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藤井聡太の師匠に学ぶ「部下の育て方」

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で1003人、そのうち東京317人、神奈川192人、埼玉68人、千葉121人、愛知20人、大阪40人、兵庫4人、京都6人、福岡17人、沖縄25人、北海道27人などとなっています。休日のデータといえ全国的には減少していますが、東京、神奈川、千葉の3都県では増加しています。首都圏だけでなく関西圏の繁華街での人出は緊急事態宣言解除前から増え始め、インド型のデルタ株、さらにはデルタ・アルファ株の確認例も増えており、リバウンドが懸念されます。一旦緩んだ気を引き締めるのは大変ですが、今一度気を引き締めて感染防止対策を取り続けるしかありません。

さて、今日は、SPA!の「藤井聡太の師匠に学ぶ『部下や後輩の育て方』」を取り上げます。

藤井聡太と言えば、知らない人はいないと思われる将棋棋士で、2016年に史上最年少(14歳2か月)でプロ入りするとそのまま無敗で公式戦最多連勝記録(29連勝)を樹立し、数々のタイトルを獲得、現在は王位、棋聖のタイトルを保持しています。

藤井棋聖がプロ昇格を果たした奨励会三段リーグの成績は13勝5敗で、プロになれるのは上位2名のみ、その時12勝6敗が5名いるという接戦でした。この三段リーグで藤井棋聖の師匠杉本昌隆八段がかけたのが「心配していないから」という言葉でした。この励ましは、単なる気休めではなく、杉本八段の経験に裏打ちされた言葉です。杉本八段がプロ入りを目指していた16歳の頃、不調に陥り「負ければ降格」という局面で、師匠の板谷進九段から「心配しとらん。いつかはプロになる」と励まされたのです。杉本八段は、このころを振り返り、「弟子の未来を信じる大切さを学んだ」とインタビューで答えています。

1.自発的な成長

 将棋だけでなくスポーツやビジネスでも師匠の存在は不可欠です。ビジネスの場合、師匠は「メンター」(助言する人)と呼ばれます。「メンタリング」という若手育成法も存在します。

 メンタリングが目指すのは、部下や後輩の自発的成長です。そのため、「これをしろ。あれをやれ」などの具体的な指示や命令はしません。あくまでも本人の自発性に委ね、自ら成長するようにアドバイスするとともに見守るのです。ここではメンタルを重視するのです。

 杉本八段が藤井棋聖にかけた「心配してないから」という言葉も、藤井棋聖が後に「ほっとした」と言っていたように、メンタルに影響を与えます。

 このメンタルに影響を与えるのは、理屈ではなく人間性であり、誰かの言葉が心に響くのは、二人の間に共感が働いているからです。

 「弟子の未来を信じる」という心構えを持って、弟子である部下や後輩を導いていくことが大切です。師匠(上司)と弟子(部下・後輩)との間に共感が生まれれば、弟子は師匠の言葉を心に響かせて自発的に成長し続けるものです。

2.誰かを教え育てたいなら自分の過去を振り返るべき

 教え慣れていない人は、すでに何でもできるようになった現在の自分を基準にして「こんなこともできないのか」と判断しこき下ろします。それでは人は育ちません。誰かを育てたいなら「自分も昔は未熟だった。先輩や上司に色々教えてもらった」という過去を振り返ることが大切です。そうすることで、部下の悩みや苦しみを理解でき、自分の過去の体験から「どのように言ってもらえると成長できるか」も分かるようになります。

 杉本八段が藤井棋聖にかけた「心配していない」という励まし・心理的アドバイスは口先だけなら誰でも言えます。しかし、杉本八段の言葉が藤井棋聖の心にすっと入って安心感を与えたのは、杉本八段の言葉が自分の体験に裏打ちされていたからであり、また二人の間に心の通った共感があったからです。

 これまでも部下の育て方については書いてきました。その中で、部下を育てるために必要な「2つの自己〇〇感」について書いたことがあります。

2つの自己○○感というのは、自己効力感自己重要感です。

自己効力感というのは聞き慣れない言葉ですが、自分の中で「できる」「できるかもしれない」と前向きに思うことです。自己効力感を持つと、自分が「できる」と思う事態になると貢献したくなり、「任せてください」と手を挙げたくなります。自己効力感は様々なことを経験し、的確なフィードバックをされる中で育てられます。上司としては、チャンスやチャレンジできる環境を意識して提供するとともに部下が「できた」ことを評価するなど公平なフィードバックを心掛ける必要があります。上司と部下との間で、共感できるようになると、上司から「心配していない」という励まし・心理的アドバイスを与えられただけで「自分はできる」という自己効力感が高まります。

自己重要感というのは、組織の中で自分が重要な役割を担っていると思える力です。チームのメンバーがそれぞれ自己重要感を持っていれば、何か問題が起こった時には、大きな力を発揮します。「この分野は自分が得意だから任せてください」と自分の強みを持ってチームに貢献しようと自発的に行動するようになるのです。「心配していない」という励まし・心理的アドバイスによって、「自分は信頼されている」と思えると、自己重要感も高まり、積極的・自発的に行動するようになります。この自己重要感も部下の自発的成長には欠かせません。