休日の本棚 一勝九敗
おはようございます。
昨日の新規感染者は全国で9万8370人で、金曜としては過去最多となっています。地域によっては高止まりしたり減少に転じているところもありますが、未だ未だ予断を許さない状況です。昨日の死者は150人で、累計2万人が新型コロナで亡くなっています。特にオミクロン株の感染拡大で急激に増えています。オミクロン株は重症化リスクが低く、風邪やインフルと同じなどと侮ることはできません。
さて、今日は、柳井正著「一勝九敗」(新潮文庫)を紹介します。柳井氏は、言わずと知れたファーストリテイリング(ユニクロ)の会長兼CEOです。
この本は、ユニクロ創業から世界的な大企業になるまでの成功物語(自伝)で、内容的には面白いと思うのですが、一昔前の話なので現実味が湧かず刺激は少ないかもしれません。しかも内容的にもごく当たり前のことを当たり前に行なっているだけの話ですが、成功というのはそういうものです。当たり前のことを当たり前に愚直に行なっていく先に成功があるのです。この本にはそうした「経営者としての姿勢」が示されています。
1.目標設定
昨日も「GRIT やり抜く力」で書きましたが、長期目標を掲げ、それに向かって真面目に情熱を燃やしながら続けていくのです。
柳井氏は、「毎年30店舗ずつ出店し3年後には100店舗を超え、株式公開する」という目標を定め(長期目標とは言えませんが。スモールステップです)、社名を変え、ビジネスモデルを作り替え、自分で人を雇って、会社を成長させていきます。柳井氏の眼には、グローバル企業としてのユニクロの姿(長期的目標)が見えていたのでしょう。目標を定めて、計画に落とし込み、人を巻き込んで実践するということが経営には極めて重要ですが、人は飽きやすいもので、情熱を燃やし続けていくことは困難です。そのために必要なのが、昨日も書きましたが、長期的な目標であるとともに、長期的目標にたどり着くまでの間の細分化された短期目標(スモールステップ)です。
まずは小さいことからコツコツと一つずつ積み上げていく、そしてそれを習慣化していくことです。
長期目標を設定して、それを細分化して進めていけば、課題や問題点が見えてきます。それを軌道修正させながら目標に向かうのです。
2.現場主義
経営において重要なのは現場を知ることです。現場主義、顧客第一主義といいながら社長室から一歩も出ないような経営者がいます。現場を知らずして経営はできません。至極当たり前のことですが、この当たり前のことができない・やらない経営者は多いのです。柳井氏は、店舗を見て回ります。店舗に足を運ぶ経営者は柳井氏だけではありません。カレーハウスCOCO壱番屋の創業者宗次徳二氏も、不意打ちで一店舗でも多く店舗を回りスタッフの働きぶりを見て自分の目で改善点を見いだし、フィードバックするということを繰り返しています。
その宗次氏も「目標を掲げたからには必達しないといけない。必達しようと思ったら社員に頑張ってもらわないといけない。けれども、経営者自身が誰よりも頑張るんだ、と。その背中を見て社員の2割か3割の人たちが本気になってついてきてくれる。あとの人は給料分だけ仕事をしてくれればいい」と言っています。
デスクに向かっていてもアイデアは生まれません。現場を見てお客様を見てはじめてアイデアは生まれてきます。①どのようなお客様が買うのか、どのようなお客様が買わないのか ②商品を手に取ったお客様はどのような表情をしているのか ③なぜ迷っているのか、など「お客様と商品の現場での接点」や「お客様と店員の接点」を見ることで、顧客のニーズや問題点・課題が見えてきます。
この本でも昨日の「GRIT やり抜く力」と同じですが、物事を始めるときには常にゴールをイメージしておくことの大切さが語られています。仮説でもいいので、物事のゴール(最終形)をイメージして、物事を進めていく中で問題や課題が出てくれば、それに合わせて仮説を修正していけばいいのです。
3.一勝九敗
この本のタイトルは「一勝九敗」となっていますが、柳井氏も失敗することの方が多かったといいます。しかし、その失敗が成長への種となったのです。
以前にも紹介しましたが、エジソンは次のように言っています。
- 人生に失敗した人のの多くは、諦めたときに自分がどれほど成功に近づいていたか気づかなかった人たちだ。
- 私は失敗したことがない。ただ、1万通りの、上手くいかない方法を見つけただけだ。
- 私は決して失望などしない。どんな失敗も、新たな一歩となるからだ。
- 失敗したわけではない。それを誤りだと言ってはいけない。勉強したのだと言いたまえ。
エジソンは1万回以上の失敗をしています。一勝九敗、打率1割ならまだ御の字です。これまでも何度か書いていますが、人は失敗してそこから学んで成長するものです。重要なのは、「九敗してもいい」ということではなく「どんなになっても、ボロボロになっても、一勝を目指して死ぬ気になって頑張る、情熱を燃やし続ける」ことではないでしょうか。
4.23条の経営理念
この本の巻末に、ファーストリテイリングの「23条の経営理念」が載っています。至極真っ当で当たり前のことが書かれていますが、最初にも書きましたが、優れた経営者というのは当たり前のことを愚直に実践しているのです。奇抜なアイデアを生み出していてもその根底にはしっかりとした基本的な当たり前のことの実践が行われているのです。経営というのは当たり前のことの積み重ねです。参考にしてください。
第1条 顧客の要望に応え、顧客を創造する経営
第2条 良いアイデアを実行し、世の中を動かし、社会を変革し社会に貢献する経営
第3条 いかなる起業の傘の中にも入らない自主独立の経営
第4条 現実を直視し、時代に適応し、自ら能動的に変化する経営
第5条 社員ひとりひとりが自活し、自生し、柔軟な組織の中で個人ひとりひとりの尊
重とチームワークを最重視する経営
第6条 世界中の才能を活用し、自社独自のIDを確立し、若者支持NO.1の商品、業態を
開発する、真に国際化できる経営
第7条 唯一、顧客との直接接点が商品と売り場であることを徹底認識した、商品、売
り場中心の経営
第8条 全社最適、全社員一致協力、全部門連動態勢の経営
第9条 スピード、やる気、革新、実行力の経営
第10条 公明正大、信賞必罰、完全実力主義の経営
第11条 管理能力の質的アップをし、無駄を徹底排除し、採算を常に考えた、高効率、
高配分の経営
第12条 成功、失敗の情報を具体的に徹底分析し、記憶し、次の実行の参考にする経営
第13条 積極的にチャレンジし、困難を競争を回避しない経営
第14条 プロ意識に徹して、実績で勝負して勝つ経営
第15条 一貫性のある長期ビジョンを全員で共有し、正しいこと、小さいこと、基本を
確実に行い、正しい方向で忍耐強く最後まで努力する経営
第16条 商品そのものよりも企業姿勢を買ってもらう、感受性の鋭い、物事を表面より
も本質を追求する経営
第17条 いつもプラス発想し、先行投資し、未来に希望を持ち、活性化する経営
第18条 明確な目標、目的、コンセプトを全社、チーム、個人が持つ経営
第19条 自社の事業、自分の仕事について最高レベルの倫理を要求する経営
第20条 自分が自分に対して最大の批判者となり、自分の行動と姿勢を改革する自己革
新力のある経営
第21条 人種、国籍、年齢、男女等あらゆる差別をなくす経営
第22条 相乗効果のある新規事業を開発し、その分野でNO.1になる経営
第23条 仕事をするために組織があり、ン顧客の要望に応えるために社員、取引先があ
ることを徹底認識した壁のないプロジェクト主義の経営