中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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ムラ社会の日本企業を変える

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で12,396人、そのうち東京1834人、神奈川1099人、埼玉779人、千葉610人、愛知1290人、大阪2012人、兵庫852人、京都381人、福岡572人、沖縄413人、北海道180人などとなっています。全国的に減少傾向にあり、ピークアウトした地域もあれば高止まりしている地域もあります。大阪では2日連続で全国最多となり、重傷者も増加しています。また全国で初めて10代の感染者(患者)の死亡が発表されました。基礎疾患があり重篤化リスクを抱えていたようですが、痛ましいことです。政府は、11月をめどに緊急事態宣言下でもワクチン接種者に対する行動制限緩和を行う方針で検討を進めていますが、基礎疾患があり重篤化リスクを抱え、ワクチンを接種したくても接種できない人への差別を助長するようなことがあってはいけません。

総裁選が本格化し、高石早苗が安倍前首相の支持を得て正式に出馬表明しました。また既に出馬を表明している岸田文雄は森友問題で再調査をしないと安倍に対する忖度を示しました。出馬を検討している河野太郎も、派閥の領袖の麻生太郎から全面支持を受けられない状況で未だ出馬表明に至りません。相変わらず、二階、麻生、安倍といった黒幕が暗躍し、派閥の論理、ムラ社会の論理が生きています。ヤフーニュースは、岸田と河野が最終的に争うことになれば、自民党分裂の危険な匂いがすると書いています。麻生・安倍は最終的には岸田を支持し、若手・中堅層、石破茂が河野を支持し、党を二分する争いになるということです。この際、国民のことよりも自分らの保身や利権を最優先する自民党は分裂・解体させる方が国民にとっては望ましいことではないかと思います。この時代、派閥や「ムラ社会」の論理は時代遅れです。

さて、今日は、朝日新聞GLOBE+の「『ムラ社会』の日本企業を変えるカギは、保守的な中堅管理職を変えること」という記事を取り上げます。

派閥やムラ社会の論理は政治の場だけに限りません。企業においても、社長派・専務派などと派閥があり、「ムラ社会」の論理がまかり通っています。

ムラ社会」というのは、集落に基づいて形成され、有力者を頂点とした序列構造を持ち、古くからの秩序を保った排他的な社会のことです。同類が集まって序列を作り、頂点に立つ者の指示や判断に従って行動したり、利益の分配を図ったりする閉鎖的な組織や社会を村に例えて「ムラ社会」と呼ぶのです。

ムラ社会には、長による支配、ボスと子分といった上下関係が歴然と存在し、無条件に習慣を踏襲し、一切抗わないという特徴があります。まさにやくざの社会です。

また、ムラ社会には多くの問題点があり、様々な指摘がなされています。

  • ムラの掟や価値観・しきたりが絶対であり、多様性や少数派の存在を認めない
  • 掟に関与しない世間一般のルールやマナーを守らず、自らの掟を他者にも強要
  • 出る杭は打たれる。長い物には巻かれろ。寄らば大樹の陰
  • 被害に遭った者が責任を追及すると、大勢で被害者を叩きなかったことにする
  • 自分らが理解できないよそ者の存在を認めない
  • 立場が弱いものに対しては陰湿かつ徹底的に圧力を加える
  • 全て自分たちと同質であるとし、自我の存在を認めない
  • 事なかれ主義が多い
  • 噂話に対しては自分たちに不利益にならない限り、真実かどうか深く追求せず、既成事実にする

日本企業の多くは未だに閉鎖的な経営をしています。まさに「ムラ社会」です。しかし、上場企業の経営規範ともいえる企業統治指針」(コーポレートガバナンス・コード)が6月に改訂され、ガバナンス改革が注目されるようになって、少しずつ変化の兆しが見えます。しかし、ガバナンスの「形」は整ってきても「質」が伴っていない企業がほとんどです。

日本の大多数の企業では、経営の中核は日本人の中高年男性です。多様性が叫ばれて、多様な人材を登用する企業も増えていますが、多様性(ダイバシティ―)は積極的に取り入れても、包摂(インクルージョンが不十分です。多様な人材がお互いに個性を認め合い、一体となって働くことができてこその多様性です。多様な人材を採用しても適材適所に配置して動かすことができなければ「形」だけの多様性になってしまいます。

社外取締役を選任する企業が増えていますし、女性の取締役も増えています。しかし、女性取締役のほとんどは社外取締役です。内部出身の優秀な女性が取締役に登用されている企業はほとんどないのです。

社外取締役の登用が増えているものの、「社外取締役がいる会議では情報を出すな」ということで、重要な情報や重要な事柄は、取締役会ではなくその前段階の経営会議等で決まり、取締役会はその報告の場になってしまっています。

コーポレートガバナンス・コードで社外取締役の必要性が謳われているのは、社外取締役に外から見た自社の状況について役に立つ助言をしてもらうアドバイザリーボードとしての役割を担ってもらうためです。会社としても社外取締役を登用した以上は、極秘情報は別としてあらゆる情報を提示して助言を求めるべきですし、就任を承諾した以上、社外取締役も嫌われても忌憚のない意見を言うべきです。

また、多くの企業で執行役が置かれるようになっています。日本の企業の多くでは、取締役に「監督」と「執行」の2つの機能を持たせてきました。米英企業のように、「監督」と「執行」を明確に分けて、取締役は経営を監督するモニタリングボードになっていくべきです。執行については執行役員が中心となって行えばいいのです。

この記事では、閉鎖的な「ムラ社会」の日本企業が変われるかどうかは「中間管理職」世代がカギを握っていると言っています。

中間管理職は、ムラ社会の序列構造・ピラミッド型構造の中では、「中よりも上位」に位置付けられる存在です。いずれは執行役員、取締役へと上がっていく人たちです。中間管理職になって、さらに上を狙える立場になると、トップや経営陣に忖度し、保守的になってきます。経営陣に追従するだけでなく、業務においても失敗を恐れ冒険を行わず、無難に仕事をこなし保守的な態度をとるようになります。

経営陣は、ガバナンス改革の風圧や外圧に晒されているので、世界の流れや環境の変化に敏感です。また、若年層は、インターネットやSNSなどからの情報に敏感で、意外と世界の流れや環境変化をつかんでいます。取り残されているのが中間管理職です。この中間管理職は、近い将来、執行役員や取締役として経営陣として経営のかじ取りをする立場です。この中間管理職が時代や環境の変化に疎く感度が鈍っていては、日本の企業の先行きが心配になります。

この記事では、「この世代によい刺激を与えていくことがガバナンス改革の成否につながるカギを握ると思います」と締めくくっていますが、具体的にどうすべきかが何一つ書かれていません。

以前にも書いたと思いますが、日本の企業では「役職はご褒美」という風潮があり、年功序列というスゴロクを無難に上がってきた人への「上がり」として用意されているものです。これまでの成果が役職に反映するというわけですが、これまでの成果と言っても、勤務年数や上司の覚えめでたく当たり障りなく無難に世渡りしてきただけです。上司に楯突く半沢直樹的な人材は好まれません。しかし、今本当に必要なのは、時代の変化を敏感に察知して迅速に行動を起こせる人材です。過去の栄光にしがみつくリーダーは必要とされていません。

今本当にリーダーに必要な能力は「問題提起力・課題を見極める力」です。問題や課題が比較的明確な時代では問題解決能力が求められました。しかし、今の時代では、問題や課題が複雑に絡み合って問題や課題の本質がどこにあるか分からなくなっています。問題解決以前に問題の本質がどこにあるのかを明確にできる能力が重要になってきているのです。リーダーが、問題や課題の奥に潜む本質を明らかにし、メンバー全体でチーム一丸となって解決策を考えるというのがこれからの組織やチームのあり方です。中間管理職にはこの「問題提起力・課題を見極める力」が要求されるのです。

前述したように、日本の企業の役職は年功序列の上がりで、それは実質的な意味での成果とは何ら結びついていません。年功序列制が悪いというわけではありませんが、欧米型の成果主義を取り入れ、的確に成果を評価するシステムを構築して、その評価に従って役職を与える、昇進させるという組織改革、人事改革が必要です。こういうシステムにすると中間管理職もオチオチと今の地位に胡坐をかいているわけにはいきません。下からの追い上げにもさらされます。

そうなれば中間管理職にも危機感や刺激が生まれ、自らアンテナを張って情報収集に努めるようになり、「問題提起力・課題を見極める力」を養うようになるでしょう。