生み出すこと」なのです。そこに必要なのは、「安心できる環境」「明確なグラウンドルール」「適切に設定された業務」です。
現状打破が求められると組織を変えようとするリーダーは少なくありません。しかし、創造力に関して言えば、組織編成をしても創造力が生み出されるものではありません。必要なのは、誰でも失敗を恐れず、失敗を口にしてそこから学べる心理的安全性という状況です。周囲が素晴らしい仕事ができる環境を創ることが重要です。そのためには経営者やリーダーが意識を変えて変わらなければなりません。

コンサルタントの危険な正論

 
コロナ禍で社会構造やビジネスモデルが変化する今、「生産性」「効率」「成果」が見直されています。そこで必要なのは「仕事の無駄」を見出しそれを排除することです。「仕事の無駄」を排除し、生産性を高めるためどのように仕事について考え進めれば良いでしょうか?
経営コンサルタントの私が言うのもどうかと思いますが、「製品開発を行う」というプロジェクトを遂行するためにコンサルタント会社と契約すると、それが悲劇の始まりとなるということが起こります。プロジェクトの立案者は「今このような製品が求められているのではないか、こういう製品があれば世の中がこう変わる」というような理想をもって企画立案し、役員をはじめ多くの人が賛同しプロジェクトとしてスタートします。ところがコンサルを入れた途端、そのコンサルが「ユーザーの声に裏打ちされた物しか作ってはいけない」と言い出すことが多々あります。そのコンサルの声に引きずられて最初の理想的なプロジェクトがどこにでもある普通の面白みのないプロジェクトに変容してしまいます。確かに「ユーザーのニーズにあった物しか作っては駄目だ」というコンサルの意見は正論と言えば正論です。顧客のニーズがない物を作っても売れません。しかし、何が顧客のニーズなのかということはそんなに簡単に判断できるものではありません。今ある製品を顧客のニーズに合わせて変容・修正させるというなら、現時点の顧客のニーズを把握すればいいですが、全く新しい製品を作るというのなら、顧客のニーズは将来の顧客のニーズです。その把握は容易ではありません。作る側に「こういう製品があったらいいだろうな。楽しいだろうな。ワクワクするな。この製品で世の中はどう変わるかな」といった理想があってもよいのではないかと思います。製品を作る側もある意味将来の顧客になります。作る側が求めるニーズを通じて顧客のニーズを創り出すこともできるはずです。
また、コンサルタントの意見に従うことで権威づけされたような気分になり安心感を得られることがありますが、このやり方だと、個の可能性は型にはめられ、制限されてしまいます。製品やサービスによっては、理想を突き進むプロジェクトであってよいように思います。
また、すでに確立された方法論を濫用してはいけません。例えば、大企業からベンチャー企業や中小企業に転職してきた人が「当社は前に自分がいた企業に比べて何もかもが整備されていない。自分が中心となって、同社の各種制度や規定を変えていきます。当社も一流の会社にステップアップできます」などと言うことがあります。しかし、身の丈に合わない制度や規定を導入しても却って効率が悪く生産性を低下させるだけのこともあるのです。それぞれの企業規模や状況に応じた適切な制度や規定があるのです。それを無理に大企業と同様に変えてみても意味がありません。却って組織が回らず効率が悪く生産性を低下させることになります。
また逆に最新のベンチャー企業から大企業に転職した人が「ベンチャーを中心としたIT企業ではこんな古いやり方をしているところはありません。自分が関わるプロジェクトでは最先端の方法でいきます」などと言い、却って事故を起こしたり関係部署の賛同が得られず孤立したりするケースがあります。これも前職のやり方を機械的に適用しようとした方法論の濫用の事例です。ベンチャーや中小企業と大企業ではやり方・方法論が異なります。ここでもそれぞれの企業に合ったやり方や方法があるわけです。
想像力を発揮し、新規事業やプロジェクトを成功させるのに重要なのは、知識や方法論で武装することではなく、チームメートが同じ方向を向いて進んでいくことです。凝り固まった方法論ではなく、全社員が1つの目標や理想に向けて心を一つにして突き進むことで道が開けることもあるのです。
コロナ禍で先が読めず、ウイズコロナの時代にどのような働き方がよいのか確定的に判断できないときには、新規事業やプロジェクトでも何が正解か答えがないことが多いと思います。そうした状況で過去の知識や方法論にとらわれすぎていると時代の流れを捕まえることが出来ずに後れを取ることにもなりかねません。過去の知識や方法論が全く無意味と言うわけではありません。何も手掛かりがない状況では過去の知識や方法論に頼らざるを得ないこともあるでしょう。問題はそうした過去の知識や方法論に固執するのではなく、状況を見据えて臨機応変に変えていくことが重要ではないでしょうか。

成功と挫折

おはようございます。
うまくいかなかったからといって、決して悲観しないでほしい。一見、不幸に見えることも、実はそれが本当の不幸とは限らないからです。それも自分の人生だと受け入れて、与えられた環境のなかで前向きに明るく必死に生きていく。これが一番大事なんです。そうやって努力を重ね、真摯に生きていくことが人生というものを形作っていきます。その意味では、むしろ逆境のなかから這い上がっていく立場になったほうが、大きな収穫が得られるかもしれません。私の人生がまさにそうでした
これは、2009年11月13日に稲盛和夫氏が、就職ジャーナル「企業TOPが語る『仕事とは?』」の中で語った言葉です。ビジネスだけでなく人生を生き抜くうえでも役に立つ言葉だと思います。
これまでトヨタ自動車の経営については、何度かトヨタ式生産方式などで触れてきました。今日は異端児ともいえるマツダを取り上げます。
マツダは、2020年に会社創立から100周年を迎えました。その創立記念式典で丸本社長は、「良い時も厳しい時も、ステークホルダーの皆様の支えがあったからこそ今日を迎えることができました」と挨拶し、「社会的責任という大義を全うし、走る喜びを求めるお客様も技術を提供するという二つの視点で今後の100年を乗り切りたい」と話しました。
マツダは、1920年に広島で創業し、失敗と成功、何度も倒産と吸収合併の危機を乗り越えながら、今日まで生き延びてきました。トヨタのような大メーカーでない分、個性派の道を歩み、異端児として挑戦し時に挫折しながら、画期的な車や技術が生み出されました。
1920年に東洋コルク工業として創業し、1927年に東洋工業に改名、自動車の開発に乗り出しオート三輪の生産に乗り出したのが1931年です。オート三輪の分野で日本を代表する自動車メーカーにのし上がりましたが、1945年の広島への原爆投下で大きな被害を受けました。東洋工業の社員は一丸となって会社の建て直しに取り組み奇跡的な復興を果たします。しかしオート三輪の先細りが懸念され、四輪トラックの開発、乗用車の生産にも乗り出しました。
1960年に「R360クーペ」62年に「キャロル」を販売し順調に販売を伸ばします。当時、通産省は、体力のない日本の自動車メーカーが共倒れになることを危惧し新規参入を阻止し、業界の再編成を画策していました。そうした状況で、マツダは、軽自動車だけでは生き残れない、独自の魅力がないと買ってもらえないと社運をかけて革新的な「ヴァンケル・ロータリーエンジン」の開発に乗り出し、このロータリーエンジンに夢を託すことになります。ロータリーエンジンの開発には乗り越えなければならない壁が多く存在し、マツダは経営危機に陥ります。しかし、社員一丸となってこの危機を乗り越え、1967年にロータリーエンジン搭載の「コスモスポーツ」の販売にこぎつけます。
ところが、1970年代になると、厳しい排ガス規制とオイルショックに見舞われ、販売は低迷、再び倒産の危機に見舞われます。しかし、マツダの首脳陣・エンジニアはロータリーエンジンを捨てることはできず、「技術で叩かれたものは技術で返す」とクリーン化と燃費改善を成し遂げます。
1980年代には「ファミリアXG」が大ヒットし、東洋工業を黒字に導きます。1979年にはアメリカのフォードと資本提携し、1984年に社名をマツダに変更しました。この時期、積極的に海外事業を展開し、新しいブランドやバリエーションも大幅に増やしていきます。事業を広げすぎたために研究開発費や販売店の経費がかさみ経営を圧迫し、さらにバブル崩壊が追い打ちをかけ、再び経営危機に陥ります。1996年にフォード傘下に入りますが、この危機を救ったのが、「デミオ」「ボンゴフレンディ」です。
そして、2002年4月マツダは「Zoom-Zoom」のブランドメッセージを発信し、環境性能と安全性能の高いレベルまで引き上げながら、持続可能な未来の実現に向けて動き出しました。すべての人に「走る喜び」と「優れた環境・安全性能」を提供するために発表したのが「SKYACTIV」テクノロジーです。マツダは車の技術のすべてをゼロから見直し、常識を覆す技術革新で世界一を目指します。マツダが目指すのは、運転する楽しさやワクワク感を失うことなく地球環境に配慮したクルマ作りです。新世代の直噴ガソリンエンジンや直噴ディーゼルエンジンを積むマツダのニューモデルは国内だけでなく海外でも高評価で販売を伸ばしています。
何度も苦難を乗り越え不死鳥のごとく蘇ってきたのがマツダです。いつの時代でも打たれ強い不屈の闘志と進取の気性が未来に向かう原動力になります。
まさに、マツダは、冒頭の稲森氏の言葉を体現しているように思います。
コロナ禍で多くの企業が苦境に立たされました。経営の危機を味わった企業も多いと思います。打たれ強い闘志と不屈の精神を持って社員が一丸となって先行きが見通せない時代を乗り越えましょう。刻一刻変化する環境の中で、前向きに明るく必死になって物事に取り組めば、逆境とチャンスに変えることができると思います。
今一度稲森氏の言葉を心に留めましょう。
・不幸と思える時も悲観するなかれ
・不幸に見えることも、実はそれが本当の不幸とは限らない。それも自分の人生と受け入れて、与えられた環境の中で前向きに明るく必死に生きていく。これが一番大事なんだ。
・努力を重ね、真摯に生きていくことが人生というものを形作っていく。むしろ、逆境の中から這い上がっていく方が大きな収穫を得られるかもしれない。

企業の生産性を高めるために

おはようございます。

「中小企業は生産性の低い」といわれ、「生産性の低い中小企業を淘汰すべき」と主張する人がいます。この中小企業淘汰論が間違っていることはこれまで何度か指摘しました。今日は、その「生産性」とは何か、どうすれば「生産性」を上げることができるかという話です。
新型コロナ禍で、働き方が大きく変わり、会社と社員、組織と人を取り巻く環境は大きく変化しています。何が正解か分からない状況で、経営者はもとより社員も含め、皆が手探りで模索しているというのが現状でしょう。
働き方改革の流れもあって、「生産性の向上」が日本企業で叫ばれていたのはコロナ以前からですが、「生産性」という言葉を「いかにして業務時間を削減しつつ、今の品質レベルを維持するか」という「効率性」と同じ意味の言葉と勘違いしている人も多いのです。
1.生産性と効率性
 「生産性」というのは、「投資に対してどれだけの成果が出せたのか」という指標です。少ない投資でより多くの成果を挙げれば生産性は高くなります。
 一方で「効率性」というのは、「時間や費用にかかわるコストを下げて投資の量を下げること」、つまり生産性を高めるための一つの方法にしかすぎません。
 本来の生産性は、「生み出されたアウトプットに対して、どれくらいのインプットを使用したか」という概念で、インプットを少なくすることを考える効率性とは異なる概念なのです。
2.アウトプットとインプット
 ここでは、生産性の構成要素である「アウトプット」と「インプット」の2つの分けて、生産性向上のアプローチを論じます。
<アウトプットを極大化1>商品・サービスの「本源的価値」と「付加価値」を作る。
 アウトプットを高めていくということは、簡単に言えば「売上や収益を高めること」です。そのためには、顧客からの評価を改善していかなければなりません。顧客からの評価を改善するというのは、商品・サービスの持つ価値を高めていくことです。この価値には、商品やサービス本来の用途に伴う「本源的価値」とそこから付帯的に発生する「付加価値」があります。
 これらを高めるには、顧客が求める要求(ニーズ)にしっかりと応えつつ、それに加えて顧客の潜在的な欲求(ウオンツ)を捉え、それを充足する新しい製品やサービスを提供することが不可欠となります。
 顧客のニーズやウオンツを把握するためには、顧客の視点に立ちつつ、顧客の行動を客観的に粘り強く観察することが大切です。ここでも以前書いた「現場主義」「顧客第一主義」が重要だということです。
<アウトプットを極大化2>組織のミッションを超えた「付加価値」を提供する。
 「本源的価値」は商品やサービス本来の用途に伴うものですから、同じ商品やサービスではそれほど大差はありません。差別化を図るうえで重要なのは「付加価値」です。「付加価値」を組織に置き換えると、組織が本来求められる役割・ミッションは当然行ったうえで、それ以外に「顧客の満足度が高まる」価値を提供する取り組みを行うことだと言っています。例えば、アウトプットの質を高めるための研修の実施やプロモーション活動、新たなチャネル(販路)の開拓などによる既存商品・サービスの価値向上です。
 ここで重要なのは、むやみやたらと価値を追求しないことです。価値を付加するために労働量が増えてしまえば本末転倒です。価値を付加するだけが付加価値ではありません。機能を絞り込み、逆に価値を排除することが付加価値となることもありまっす。
 ここでも、顧客の視点で既存の提供価値を見直し、本当に必要とされている部分にフォーカスして差別化を図ることが重要なのです。
<インプットを改善1>能力の高い人材を活かし、「フレームワーク」をつくる。
 インプットからアウトプットへの変換効率が変わらなければ、インプットを削減してもアウトプットが減るだけで生産性向上にはなりません。この変換効率の改善が重要なのです。
 同じ組織の中でも、一人一人を見ると変換効率に差が生じています。生産性の高い人と低い人がいるというわけです。高い変換効率を発揮している人、つまり生産性の高い人の思考方法や行動を分析し、それを誰もが実行可能なように「フレームワーク」化できれば、全員の生産性が向上します。組織内で学び合い、変換効率を高めるためのノウハウを共有化することが、組織全体の生産性向上につながるということです。
<インプットを改善2>学びを実践へつなぎ、インプットの質を高める。
 インプットの質を高めるということも重要です。多くの企業で研修や外部セミナーの受講を通じてビジネススキルや最先端の業界知識の獲得といったインプットを社員に提供しています。しかし、費用対効果という点から見れば劇的な生産性向上につながっているとは言えません。これはインプットされる内容が必ずしも実践に結びついていないからです。こうした状況を打破するには、現場起点の課題意識に基づいた実践形式のインプットが有効です。このように即効性のある実戦形式のインプットを多く取り入れ、アウトプットへの変換効率を高めることも重要なポイントの1つです。
3.生産性を意識した働き方
 働き方改革で、テレワークを導入している企業もありますが、テレワークで生産性を高めるためには、1日を通したセルフマネジメントの重要性が増しています。また、コミュニケーション不足によるチーム力の低下は避けなければなりません。
 生産性を意識した仕事の進め方として、チャットツールなどを通して気軽に会話ができるバーチャルオフィス的な存在をつくる、業務進捗を共通のフォームやシステムに入力し共有化を図るといった方法が挙げられます。
 テレワーク・リモートワークにおいても、社内での勤務と同じようにメンバーが情報を共有でき快適に仕事に集中でき、また孤独感を抱かないような環境を作ることが重要です。