中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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リキッド消費時代の新しいマーケティング

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で10,400人、そのうち東京1675人、神奈川804人、埼玉697人、千葉591人、愛知1170人、大阪1488人、兵庫676人、京都270人、福岡429人、沖縄336人、北海道144人などとなっています。全国的に感染者が減少傾向にあることは喜ばしいことですが、人流がそれほど減っておらず、感染者数減少がワクチン接種率の高まりによるものなのか、緊急事態宣言発出の効果なのか、はたまた別の要因によるものははっきりしません。飲食店に対する時短要請と酒類提供禁止が感染者数減少にどの程度功を奏したのかの検証がしっかりと行われなければなりません。こうした中、行動制限緩和の向けての動きが加速しています。緩和案では、緊急事態宣言下の酒類提供を認めるほか、営業時間や大規模イベントの人数制限も緩和し、更にはワクチン接種者への県境をまたいだ移動を容認しGOTOトラベル事業を再開するとしています。菅政権下では後手後手に回ったコロナ対策では来る衆議院選挙で大幅議席減(敗北)が予想され、選挙民の目先を変えてやっている感を出させるためで、国民のことを優先的に考えた政策ではありません。確かに、コロナ対策と経済回復との両輪を上手く回していくことが大切ですが、あまりにも先走りすぎ、内容的にも稚拙です。いずれは行動規制緩和は必要です。単なる人気取りだけの選挙用の施策で終わらせてはいけません。危機管理の基本は的確な現状認識と状況分析が前提になければなりません。これなくして根拠なき楽観論を前提に施策を練っても極めて危険です。すでに国民の意識は緩み始めています。新規感染者数が減少傾向になっても重症者数は高水準にあり、あいかわらず医療はひっ迫しています。この状況で、一気に行動制限緩和に舵を取れば、今度こそ感染大爆発となり医療崩壊へとつながります。的確な現状認識と状況分析・検証を行いつつ、状況に応じて段階的に行動制限緩和を行うべきです。

さて、今日は、JBPressの「『リキッド消費』時代の新しいマーケティングを学ぼう」という記事を取り上げます。

著名なマーケティング学者であるP.コトラーによれば、「マーケティングとは、個人のニーズと欲求を満たすために、交換過程を通じてなされる人間の活動」であり、アメリカ・マーケティング協会によれば「マーケティングとは、顧客やクライアント、パートナー、更には広く社会一般に価値のあるオファリングスを創造・伝達・提供・交換するための活動とそれにかかわる組織・機関、および一連のプロセスのことを指す」となっています。具体的に言えば、マーケティングは、商品企画、製品開発、価格、流通・販売網、広告・広報、販売促進・各種サービス、デザイン、ブランド形成・維持、アフターサービスなど広範多岐にわたる顧客へのアプローチを計画・調整・統合する方策に関して総合的に研究する分野です。

マーケティングはよく「販売」と混同されることがありますが、コトラーは、「マーケティングと販売は正反対ともいえる活動」と言い、「マーケティングの目的は販売を不要にすること」とまで言っています。

マーケティングというのは、顧客のニーズと欲求を十分に理解し、それらを満たすことができる価値を創造し、「売り込まなくても売れる仕組み」を作り上げることです。

マーケティングにおいて重要なのは、①誰に ②どのような価値を ③どのように提供するか ということにつきます。

これまで多くのマーケティングの手法が考案され、実践されていますが、この記事では「新しいマーケティングの発想」が紹介されています。

1.消費行動は「リソッド消費」から「リキッド消費」へ

 この記事では、「現代人の消費行動は、消費対象(製品)を所有することから、消費対象となる資源の循環にシフトし、旧来の『ソリッド消費』から「リキッド消費」へと移行している」と言います。

 この記事が言う「ソリッド消費」とは物を買って消費することで、「リキッド消費」は所有権が移転しない取引による消費のことで、レンタルやシェア、サプスクリプション、コト・サービス消費などが該当します。

 「リソッド消費」から「リキッド消費」への移行の背景には、生活者の消費スタイルの変化があります。それは

  • 所有より体験が重視される
  • デジタルの普及
  • 手間暇よりも手軽な便利さ
  • 環境問題に対する意識の高まり

などによるのです。

 デジタル化が進むにつれて、このように、われわれの消費生活は大きく様変わりしています。リアル店舗のほかにデジタル店舗があり、新しいビジネスも生まれ、インターネット上には様々な情報があふれかえっています。消費者がブランド情報を容易に得られる一方で、理性的な消費者に有効な刺激を与えることが難しくなっています。

 今、新しい時代の「マーケティング」のあり方を検討する時期が訪れているのです。

2.リキッド消費のマーケティングのカギ「ブランド・カテゴライゼーション」

 消費者が短期的に記憶できる数字の桁数は「7±2」と言われています。インターネットの普及、グローバル化などにより、競合ブランドの数が急激に増加し、消費者に「記憶」してもらいにくくなっています。そうした状況の中、顧客にとって自社のブランドがどのような位置づけにあるのかを理解したうえで、自社ブランドをマネジメントしていく有力な枠組みがブランド・カテゴライゼーションです。

 ブランド・カテゴライゼーションでは、「入手可能集合」(その気になれば手に入れられる集合)を出発点とし、「知名集合or非知名集合」(名前を知っているか否か)、知名集合からは「処理集合or非処理集合」(名前だけでなく評価できる情報をもっているか否か)に分け、最終的には次の4つのカテゴライズされます。

  1. 推奨集合 人に薦めたいと考えるブランド
  2. 想起集合 購入したいと考えるブランド
  3. 拒否集合 購入したくないブランド
  4. 保留集合 拒否はしないが何らかの理由で購入を留まるブランド

 こうした枠組みを理解し、自社ブランドの立ち位置が把握できれば、ブランドの提供価値の見直しやターゲットの再評価が可能になります。

3.消費者の感覚に影響を与える「センサリー・マーケティング

 私たちは、意識することなく何らかの感覚刺激の影響を受けています。マーケティング的なメッセージと思わない場合には感覚刺激を抵抗なく受け入れます。

 センサリー・マーケティングは、「消費者の感覚に影響を与えることにより、彼らの近く・判断・行動を左右する」マーケティング手法です。つまり、消費者の五感(製品の外観・官職・味・音・香り)に働きかけるマーケティングです。

 例えば、商品パッケージを構成する写真、文字、フォントなどが同じでも、商品画像を「上に配置するか」「下に配置するか」で印象が大きく変わります。ブランドに重量感・リッチさを表したい場合には画像を下に、ブランドにヘルシーさを表現したい場合には画像を上に、といった選択ができるのです。

 センサリー・マーケティングの特徴といえば、一般的な広告と異なり、消費者が「刺激を受けていることを明確に意識していない」という点です。五感を刺激することで短期記憶を経由することなく、明確な意識がないまま行動へと結びつくことがあるということです。

4.照明が消費行動に影響を与える

 消費者を刺激する変数には、臭覚を刺激する「製品の香り、空間の何らかの香り」、聴覚を刺激する「BGM、シズル音、ブランド・サウンド」、味覚を刺激する「甘さ・辛さ・うまみ」、視覚を刺激する「照明、パッケージカラー、製品カラー」、直角を刺激する「硬さ・柔らかさ、温かさ・冷たさ」などです。

 店舗照明や色彩は、消費者行動に影響を与えるものとして、これまでにも多くの研究がなされています。

 店舗照明は、商品の情報を正しく伝え、商品の魅力を引き出し、顧客の注目を引き、店内に導き、購買促進効果を高めることを目的としています。そのためには、ストア・アイデンティティ戦略に沿った照明の演出や購買心理の検討が必要になります。

 店舗の照明手法として、①ベース照明(店全体・各部分で基本となる照明) ②重点照明(商品周りを明るく照らし訴求力を高めるための証明) ③装飾照明(装飾効果やアクセント効果を期待して用いられる照明)があり、照明方法としては、①直接照明 半直接照明 間接照明 ④半間接照明 ⑤拡散照明があります。

 これらのどれを用いるかは、店舗の構造や販売する商品、顧客ターゲットによっても異なるように思います。自社ブランドの立ち位置を把握し、それに合わせて、五感を刺激するマーケティング方法の一つとして照明を考えることは大切です。

 この記事の最後に「消費者の行動を変えるためにはどのような施策が打てるのか、リキッド消費の特徴をつかみ、新しいマーティングの発想を取り入れていけばいい」と言っていますが、一つの参考になるのではないかと思います。

 コロナ禍で、企業を取り巻く環境や社会全体が大きく変化しました。こうした激動の時代においては、何が正しくて何が間違っているかは全くわかりません。これまでのマーケティング手法にだけとらわれていたのでは時代遅れとなり生き残ることさえ難しくなるかもしれません。新しいマーケティングの発想の中から、少しでもヒントが得られれば、消費者の行動を変えたり、自社が消費者のニーズや欲求にあったか価値を提供することができるようになると思います。