休日の本棚 本当に使える戦略の立て方 5つのステップ
おはようございます。
昨日の新規感染者は全国で6266人、そのうち東京854人、神奈川340人、埼玉257人、千葉169人、愛知598人、岐阜155人、大阪576人、兵庫314人、京都165人、岡山166人、広島208人、福岡472人、熊本124人、大分102人、沖縄134人、北海道593人などとなっています。政府は分科会の専門家から「NO」を突き付けられ、方向を一転し、北海道、岡山、広島の3道県を緊急態宣言の対象地域とし、群馬、石川、熊本の3県はまん延防止等重点措置の対象地域としました。緊急事態宣言の拡張は妥当な判断ですが、遅きに失し、今後も追加追加とならないことを祈ります。相変わらず、昨日の菅首相の記者会見も散々でした。何度も尾身会長に助け船を求め、一国の首相として全くお粗末です。国民に対して強いメッセージを伝える最高の場を台無しにしています。「大阪では新規感染者が減少している」と宣言の効果を強調し、相も変わらず馬鹿の一つ覚えのように「安心、安全なオリンピック開催は可能」と言い、記者から具体的な感染防止対策を問われると言葉に詰まるというお粗末さです。大阪では感染者数が減少していますが、40~60歳代の重傷者が急増し、若年層の死者も出ています。これは変異株の影響と考えられますが、さらにインド型の二重変異ウイルスの感染者も確認されています。インド型の市中感染が疑われるところです。緊急事態宣言解除も1日の新規感染者が100人を下回らないと行うべきではないでしょう。吉村知事の勇み足で緊急事態宣言解除を早めないことを願います。
さて、今日は、山田修著「本当に使える戦略の立て方5つのステップ」(ぱる出版)を紹介します。山田氏は以前紹介した「本当に使える戦略、使えない戦略」の著者です。山田氏は外資4社、日本企業2社の社長を務め、「企業再生経営者」と評された人物です。机上の経営理論を研究しただけでなく、実践で鍛えられた見識は素晴らしく、実際の実務で役に立つものです。山田氏によれば、経営セオリーには流行りがあり、流行って人気があるからといって、そのセオリーが正しいとは限りません。どこか偏りはないか、実際のビジネスにそぐわないところはないか、そのようなところに気を配りながら学ばなければならないのです。
先日紹介したBCGの経営戦略コンセプトもそうですが、経営戦略のフレームワークを使えばそのまま正しい答えが出てくるというものではありません。一つの枠組みと考えてそれを自社に合わせて使いこなしていくことが重要です。
この本は、経営戦略のセオリーの解説ではなく、「実用」つまり実際にビジネスの現場で戦略を立てられるように考えられています。
経営戦略には「3つのS」があると言っています。その3つのSとは
- Strategy:立案策定
- Show :お披露目して支持を取り付ける
- Spread :展開と実践
です。この本では、この3つのSのうち、「戦略立案」と「戦略発表」が簡単にできるツール、「戦略カード」と「発表用テンプレート」が用意されています。「戦略カード」を「5つのステップ」に従って展開していけば、自部門や自社の業績を上げるための「部門戦略」や「全社戦略」が簡単に策定することができるようになっています。
1.戦略カード
「戦略カード」の書き出しがスタートです。「意識の断片」を通常に「思索活動」では無意識に回っています。それを「戦略カード」に書き出すことで「概念化」します。「戦略カード」は文章で書きます。しかし、できるだけ短文で書きます。自ら手で書くことで、「概念」を形成・構想・認識していきます。あとのステップで書き出されたカードを選び、ミニ・シナリオとしてつなげて「戦略構成」するのです。「戦略カード」はそのためのツールです。
「戦略カード」の様式、具体的な書き方については、本書を参考にしてください。
2.5つのステップ
- ステップ1:目標の設定 「3年目標」のカード出し、選定、理由の裏書き
- ステップ2:課題の発見 課題の洗い出しから重要課題、理由の裏書き
- ステップ3:解決策の策定 課題それぞれにカード出し、理由、戦略カード
- ステップ4:派生問題と対処 重大障害と対処策カード
- ステップ5:発表 テンプレート書き写し、リハーサル
すべてのステップで戦略カードを書き、複数のカードを選び出し、それをつなげて戦略を策定していくのです。
山田氏は「戦略は言葉で立てる」と言います。以前紹介した一橋大学教授の楠木建氏も「ストーリーとしての競争戦略」の中で、「数字よりも筋の良いストーリー」と言っています。この「筋の良いストーリー」や「ワクワクするような話」は誰でもが簡単に作れるものではありません。筋の良いストーリを作るうえで重要なのが「コンセプト」ですが、その「コンセプト」は自分の頭で深くじっくりと考えるしかないのです。そのように言って突き放せば身も蓋もありません。この本では「戦略カード」を作って、ステップに合わせて選び出し、それらをつなげてストーリーとして組み立てる方法が示されているのです。
経営戦略の本は多く出ていますが、そこでは多くのフレームワークが紹介されています。「フレームワーク」つまり「枠」の組み合わせを与え、その複数の枠の中に自社の経営やビジネスの事象をあてはめて分析しようというものです。しかし、極端に言えばフレームワーク型の事象分析はいくらやり込んでも所詮は分析にすぎません。それによって体系だった経営戦略が立ち上がってくるものではありません。成功するための経営戦略の策定法を示してくれないていないのです。繰り返しになりますが、戦略というのは経営者が自社の実情に合わせて自分の頭で考え練り込んでいくものです。
「戦略カード」は自らの思考を自分の手で書き出して文章化・概念化していくもので、戦略策定の素になるものとして重要です。
「戦略カード」に書くのは「3年目標」「定量目標」「定性目標」といった目標(ステップ1)だけではありません。企業は多くの課題を抱えています。その「課題」も「戦略カード」に書くのです(ステップ2)。「目標」と「課題」は繋げずに切り離すことが重要です。これまでの戦略立案セオリーでは、「目標」を掲げ、「それを実現するためにどうするか」という順番で展開する者が多かったのですが、それがうまく機能しないのです。「目標」というのは時に現状と大きくかけ離れ、経営者の希望や夢といっていいような場合もあるのです。sのような場合、目標と現在自社が抱える課題をつなげつとおかしなことになってしまいます。自社が抱える課題は目標と切り離して考えなければならないのです。
「課題カード」が欠ければカードを選び、その中から「最重要課題」を選び出します。最重要課題というのは「その課題を解決あるいは克服できれば、最も大きく業績の改善又は伸長が望めるもの」です。会社が違えば悩みも異なりその会社が抱える課題も異なるものです。当然最重要課題も異なります。自分の頭で考えて自分で戦略カードを書いていくしかありません。
課題が見つかれば次に必要なのは「解決策」を見つけることです(ステップ3)。1つの課題に対して3つの解決策を考え、「戦略カード」に書き出します。山田氏は、「有効な解決策というのは、『大きくやり方を変えること』あるいは『新しいやり方でやること』である」と言っています。「大きくやり方を変える」「新しいやり方をやる」というのは「イノベーションを起こす」ことです。
次のステップは派生問題とその対処(ステップ4)です。これも「戦略カード」に書き込んで考えていきます。派生問題というのは「これを潰せばその解決策はおおむね功を奏する」というような重大障害です。この最大障害を言語化できれば、それに対する対処法も自然と浮かぶはずです。
これまでの4つのステップで得られたものをつなぎ合わせれば、戦略が立案されていることになります。ステップ1で目標を設定し、ステップ2で自社の抱える課題を明らかにし、ステップ3でその課題に対する解決策が、ステップ4で派生揉んぢとその対処法が明らかになりました。これらをつなげて1つのストーリーに組み立てれば戦略が出来上がっています。最後のステップはそれを発表すること(ステップ5)です。
「戦略カード」を使ってせっかく作った経営戦略ですから、それを「共有する」ということが大事です。共有の相手は、戦略を実践する場合に承認を得なければならない人たちdす。それは出資者であったり株主であったり、組織の上位にある人たちです。また、経営戦略をぞっせんするためには部下、社員の協力も必要です。こうした人たちに経営戦略を説明し共感を得なければなりません。経営戦略を共有するために、ステップ5の発表が重要なのです。
最後に3つのSの最後のS、Spread(展開と実践)です。いくら優れた経営戦略を打ち立てても、それが実践されなければ意味はありません。その経営戦略を実践するのは経営者以外にありません。戦略の実行と実践力、それこそが経営者に求められる能力です。経営戦略だけなら経営コンサルタントに外注して作ってもらえますが、経営コンサルタントがその経営戦略を実施してくれるわけではありませんし、責任も取ってくれません。実際に実行し、責任を取らなければならないのは経営者自身なのです。経営者には経営選癪を実践する「覚悟と責任」があるのです。この間「稲盛経営12か条」等で書いたように、経営というものには経営者の強い意志と覚悟が必要なのです。