中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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イノベーションを創出する人と組織の作り方

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で4128人で、そのうち東京1069人、神奈川433人、埼玉292人、千葉314人、愛知244人、大阪397人、兵庫231人、京都109人、福岡185人、沖縄98人、北海道115人などとなっています。全国的に減少傾向がみられるものの、死者は112人と過去最多となっており、まだまだ予断を許しません。

ワクチンが新型コロナ対策の決め手となると期待されていますが、医療従事者への摂取が2月下旬から、高齢者への接種は早くても4月以降、一般への接種は6月以降となる見通しです。アストロゼネカ社のワクチンについて、芦屋に本社を置くJCRファームがワクチン製造の委託を受けて近く生産を始めるとのことで喜ばしいことです。ただ製造に3カ月ほどかかり、厚生省の承認を得た上での出荷ということなので、早くても5月ごろになりそうです。

ワクチンが感染対策の決め手をされていますが、今回のワクチンについては十分な臨床実験も行われておらず、安全性・有効性や副作用も心配なところです。新型コロナワクチンの副作用として欧米では「アナフィラキシー」と呼ばれる急激なアレルギー反応が報告されています。アナフィラキシーは急激なアレルギー反応で血圧低下や意識障害などのショック症状を引き起こすものですが、適切に処理をしないと命にかかわることもあります。日本には、かつて2003年に、抗リウマチ薬のアラバを海外の第三相試験のデータを基にスピード認可し、その結果日本で投与された患者に間質性肺炎が多数発症したという事例があります。海外の第三相試験では間質性肺炎発症はほとんど見られず、民族差か体格差か、なぜ日本人だけ間質性肺炎が多発したのか、原因は分かっていません。新型コロナワクチンも、欧米で効果があっても日本人にも効果があるのか、あるいは民族差で日本人特有の副作用はないのか、そのあたりの検証が十分に行われていないので、心配なところではあります。また、既に先行してワクチン接種が行われているイギリスでは、イギリス型の変異株の蔓延により感染者数が激増しワクチン接種が追い付かずロックダウンを解除できず延長されています。日本でも新たに埼玉でイギリス型の変異株が3例発見され、変異株の市中感染が懸念されます。ワクチンにだけ期待しすぎるのも問題で、これまで言われてきた感染防止策を徹底していくしかありません。

これまで、イギリス型の変異株、南アの変異株など、マスコミの使用に従って「変異種」と書いていましたが、日本感染症学会が、「変異『種』の誤用について」というお知らせを報道機関向けに発表しました。「変異種」というのは、近縁の生物種の間で遺伝子の交換が行われ、2つの生物種の特徴を持った新しい生物種が生まれることを言います。この場合には新しい生物種が誕生することで新しい名前が付けられます。今回の新型コロナウイルスの場合は、遺伝子の一部に特異的な変化が起きたもので、新型コロナウイルスの基本的な特徴は引き継いだままなので「変異株」というのが正しいということです。これまでの記事を訂正します。「変異株」と読み替えてください。

さて、今日は、日本の人事部の「経営学者・人材目線の経営者・新規事業のプロが語り合う―イノベーションを創出する『人と組織』の作り方」を取り上げます。ここでは新規事業立上げのプロである守屋実氏と人材目線の経営者有賀誠氏のプレゼンとそれに続く早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授を司会とする対談が紹介されています。

守屋氏は、長年にわたる新規事業創出への携わりから、①大企業は必ず新規事業を生み出せる ➁なのに99%同じ間違いをしている ③これを解決できるのは絶対に人事である という3つの結論を導き出しています。大企業は、資金力・人材優秀・信用抜群なので、資金力が乏しく創業間もないスタートアップに負けることはありません。それなのに大企業は同じ間違いをしているというのです。それは、新規事業では、競業他社についてゼロから理解しなければならず、求められる施策も全く異なるはずなのに、本業の延長線上で新規事業を立ち上げてしまうのです。これが大企業に共通する失敗の原因だというわけです。こうした課題を解決できるのは人事だと言います。「種を蒔く前に土を耕す」守屋氏は、どんな新規事業を行うかを考えるより、企業の根本、農業であれば土壌に相当する「人・組織」こそ整えるべきだと提唱します。昨日も書きましたが企業の基本は人です。人材をいかに育てるかが重要ということでしょう。

次に、有賀氏は、好むと好まずるとに関わらず、人事部門は従業員を上から管理してきたと言います。昨日も書きましたが、多くの企業は、会社の夢(経営ビジョン)を従業員に押し付け目標や期間をノルマ化し管理してきました。昨日書いたワークマンは目標、期限を廃止し、従業員自らがやる気を出し楽しく仕事ができる環境を作りました。ワークマン式の経営も人は経営の基本だというところからきています。

有賀氏は、「社員の気質や組織文化はある意味人事に左右される」と言います。企画や開発にだけイノベーションを求めても、管理されることに慣れた従業員はルールの範囲内でしか行動しないので、従来の常識とかけ離れたレベルの革新が起こる可能性は低いのです。かといって何でもかんでも自由にしていては組織は成り立ちません。だから、有賀氏は、「組織文化の機軸をどこに置くのかが重要で、その決め方は企業ごとに異なる」と言うのです。

組織文化には「統一性・同質性」と「多様性・自由度」が対極に存在します。「統一性・同質性」は多くの人事部が志向するところで、従業員の多くが一つの目標に向かって足並みをそろえるというアプロ―チです。しかし、昨日書いたように上から押し付けられた目標・経営ビジョンであっては従業員の士気は高まりません。また、有賀氏が言うように、この体制下では、想定外のトラブル・事業環境の激変などに弱く、創造性にも欠けます。一方で「多様性・自由度」は、従業員が感じる開放感が高く、創造性を発揮しやすく、打ち手が多い分だけ危機対応がしやすいというメリットがありますが、各人が自由に明後日の方向を向いてしまい収拾がつかなくなるというデメリットもあり得ます。「統一性・同質性」と「多様性・自由度」の最適バランス、つまり何を組織として束ね、何を社員に任せるかを決めることが、イノベーション・新規事業を生み出す上で重要なポイントになるということです。

この「統一性・同質性」「多様性・自由度」のバランスの最適解というのは各会社によって異なるのは当然です。それこそが企業カルチャーです。トップや経営者が常に語りつくし、自ら行動して、それを従業員が受け止め、会社の夢(経営ビジョン)と従業員の夢とが同居していくことが大切です。イノベーションを起こすウルトラCはないので、本当にやり切れるか・やる遂げれるか、意志が大切です。これは経営者やトップの意志だけでなく従業員のやる気・モチベーションが重要です。これからの人事は、意志ある人を見つけるのはもちろん、そうした意志ある人材を育てていくことが大切です。

コロナ禍で、人々の働き方も変わり、社会環境も大きく変わりました。大企業のみならず、むしろ中小企業や個人商店でも、本業だけでは事業を継続できなくなっています。

コロナ禍で「本業でないから」という理由で、イノベーション施策に回す予算を減らしている企業もありますが、本業だけでは生き残るのも難しい時代に、市場縮小でコストカットしている事業を本業と言ってよいのか、入山教授が言われる通りで、「イノベーションを起こすこと」を本業ととらえるべきでしょう。