中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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休日の本棚 ブランド戦略

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おはようございます。

昨日の新規感染者は東京で54人、全国で105人と1か月ぶりに100人を超えました。小池知事は第2波ではないと強調していますが、感染経路不明者の多さから専門家の中には「第2波の兆し」と表現する人もいます。東京は高止まりしており、全国数が増加しているということは、地方での感染者数が増加しているということです。都道府県をまたいだ移動が自由になった6月19日以降の感染状況は2週間後である来週末から明らかになってきます。東京から地方への感染が拡大しないことを願うばかりです。

さて、今日は、林大吾著「勝ち続けるためのブランド戦略」(クロスメディア・パブリッシング)を紹介します。表紙には「中小・ベンチャー企業が知らなきゃマズい」、帯には「あなたの会社にしかない、とがったユニークネス(志+こだわり+情熱+独自性)に焦点をしぼり、会社と従業員の『ベクトル』を合わせる」「ユニークネス経営で儲かる会社を創りなさい」と書かれています。

ブランド戦略とは、ブランディングを行うための戦略のことです。ブランディングとは、企業の製品やサービスあるいは企業そのもののコンセプトを明確にして「誰にどのような場面で使ってもらいたい製品・サービスなのか」「自分たちはどのような企業なのか」を顧客に提示することを言います。

ブランド戦略を行うことで得られるメリットとして、⑴競合他社との差別化ができる ⑵顧客からの信頼感(顧客ロイヤリティ)を獲得することで長期的売り上げが見込める⑶多額な宣伝費用をかけなくても集客できる ⑷知名度が上がり新規顧客の獲得がしやすくなる ⑸ブランド自体に価値があるので強気の価格設定ができる などが挙げられます。ブランディングマーケティングの上位にある活動で、明確な戦略の下でブランディングがなされていなければ、マーケチング戦略も方向性を定めることが出来ません。したがって、ブランド戦略は企業経営にとって極めて重要な意味を持ちます。

本書は、中小企業が「他者に容易にまねできない真の独自優位性を見つけ出し、発揮し続けるために何が必要か」ということについて書かれた本です。

第1章 ブランド作りは容易ではない。

わが国で流通する汎用品の平均点は高く(良い品質・手ごろな価格・良いデザイン・見栄えの良いパッケージ・使い勝手の良さなど)、消費者もそのレベルに慣れていて、独自性を有するブランド作りは容易ではありません。

ブランド戦略には①商品戦略(商品の魅力を作り上げる戦略)と➁マーケティング戦略(商品の魅力を最も効率よく世の中に伝える戦略)の2つが必要です。そして、そのような商品やサービスを生み出すためには、強い信念に裏打ちされた志が必要だと言っています。「自分たちはこの独自商品で勝負するんだ」「この商品は大企業の汎用品を相手にしても絶対に市場で受け入れられるんだ」と決して揺らぐことなく努力を続けてきた人や企業の商品やサービスが今日「ブランド」と形容される場所にまでたどり着くことに成功しているということです。

第2章 差別化価値を向上させる。

中小企業が目指すべきは「差別化の実現」であって、差別化価値を発揮し、「ブランド」になることによって差別化を実現することです。そのために商品力で差別化を実現する必要があり、商品に独自性がなければならないのです。差別化を実現するために平均点を上げる必要はありません。例えば、衣料の世界で安さ、品質、デザインで平均点を超えようとしてもユニクロを超えることは不可能なのです。中小企業が汎用品の平均点を武器に戦い続けたところで勝ち目はなく、明るい未来は展望できません。ターゲットとすべきは「平均点の高さには全く興味のない人々」です。総合力で劣っても、どこか一つでも突出したものがあればそれを最大限に評価する変わり種がいます。そうした変わり種をターゲットにして、一項目であっても、とにかく汎用品を上回るとがった点数がつく個性派になり、単なる独自性のある商品に留まらず、独自性で差別化を実現した状態である「独自優位性」を発揮することです。重要なのはその独自優位性を発揮し続けることですが、これは難しいことです。差別化価値を有するのは単なる独自性ではなく、消費者が認める独自性です。従って、顧客のニーズを絶えず探ることによって独自優位性を持続し続けることが可能になります。未だ解決されない消費者の不満や欲求をキャッチして、「今まで作ってきた汎用品では無理だけど、何かをかけ合わせることで、消費者を喜ばせることが出来るのではないだろうか」と考えることが、差別化価値にたどり着く近道と言っています。

第3章 自社の商品を世の中に知らしめる

中小企業のブランド戦略においては、商品のみならずマーケティングにおいても、独自性を発揮することを強く意識し、資金力で争う手法に頼ることなく、いかに効率よくターゲット市場に対し魅力を伝えるかに注力しなければなりません。

一般に4P(Product(製品)・Promotion(広告宣伝)・Place(流通)・Price(価格))をベースにマーケティング戦略を策定することで、消費者に商品の太刀を知らしめ、効率的なビジネスを実現できるとされています。しかし、本書は4Pだけでは不十分で、それに「Energy(気力・行動力」を加えた「4P+E」が中小企業の商品戦略を消費者に知らしめるための独自性のあるマーケティング戦略だと言っています。中小企業が最も頼りにすべき武器は、心に直接訴えかけることを狙う「自分だけにしかない物語」の力によるマーケティング戦略です。これは、楠木建氏の「ストーリーとしての競争戦略」にも通ずるところがあります。①資本力知名度もない中小企業が、強い想いや信念を武器に戦いを挑み、➁容易でない独自優位性の確立に、何度も挫折しても決してあきらめずに努力し続けた結果、③mごとに自分だけの独自優位性を確立し、ブランド化を実現する と言った物語(シンデレラ・ストーリー)をつくるのです。志の下に、強い信念をもってブランド化を実現するための商品戦略に邁進していけば、それと同時に物語が紡がれていきます。この物語ことマーケティングに必要なものとなります。

第4章 あなたの会社のユニークネスを確立する

中小企業にとってユニークネスのポイントは、①絶対に誰にも負けないこだわり ➁たゆまぬ努力で勝ち取ったもの ③世の中の誰かの幸せにつながるもの です。

①は、大企業の商品に比べても、ここだけは譲れない、絶対に負けない、という強みです。➁は、たゆまぬ努力によって獲得した、他人に真似できないものです。③は、誰かを幸せにしたいという思いがあり、自分がこだわりを持って取り組める仕事があるなら、市場のニーズなど気にしなくても、絶対にその思いがニーズを生むと言っています。

(1)資本力知名度もない中小企業が強い想いや信念を武器に戦いを挑み ⇒誰にも負けない強いこだわりで新たなブランディングに挑戦

(2)容易でない独自優位性の確立に、何度挫折しても決してあきらめずに努力し続けた結果 ⇒たゆまぬ努力で勝ち取ったものかどうか

(3)見事に自分だけの独自優位性を確立し、ブランド化を実現する ⇒あ客様を幸せにする

第5章 ブランディングサイクルを回し続ける。

容易に真似されないユニークネスを市場に提供し続ける企業になるには、会社全体が自社のユニークネス一転にベクトルを合わせ、会社の日々のどの仕事をとっても、そのすべてが、必ず自社のユニークネス実現に向けて歩んでいる企業体質を作り上げなければなりません。ユニークネス経営を実現するためには、”心”と”身体”、つまり企業全体への志の透徹という精神的要素と”実践力”という企業活動自体という要素を満たさなければなりません。従業員全員がユニークネスを理解し、会社の進むべき道を理解するという、社員全員への”志の透徹”が絶対に必要となります。そして、それに確実にユニークネスを具現化していくという実践力が伴わなければなりません。

中小企業において、従業員の心を一つに束ねる者は、志のゴールの根底にある経営者の志です。

中小企業の場合は、経営者の「自分は○○を目指し、××な価値を世の中に与えていく会社である」と示すビジョンに、同じ理想を持って、同じ方向に情熱を持って走ることのできる従業員が求められます。経営者がこれと決めたユニークネスに、「自分も同じだ、共感できる」と思ってくれる従業員が必要なのです。

本書は、容易に市場に埋没せず、真の独自優位性を発揮し続ける企業を目指し、世の中に「自分しか作れない価値」を生みdセル会社やビジネスを作るにはどうすればいいか、自分にしか実現できない本物のブランドを見出し、育て、実現するにはどうすれば以下を教えてくれている本です。コロナ禍で、イノベーションが求められウイズコロナに向けてブランド戦略を考える際に参考になるように思います。

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