おはようございます。
昨日の新規感染者は全国で14,472人、そのうち東京4066人、神奈川1860人、埼玉1364人、千葉988人、愛知375人、大阪1164人、兵庫450人、京都333人、福岡702人、沖縄574人、北海道308人などとなっています。日曜日としては過去最多で、茨城(299人)、京都、鹿児島(104人)の3府県で過去最多を更新しました。高齢者へのワクチン接種の甲斐もあり死者はそれほど出ていませんが、中年層・若年層の重傷者は急増しています。このまま進めば医療体制がひっ迫し、通常医療に影響が出て、本来救える命も救えなくなり、コロナ以外で死者を生み出すことにもなりかねません。オリンピックは閉幕しましたが、今週からお盆休みがスタートし、帰省客や旅行客は昨年以上に増えそうで、感染者増が減少に転ずるのはまだまだ先になりそうです。菅首相にとって頼みの綱であったオリンピックが終了しました。もうメダリストへの祝意だけをツイートすればいいというわけにはいきません。感染拡大するコロナに対しどのような対策を打ち出すのか、国民に対し真摯に向き合い丁寧にメッセージを伝えていくことです。もう国民を騙したり誤魔化したりはできません。史上最低ともいえる支持率を挽回するにはそれしかありません。それができないならば、さっさと責任を取って退くことです。
さて、今日は、坂上仁志著「小さな会社こそNO.1になる ランチェスター経営戦略 弱者が強者に勝つ方法」(明日香出版社)を紹介します。
著者の坂上氏は弱者必勝のランチェスター戦略経営コンサルタントで、ランチェスターNO.1「理論」と「実績」をもとに中小企業に上場企業の基準を持ち込むコンサルティングを行っています。
この本は、①経営を真剣に考え、NO1になりたい経営者、中小企業の社長 ②メンバーが10人以上いる組織の長、リーダー、将来起業しようとしている人 ③会社を引き継いで、どうしたらいいかわからない2代目経営者 に向けて、景気に左右されない強い会社の作り方を伝授してくれています。
かつてのように右肩上がりに経済が成長している時代には会社を作れば、何の戦略がなくても何とかなりましたが、経済成長が望めなくなった今は中小企業はNO.1にならないと生き残ることは難しくなっています。
以前紹介したGE(ゼネラル・エレクトリック)の最高経営責任者ジャック・ウェルチはCEO就任後「ナンバーワン、ナンバーツウの戦略しかやらない」と言い、事業領域を断端に絞り込む戦略を取りました。これは、ポジショニング戦略であり、この戦略的意思決定は数年後に増収増益をもたらし、ジャック・ウェルチは「20世紀最高の経営者」として認められたのです。
中小企業も、生き残りをかけた戦いに勝つためには、ジャック・ウェルチと同じように、NO1かNO2以外はやらないという覚悟・勇気が必要なのです。
それでは、どうすればNO1になれるのか、そのヒントを教えてくれているのがこの本です。弱者(中小企業)が強者(大企業)に勝つには一定のルール「原理原則」があるのです。その基本をランチェスター戦略から学び取ろうというのです。
ランチェスター戦略は、第一次世界大戦をきっかけに、イギリスのフレデリック・W・ランチェスターが航空機による空中戦の損害状況を研究したことから始まり、そこでは「同じ武器なら勝敗は兵力数で決まる」と述べられました。これをもとに、アメリカのコロンビア大学のバーナード・クープマン教授により軍事戦略モデルとなりました。これは、戦略に勝る「強者」と戦略に劣る「弱者」とに分け、それぞれがどのように戦えば戦局を有利に運べるかを考えるための戦略論で、経営戦略にも応用されるようになったのです。
ランチェスターの法則には、「弱者の戦略」と呼ばれる第一法則と「強者の法則」と呼ばれる第二法則があります。
第一法則は伝統的な一騎打ちを前提としています。例えば、同じ武器を持つA軍5名とB軍3名が戦った場合、最終的には損害は同じで、A軍が2名残って勝つのです。
第二法則は近代兵器による遠隔戦より広範な戦いを想定しています。この場合、攻撃力は兵力の2乗になり、先の例でいえば、A軍の戦力は25,B軍の戦力は9,A軍が勝って4名が生き残るのです。
したがって、数に勝るA軍は第一法則のような一騎打ち・近接戦を避け、第二法則にあるような広範戦・遠隔戦をした方が損害が少なくて済みます。一方で、弱者は、第二法則のような事態に陥らないように、なるべく接近戦を行うべきだというのです。
ビジネスに関して言えば、強者(大企業)には、物量と価格戦略にて、効率的にビジネスを仕掛け、市場全体で勝利することを図るという戦略が妥当しますが、弱者(中小企業)には、市場をセグメントして、資源を一点集中させ、強者との差別化を図るという戦略が妥当することになるのです。
数で劣る中小企業は大企業に絶対勝てないというわけではありません。強者というのは「マーケットシェア1位の企業」と定義づけされます。そのための戦略は次の通りです。
- 差別化戦略・・・商品をはじめ、会社、人材、情報、サービスの質的な独自性、優位性
- 一点集中主義・・・自社の経営資源を重点配分する
- 局地戦・・・地域や領域の限定
- 接近戦・・・顧客に接近する販売経路、経営活動、顧客志向
- 一騎打ち・・・競合数の少ない競争
- 陽動戦・・・奇襲戦法
もう少しわかりやすく言うと
- 差別化する、人と違うことをする、その勇気を持つ
- 小さな領域でNO1を目指す。1位になれるまで細分化する
- 一点集中、他をやりたくなる誘惑に負けない
- 局地戦で戦う、戦場を広げない、まず半径30分が目安
- 接近戦で戦う、訪問し近くによって触れ合う
- 一騎打ちをする 一人ひとり丁寧に対応する
- 万人受けを狙わない ターゲットを絞り込む
- 価値やすきに勝つ、 競合がないところで静かに勝つ
坂上氏は「経営は戦略がなければやってはいけない。理念がなければやる資格がない。実践しなければ何も生まれない」と言っています。つまり、「理念」ある「戦略」を「実践」するということです。坂上氏は、経営を「心」「技」「体」の3つの視点で捉えています。この本は、「心技体の経営」を目指し、次の4章で構成されています。
第1章 【技】ランチェスター戦略の基本
第2章 【技】NO1はなぜこの戦略を実践するのか
第3章 【心】NO1はなぜこの理念を大切にするのか
第4章 【体】NO1はなぜこの習慣を大切にするのか
この本では、景気に左右されない強い会社、つまりNO1企業の作り方を80の項目に分けて説明されています。それらをすべて紹介するわけにはいかないので、その詳細は、この本を読んでください。
第1章では、ランチェスター戦略の基本がわかりやすく説明されています。
第2章では、中小企業がランチェスター戦略から何を学び、具体的に何をしていけばいいのかについて書かれています。経営においても、一つ一つの要素を分解して、重要な要素に絞り込みそれを磨き上達させるということが大切であり、これがNO1になるためのコツです。
NO1になるためには、⑴どこの ⑵誰に ⑶何を ⑷どう販売するのかを、まず決めることです。次に決めることは、①目標 ②戦略 ③行動計画 次に④実践を記録し ⑤反省することです。①目標を立て、②全体的に戦う計画を立てて、③どう行動するかを決め、④やったかどうか記録を取り、⑤やった後に振り替えるのです。要はPDCAを回すということです。中小企業で、これを明確に決めてやっているところはほとんどありません。これをやるだけでNo1になれます。
第3章では、NO1になるために経営理念の必要性が説かれています。
企業経営において理念がないと、社員は何のためにここで働いているのか分からない(存在意義の喪失)、この会社がどうなっていくのか分からない(将来性、夢の喪失)、何を判断の基準としていいのか分からない(判断基準の喪失)ということが起こります。経営理念がないと、社内のベクトルが合わず、コミュニケーションが滞り、社内に不調和や不正が起き、それが顧客に伝わり、業績が停滞します。理念と業績はつながっているのです。
中小企業が経営理念を作る場合、①大義名分、つまり何のために仕事をするのか ②将来の夢、これからどうしたいのか ③価値観、毎日の行動指針、何を基準にして判断したらいいのか、具体的にどうしたらいいのか を示していく必要があるのです。
経営とはお客様に合わせ喜んでもらうことです。経営とは利他行、経営とは社員を守ること、経営とは人に尽くすこととです。社員は金もうけの道具ではありません。経営が社長の理念の実現だとすると、会社とは社長の価値観を共有した人の集まりであり、経営理念を実践する集団なのです。
この本では、
- 経営とは経営者の理念を実現するもの
- 経営とは仕事を通じて、社会に貢献すること
- 経営とは仕事を通じて、社員の人間性を高めること
- 経営とは利益を出すこと
と言っています。
第4章では、習慣の大切さが説かれています。
いい会社、いい社長ほどすぐやる習慣を持っています。いい行動習慣、いい生活習慣を作ることです。まず何か一つ、いい行動をすること、そしてそれを続けることです。それが習慣になり人生が変わるのです。
どのような小さな会社でも、差別化し一点集中で一つのことに根気よく打ち込むことができれば、NO1になることができるのです。これがランチェスター戦略ですが、そこにはお客様や従業員のためという利他の精神と感謝の心がなければなりません。