職務満足理論
おはようございます。
流行の経営理論を聞きかじって実践しても必ずしも組織がよくなるわけではありません。
それでは経営理論は役に立たないかというとそうではありません。どのような理論も、それを使う側の力量や使い方によって生きることも死ぬこともあります。経済理論が役に立たない机上の理論だと言うのは間違いです。
どんな企業でも目指すことができ、かつやればほぼ必ず成果が読める職務満足理論は存在します。そして、その職務満足理論として、ハーズバーグの動機付け要因とハックマン&オールダムの職務充実のための5つの職務次元が挙げることができます。ハーズバーグの動機付け要因については以前書いていますので、今日は、ハックマン&オールダムの職務充実のための5つの職務次元について書きます。
職務充実のための5つの職務次元は、「効果的で、その気になればどんな職場でも実施可能な優れものの理論」と紹介されます。
ハックマン&オールダムは、仕事への内的動機付けが高まる要素を「職務設計の中核5次元」として説明しています。
第1の次元=スキルの多様性・・・必要とされる能力や技能が多様であればあるほど自分の仕事は有意義で価値があり重要だと感じる
第2の次元=タスクアイデンティティ・・・単なる大きな仕事の一部なのか、一貫して関わることのできる一定のまとまりのある仕事なのか、自分の仕事としてまとまりのある自覚を持てる仕事の方がアイデンティティが高まる
第3の次元=仕事の有意義性・・・仕事の意味が自覚され、自分の仕事は価値があり重要だと感じるほど、内的動機付けは高まる
第4の次元=自律性・・・自由裁量の範囲が大きければ大きいほど、自分の仕事の結果に責任を感じ、それが内的動機付けになる
第5の次元=フィードバック・・・自分の仕事の成果を確かめることができるかどうか。言われたことをこなすだけなのか、上司や同僚を通じて自分の仕事がうまくいっているかどうかを知ることができるかで、モチベーションは大きく変わる
簡単に言えば、⑴何か新しい技能が身につく ⑵一人で完結できる ⑶自分の仕事に意味がある ⑷自分で決められる ⑸褒められ、アドバイスがもらえるという5つが重要だということです。
仕事を振る側も、この5つについて工夫をすると部下の動機づけにつなげることができます。
Ⅰ:スキルの多様性・・・職務を振り分ける際に、その人の持つ技能に加えて何か新しい技能が加わる仕事を設計する
Ⅱ:タスクアイデンティティ・・・最初から終わりまでという全体性を持つ仕事を振り分ける、それが無理なら、割り振った仕事が全体の中でどのような位置づけにあるかを説明し理解してもらう
Ⅲ:仕事の有意義性・・・割り当てた仕事が社会に対して、会社に対して、さらに当人の現在と未来にとってどのような意味があるかを考え意味を見出させる
Ⅳ:自律性・・・自分で判断して意思決定できる自由裁量の範囲を広げるようにする
Ⅴ:フィードバック・・・よかったことでも悪かったことでもコメントし合う
これらの5つの次元は、どんな仕事、どんな職場においても、簡単に実行できることです。この5つのポイントの中で、フィードバックが最も重要だと思います。
私は、以前から「認めて、任せて、褒める」が重要だと書いていますので、フィードバックとともに自律性も重要です。
リード・ハスチングス&エリン・メイヤー著「ノー・ルールズ」(日本経済新聞出版)という本が出版されています。この本は、ネットフィリックス社のフィードバックポリシーが紹介されています。
ネットフリックスの「脱ルール」カルチャーとしては、
・ルールが必要になる人材は雇わない
・社員の意思決定を尊重する
・不要な社内規定を全部捨てよ
・承認プロセスは全廃していい
・引き留めたくない社員は辞めさせる
・社員の休暇日数は指定しない
・上司を喜ばせようとするな
・とことん率直に意見を言い合う
などがあります。
ネットフリックスのAを頭文字にした4つのフィードバックポリシーを紹介します。
➀Aim to assist(フィードバックする場合は相手のためになることを)
②Actionable(フィードバックは相手が行動できることを)
③Appreciate(フィードバックを受けた人は感謝すること)
④Accept or discard(受け入れるか、受け入れないかは相手に委ねる)
「すべてのフィードバックをよく聞き、考慮して感謝する。しかしすべてに従う必要はなく、それらをどう判断するかは聞き手が判断する」ということです。
流行の理論を持ってきて抽象的な議論に時間を費やすよりは、やれば必ず成果が上がる『ハックマンとオールダムの5次元』を職務設計の際に用いれば、格段に効果が上がるはずです。
流行の理論が全く意味がない・役立たないとは思いませんが、成果が上がると思われる「ハックマンとオールダムの5次元」を用い、特にフィードバックを効果的に利用することは、生産性向上や部下の成長に役立つものと思います。