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休日の本棚 トヨタ式「人を動かす人」になれる6つのすごい!仕事術

おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で26万1029人で過去最多を更新し、15道県で過去最多となっています。中には帰省先や旅行先で感染し、お盆明けからの仕事に支障をきたしている人もいます。お盆休みが終わったばかりで、今後ますます感染者が増えていくと思われます。こうした状況の中、東京都の小池知事は、9月1日からいわゆる都民割を再開すると発表しました。感染防止よりも経済を回すことに重点を置く考えのようですが、特定の事業・業界だけを支援することは公平に反します。コロナ禍で痛手を受けているのは飲食・観光だけではありません。杜撰なバラマキ政策で、不正受給も横行しています。一方、行動制限が課され苦行を強いられた国民は一人当たりわずか10万円を受給しただけです。「国民の、国民による、国民のための政治」という民主主義の根本が忘れられています。特定の業界と癒着し、その業界の利権を図る政治が横行していますが、統一教会自民党との関係もこうした構図の中にあるように思います。

さて、今日は、桑原晃弥著「トヨタ式『人を動かす人』になれる6つのすごい!仕事術」(笠倉出版社)を紹介します。著者の桑原氏は、多くのトヨタマンを取材し、トヨタ式の仕事術について多くの著書を出版しています。

欧州連合が2035年までに「ハイブリッド車を含むCO₂を排出する内燃機関車(エンジン車)の販売を禁止する」という提案をし、日本の自動車産業にも大きな影響を与えています。この危機に直面しているのは、業界トップとうたわれるトヨタ自動車も例外ではありません。

この本では、長年のトヨタの歴史を紐解いていくことで、トヨタが業界トップとうたわれる理由が垣間見えてきます。

1.安泰なんてものはない

 先日も、「企業が安泰ムードになれば警戒すべし」という永守重信氏の言葉を紹介しましたが、業界トップを走る企業であっても安泰というものはありません。むしろ業界トップだからこそ、それを追いかける他の企業の脅威におびえ、ひたすら走り続けなければならないのです。

 トヨタも例外ではありません。「トヨタは安泰」「向かうところ敵なし」ということはないのです。自動車業界は大変革期に入りました。テスラが先鞭をつけた電気自動車が急加速し、ハイブリッドカープリウス」によって環境の時代を先取りしたトヨタでさえ、今後はフルラインアップで販売する車の半数以上を電気自動車にするという決断を行っています。

 トヨタの特徴の1つは、「危機を迎え撃つ」ということです。危機が訪れてから慌てふためくのではなく、やがて来る危機を先取りし、危機をチャンスに変えていこうという考え方です。創業者の豊田喜一郎氏は「100年に一度の危機を乗り越えるために備えよ」と訴えていましたが、8代目の現社長豊田章男氏は、今起きようとしている100年に1度の危機を乗り切ろうと舵を取っています。

 豊田章男氏は「失敗を恐れず何度でも挑戦し、バットを振ろう」「三振はいいが、見逃しはダメ。空振りは思い切って」と挑戦する姿勢を前面に打ち出しています。

 これまでの先人やカリスマ経営者を引用し、失敗の大切さについては書いてきました。失敗してもいいので思い切ってチャレンジするところに、道は開けます。失敗を学びに変えることで成長へと導かれます。多くの人や企業が失敗を恐れて思い切ったチャレンジをしようとしていません。バットは振らなければ当たらないのです。

2.100年に一度の大変革期でも大切にしているのは「大義」と「何のため」

 ここ数年、電動化や自動運転が急速に進んでいます。しかし、「なぜ自動運転なのか」という理由や考えが、グーグルなどのIT企業とトヨタでは大きく違います。

 グーグルやテスラが、自動運転になれば、「運転手が運転中に他のことができるようになり便利である」と考えているのに対し、トヨタやスバルなどの日本の企業は「交通事故死傷者ゼロの社会を目指す」と考えています。さらに、日本企業は身体的なハンディキャップがある人や公共交通機関のない移動弱者に安全な移動手段を提供する」ということも理由としています。

 従って、海外メーカーが目指すゴールは「完全自動運転の実現」なのに対し、トヨタやスバルはあくまでも「安全な移動手段を提供する」ということにつきます。

 自動運転の実用化には多額のコストがかかり、いつ収益化できるかは未知数です。その意味ですべての自動車メーカーにとって苦しい選択となりますが、だからこそその実現には「大儀」が必要不可欠です。

 車には事故はつきものですが、トヨタが追い求めるのは「交通事故ゼロ」であり、「人に優しく人に優しい移動手段」なのです。

 「何をするか」よりも「何のためにするか」なのです。トヨタカイゼンは有名ですが、重要なのは、「何のために改善するのか」という視点です。

 さらに重要なのが「お客様のため」という視点です。「常にお客様を意識しながら、お客様のためにものを作り、お客様のために日々改善する」というのが、トヨタ式のものづくりです。

 さらに、トヨタは、自社のことだけでなく、業界全体のことを考えています。自分たちのやっている仕事は会社だけでなく、社会にとって大きなインパクトをもって感じられているとき、人は心の底からやる気を刺激されます。人を動かすのは強い使命感やロマンであり「世のため、人のため」が多くの人の心を動かすのです。

3.変わることを恐れない

 今は、何が正解かわからず混迷の時代です。過去の栄光に鎮座し、過去に固執していたのでは成長も進歩もありません。衰退への道を進むのみです。何も変えずに安穏としていることができるような生易しい時代ではないのです。何も変えないということが一番悪いのです。「変わること」「変えること」が大切です。

 トヨタでは「企業は何も変えなければ3年でつぶれる」と言われています。企業には栄枯盛衰があります。企業の寿命について30年説がありますが、なにも変革できない企業は30年で衰退しています。トヨタが目指すのは未来永劫繁栄し続ける企業です。

 変わることを恐れない精神は、社員全員にもいきわたっています。

 事業には「計画」は欠かせません。計画があるからこそ、人はその計画や目標を達成しようと努力し、達成できた時の喜びや達成感が大きくなります。しかし、計画と現実との間にずれやギャップが生まれることがあります。そうしたときに、「一度決めたことだから」と、計画通りに推し進めると、さらにずれやギャップが大きくなり取り返しのつかない事態に立ってしまいます。

 そこで、トヨタでは、変わり続けることの大切さを「君子豹変す」という故事を使って現場に言い続けています。立案したときは素晴らしい計画であっても、状況が変わればそれに合わせて変えていくのです。リーダーに必要なのは「計画通り」に物事を進めることではなく、「結果を出す」ことなのです。

脱炭素、コロナ感染拡大、世界的な半導体不足、ウクライナ有事などトヨタだけでなく多くの産業や企業が危機に立たされています。しかし、トヨタにはその危機を乗り越えていく体制が既に作られているのです。

トヨタは大企業であり資金も潤沢にあり、中小企業とは違います。失敗してもチャレンジし続けることは可能です。資金が乏しい中小企業では失敗は許されないのかもしれません。しかし、失敗を恐れて何もしなければ三振するだけです。バットを振れば当たるかもしれません。企業はkじゃ割らなければつぶれるだけです。これは大企業も中小企業も変わりありません。変わるためには思い切ってチャレンジすることです。ここで大切なのは、「何のために」「お客様のため」という視点です。

先日も「顧客視点は経営の原理原則」と書きましたが、「顧客第一主義」の基本の立ち返り、常に「何をすればいいのか」「どうすれば顧客ニーズに応えることができるか」を考えて、商品やサービスに活かすことができれば、コロナ禍や危機的状況を乗り越えて、混迷の時代に勝ち続けることができると思います。