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日本マクドナルドに見るコロナ後の人事課題と施策

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で19,955人、そのうち東京4377人、神奈川2017人、埼玉1634人、千葉1304人、愛知967人、大阪1856人、兵庫853人、京都420人、福岡716人、沖縄684人、北海道410人などとなっています。大阪、兵庫、愛知をはじめ、18府県で過去最多を更新しました。昨日、緊急事態宣言の地域拡大と期間延長について、菅首相の会見がありましたが、相変わらず官僚作成の原稿棒読みで全く心がこもっていませんでした。菅首相は、「新型コロナという非常事態について今後しっかりと検証し感染症に対する法整備も含めて幅広く検討をしなければならない」と発言していますが、新型コロナ感染症で危機的状況になって1年半近くになろうとしています。「今後」って一体どういうことですか? この1年半の間にいろいろ検討し法整備もできたはずです。何度も言うように後手後手の対策ばかりで、この感染爆発は人災です。今日の朝日新聞高橋純子編集員が「首相の『ふう』気の抜けた炭酸水はまずい」と書いています。菅首相が多用する「私は○○というふうに思います」という表現を気の抜けた炭酸水と表現しているのです。言い得て妙です。また、菅首相は、ときに記者の質問にキレて怒気を顕にすることがあります。高橋氏は、「『ふう』か『怒』か、こんな極端なやり方でしか他者と関われない首相は気の毒だし、そのような人物を首相としていただく国民は不幸である」と述べていますがまさにその通りです。

さて、今日は、ビズネス+ITの「日本マクドナルド人事トップが語る、コロナ後の人事課題と施策をどのように設定したか」を取り上げます。この記事は、日本マクドナルド人事本部で上席執行委員を務める落合亨氏が、同社のアフターコロナを見据えた人事施策について語ったものです。コロナ禍はすべての企業に大きな変化をもたらしましたが、人事部門にも少なからざる影響を与え、具体的にどのような施策を行えばいいのか、悩んでいる企業も多いと思います。こうした企業にとって日本マクドナルドの取り組みは参考になると思います。

1.過去から紐解く、日本企業のHR(人事部)が抱えてきた課題

 落合氏は「経済の変化が人事制度を変革してきた」と指摘します。

 1980年代には急激な経済成長が終身雇用な年功序列制を生み出し、続く1990年代にはバブル崩壊から就職氷河期が到来します。人材市場は買い手有利となり、就職・転職競争が激化し、成果主義年俸制を導入する企業も出てきました。

 2000年に入ると一時的な景気回復も起こりますが、リーマンショックで再び買い手市場となり、成果主義が加速します。同時に外国人労働者の採用が進められ、ダイバシティの萌芽が生まれます。

 2010年代には通信技術の革新によりワークスタイルが変化し、労働人口の減少から働き方改革が提唱され、雇用形態の多様化が進められます。

 大まかな流れとしてはこの通りです。こうした流れの中で、いまだに日本型の雇用システムの一部は根強く残っています。それは、「勤務地と職務範囲が限定されていない」「長時間労働が前提になっている」「年功序列制の昇給制度」などです。

 日本の雇用システムは、時代の流れの中で、姿を変えてきていますが、その一部は改善を求められながらも、手付かずの状態にあると言っていいでしょう。

 この変革のタイミングはいつ来るのか? 落合氏は「コロナ禍がパラダイムシフトの契機になる」と言います。

2.コロナ禍は日本企業の人事をどう変えるのか

 新型コロナウイルスの感染拡大は、われわれの生活やビジネス環境にも大きな影響を与えました。当然、働き方にも人事制度にも大きな影響を与えています。

 落合氏は、小林慎和著「アフターコロナ世界はどう変わるのか、9つの視点」を引用して、具体的に次の8つの変化が起きていると指摘します。

  • ミーティング2.0 ミーティングはWebビデオ会議で行うことが当たり前になる。
  • 対面2.0 ビデオ会議が標準的になり、リアルな場での対面価値が向上する。
  • 時間2.0 ビデオ会議でミーティングが高頻度化。作業時間が細切れになる。
  • 人間関係2.0 直接会わなくても信頼関係g田構築できる「リモートトラスト」が当たり前のビジネススキルになる。
  • 企業2.0 リモート勤務を望む人材が増え、対応しなければ良い人材を確保できない。
  • オフィス2.0 リモート普及でオフィスの床面積が大きく縮小。シェア可能なコワーキングスペースが増加。
  • ビジネスチャンス2.0 あらゆるビジネスのデジタル化が進み、アナログで行う必要がないビジネスは市場からはじかれる。
  • 街2.0 バイタル計測器や行動履歴ログなど、ウイルスに対応できるインフラ都市に配備される。

 落合氏は、「リモートワークやWeb会議が当たり前のものになれば、人材は過程ではなく成果で評価されるようになり、実力主義が加速していく。細かな指示がなくても個々人が自律して働けるよう、職務内容を明確に定義する『ジョブ型雇用』が普及する」と言います。グローバルの流れからすれば、落合氏の言われるとおりですが、日本型雇用システムがすべて悪いわけではありません。日本型雇用システムにもメリットはあります。日本では、完全にリモートワークになりジョブ型雇用になるということはなく、リモートワークとオフィスワークを併用したハイブリッド型雇用、ジョブ型雇用とメンバーシップ雇用の利点を合わせたハイブリッド型が浸透していくように思います。

 いずれにしても、これまでの日本型雇用システムには変革が求められることは言うまでもありません。

3.コロナ禍での変化を受けて、日本マクドナルドは何を参考にしたか

 日本マクドナルドは、経済産業省が発表した「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書~人材版伊藤レポート~」を自社の施策を打ち立てる参考にしたと言います。

 このレポートでは、日本企業の課題として「経営戦略と人材戦略を連動できていない」「世界的にみてもエンゲージメントは低い」などが列挙され、その解決のポイントとして、次の5つが挙げられています。

  1. 経営戦略上、どのような人材が必要かを分析する
  2. 多様な個人の経験や専門性を活用する
  3. 個人の学びなおしを支援する
  4. 従業員がやる気や働き甲斐を感じる環境を作る
  5. 働き方を多様化する

 日本マクドナルドは、この提言に沿う形で、人事施策を実施しています。

 「経営戦略上どのような人材が必要か分析する」では、経営戦略を実行する組織作りに着手し、キーポジションへ配置する有能な人材を選定し、「多様な個人の経験や専門性を活用する」では、女性や外国人材の活躍の場を増やし、「個人の学びなおしを支援する」では、キャリアコーティングや専門スキルのトレーニングを行っています。

 さらに、「従業員がやる気や働き甲斐を感じる環境を作る」「働き方を多様化する」を実現するために、旧来の人事制度の改正やフレキシブルな働き方を模索しています。

4.日本マクドナルドの新人材戦略の5つのポイント

 日本マクドナルドは、経産省のレポートを参考に人事施策に取り組み、全社経営戦略・人事部・各事業部で方向性を統一し、

  • 企業戦略に基づいた人材ポートフォリオの見直し
  • 社内外に開かれたキャリアパスの提示
  • デジタル時代に求められるスキルの再定義
  • 新たな人事制度の下、人材育成を加速する
  • 人材の多様性を促進する

という5つのサイクルを回すようにしています。

 日本マクドナルドでは、人事施策の結果、コロナ禍の感染拡大前から導入を進めていた「モバイルオーダーアプリ」や「デリバリーサービス」が非接触ニーズの支持を集め、業績向上を後押ししています。

 また、人材採用では「テックタッチ:メールやオンラインコンテンツなどITを通して対応する」を重視した採用プランディングを行い、従業員のエンゲージメントも向上しています。

中小企業の場合、日本マクドナルドと同じように変革を行うことは難しいですが、経産省レポートが提示する課題はどの企業でも抱えている課題なので、その解決の5つのポイントを実施していく必要があります。このレポートを参考に、また日本マクドの人事施策を参考に、自社に合った施策を作り、やれるところから取り組んでいくしかありません。