中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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休日の本棚 最強の経営学

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で2028人、そのうち東京376人、神奈川117人、埼玉135人、千葉135人愛知64人、大阪300人、兵庫116人、京都20人、福岡28人、沖縄89人、北海道69人、宮城153人などとなっています。2月6日以来の2000人越えで、大阪では1月30日以来300人を超えました。三八五は3日連続で150人を超え深刻な状況です。先日も書きましたが、宮城では飲食店への時短要請の解除並びにGotoイート再開後に急増しています。

菅首相は、予算成立後「新型コロナ対策をしっかりとやっていきたい」と述べた一方で、政府はGotoトラベルの再開は見送ったものの「4月以降、県内旅行について最大7000円まで観光支援する」と発表しました。リバウンドが起き、さらに変異ウイルスの猛威が懸念され、本来なら人の移動を制限し気を引き締めなければならないにもかかわらず、まったく真逆の政策を取ろうとしています。第3波の時に前倒しでGoToトラベルやGotoイートを行い感染拡大を広げた教訓が全く生かされていません。ここまで学習能力がないとは、今の政府は痴呆状態、地に落ちたものです。こうした政府に踊らされて気を緩めはしゃぎ回っている国民も困ったものです。賢明な国民の皆さんは、気を緩めることなくいましばらく我慢しましょう。

さて、今日は、島田隆著「最強の経営学」(講談社現代新書という本を紹介します。経営学と言えば無味乾燥で実務には役立たないというイメージを抱く人も多いのですが、最近の経営学の本は、極めて実践的です。この本も負けず劣らず、実例と最新理論で経営の本質が説かれていて、机上の学問で終わらず実務に役立つ本になっています。

時代の変化に伴って、さまざまな経営理論が唱えられてきましたが、ビジネス・経営の本質は大きく変わっていません。利益があって初めて企業は存続・成長できるとか、キャッシュフローの重要性とか、そもそもリスクをとるとはどういうことかなど、基本的なところは何も変わりません。そうした基本的なことを理解したうえで、さまざまな新しい経営理論を自分なりに整理し位置づけるということが重要です。そういうところがなくては、理論に振り回されるだけで、会社の経営にとっては何のプラスにもなりません。いかに社会が複雑化しようと本質的なところは極めてシンプルです。

この本は、そうした基本的な観点から「経営とは何か」「ビジネスとは何か」を捉え、経営課題に向き合っています。

序章 「情報の4段階」をおさえよう

 さまざまな情報をどのように集め、分析し、経営判断していくかということは、経営戦略の根幹にかかわります。データ分析については先週「会社を変える分析の力」という本を紹介しています。

 ひと口に「情報」と言っても色々な情報があり、「情報過多」で役に立たない情報やエセ情報・フェイクニュースが溢れています。情報ばかりを集めていると、情報の海に溺れ、ITという言葉に騙されて貴重な経営資源を失うことにもなりかねません。

 この本では、企業経営における情報の使い方の基本は、「情報の4段階」を押さえることと言っています。

  1. データ・・・データだけを見ていても意味がない。データは所詮データに過ぎない。経営を考えるとき、データだけではほとんど意味を持たない。データをもう少し加工して、まず「インフォメーション」のレベルに持っていかなければならない。
  2. インフォメーション・・・データをさまざまな角度から集約、加工した者がインフォメーションである。
  3. インプリケーション・・・「それでどうした?」So What?のこと。インフォーメーションだけでは意味がない。それを自分の頭を使って考えるのがインプリケーション。
  4. ジャッジメント・・・インプリケーションに基づく意思決定。データ分析は意思決定に寄与して価値がある。しかし、意思決定しないというのも一つの意思決定である。

第1章 企業経営の「4つのレバー」

 企業経営とは、利益を増やすために売上げを増やす算段はないか、コストを下げる方法はないか、あるいは価格を上げる算段はないかを不断に考えていくことです。マーケットの論理に則りながら、合理的に、ゴーイング・コンサーンとして利益を拡大再生産していく方法論を企業経営のレバーといますが、この本では企業経営のレバーは次に4つに分けられると言っています。

  1. 基礎体質・・・その会社が基盤にどんな体質ー能力・文化、仕組みを持っているかということ。財務体質や営業力と言った基礎体質も重要だが、どのような企業文化があって、社員を動機づける仕組みはどうなっているか、新しい事業にチャレンジしていく仕組みはあるかなども重要。
  2. コスト論・・・コスト削減のための方法論。「標準原価」というコスト管理法や範囲の経済性など。
  3. 売上増・・・利益を上げるために売り上げを増やす方法論。商品開発力を高める、販売力を強化する、マーケティング力を強化する、新しい事業を創造するなど。
  4. ポートフォリオ・・・会社が持っている資源(人的資源や設備などのモノとしての資源を含め)を、どういう事業にどれくらいの比率で配分するのかという資源配分の枠組みを考える、あるいは変えること。

 基礎体質を活かしながら企業の体質をより新しくし、新しい事業にチャレンジできるような体制をどう作るかというレバー。より直接的にコストを下げるためには、どんな手があるのかというレバー。売上を増やすというレバー。そして、ポートフォリオを有効に変えていくレバー。これらのレバーを使いながら、事業の収益性を上げるためにどういう手を打っていくかを考え、意思決定していく、それが企業経営というものです。

第2章 キャッシュフローで読む「日産の教訓」

 ここでは、ケーススタディとして、日産の窮地をキャッシュフローから見ています。日産の具体的分析については、本書に譲りますが、ビジネスというものは、リスクをとってキャッシュをぶち込み、経営努力を傾注してキャッシュの回収を図ること、あるいはキャッシュをもっと増やすことです。

 経営に注ぎこまれるキャッシュはリスクマネーです。こうしたリスクマネーには返済の必要のない自己資本が最も適しています。借金は本来リスクマネーに向いていないのです。日本の多くの企業は、短期の借入金を借り、借り換え借り換えでつないでいくというスタイルをとってきました。トヨタは無借金経営ですが、日産は有利子負債が大きな問題になっていたのです。

キャッシュフローをしっかりと見た経営をしないと、「金は天下の回り物」ではなくなります。企業は赤字になったからと言って、キャッシュが回っていれば倒産することはありませんが、たとえ黒字企業であっても資金がショートすると倒産してしまいます。それほどキャッシュは大事です。

第3章 コストを下げるということ

 ここでは、ゼネラル・エレクトリック(GE)がケーススタデイとして取り上げられています。

 経験曲線というものがありますが、これは競争状態の中でしのぎを削ってきちんと何かを稼ごうと努力していくならば、コストは経験量が増えれば増えるほど下がるというものです。しかし、単位当たりのコストは動態的に変化します。今日のコストと明日のコスト、3か月後、半年後のコストは変わります。このユニコストは変わるということを頭に入れたうえで、価格設定やマーケティング戦略だの、さまざまな意思決定をしていこうというための指標が経験曲線です。

競争のルールはどんどん変わります。その時々で、勝負どころは変わり、コスト要因ごとに低減効果も変わってきます。この事業は今どこで勝負しているのか、それはコスト面でどういう効き方をするスケールカーブに乗っているのか、を事業ごとに見たうえで、コスト戦略、全体の企業戦略を考えなければなりません。つまり、事業ごとにプロダクト・ライフサイクルを考え、各要素のコスト削減効果を考え、経営者はそれらを総合して各事業への資源配分の軽重を判断しなければならないのです。コストを下げるというレバーは、以上のような要素をきちんと見なければ、てことして作用しないのです。

第4章 ポートフォリオ経営学

 ここではミネベアがケーススタデイとして取り上げられています。

 ボストン・コンサルティング・グループ(BBG)によって提唱されたポートフォリオ・マネジメント論が紹介されています。これは、プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPMと呼ばれるもので、縦軸に市場の成長率、横軸に相対マーケティングシェアがとられ、花形(高成長率・高シェア)、金のなる木(低成長率・高シェア)、問題児(高成長率・低シェア)、負け犬(低成長率・低シェア)の4つに区分し、各事業状況を俯瞰するものです。自社内の事業を分類・整理でき、選択と集中に役立つものです。ポートフォリオというのは、経営資源をどのように配分するかというもので、資金をどう配分するのか、どこに設備投資するのか、どの事業にどれだけ人材を配置するのか、これらが重要なポイントとなります。ポ^とフォリオ・マネジメントでは、横軸のマーケットシェアによって「キャッシュフローを稼ぐ力」がおおよそ測られ、縦軸の成長率では「キャッシュを必要とする度合い」がつかめます。さまざまな性格の事業について、おおまかなキャッシュの流れが把握できるのです。

 しかし、相対シェアと成長率という要素が余りにもシンプルなため、一般的な議論しかできず、実際の意思決定にはつながりにくいという欠点が見つかり、最近ではフリーキャッシュフローの観点から、具体的にどれだけキャッシュを稼いでいるか、それに対してどれだけのリスク資産を使用しているかという対比が重視されるようになっています。

第5章 売上増と事業創造

 売り上げをどうやって増やすか、については、

  1. シェア拡大・・・競争者以上にシェアを取ることでさらに売上げが伸びる。戦略的セグメンテーションの技法=セグメントによってニーズの在り方が違うということが分かれば、商品もセールスの仕方も違ってくる。
  2. 事業創造・・・新しい商品やサービスを創造し、それによって売上げを増やす。事業というのも進化する。市場が成熟し、効率化の時代に入ったならば、企業も自らの組織を変えていく必要がある。組織を変えるということは、企業の戦略も変えていくことを意味する。

という2つの方法があります。

 組織変革は人事戦略にも影響します。ただ漠然と「業績主義にすれば人件費を減らせる」「社員は働くはずだ」というのは間違いです。管理するのではなく、人をどう育て、どう動機付けしていくか、人の活用法を考えなければ、事業の根幹は変わりません。社員自身が自ら動くような動機付けの仕組みを作り上げることが重要です。

 売上増のためにも事業創造のためにも、この動機付けの仕組みは非常に大切です。

第6章 デジタル時代の経営学

 企業経営の方法論は時代とともに変化します。新しい時代の風が吹くと。それに適した新しい組織形態や経営の「レバー」が考案されます。

 今やITやデジタル化、DXがもてはやされていますが、その流れは新型コロナ禍で加速しています。企業経営もこれを避けて通ることはできません。しかし、これまで何度も書いていますが、それらは手段にしかすぎません。企業にとっての目的・目標にとって、それらがどのように役立つのかを見極める必要があります。流行りだからと言ってそれに飛びつくことは間違いです。

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