中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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職場クラスターと企業責任

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おはようございます。

昨日の新型コロナの新規感染者数は東京で48人と一昨日の55人よりは少ないものの高い水準で止まっています。やはり夜の街関連の感染者が一定数いるほか、職場内クラスター、更に小池知事によると、昨日は家庭内感染が一定数見られるようです。また地下鉄メトロの職員の感染も認められ、乗客へ広がることが心配です。東京医大の濱田教授は、「この2日間の感染者数は多い。宣言解除後のアラートである程度自粛されたが、その後の気の緩みが数字に反映されており、特に経路不明のケースでは警戒が必要だ」と指摘されています。

アメリカでは緩和を早め経済を再開した州で再び感染拡大が見られています。このところアメリカで猛威を振るっている新型コロナウイルスは当初発生した新型コロナウイルスの変異体で感染力は4~5倍、致死率も高いという研究結果も発表されました。このように遺伝子変異し強毒化した新型コロナウイルスが日本に再上陸してくるようになると大変な事態になります。まだまだ出入国制限の緩和には慎重でいるべきです。

昨日、職場内クラスターについて予防対策について書きました。今日は、職場内クラスターに関する企業責任について書きたいと思います。

職場内クラスターを起こした企業に企業責任が生じます。

  1. まず、労災責任が問題となります。新型コロナと労災については以前にも書きましたが、もう一度見ておきます。通常インフルエンザに罹ったからといって労災になることはありません。それは感染経路が不明だからです。新型コロナウイルスについては、厚労省が「調査により感染経路が特定されない場合であっても、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したと認められる場合には労災保険給付の対象とする」としました。医療従事者については、業務外で感染したことが明らかな場合を除き、当然労災保険給付の対象になります。問題は感染経路が特定されない場合です。調査により感染経路が特定されない場合でも、感染リスクが相対的に高いと考えられるような労働環境下で働いていた労働者が感染した場合、事案に応じて判断することになります。例えば、顧客との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務(スーパー、コンビニの店員など)や複数の感染者が確認された労働下での業務などが考えられますが、新型コロナウイルスの潜伏期間内の業務従事状況や一般の生活状況を調査したうえで、医師など専門家の意見を踏まえて業務に起因するかどうかが判断されます。今回の職場クラスターの場合も、複数の感染者が確認されたというだけで労災保険給付の対象になるわけではありません。例えば、会社の指示により対面式の会議が行われそこでクラスターが発生した場合は業務に起因するものと認められる可能性が高いのですが、終業後複数の社員で飲みに行きそこで複数人が感染したような場合には業務起因性が認められないことになります。ただ、そのように社外で感染した者が会議や職場でウイルスをばらまき他の感染者が生まれた場合、社内で感染した者には業務起因性が認められることになるでしょう。最初に社外で感染した者(業務起因性がない者)と社内で業務に起因して感染した者の区別が難しいケースも多くなるでしょう。その場合は医師などの専門家の意見が重要になってきます。
  2. 次は、安全配慮義務違反としての責任です。企業の安全配慮義務は労働契約法第5条で「使用者は、労働契約に伴い、労働者の生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と定められています。労働災害として労災保険が給付されることと安全配慮義務違反として損害賠償責任を負うこととは別問題です。労災は企業の故意・過失といった責任の有無とは無関係に保険として給付されるものです。これに対し、安全配慮義務違反は企業の過失を要件に損害賠償責任が認められるものです。今回のコロナウイルスとの関連で言えば、例えば、接客においてマスク着用を認めないとか、机や席の配置で1メートル以上の間隔を設けることなくパーテーションの設置もなく三密を避ける対策を全くとっていないとか、消毒対策をとらないとか、企業側の過失と評価される特別の事情が必要となります。企業としては、感染防止のためにできることを職種や職場に応じてとるようにしなければなりません。企業が新型コロナウイルス感染防止のためにやろうと思えばできるのに適切な措置をとらず、感染を拡大させたような場合には、労災保険とは別に安全配慮義務違反として損害賠償責任を負うことになります。

今、企業に求められているものは、労働者の健康に配慮し、社内で新型コロナウイルスの感染が拡大しないことです。そのための対策をしっかりととることが重要です。

カルビーが来月以降、オフィスで働く800人を対象に「出社勤務」から「テレワーク」に変更し、業務に支障がないと認められた場合は単身赴任をやめると発表しました。これに伴い通勤の定期代の支給もやめ出社の際には交通費を実費で支給するというのです。こうした働き方の改革は「コロナ拡大前の働き方を変えたい」という社員の強い意識があるようです。カルビーのような働き方改革が、職場内クラスターの防止には有用です。今後はこのような企業も増えてくるように思います。重要なのはテレワークでできる業務と出社を要する業務を区分し、出社を要する業務について、しっかりとした感染症予防対策をとることです。