中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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プロセスエコノミー

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で14,854人、そのうち東京2962人、神奈川2584人、埼玉1301人、千葉1609人、愛知571人、大阪964人、兵庫402人、京都321人、福岡683人、沖縄339人、北海道357人などとなっています。政府は、茨城、栃木、群馬、静岡、京都、兵庫、福岡の7府県に緊急事態宣言を発出し、既に発出している7都府県についても来月12日まで期間を延長する方針を固めました。今まで通りの緊急事態宣言では、国民の「宣言慣れ、自粛慣れ、自粛疲れ」で効果はほとんどないでしょう。政府はオリンピックを強行し、更にパラリンピックを行うわけですから、国民にだけ「不要不急の外出を控えろ」と言っても危機感はありませんし、緊張感を保てません。ロックダウンに近いもっと強い措置を取ることと、菅首相が全身全霊を打ち込んで、強い危機感を伴ったメッセージを国民に出すことですが、菅首相の資質・能力からは無理でしょう。

今日は、現代ビジネスの「5年後に『稼げる人』『稼げない人』の差…今注目の「プロセスエコノミー」のすごい正体という記事を取り上げます。

企業において競争優位を確立することが最も重要な経営戦略となります。ポーターは競争優位を獲得するには、①コストリーダーシップ戦略 差別化戦略 ③フォーカス戦略(集中戦略)があるとしました。

しかし、今や商品や、サービスで「差別化」するのが難しくなってきています。ヒット商品が出ればすぐに模倣され、飽きられるスピードもどんどん速くなっているのです。このように「差別化」が難しくなった時代に注目されているのが、「プロセスエコノミー」という考え方です。

1.プロセスエコノミーとは?

 「プロセスエコノミー」というのは、「プロセスを共有するところがお金を稼ぐメインとなる」という考え方です。これまでのアウトプットエコノミーでは立ち行かなくなるということです。インターネットの普及や技術革新により、品質や機能がすぐにコピーされ、アウトプット(商品やサービス)では差別化ができなくなります。そうなると過当競争に陥り、安価や高品質だけでは稼げなくなってくるのです。

 そうなったときに、プロセスには希少性があるので、「プロセスでも稼ぐ」ことを含めて考えていかなければならないという考え方がプロセスエコノミーです。

 プロセスエコノミーーが紹介されるときに、よく例に挙げられるのが、アイドルグループNiziUを生み出したNizi Projectです。オーディションの過程というアイドルグループ結成のプロセス自体を番組として公開することで、デビュー曲「Make you Happy」は大ヒットしました。

 また、クラウドファンディングも、商品やサービスを作るプロセスに顧客を巻き込むという意味ではプロセスエコノミーと言えそうです。

 商品やサービスの品質の向上とSNSの普及による口コミの伝播力によりどんな業界の商品やサービスもコモディティ化が進んだ結果、商品やサービスだけで差別化することが難しくなりました。今まで普通だと思っていたことや隠しておくべきことと考えられていた「プロセス」を見せるということが、実は差別化の突破口になるという逆転の発想が「プロセスエコノミー」なのです。

2.プロセスエコノミーの要因

 プロセスエコノミーという考え方が注目を集めるようになってきたのは、「時代が進んだことによる価値観の変化」と「テクノロジーによる価値観の変化」の2つの要因があると言われています。

 これまでのアウトプットエコノミーでは価値を出すのが難しくなってきていますが、それは世の中の価値が時代によってガラッと変わってきたからです。

 PEST(ペスト)つまり Politics(政治)・Economy(経済)・Society(社会)・Tecnology(テクノロジー)の4つの要因で世の中の価値は大きく変わります。この中でプロセスに価値を生み出すようになった要因として一番大きいのはソサエティです。

 戦後、日本では、社会に必要なものを生み出し、大量生産することで、いいものを安く提供してひとつの時代が作られてきました。

 心理学者のセリグマンは、人の幸せは「達成」「快楽」「意味合い」「没頭」「人間関係」の5つで構成されると言っています。

 戦後の日本は「モノがない時代」でした。その「モノがない時代」では、「モノがない世界をモノがある世界に変える」という達成感や「なかったモノがあるようになる」快楽に酔いしれていました。今は「ないモノがない時代」です。欲しいものは何でも手に入る時代ですから、価値観は、「意味合い」「没頭」「人間関係」に移っています。やっていることに意味合いが感じられる、やっていることに没頭できる、それを気の合う仲間と一緒にやれる、こうしたことに幸せを感じるのです。

 テクノロジーの進化により、モノの機能すら簡単にパクりコピーできる時代です。「機能的なものよりも意味合いがあるコトが大事」というように世代の価値観も世の中の価値観も変わってきているのです。

 今はインターネットによってグローバルにつながっています。世界レベルで資本を大量投入できるところの方が、クオリティの高いものがつくられます。一極集中で巨大資本を投じた「グローバルハイクオリティ」と、国内・地域市場の「ローカルロークオリティ」に二極化されています。しかし「ローカルロークオリティ」のモノがダメかというとそうではありません。クオリティは低くても、そこには意味合いや人間関係があるはずです。ロークオリティだけれど、ハイコンテクスト(意味合いや人間関係という文脈を多く持っている)であれば、クオリティが高くなくてもみんなが楽しめるのです。一番よくないのは、どっちつかずの中途半端なものです。

 では、どうやって、ハイコンテクストなものを作るかというと、「プロセスを共有する」ということになるのです。

3.ストーリーは「伝染」していく

 以前、楠木建ストーリーとしての競争戦略」を紹介しましたが、「戦略の神髄は、思わず人に話したくなるような面白いストーリー」にあります。

 この記事では、ブランド経営論の大家デビッド・アーカーの「シグネチャーストーリー」が取り上げられています。「シグネチャ」というのは、「人目を惹くほど突出している」ということで、楠木教授の「人に話したくなるような面白いストーリー」と通ずるものがあるように思います。

 アウトプットではなくプロセスに顧客の視点が移っていくということは、企業が機能で愛されるのではなく「何にこだわりを持って冒険を続けているのか」「お客様に寄り添っていくのか」という価値観に移っていくということです。そうすると、WHY?の部分「なぜそこにこだわり続けているのだろう?なぜそこまでお客様に寄り添い続けるのだろう?」というところがお客様を惹きつけるのです。裏側にあるブランドの理念よりもリアルなストーリーに惹きつけられるのです。

 例えば「社長がこだわっている」というストーリーよりも「その会社に出入りしている子会社の社員までもがこだわっている」というストーリーの方が人は共感します。人は自分たちに近い存在に共感しますし、そういう話は人に伝えたくなります。自分の等身大に近いような人が、WHYを体現している姿を集めて広げていくと、ストーリーは伝播し、会社のブランド力は上がるのです。

 そこでのストーリーはドラマではなくドキュメンタリーであり、強い説得力を持ったものであること、人々の気持ちや心を揺さぶり行動へと搔き立てるものでなければなりません。 

多くの企業が、品質や機能にこだわりそこで差別化を図ろうと努力してきました。しかし、それが困難な時代になっているのですから、そうした点にこだわるのをやめて、プロセスに焦点を当てる「プロセスエコノミー」の考え方に発想転換してみることも必要かもしれません。そこで重要なのは「人に話したくなるようなストーリー」「人目を引くような突出したストーリー」です。