中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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休日の本棚 福の神

f:id:business-doctor-28:20200530082536j:plainおはようございます。

昨日の新規感染者は東京都22人、神奈川県10人、北九州市(福岡)26人、全国76人と増加傾向にあります。東京は、先週は1ケタ台で推移していましたが、今週に入って2ケタ台に戻り、4日連続で前日を上回っています。感染再拡大の兆候が表れた際に都が独自に出す警戒宣言「東京アラート」の目安を越えましたが、小池知事は「東京アラート」を発動せず、6月1日にはステップ1からステップ2に休業要請を緩和する意向です。東京では歌舞伎町のホスト・ホステスの感染者が増え、感染者が若年層に広がっています。また成田空港でも10人の感染者が見つかったようで、今後人の移動が活発化すると第2波が急速に襲ってきます。感染防止と経済のバランスを考えると、ステップ2に移行させるのもやむを得ないとは思いますが、第2波の感染拡大を引き起こさないためにも一人ひとりが緊張感を持って行動しなければなりません。

さて、今日は喜多川泰著「『福』に憑かれた男」(総合法令出版)を紹介します。この本は、副題として「人生を豊かに変える3つの習慣」とあります。帯には、「逆境を乗り越え、仕事の意味を見つめ直すことのできる感動の物語」「人生に行き詰ったときに何度でも読み返してほしい本です」と書かれています。

これは「福の神」による一つの物語です。

主人公松尾秀三は、サラリーマンを辞め亡父が経営していた長船堂書店を引き継いで3年が経っています。どうやって自分の代で大きくするかを考えては目を生き生きと輝かせたのも遠い昔のこと、今では客足が減り売り上げが減る一方、更に近くに大型書店がオープンする。それでも秀三には研修中の「福の神」が憑いていた。大型書店オープンも「福の神」が与えた試練です。「福の神」は、秀三に幸せになってほしいと望張り切っています。自分が憑きながら上手くいかない秀三を見て焦りを感じています。

「福の神」にもできることとできないことがあります。「福の神」にできないことは、人に直接話しかけたり、姿を見せたりすることと、物やお金を運んでくることです。「福の神」にできることは、その人を幸せにする学びを与える人を連れてくること、すなわち「素敵な出会い」の提供です。

ある日、店の前を「福の神」の先輩福の神が憑いた着いた老人が通りかかります。「福の神」はその老人を店内に引き入れます。老人は本を手にとって、秀三に「読んだことはあるか、お勧めできる内容か」と尋ねます。秀三が「僕は面白いと思いました」と返答すると、老人はその本を買って出ていきました。

其れから半年後、再びその老人が現れます。老人は「お礼を言いに来た。お前さんのお陰で私の人生は今まで以上に磨かれた。あの日この店で偶然お前さんに会って素晴らしい本を紹介してもらった。あの本との出会いのお陰で今まで以上に世の中に貢献できるようになった。ツイてる本屋さんだ。きっと福の神がいる」と言います。秀三は「福の神なんていないんです。いるとしたら貧乏神です。来月でこの店を閉めることにしました」と言います。すると老人は「それは駄目だ。私はもうここでしか本は買わないと決めたんだ」と言うのです。そして秀三は、老人にこれまでのことを泣きながら話します。老人は、自分は「商売の神様」と言われている山本天晴と名乗り、「私の経験上、それだけ多くのことが一度にお前さんの人生に降りかかってくるというのは、またとないチャンスなんじゃよ」と言って「今回の試練の数々は『今のままでは駄目だ』『何かを変える勇気を持たなきゃすべて失うよ』というサインだと考えてみなさい。この経験がなければ手に入らない幸せを手にすることが出来る」とアドバイスします。秀三は「今の状況を変えるために僕は何をすればいいか教えてください」と尋ねます。老人は「あそこにいるお客さんに話しかけ、どんな本を探しに来たのか聞いてみなさい。そこからあの人の仕事、名前を伺い、お前さんが読んだ本の中からあの人にピッタリだと思える本を紹介してあげなさい」とアドバイスします。最初は押し売りは嫌だと拒否していた秀三も「自分が売りたいものを売るなら押し売り、その人が必要としている物を売るのは人助け」と言われ、言われたとおりに行動を起こします。そして、井出という青年(近所の美容院の経営者)に老人に紹介したのと同じ本を紹介します。井出が再び長船堂を訪れたのは翌週。「ありがとうございました」と強く握手され「紹介してくれた本、最高でした。うちのスタッフやお客さんに読んでもらいたいから」と言って10冊を注文します。こうした出来事をきっかけに、秀三の店には秀三が紹介した本を読んだ人が、同じ本をプレゼントしたいと言い、同時に別の本を紹介してくれを押しかけてくるようになりました。

店の売上にも変化が訪れ、売上が上昇してきました。一つの成功は別のアイデアを引き出します。一人のお客さんに本を紹介しているとき、別のお客さんは黙って見ているしかないのです。どうすれば多くの本を多くの人に紹介できるか、どうしたら、来た人が読みたくなるような本を紹介できるかを考えるようになりました。書籍のポップを手書きで書いたり、感想を言ってくれた人に言葉をそのまま書いてもらって本の横に置き、書いてくれた人やその人の店の紹介文なんかも載せました。その結果、秀三の店だけでなく井出の美容院も客が増えてきました。

こうして、店が繁盛するにつれ、秀三は何とも言えない気持ちになります。それは、不安です。秀三は山本老人にアドバイスを求めます。山本老人は「何かに対して手に入れば幸せだと思っている人は、実際にそれが人生に必要か否かを考えているのではなく、それを持っている人を持てうらやましいと思っているだけ。他人と比較して幸せを感じようとする人はいつまでたっても幸せに離れない。豊かさとは心の状態だ」といい「こうした心配や不安はお前さんが大切なことを決めていないから起こる。『お前さんはお前さんの人生を使って何をしようと思っているんだい?』」と質問します。そして続けます。「自らの生きる目的をしっかり持ったとき、手に入るものすべてはそれを実現するために必要な道具になる。その道具を手に入れたときに不安を感じることなどない。手に入ったことに感謝することは荒れ、不安に駆られることはない」。これに、秀三は「僕が考えなければならないのはどうやって成功するかではない。どうして成功しなければならないのかだ。仕事だって同じだ。どうやってお金を儲けるかではない。どうしてお金を儲けなければならないのかだ」と悟ります。「福の神」は「僕たち福の神がとり憑いた人を幸せにできるかどうかは、その人に使命感を持たせることが出来るかにかかっている」「人間が抱く夢には、達成すればするほど不安に駆られ苦しくなり押しつぶされそうになる夢と達成すればするほど幸せになる夢の二種類がある。夢に二種類あるということを学ぶことが出来る経験や出会いを用意するのが福の神の役割だ」と言います。

秀三は、山本老人の言葉を頭の中で繰り返しながら、自分の使命を考えます。そうしたある日、店に一人の客が来ます。それは、秀三が多くの人に勧めた本の著者瀧川です。滝川は、本の読者からの手紙で長船堂を知り訪ねてきたのです。秀三は「この店の常連は滝川さんの大ファンばかりです。滝川さんの生の声を聴かせてあげたい。講演をお願いできませんか」と頼みます。秀三には、自分の使命という者がはっきり見えたのです。「僕は本を売りたいのではない。僕が出会った人の人生を応援したいんだ!」

こうして秀三は、滝川の後援会の準備を始めます。日程を決め、場所として近所の公会堂を予約し、ポスターを作り・・・ところが、誰一人講演会に参加すると言ってくれない。平日なので、皆仕事や用があって参加できないと言う。結局は中止となってしまいます。

本来なら行われた講演日の当日、台風が襲ってきます。秀三が早めに店を閉めようとしていたとき、井出が現れます。続いて山本老人も現れます。その後も次々と秀三のことを心配して常連客が現れました。全員台風の影響で仕事を早めに切り上げたり用がなくなったりしたので、講演会を中止しなければならなくなった秀三を励ますために店に来てくれたのです。ここに奇跡が起こります。滝川も店を訪れ、店で業連客だけの講演会が催されました。この晩秀三の店に集まったのは常連客21人と21人の福の神でした。全員に福の神がついていたのです。

「福の神」が憑く人の条件は3つです。

  1. 人知れず他の人のためになるいいことをする
  2. 他人の成功を心から祝福する
  3. どんな人に対しても愛をもって接する

福の神は言います。

  • 人間は僕たち福の神が信じられないほど早く成長することが出来る存在である。
  • 人間が一番成長できる瞬間、それが人と出会うとき。
  • 大切なのは、目の前の一人の人生に興味を持つこと。愛をもってその人を見ることだ。
  • 幸せとは未来を予想する力だ。
  • 幸せや成功というのは、何かを手に入れるから慣れるのではない。今、この瞬間にも「幸せだ」「成功している」と感じるものだ。
  • すべては本当の夢を実現するための手段でしかない。
  • 考えなければならないのは、どうやって自分の欲しいものを手に入れるかではない。どうしてそれを手に入れなければならないのかである。
  • 思った結果が得られなかったとしても、自分の使命に向かって前進する生き方を続けることが出来る人出なければ、その使命を全うする生き方なんてできるはずがない。

先日、「消費者ニーズが多様化する現代に求められるスキル」というのを書きました。顧客との信頼関係の構築の大切さについて触れ、そこでも「顧客の人生の紆余曲折を聞いて、その話の中から、顧客が大切のしている思いを理解し、その大切な思いを満たす商品やサービスが提供できれば成約に至る」と書いています。本だけでなくあらゆる商品・サービスにも当てはまることです。ビジネスにも人生にも役立つ本と思います。 

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