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休日の本棚 データドリブン経営

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おはようございます。昨日の新規感染者は全国で292人で、300人前後で下げ止まっている感じがします。東京都は4月以降10月2日までの感染者数で集計ミスがあったとして、感染者総数に4512人を加しました。入力を手作業、FAXで送信するという時代遅れの方法を取っているからかかる事態が起きるのです。デジタル化と言いながら、役所がこのようでは、デジタル化が全企業に浸透しないのは当然です。日本では感染者が減少していますが、世界的にはイギリス、ロシアで感染が拡大し、WHOも新規感染者数と死者数が2か月ぶりに増加に転じたと発表しています。前述したように、現象スピードが低下し下どまりしているように見られますが、明日はハローウィン、紅葉シーズンの旅行、年末年始の帰省・旅行などで今後人流の活発化や冬季になってインフルエンザとのダブル流行が予想されています。第6波への備えを万全にしておくことが重要です。

さて、今日は、ハーバード・ビジネスレビュー2019年6月号の「データドリブン経営」を紹介します。

グーグル、アマゾン、フェイスブック(メタに改名)、アップルのいわゆるGAFAなどのテクノロジー企業が、名門企業や大企業を淘汰する事態が起きています。そうした中、企業が生き残るための必須条件は何か? それは「データドリブン経営」であるとここでは指摘されています。

1.データドリブンとは?

 データドリブンとは、経験や勘ではなく、様々な種類と膨大な量の情報を蓄積するビックデータとアルゴリズムによって処理された分析結果をもとに、ビジネスの意思決定や課題解決などを行う次世代型の業務プロセスです。

 データドリブン経営について、「これまでにない大きなインパクトを創出するための全社変革であり、デジタル技術や人工知能(AI)などの技術を活用し、ビジネスのあらゆる局面においてデータ主導での意思決定をする経営」と定義されています。

 現在、デジタル技術やAIの指数関数的発展によって、ビジネス、産業、経済、働き方、更には日常生活まで大きく変わってきています。世界の先進的な経営者、企業は、その重要性とインパクトの大きさにいち早く気づき、データドリブン経営に舵を切り、全社改革を急ピッチで進めています。

 一方、日本では、データドリブン経営を実現できている企業はほとんどありません。データ主導の意思決定は広がりを見せているものの、その本質が全従業員の働き方や意思決定の方法を変えるという「全社改革である」と認識している経営者はまだまだ少ないのです。

 データドリブンな組織に変革できれば、全従業員自らがデータを活用し、競争で先手を打てるようになりますし、大きな果実をを継続的に手に入れることができるようになるのです。

 ここでは「『座して死を待つ』か『自身が変革の覇者になる』か、企業の命運は経営者の双肩にかかっている」と言っています。

 私自身、日本型の経営の良さを否定するつもりはありませんし、データがすべてだとも思っていません。データーに基づきつつも長年の経験や勘も加味しつつ意思決定していくことが重要ではないかと考えます。

2.データドリブンの注目が高まっている理由

 IT技術の向上により、様々な情報が行き交うようになりスピード感のある世の中に変わってきています。膨大な情報の氾濫、錯綜はビジネスの顧客ターゲットに様々な選択肢を与え、複雑な社会を構築しています。これまでの経験や勘を頼りにしていた従来のプロセスでは対処しきれなくなり、ビックデータで複雑化された状況を的確に分析し、意思決定に必要な判断材料や分析結果を提示してくれるデータドリブンが必要になってきているのです。

  • 顧客行動の複雑化・・・ネット検索で得た情報を精査したうえで捕るべき行動を選択する顧客が増えている
  • 現場業務の複雑さ・・・企業としても多様化する顧客ニーズに対応するため、様様なラインナップをそろえなければならない
  • 問題・課題の早期解決の必要性・・・変化が激しい社会ではより早く精度の高い業務プロセスの実践が必要不可欠である

3.データドリブンの4つの柱

 データドリブンは、大きく分けると次の4つの柱で成り立っています。

  1. データの収集・・・ビジネスの意思決定に必要なデータをクラウド上のデータサーバーにビックデータとして蓄積する。データは、各部門の業務システム、Webサーバー、IoT、外部サービスなどから取得する。
  2. データの分析・・・ビックデータに蓄積した定量的なデータの時間的変化と他のデータとの関連性などをアルゴリズムにて計算する。ランキング、最大値、最小値といった定量的なデータ、視覚的に理解できるグラフや図といった定性的なデータを分析結果として導き出す。
  3. データの可視化・・・ビジュアル・可視化を駆使し、一目瞭然な分析結果をつくる。数値、グラフ、図をバランスよくシンプルに再加工、構成することで、分析結果の価値が高まり、企業の意思決定で合意を得るエビデンスになりうる。
  4. 意思決定・アクション・・・データ分析結果をもとに具体的な施策や対策、結論などを決定する。データドリブンでは行動対象の現状・実情もデータとして加味され、解決・改善に向けて前に行動を進める。

4.組織を変革する際に立ちふさがる4つの壁

 データドリブン経営を目指す場合、日本企業特有の大きな壁があると言われています。

  1. データの壁:成功の定義とデータの特定・・・データが爆発的に増加しており、データの質が向上し、より網羅的になっている。多くの企業で「データ活用による費用対効果が分からない」「データ活用してもデータ定義・形式がそろっておらず部門をまたいだ分析に使えない」「データが紙などで保存され、データのクレンジング(整理・加工)が必要」「分析するのも外注せざるを得ず、費用がかかり、分析結果が出るまでのリードタイムが長い」といった課題がある。これらの課題の克服には優先順位を付けること、「成功の姿」を定義し、「どのように成功を測定・評価するのか」が重要になる。
  2. リリースの壁:脱アウトソース・・・開発会社(ベンダー)にアウトソーシングし続け、自社にノウハウが蓄積されないというのが大きな課題である。ベンダーの活用は初期段階には有効だが、①アウトソースのベンダーでは社内の調整ができない ②基本的にユーザーの指示通りに動くため、改善の提案やサポートに動こうとしない ③ケイパビリティが社内に残らない。自社の主導権を取り戻すことが重要である。ベンダーの選択が重要である。
  3. 組織の壁:機能横断的なデザインを・・・AIを構築する技術側と活用する側の事業部側が殻に閉じこもって、連携しないことにある。10年、20年先を見据えて、各部門の様々な活動を洗い出して整理することが重要である。前者のデジタルプロジェクトを「見える化」して管理する仕組みを構築し、機能横断的にデザインする。
  4. マインドの壁:アカデミーと組んだ人材育成・・・多くの企業では、データサイエンティストとデータエンジニアなどの人材と機械学習や深層学習などのAI技術ばかりに目が向いている。本当に組織にインパクトを生むためには、組織内の現場から幹部まで、非技術系の認識を変え、行動を変えなければならない。意識変革の実現には、トップから現場の人材に至るまで継続的な教育が重要である。

5.全社改革を実現するための4つのステップ

  1. 明確なビジョンを打ち立てる・・・経営トップが明確なビジョンを立て組織改革を引っ張ることが不可欠である。変革には「ストーリー」が必要であり、従業員全員の力を結束すべく、明確で誰もが賛同できるビジョンを作る必要がある。
  2. ロードマップを描き、大きく舵を取る・・・データドリブン経営に舵を切ると、総額いくらの効果があるかを明確にすることである。最も大切なのは、全社の事業・機能すべてを対象とすることである。部門横断的なチームだけで検討することに加え、各チームにやりたいことを提案させ、経営会議で検討する。経営会議で合意を得ることで、巨船の舵は切られたことになる。
  3. 最初のパイロットを絶対に成功させる・・・従業員の注目を浴びる1つ目のパイロットプロジェクトは失敗できない。パイロットプロジェクトのメンバーは社内でも精鋭メンバーを集めフルタイムでコミットさせる。パイロットプロジェクトで成功したら、それを一気に全社に展開する。
  4. 従業員に投資して全社に拡大する・・・データドリブン経営の価値を全社に展開するには、これまでの組織をぶち壊し、顧客中心に変革目標を立て、その達成のために多くのエネルギーを割く必要がある、組織の再設計、コミュニケーション、従業員トレーニング、従業員の採用などに変革予算の田尾範を費やす。外部ベンダーではなく自社の従業員に対して大きな投資を為すべきである。

データドリブン経営に舵を切るということは、会社が市場の変化に速やかに対応し、想像すらできない新しい技術に素早く順応すると同時に、全く新しいビジネスモデルを構築できる最強の組織に生まれ変わることができるということです。

 今、データドリブン経営に舵を切る意味はここにあるのです。