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稲盛経営と永守経営

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で119人、29県で新規感染者ゼロとなっています。全国的にした止まりしている者の低水準で落ち着いています。来年度からのGOTOトラベルの再開や会食での人数制限緩和など規制緩和の動きが加速していますが、ドイツでは死者が10万人を超え、南アフリカで新たな変異株が見つかるなど、世界的には再拡大しています。南アフリカで見つかった変異株は、免疫回避、高い感染力が懸念されています。日本では、外国人の入国緩和が行われ、更に外国人団体観光客の受け入れに剥けたさらなる緩和が検討されています。これまでの日本の水際対策は極めて杜撰さであり、新たな変異株の国内流入を抑えるにはしっかりとした水際対策が求められます。世界的な新型コロナウイルスの動向を見極めながら、入国緩和を行うべきですし、場合によっては強化することも必要です。

さて、今日は、日経BizGateの「『稲盛と永守』2人の経営者はなぜ失敗しないのか?」という記事を取り上げます。

これまでも京セラ会長稲盛和夫氏と日本電産会長永守重信氏の経営哲学については折りに触れ紹介してきました。ただ、個別に紹介し、両者を並べて紹介したことはありません。この日本を代表する2人の経営者の経営哲学を比べてみれば多くの共通項があることが分かり、中小企業経営者にとっても、経営の参考になるはずです。

小集団ごとに採算管理するアメーバー経営を特徴とする稲盛氏、圧倒的な営業力を強みとする永守氏、という風に違いはありますが、ともに「失敗しない」経営が信条です。

「具体的な数字に落とした中期計画は立てない」「目標に掲げたことは必ず実現する」など、目標の設定と精華への徹底的なこだわりでそれを実現しています。

1.自利と利他

 稲盛氏は、以前紹介した「稲盛経営12箇条」を見ても明らかなように、「利他の心」あるいは「無心の心」の大切さを説く一方で「数字は経営の基本」という姿勢を忘れていません。前者はフィロソフィ、後者がアメーバ経営に基づく採算管理です。まさに渋沢栄一の「論語と算盤」そのものです。

 アメーバ経営というのは、稲盛氏が京セラを経営する中で、京セラの経営理念を実現するために作り出した独自の経営管理手法です。組織をアメーバと呼ぶ小集団に分けて、各アメーバのリーダーが中心となって各アメーバの計画を立て、メンバーが知恵を絞って努力することでアメーバの目標を達成していきます。そうすることで、現場のメンバー一人ひとりが主役となって、自主的に経営に参加する「全員参加経営」を実現するものです。

 稲盛経営の基本は、極めてシンプルで「売上最大、経費最少」「値決めは経営」で、これをアメーバに徹底させることにあります。企業を支えるために独自の管理会計の仕組みを作り、各アメーバに採算責任を担わせるのです。

 ただ、これではアメーバ単位の部分最適に陥りやすいという欠点が出てきます。そこで、アメーバのリーダーにはフィロソフィに基づいて行動することが求められます。

 稲盛氏は「リーダーは、同じ会社で働く同士として、会社全体の視野に立ち、『人間として何が正しいのか』という一点をベースに判断しなければならない。自らアメーバを守り、発展させることが前提だが、同時に会社全体のことを優先する利他の心を持たなければアメーバ経営を成功させることは出来ない」と言っています。

 アメーバ経営を単に自立分散型経営、独立採算管理という一面だけで捉えてしまうと、本質を大きく見誤ることになります。アメーバ経営は「利他の心」というフィロソフィが前提としてなければならないのです。

2.経営は数字

 永守氏も「経営は結局は数字がものをいう」と語ります。先日書いたように、永守氏は目標を語る際にワクワクするような将来像を付け加えます。永守氏は、「夢・ロマンを語ると同時に、会社の力、可能性を具体的な数字として頭にたたき込んでおくこと、これが経営の第一条件」と言います。

 永守氏は、「事業の基本は販売」と言い切り、「1に販売、2,3,4がなくて、5に技術開発」と言うのが口癖で、永守経営の強みは圧倒的な営業力にあります。

 永守氏は、稲盛氏のアメーバ経営に与せず、あくまでも事業所制を基本とし、これまで日本の伝統的なメーカーが採用してきた管理手法を維持しています。しかし、日本電産では、顧客第一主義を徹底し、営業が示す市場価格に合せつつ、10%以上の収益を稼ぐ力が求められ、市場と直結して全社が一丸となって利益を生み出していく仕組みが徹底しています。

 管理会計については多くの目標管理の仕組みがありますが、それらは単なるツールにすぎません。いくらツールを覚えても、これを徹底的に使いこなせなければ意味がありません。逆に、一見当たり前のツールであっても、経営が徹底的に使いこなせれば持続的に成長し続けることは可能なのです。永守経営がそのことを示しています。

3.「志す」心

 稲盛氏も永守氏も「戦略」という言葉を好みません。稲盛氏に至っては「経営するには経営戦略が大事だ、経営戦術が大事だと一般に言われていますが、一生懸命に働く以外に成功する道はないと思っています」と言います。そして、「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する」ことが大切だと言います。

 事業を構想するときには楽観的に考えなければ何も始まりません。一方で、具体的な事業計画に落とし込む際には、悲観的にあらゆる最悪の事態を想定する必要があります。そして行動に移すときには再び楽観的になって必ず実現すべく積極的に手を打っていくのです。この3拍子が稲盛経営の神髄です。

 この中で、稲盛氏が最も重視するのが「志す力(構想力)」です。ネガティブで悲観的な考えをすると、どうしてもいい発想は生まれません。目標設定する場合には、必ず楽観的な立場に立って、考えなければならないのです。

4.野戦の一刀流

 永守氏も、ポーターの教科書的な戦略とは全く無縁です。「実践を知らない経営学者や経営コンサルの戦略論など、有害無益」とまで言います。

 永守氏と言えば、M&A戦略によって世界中に300ものグループ企業を擁していますが、その本質は、大きな岩の間を小石で埋めて石垣を築く「石垣戦略」です。

 また、大胆な投資戦略やグローバル戦略も、マーケットに先行して投資するという永守氏流の「待ち伏せ戦法」の実践です。

 更に、永守氏の真骨頂は「新陳代謝」にあり、足し算だけでなく引き算も躊躇なく進め提起ます。これは永守氏流の「捨てる経営」です。シェアが1番、2番の事業は続けるが、3番以下の事業は売っていくのです。

 戦略レベルでみれば稲盛・永守経営の特徴は、次の3点に要約できます。

  1. 自ら未来を拓く力・・・ブレずに自らの威信年を貫く
  2. 空間をつなぐ力・・・局初戦にとらわれず、大局的に捉えて判断する
  3. 時間軸に対する柔軟な発想・・・大きな波を捉える先見力と変化を迅速に捉える動体視力のよさ

5.失敗ゼロの経営

 稲盛氏も永守氏も、立てた目標に対して、成果を出すことに徹底的にこだわります。目標は努力目標ではなく、あくまでも必達目標です。

 他の企業と大きく異なる点が2点あります。

  1. 具体的な数字に落とした中期計画は立てない
  2. 目標に掲げたことは必ず実現する

⑴中期計画は立てない

 1年先なら大きな狂いもなく読むことは出来ますが、3年、5年先となると、誰も正確な予想は出来ません。その1年だけの計画を月ごとの、さらには1日ごとの目標にまで細分化して、それを必ず達成できるように努めることが大事なのです。

 ところが、ほとんどの企業が中期計画策定に夢中になっています。VUCAの時代に数年先の確実な数字など予測できるはずはありません。そのようなことに時間や労力を使うのは全くの無駄です。予測できない中期計画を策定しても、あとはその修正に追われるだけで、さらに時間と労力の無駄がかさみます。

 永守氏は長期ビジョンは示しますが、数字を事細かく積み上げることは時間の無駄と考えています。こだわるのは長期的な高い目標と、短期的な堅実な成果です。

⑵目標を必ず実現する

 稲盛氏も永守氏も、今まで失敗したことはないと豪語します。

 永守氏は「これまでわが社で解決できなかった問題、開発できなかった新商品はない」と語り、「理由は簡単で、途中で絶対にギブアップしなかったから」と言います。 

 稲盛氏も「ネバーギブアップこそ成功の条件だ」と言い切ります。「もう駄目だ、無理だというのは通過地点に過ぎない。すべての力を尽くして限界まで粘れば、絶対に成功する」「いかなる逆境も跳ね返し、可能性を信じて、挑戦する限り失敗はない」と言っています。

 当然、途中でつまずき、思い通りに行かないことはあるはずです。しかし、そこで学んで、成果につなげていくのが稲盛経営・永守経営の特徴です。これはエジソンの失敗観に通ずるものです。