中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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休日の本棚 シンキング・バックワーズ 「逆から考える」

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で489人、そのうち東京87人、神奈川22人、埼玉26人、千葉21人、愛知44人、大阪74人、沖縄13人となっていますが、北海道96人、宮城30人と北海道と宮城で増えてきています。

休日で検査件数が少ないことから減少していますが、全体的な傾向は緩やかな減少から増加に転じていると言ってよいでしょう。北海道知事や愛知県知事が第3波と危機感をあらわにしていますが、政府は経済優先一辺倒であまりも危機感が感じられません。欧米の状況を見ると感染者が急増しており、対岸の火事と暢気に構えていることはできないように思います。しっかりとした新型コロナ感染防止対策をとり、状況を見極めながら経済とバランスをとることが重要です。

経済産業省は、新型コロナ感染拡大で打撃を受けた中小企業を支援する「持続化給付金」の予算を3140億円増額すると発表しました。新型コロナ禍で苦境に立たされている中小企業を支援することは重要で、まだまだ必要な政策です。しかし、持続化給付金には申請手続きが容易なだけに不正受給も多く、申請後のチェックを強化し、不正発覚時には重いペナルティを課すことも必要だと思います。

さて、今日は文化の日で休日なので本の紹介です。ロブ・ヴァン・ハーストレッチト&マーティン・シープバウアー著「すべての仕事は『逆』から考えるとうまくいく」(日本実業出版社を紹介します。

著者のハーストレッチトはBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)出身、シープバウアーはマッキンゼー出身のコンサルタントです。彼らプロが実践するシンプルな思考法が「シンキング・バックワーズ」、つまり「『逆』から考える」ということなのです。

何故プロジェクトは成功しないのか? それは、そもそもアプローチの仕方に問題があるというのです。問題を定義し、できるだけ多くの情報を集め、入念に分析してから最後に解決策を考える。これが通常の思考の順序ですが、この思考法では真のゴールにはなかなか辿れないと言います。逆から考える「シンキング・バックワーズ」なら「説くべき問題」を的確にとらえ、成果を出す解決策を導き出すと言っています。

「『逆』から考える」とはどういうことでしょうか? それは、問題そのものではなく、理想や目的を考えることから始める問題解決法です。つまり、問題を分析するのではなく、最初からはっきりとした解決策に注目するのです。

ビジネスにおける問題解決には次の5つのステップが必要になります。

  1. 目標を設定する。
  2. 分析のためのフレームワークを構築する。
  3. 分析を実行する。
  4. 解決策を策定する。
  5. 利害関係者と連携する。

本書は、この5つのステップを取り上げながら、「逆から考える」ことのメリットと、どのように逆から考えるかを解説してくれています。

先日来、しつこいくらいに「手段の目的化」「手段と目的の履き違い」と言っていますが、これは目標・目的を明確にせず、解決策(手段)を先に考えるから起きるように思います。この本が提唱する「逆から考える」という思考法なら、まず最初に目標・目的を設定し、その後に分析、解決策と進んでいくので、手段と目的が明確に分けられ「手段の目的化」は起きなさそうです。

本書は上記5つのステップに合わせ5章で構成されています。

  1. chapter1 目標を設定する ― 問題を目標に変える・・・ここで重要なのは、なぜ目標をしっかり設定できないのか?ということです。それは、「何をやりたいのか」をよく理解していないからです。聞こえのいいこと、つまり時の流行りやブームについ乗っかろうと何も考えることなく手を出してしまうのです。目標や理想をはっきりされるいい方法は、目的と、それぞれに対応する解決策を簡単な図にまとめることです。目標がクリアになればなるほど、対応する解決策の領域がよりはっきりと絞り込まれます。目標設定のポイントは ①方向性 ②測定可能な目標 ③基本方針 の3つです。そして何よりも重要なのは口先だけでなく行動に移すことです。従って具体的な行動プランを示さなければなりません。起きな目標には根本的な変化が求められることを忘れてはならない、つまり、「痛みなくして収穫なし」と言っています。
  2. chapter2 分析のためのフレームワークを構築する ― 問題を逆から考える・・・いい分析とは、目的に至るための有効な解決策を見つけるのに役立つような質問への事実に基づいた答えのことです。スタート地点を最後に置き、そこから遡って進む、これが「分析のためのフレームワーク」で「どの分析がどの目的に、なぜ結びつくのか」を定義するものです。分析のためのフレームワーク構築には、①質問型アプローチ=目的をいくつもの質問にかみ砕く ②解決策型アプローチ=試す価値ある解決策の仮説をあげる ③段階的アプローチ=一つの解決策を順を追ったステップに分割する の3つのアプローチがあると言います。どのアプローチにもメリットとデメリットがあるので状況に応じて適したアプローチを選ぶことが必要ですし、場合によっては複数のアプローチを組み合わせることも必要です。また、分析の段階で、何度のフレームワークをチェックし、修正することも必要です。
  3. chapter3 分析を実行する ― 「合理的な疑い」を超える・・・いい分析とは、決まった質問への答えを出したり、仮説をテストしたりすることです。分析のためのフレームワークでは、データ収集を始める前の段階で「だから何なのか」という論理が始まっており、「発見」がすんなりと答えに、解決策に結びつきます。だから、分析のフレームワークを見直し、パズルのどの部分を解けばいいのか、いつ論理を調整すればいいのかを考える必要があるのです。そしてデータ収集、分析は「合理的な疑い」を超えなければならないのです。論理なき分析は役に立ちません。分析にはヘビーアプローチとライトアプローチがありますが、大事な疑問や仮設にはヘビーアプローチを、それ以外にはライトアプローチをと労力を使い分ける必要があります。ヘビーアプローチを使うには①事実を基に考える ②一次情報源にアプローチする ③複数のソースを参考に自らの仮説を検証する ④結果確認のために、感度分析・シナリオ分析を使う、ということが必要です。
  4. chapter4 解決策を策定する ― 決断だけでは意味がない。施策実行に意味がある・・・解決策というものは、問題に焦点を合わせたら爆撃機のように攻撃し、目標が達成されるまで手を緩めることのない、より積極的な施策なのです。常に、次の3つを持って解決策を見直すことが必要だと言います。⑴目標ははっきりしているか? ⑵行動を伴っているか? ⑶両者を結び付ける論理に説得力はあるか? です。完璧な解決策という者はありません。最低2つの代替策を磨き上げることが必要です。最も大事なのは、理論と事実をしっかりと把握したうえで自分たちの行動方針だと信じられるものと、そこに熱意を持って取り込めるかどうかだと言います。
  5. chapter5 利害関係者と連携する ― 「ボートをどう揺らすか」・・・目標が大きかろうと小さかろうと、一見優れたアイデアでも結果を出すことは難しいのです。ボートを揺らせば揺らすほど、人はその場にしがみついてしまうからです。しかし、だからと言ってボートを揺らさないことには何も始まりません。これを乗り越えるカギはリーダーシップです。大きな変化を起こすには、失敗への不安をかき消すような、強い光が必要なのです。人は本能的に施策が意図することを避けたり遅らせたりする傾向にあります。抵抗勢力に立ち向かうには、それを打ち破ることのできる論拠と強いリーダーシップが必要です。目標を達成するためには一つや二つの行動では足りません。気持ち(決意)とリソースと環境を整えなければなりません。成功に向けた状況整理(適任者、優先事項の設定頻繁なモニタリング)が必要になります。

最後に本書では、誰もが2倍効率的にビジネスの問題に取り組めるように、3つの原則について、8つの質問を提示しています。これに答えることで現在取り組んでいるプロジェクト、今後取り組むプロジェクトの参考になると思われます。

逆から考える・・・問題解決とは、問題について考えることではなく、目標と解決策について考えること

⑴チームが問題や分析ではなく、解決策について考え、話し合いを始めたのはいつか?

⑵初日からチーム全員がきちんと目標をシェアできていたか?

「合理的な疑い」を超える・・・意識改革は論理、事実、そして仮説を磨き上げるところから生まれる

⑶分析のためのフレームワークは作ったか?

⑷意思決定者は「提案された解決策はよく練られており、『合理多岐な疑い』を超えられるものだ』ととらえていたか?

⑸解決策の重要部分は、しっかりした分析、データ、仮説のブラッシュアップによって裏付けられていたか?

意思決定そのものには意味がなく、施策実行がすべて・・・意思決定だけでは人は動かない。行動を促す施策のみが人を促すことが出来る。

⑹組織は動いたか?

⑺施策は可視化されていたか?

⑻目標は達成できたか?

そして、最後に「逆から考える準備はできたか?」という質問で締めくくっています。

「逆から考える」ということは「先を見据える」ということです。

分析のためのフレームワークを作り、解決策を考えたり、周囲の人々に目標(目的)を確認する、そのうえで、データに裏付けられた考えを提示し、誰もが「これなら目標(目的)を達成できる」と納得できるまでの施策・解決策を考えることです。

企業には抱えている多くの課題があり、それは企業によって様々です。時代の流れや流行に振り回されることなく、自社が抱える課題に真摯に向き合い、自社の目標(目的)を設定し、その目標(目的)達成の筋道を逆から考えてみれば、手段と目的とをはき違えることなく、目的に合った手段が見つかるはずです。

本書の「逆から考える」という思考法を参考にしてみてください。

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