中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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失敗と向き合う

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で121人、25県で新規感染者ゼロとなっています。依然低い水準にとどまっていますが、オミクロン株の状況によっては今後どのようになるかは分かりません。一昨日には全世界でオミクロン株が確認されたのが13の国と地域であったのが今朝の段階で28の国と地域に広がっています。また日本国内では2例目のオミクロン株の感染者が判明しました。いずれも海外からの入国者ですが、同じ飛行機に乗り合わせた者は濃厚接触者とされているものの隔離されておらず、すでの市中感染していてもおかしくありません。日本政府は、更に水際対策を強化し、航空会社に日本に到着する国際線の新規予約を停止するように要請しました。オミクロン株の流入を押さえ込むためには妥当な判断だと思います。

さて、今日は、日経トレンドの「アレクサ成功の陰に幻のスマホあり? 失敗から成功企業が学ぶこと」という記事を取り上げます。

今はVUCAと呼ばれる先行きが見通せず何が正解か分からない時代です。このような不確実な時代には試行錯誤を繰り返しながら成功にたどり着くしかありません。今こそエジソンの「私は失敗したことはない。ただ1万通りの上手くいかない方法を見つけただけだ」「決して失望などしない。どんな失敗も新たな第一歩となるからだ」という言葉が活かされる時代になっています。

この記事は「世界『失敗』製品図鑑」を上梓した荒木博行氏に話を聞いてまとめたものです。この本は、グーグル、フェイスブック(現メタ)、ソニー、豊田などのグローバル企業の「失敗」事例を分析した本で、こうした失敗を学びに変えて共有しようという意図で書かれています。

1.失敗から学べる教訓がある

 この本(記事)で紹介されている失敗事例にアマゾンが手がけたスマホ(ファイアフォン)が挙げられています。このスマホは、カメラで撮影した商品や、音声認識された音楽や映像を特定し、ウェブページに飛んで瞬時に購入できる機能が備えられていました。アマゾンの「世界をすべてのショールーム化する」という野望が詰まった製品でした。ところが、アマゾンが思うほどの反応はなく、発売1年あまりで製造中止に追い込まれました。ユーザーがスマホに期待していたのは電池の持ち時間や通信量の改善であって、買い物が多少便利になったからと言ってそこまで魅力的に映らなかったのです。要はユーザーのニーズとアマゾンのビジョンとの間にずれがあったということです。

 アマゾンは自社が描く輝かしいビジョンにばかり目が行ってユーザーの視点が欠落しユーザーのニーズを把握できていなかったのです。

 しかし、アマゾンは、この失敗経験を見事に活かし、AIアシスタント「アレクサ」を搭載した「アマゾンエコー」を発表し、大成功に導いています。

 「他社の失敗事例だから」とか「大企業の失敗事例だから」といって他の企業や中小企業にとって役に立たないものではありません。企業において失敗はつきものですし、規模は違えど同じような失敗を繰り返しています。こうした「失敗」事例から、我々の日々の生活や企業活動に活かせる教訓や知恵が見いだせるはずです。

2.5球投げて1球だけ成功する

 失敗学の権威でもある畑村洋太郎東京大学名誉教授によれば、失敗とは「人間が関わって行う一つの行為が、はじめに定めた目標を達成できないこと」です。つまり、「従前の予想通りには行かず、想定外の結果に終わる」ことです。  

 先ほどの書きましたが、今はVUCAの時代で、外部環境は全く予測できません。それを前提として事業を展開しなければならないわけですから、一つに絞って資源を投入するのはあまりにもリスクが高すぎます。色々な領域にアンテナを張って万が一の場合に備えておかなければなりません。

 この記事では「事業の持ち玉は5つぐらいあった方がいい。5球投げて1球ぐらいが当たる、そんな世界に我々は生きている」と言っています。

 5球投げて1球だけが成功するというのは、残りの4球は失敗です。これを認めることが重要です。エジソンは1万通りの失敗(上手くいかない方法)をしています。4つの失敗などエジソンからみればたいしたことではありません。

 この不確実な時代では、失敗は我々と隣り合わせにあります。失敗と共に生きる覚悟が必要ですし、失敗を恐れる必要もありません。

 以前「アダプト思考」で書きましたが、「失敗を恐れず、失敗したらそれを認める勇気を持ち、失敗を学びに変えていく、このプロセスの繰り返しが、発展・成長のカギとなる」のです。

3.失敗と向き合う

 事業を永続させるためには、失敗とどう向き合うかが大切になってきます。

これは生易しいものではありません。「失敗はしてはいけない」「失敗は表に出すものではない」といった風潮が未だに多くの企業や社会に見られます。そうなると失敗は良くないことで隠そうとするようになります。これでは、失敗と向き合うことも出来ませんし、失敗から学ぶことも出来ず、ひいては成長も発展も望めません。

 それではなぜ「失敗は恥ずべきもの」という風潮が生まれるのでしょうか?

 この問いについて、この記事では、「失敗をどの時間軸で捉えるかが関係している」と言います。失敗した時点で捉えれば、それは失敗かも知れませんが、時間軸を延ばした途端成功の一部になることもあるのです。その失敗を糧として、次の製品や事業の成功に繋がっているのならば、それは失敗ではなく成功の一部、成功の芽となっているのです。失敗も長期の時間軸でみると、成功の一つの経験や過程になるということです。

 しかし、往々にしてビジネスの世界では、短期的な結果を求める傾向にあります。四半期ごとの業績を問われたり、1ヶ月ごとでKPI(重要業績評価指標)が達成できているかチェックされたりしています。これを達成しようとすれば「失敗しないように」というプレッシャーが組織全体にかかります。

 確かに短期的な結果達成も重要ですが、長期的な視点とのバランスです。

 「稲盛経営と永守経営」で書きましたが、永守重信氏も経営における数字を重視しますが、単に細かな数字を積み上げることは無駄であるとし、長期的な目標と短期的な堅実な成果を重要視します。

 また稲盛氏は、「失敗しないために漠然と無意注意ではなく、目的を持って意識や神経を集中させる有意注意」と言います。

 失敗したことを気にしてその場にとどまっている限り前には進めません。だから早く忘れて次の挑戦へと踏み出さなければなりません。挑戦し続ければ、前の失敗が活かされます。無意注意ではなく「これを目指してやっていこう」と目的を持って意識や神経を集中させる有意注意で望めるようになるのです。

 失敗にとらわれていてはいけません。少し客観的にみてみることです。重要なのは俯瞰することです。特に経営者は、常に長期的視点で事業を俯瞰し、失敗した際にどう総括するかという視点を持つ必要があります。大きな失敗だったとしても「当時は苦しかったけれど、それが現在にこういう風に繋がっている」と振り返ることが出来ればいいのです。

この記事では「過去は変えられないと言いますけれど、実はその失敗をどう解釈し、どのようなストーリーを語るかで過去は変えられるんです」と言っています。