中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

中小企業経営のための情報発信。中小企業から日本を元気に

中小企業の生産性を高めるには

f:id:business-doctor-28:20211203082204j:plain

おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で127人、28県で新規感染者ゼロとなっています。低い水準ではありますが、小康状態になっているように思います。オミクロン株に関し、日本に到着する航空機の予約停止要請が1日で撤回されました。国土交通省の航空局が先走ったようで、斉藤国交大臣も岸田首相も知らなかったとのこと、内閣と実務を担う官僚との意思疎通が出来ていないことは問題です。また、国交省の出した一時予約停止要請に対して憲法違反と宣っているコメンテーターらがいますが、憲法によって保障された人権も公共の福祉によって制約を受けることは当然で(もちろん厳格な審査基準が要請されます)、オミクロン株の国内流入を阻止し国内の国民の生命・安全を守るという目的のためにはやむを得ない措置ではなかったかと思います。もし入国させるのであれば、宿泊施設に隔離し厳重に監視すること(要請ではなく義務化すること)、そのための法整備とルール作りを急がねばなりません。

さて、今日は、PHPオンライン衆知の「『なぜ達成できないんだ』と社長が迫る中小企業ほど、生産性が下がり続ける理由」という記事を取り上げます。

中小企業の「労働生産性」が低いことは否定できません。かつて管元首相のブレーンであったアトキンソンなどは労働生産性の低い中小企業の淘汰を主張しています。中小企業の労働生産性が低いことは、中小企業に問題があるのではなく大企業による搾取にも問題があることは以前にも指摘しました。しかし、中小企業にも問題がないわけではありません。そのひとつが、多くの中小企業に明確な経営戦略がないことです。

1.中小企業が苦手な「経営計画」

 中小企業が労働生産性を高めるには経営戦略が欠かせません。

 労働生産性は、労働者1人(あるいは1時間)あたりの労働により生み出される付加価値(額)のことです。日本の1人あたり労働生産性OECD35カ国中22位、1時間あたりは同20位です。これは全企業の約99%を占め、全雇用者の69%が働く中小企業に原因があるとされているのです。

 確かに、中小企業の労働生産性上位10%は大企業の平均を上回っていますが、残り90%は大企業の平均を大幅に下回り、その差は約2倍になっています。それもすべての業種について言えることです。

 この差を生み出しているのが、設備、IT化、人材といった将来への投資です。

 企業が成長、発展していくためには、こうした将来への投資は必要不可欠で、この投資計画が「経営計画」であり、何にどれだけ投資していくのかを具体的に決めるのが「戦略」です。

 中小企業において、この「経営計画」と「戦略」の立案が出来ていないというのが現実なのです。

2.結果だけを求めても目標は達成できない

 先日も書きましたが、「経営が数字」であることは否定できません。永守重信氏が言っているように、単に細かい数字を積み上げても意味がありません。長期的な目標と短期的な堅実な成果が重要なのです。

 業績目標や数値目標は多くの中小企業でも決めています。この目標を達成できなかったときに経営者・社長が社員に「なぜ達成できないんだ」と詰め寄るケースが見られます。原因や課題を共有し、指導やアドバイスをせず、結果だけを求め、結果が得られなければ責任を問うという姿勢に問題があるのです。

 中小企業の経営者は、営業から資金繰りまで色々なことをしなければならず多忙です。しかし、目標だけ数字で示し。あとは社員任せでは人も育ちませんし、企業も成長・発展することはありません。中小企業だからこそ、経営者が高いビジョンを示し、従業員にそれを伝え、一緒になって目標達成に邁進できるはずです。

3.「戦略」のある会社とない会社の違い

 単に数値目標だけを設定しあとは社員任せではいけません。長期的なビジョンとともにそれに向けての「戦略」が必要です。

 目標があっても「戦略」がなければ、方向性が全く示されていないのと同じで、社員は目先の自分の仕事にしか目が行かず周りのことを考えません。それでは社員はそれぞれ自分のことばかりに集中しそれぞれがバラバラの方向を向いているのと同じです。ベクトルを一つにすることができず力が分散してしまっているのです。

 目標があって、それへのプロセスが「戦略」として明確に示されていれば、社員はその戦略に基づいて自ら考え動くことができます。また、方向性が示されているので、社員は情報を交換したり、成功・失敗体験を共有したりして、ベクトルを一つの方向に合わせようとします。

 戦略のある会社とない会社で、どちらが目標を達成しやすく、生産性が高い組織かは言うまでもありません。

4.重要な「実行力」

 中小企業に足りないものに「実行力」があります。

 中小企業の経営者の多くはワンマンで、端から見れば「実行力」があるように見えます。しかし、社長だけが忙しく動き回っていても、結局は空回りしていることが多いのです。社長だけが動き回っても社員は「笛吹けど踊らず」になっています。

 それは、社長と社員の間に溝があるからです。いつも言うように経営は人と人との関係、信頼関係で成り立ちます。得てしてワンマン社長の場合、高圧的になり、社員との間に溝ができるのです。大企業と異なり社長と社員の垣根が低いはずの中小企業で大きな溝が出来ているようでは中小企業の良さが活かされません。垣根を取っ払い溝を埋めて、社長と社員が一致団結して目標に向かって進めていくことが重要です。そのために社長自らが率先して範を示し行動することです。それが実行力です。多くの中小企業経営者は、間違ったところで行動し、本来率先して行動しなければいけないところでは口先だけになっているように思います。

 この記事では、「戦略を学ぶ経営者は多いが、『戦略を理解する』ところで終わっていて、実行に移せていない」と言っていますが、大多数の中小企業経営者は「戦略すら学んでいない」のではないかと思います。

5.なぜ「戦略」が業績につながらないのか

 この記事では、戦略のうち70%はどの企業にも共通し、自社の状況に応じて選択し実行すべきものが20~30%、自社の独自戦略は10%未満だと言っています。この通りだと思います(自社の独自戦略はほとんどなく、もっと少ない思いますが)。

 この記事では、最後に【中小企業に必要な戦略メニュー15】が示されています。

 (1)顧客戦略

   【戦略1】顧客情報管理・活用の仕組み

   【戦略2】顧客育成の仕組みづくり

 (2)営業戦略

   【戦略3】営業プロセスの標準化

   【戦略4】営業ツールの整備

   【戦略5】販促・プロモーションの推進

 (3)人財戦略

   【戦略6】人事評価制度の導入・運用

   【戦略7】要員計画にもとづいた戦略的採用

   【戦略8】幹部・リーダーの計画的育成

 (4)組織戦略

   【戦略9】会議・コミュニケーションルールの整備

   【戦略10】マニュアル・手順書の整備

 (5)IT戦略

   【戦略11】ホームページ・SNSの活用

   【戦略12】社内システムの整備

 (6)商品戦略

   【戦略13】商品企画・開発プロイジェクト

   【戦略14】商品ランク分類

   【戦略15】生産計画と実行

 このうち、【戦略1】~【戦略9】【戦略11】がどの企業にも必要な必須の戦略であり、【戦略10】【戦略12】~【戦略15】が自社の状況によって選択・実行すべきものです。ここで重要なのは、戦略を実行していくこと、戦略のPDCAを回し、計画的に推進していくことです。