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人の心をつかむ力

おはようございます。

実力以上の結果を出し、人より抜きんでた存在になるには、努力と能力だけでは不十分で、周囲の人の認識を味方にして、誰から見ても魅力的な人間になることが大切です。
ハーバード・ビジネススクールのローラ・ファン教授は、無理に周囲に合わせてもデメリットが大きく、『人の心をつかむ力』の重要性を指摘しています。
1.周囲に合わせても長い目で見るとマイナスになる
 他人の思い込みやレッテルは誰にでもつきまといます。長い目でみれば、いくらうまくいっているふりをしても、それは一時的な気休めにしかならず、長続きしません。自己不信に陥り、不安ばかり感じていれば、もやもやしたその気持ちをいつまでも引きずることになります。
 固定観念に合わせるしかないという恐怖心は極めて強く、いくら「エリート集団」の一員になろうと努力したところで、正当な評価を得られないのではないかと不安になり、一層自己不信に陥るだけなのです。
 職場におけるマイノリティは、自分を隠しマジョリティに合わせマジョリティのふりをします。そうすることで一時的には波風を立てずに済みますが、長い目で見ればマイナスの影響を及ぼすのです。
 組織も同じです。例えば多様性についてもそうです。多様性を高めるために外国人や女性を採用したとしても、そもそも何のために多様性を高める必要があるのでしょうか。このことを考えることなく、世の中が「多様性、多様性」と言うからとりあえず横並びで外国人や女性を採用したというのでは、何の変化も起こりません。日本人の中年男性だけで阿吽の呼吸で行っていた仕事を、日本語が理解できない外国人に説明するのは大変ですし、多くのコミュニケーションミスが起こり、かえって生産性が低下するという恐れもはらんでいます。盲目的に社会全体の流れだからといって目的も明確にせずに多様性を高めても意味がないのです。
2.自分以外のふりをすると起こること
 自分以外のふりをするということは誰しもあることです。本来の自分を隠して、より自分を強く見せるために違うタイプの人間を演じるのです。しかし、それは上手くいくことはありません。ファン教授は、「男性らしく、いかにも男性らしいと自分が思う行動をとると、十中八九、反感を買った」と言っています。やけに攻撃的な女だと思われて、結局は何の成果もあげられなかったのです。
 「仕事には人脈作りや実力者とのコネづくりが欠かせない」と言われることがあります。中にはコツコツと人脈づくりやコネづくりにいそしんでいる人もいます。こうした人を真似てコーヒーを飲みに誘ったり食事に誘っても、表面的に付き合いしかできないのが真実です。相手の懐に飛び込んで、自分をさらけ出さなければ、相手は本当に心を開いてくれませんし、表面的なアドバイスしかもらえません。
3.ありのままでいることの価値
 他人が望む人物像を勝手に想像して、それに自分を合わせることなどできません。そもそも、どうすればいいのか分かりませんし、相手が望んでいることもわかりません。相手にしても、自分が何を望んでいるのかわっていないのです。
 考えるだけ無駄なのです。ありのままの自分を見せればいいだけです。ありのままの自分を見せるチャンスはいくらでもあります。その時にはチャンスをつかみ胸を張ってありのままの自分をさらけ出せばいいのです。
 ファン教授は「自分が望む方向へと他人を誘導するのは、何も骨が折れる作業ではないし、つらいものでもない。無理をしてまでしなければならないことでもない。ちょっとしたきっかけでそうなることもあるし、少し世界を広げる努力をすれば自然とついてくることもある」と言っています。
 あくまでも無理をせず、自然体で臨めばいいということです。
 人生においてもビジネスにおいても生きづらい世の中です。部下や上司のコミュニケーションだけでなく、同僚や友人とのコミュニケーションも難しくなっています。
 インターネットやSNSで見ず知らずの人と知り合う機会が増え、「緩いつながり」が蜘蛛の糸のように繋がっています。またコロナ禍で、対面でのコミュニケーションの機会が減り、コミュ力が低下しています。
 会社、家族・地域のようにべったりとした関係ではなく、まるで「蜘蛛の巣」のように細くても、複数のネットワークに繋がっておくことで、「おひとり様」でも上手く生きていくことができます。これが社会学でいう「弱い紐帯」です。
 スタンフォード大学のマーク・グラノベター教授(社会学)は、「家族や友人、同じ職場の仲間のような『強いネットワーク』より、ちょっとした知り合いなどの『弱いネットワーク』が価値ある情報伝達には重要である」と言っています。知覚のお店の常連や近所の人などとの何気ない会話や声かけ、趣味を通じた緩い人間関係、そいうした「弱いつながり」の中でも、自分の存在を認めてくれたり、手を差し伸べてくれたりする人がいてくれるだけで「幸福感」はぐんと上がります。
 確かに、こうした「緩いつながり」「弱い紐帯」は重要ですが、弱い紐帯だけでは人は生きていくことはできません。強いつながりがあってその上に弱い紐帯を広げていくことが大切です。
 雑談は「蜘蛛の糸」で、上手に張り巡らせれば、人生が安定し、安心感をもたらしてくれます。「雑談力」「コミュ力」は才能ではなくスキルです。磨けば磨くほど上達します。
 以前も書きましたが、知らない人に声を掛けてもいいのです。道を歩いていて庭の綺麗な花を見て「綺麗ですね」と声を掛ける。褒められた人は嬉しくなって次の会話が始まります。会社の部下への声かけの方が見ず知らずの人への声かけよりは簡単です。すれ違ったときに声を掛ければいいだけです。WEB会議や1on1のと気にちょっと雑談で聞いてみればいいのです。以前にも書きましたが、「雑談力は質問力」です。
 雑談を難しく考える必要はありません。相手の情報を引き出せばいいだけです。相手が興味や関心を持っていることを聞き出せれば、相手は自然と喋ってくれます。それを掘り下げていけばいいだけです。「何を話そうか」ではなく「何を聞き出そうか」です。
 雑談において重要なことは、質問する⇒聞く⇒質問する⇒聞く⇒時々自分の話をする、です。