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休日の本棚 ブレインドリブン⑵

おはようございます。
今日も昨日の続きで、青砥瑞人著「ブレインドリブン パーフォーマンスが高まる状態とは」(ディスカヴァー)を紹介します。昨日は「モチベーションを育むためのヒント」について書きましたので、今日は「ストレスとうまく付き合うためのヒント」「クリエイティビティを高めるためのヒント」について書いていきます。
1.ストレス
 人間の脳は、ストレスによってパフォーマンスが下がることがある一方、パーフォーマンスが高まる場合もあります。自分で自分のストレス反応を俯瞰的にとらえることは、自分自身を守るため、より高いパフォーマンスを発揮するため、他人とのコミュニケーションを円滑に行うためにも欠かせません。程よいストレスは、力やエネルギーを与えてくれるもので、生きるうえで必要不可欠です。
(1)ストレスと仲良くなるヒント1
Ⅰ:ストレスの多様性を受け入れる・・・ストレスの感じ方は一人ひとり異なり、パフォーマンスを低めてしまうこともあれば高めてくれることもあります。決してストレスは悪者というわけではなく、必要だから備わった重要なシステムです。
Ⅱ:自分のストレス反応を同一視せず、違いを受け入れる・・・一人ひとりのストレス反応の在り方は千差万別です。自分のストレスの感じ方を他人に押し付けず、お互いの違いを受け入れることが大切です。
Ⅲ:自分のストレスを知る・・・どのようなものに、どれだけストレス反応し、どうなってしまうのか、自分のストレスを良く知ることで、ストレスと仲良くできます。ストレスのネガティブな反応をケアし、ストレスのポジティブな反応を活用できるようになります。
(2)ストレスと仲良くなるヒント2
Ⅰ:ストレスの意義・役割を理解する・・・ストレスには、①受け取った情報がどのような種類のものであるかを伝える ➁記憶力を高める ③直観力を高める という3つの役割があります。ストレス反応は、我々が直面している情報がどのようなものかを伝えてくれます。脅威を伝えているかもしれませんし、新たな学びを知らせてくれているかもしれません。ストレス反応のおかげで、われわれが処理する情報の学習・記憶化を促進し、その後の反応速度を高め、直観力を高め、生存確率を高めてくれます。
(3)ストレスと仲良くなるヒント3
Ⅰ:ストレス反応の声に耳を傾ける・・・脳には自分の内部環境の変化に気づく部位があります。自分の変化に気づけるか気づけないかは、ストレスを考えていくうえで欠かせない能力です。ストレス反応を起こしている状態とその反応に気づくことは、違う脳の機能です。ストレス反応を起こしても、われわれの身体にはある程度自動的に元の状態に戻そうという働きが備わっています。ストレスと仲良くなるには、ストレス反応の声に耳を傾けるのが第一歩です。
(4)ストレスと仲良くヒント4
Ⅰ:ストレスの俯瞰視(メタ認知・・・メタ認知の本質はパターン学習です。過去の体験をパターン化したり規則を見出したりすることです。メタ認知の目で自分のストレス反応を見ることが大切です。重要なのは、成功体験が得られてポジティブな感情が出ているときに、失敗の経験あるいはストレスと結び付けて「同時に」学習することです。最終的な成功体験に関連付け、失敗やストレスを感じた体験をパターン学習させると、脳は「ネガティブな失敗やストレスにも意味があった」ととらえてくれます。失敗やストレスに対する認識、認知を価値あるものとし、折れない心を高めてくれます。加えて、成功体験を経た過程におけるポジティブなエピソードを振り返り、味わい、その体験を深く記憶に落とし込むことで、結果だけでなく、過程におモチベートされる脳が形成されます。
(5)ストレスと仲良くなるヒント5
Ⅰ:適切なストレスのメリット・・・自分がやりたいこと、やろうとしていることから受けるストレスこそが、適切なストレスです。それは我々のパフォーマンスを高めます。適切で過度でないストレスは、記憶定着率、注意力・集中力、収束思考力を高めます。適切で、過度でないストレスに気づいたらラッキーと思うことです。
6)ストレスと仲良くなるヒント6
Ⅰ:過度なストレスは避ける・・・過度なストレスにさらされると、偏桃体が過剰に働き、目の前の事象の危険性を学習することリソースを最大限集中させることになります。そのような状態は、われわれがやりたいこと、やろうとしていたことから外れる脳のモードです。過度なストレス状態は、高次脳機能を有する前頭前皮質の各種脳機能を低下させ、考えていたことと違う行動をとる確率を高めミスに気づきにくくなるなどの不都合を生じさせます。どのレベルになるとストレス過剰になるのか、何にストレス反応を示すか、どの程度メディエータが反応するのか、それをどの程度感じられるのか、それをどう処理し反応するかは、一人ひとり異なります。だから「自分がどのような状況でどのようなストレスを受けると過剰なストレス反応が出るのか」を知っておく必要があります。
(7)ストレスと仲良くなるヒント7
Ⅰ:慢性的なストレスは避ける・・・慢性的なストレス状態は脳の神経細胞の萎縮を誘発し、うつ病などを誘発する可能性があります。ストレスを慢性化させないために、息抜き、落ち着く時間を作りゅことが大切です。
(8)ストレスとうまく付き合うための15のヒント
➀:「何かおかしい」という脳からのお知らせに気づいてあげる・・・「何かおかしい」と言う脳からのお知らせを受け取れるようになるためにも、普段から自分の内面に意識を向け、心地よいと感じることの表面積を広げることから始めよう。
 ②:ストレッサーを整理し、想いを乗せる・・・ストレスと付き合う上で、どこからストレスを受けているのかについて正しく整理することが重要です。脳にとって最もストレスがかかるのは、認識されていない曖昧な状態が続くことです。集中できない状態を感じたときは、その瞬間、自分に降りかかるストレッサーを洗い出し、紙に書き出すのがいい。
③:高すぎる予測値・期待値を調整する・・・予測値や期待値の差分が大きすぎることによってもストレス反応が起きます。自分の目標やゴールを難易度や達成度に応じて柔軟に調整できる能力もストレスと付き合うためには欠かせません。
④:無意識のバイアスを外す・・・自分の価値観などに潜む「無意識バイアス」を客観的に知っておくことで、それとの差分によるストレスを事前に察知できます。価値観が何かを棚卸するため、自分と向き合い、考え方、感じ方、あり方、人生観などを見つめ、知っておくことが重要になります。期待や予測が固定した「決めつけ」もうまくコントロールしなければなりません。
⑤:超俯瞰視に酔ってストレスを矮小化する・・・脳は嫌なことやネガティブな出来事を何度も思い出しやすくなっています。ネガティブなループが加速すると、抜け出せなくなります。「超俯瞰視」で自分の悩みを通作感じさせるために、自分を引いた一宇から見たり、他者と比較して自分の生活に感謝してみるのがいい。
⑥:ネガティブな感情をポジティブに書き換える術を身につける・・・我々の感情はネガティブをポジティブに、逆にポジティブをネガティブに書き換えることができます。ネガティブをポジティブに書き換えるために、ネガティブな出来事の記憶を想起させたうえで、同時にポジティブな感情を引き出すことが大切です。ネガティブな批判や愚痴を言い合うのではなく、寄り添うことで安心感を与え、勇気づける言葉を投げかけるのがいい。
⑦:違和感・葛藤を大事にする・・・違和感は脳がこれまでの経験の蓄積から「何となくおかしい」とシグナルした結果なので、見逃しやすい大切な情報を伝えてくれる可能性があります。また、葛藤に基づいた行動は成功しようと失敗しようと、差分が強く脳で表現され、大きな学びとなります。違和感・葛藤を俯瞰的にとらえることで、ストレスを成長の力に変えられます。
⑧:モヤモヤを受け入れる・・・モヤモヤした感覚をストレスに感じると「自分には向いていない」と興味をシフトさせてしまいます。しかし、モヤモヤする感覚があるのは、学習している証拠で、違和感や葛藤と同じように成長の証ととらえ、楽な気持ちで受け入れることが大切です。
⑨:心から抱きしめる・・・愛する存在を心から抱きしめると、オキシトシンが分泌され、ストレスを和らげてくれます。
⑩:意識的にポジティブを見て味わう・・・何気ないことにもポジティブな情動を感じたら、3秒でもいいから立ち止まって、内側で反応する心地よい情動反応に注意を向け味わうことが大切です。
 ⑪:不確実性の中で探索を繰り返す・・・脳には不確実性に直面しても前を向き、探索する機能がります。自分にとっての挑戦に取り組み、成功や成長に目を向けることで、挑戦が価値あることを脳に刻むことができます。その繰り返しが、不確かな状態のストレスを力に変えていく脳を形成します。
⑫:たくさん笑う・・・笑うことでβエンドルフィンが分泌されると、不要なストレスを吹き飛ばしてくれます。また、副交感神経が優位になり、リラックスできます。面白いことに注意が向くのでストレッサ0¥-に対して必要以上に注意を向けないことにもつながります。
⑬:好きなことに没頭する・・・人間は、基本的には何時間でも集中できます。のめり込んでいる何かをやっている状態では、注意の対象が好きなものに独占され、脳がストレッサーに注意を向ける余裕がなくなります。
 ⑭:セロトニンを誘導する・・・セロトニンは脳の状態を整えてくれる脳内化学物質です。単調で集中でき、自分が心地よく感じるリズム性の動作に因るセロトニンが誘導できます。また、朝日を浴びることでもセロトニンが作られます。
 ⑮:副交感神経を優位にする・・・副交感神経は我々にエネルギーを蓄えさせ、パフォーマンスを出すための準備をしてくれます。薄目になるくらいの光量を浴びる、ガムや飴を口にする、食事に集中する、無く、深呼吸をするなどの方法で副交感神経を優位にすることが、効果的なストレスマネジメントになります。
2.クリエイティビティ
 クリエイティビティは新しく価値ある結果として捉えられる傾向にありますが、創造的な行為をしている状態、つまりプロセスも含むものです。そして、先天的な能力ではなく、脳のネットワークの中で後天的に獲得される能力です。マクロ、ミクロでとらえた脳の様々な機能が互いに関連し合ってネットワークとして私たちの行動や感情や思考を動かし、クリエイティビティを動かしているのです。
(1)クリエイティビティを高めるヒント1
 Ⅰ:創造力は複雑系だと知る・・・クリエイティビティは脳の複雑系の作用の結果であるため、他の能力を高めるよりもエネルギーと時間を要し、変化を実感しにくいものです。まずは変化することを知り、多面的な脳内変化(成長)を意識し、実践することが大切です。
(2)クリエイティビティを高めるヒント2
Ⅰ:不確実な脳を愛でる・・・脳の持つ曖昧性、非再現性、近時的認識、多面的変化、内外干渉という、常に「揺らぐ情報と情報処理」が想像力発揮の一助となります。したがって、不確実性(あいまい、勘違い、意図しないことなど)への気づきと受容がクリエイティビティを育む第一歩となります。
(3)クリエイティビティを高めるヒント3
Ⅰ:本人にとっての創造・・・創造力を高めるためには、周りの評価者にとっての新しさや価値にとらわれることなく、創造力を高めたい本人にとって新しく価値あるものを脳内で生み出せているかを見極めることが重要です。
他者評価の危険性・・本人が創造的な脳の使い方を育んでも評価者にとって新しく価値あるものでないと、評価されることで本人のやる気をそぐことにもなります。結果として創造プロセスを停止させ、創造力を育むプロセスを停止させることにもつながってしまいます。
(4)クリエイティビティを高めるヒント4
Ⅰ:心理的安全と創造性・・・創造性はさまざまな脳機能と関連します。偏桃体が極度に活性化すると他の脳機能が使われなくなるので、創造性を発揮するうえで心理的安全状態は前提条件となります。しかし、恐怖や不安体験の脳の学習は、創造性発揮の1ピースになり得ます。
Ⅱ:創造性も育まれる・・・創造性の脳機能は主として後天的に育まれ、変化し、使われた分だけ、成長します。多様な刺激と多様な脳処理を体験学習していくなかで、創造性に必要な脳が育まれます。
(5)クリエイティビティを高めるヒント5
Ⅰ:意識的無意識化・・・発送したい対象にどっぷり浸ったら、そこから無意識モードに入ってみれば、無意識にそのことを想起する可能性が高まり、創造プロセスを開始する可能性が高まります。
Ⅱ:単純なことに集中・・・どっぷりモードからの離脱には、他のことをしたり単純な作業に集中したりすることが有効かもしれません。どっぷりモードに浸った内容は、自然と思い出される可能性が高く、創造プロセスの機会になりやすいのです。
(6)クリエイティビティを高めるヒント6
Ⅰ:具体的な雑談の活用・・・発想が必要な時には、全く関係のない話題でも構わないので最近あった出来事をなるべく具体的に思い出すことがよいでしょう。その際、どのように感じたかまで表現できると創造力は高まります。目を閉じ、情景を思い浮かべながら行うとさらに効果的です。
 Ⅱ:未来に対する雑談・・・雑談の終わりに、具体的にあった出来事から未来をどうしたいのか、どうしたくないのか、未来はどうなっているか、などを頭縫い思い浮かべれば、その後の創造活動に良い影響がもたらされます。
7)クリエイティビティを高めるヒント7
Ⅰ:感情・感覚を味わう・・・創造活動には、自分の感情などをモニタリングする機能を持つ島皮質が関係しています。普段から、自己の感情、感覚に気づき、味わうことが大切です。その積み重ねが、創造力を育む一助となります。
(8)クリエイティビティを高めるヒント8
Ⅰ:違和感に耳を傾ける・・・違和感について考えたり、言語化したり、非言語的に表現したりする行為が創造や新しい発想の起点になることがあります。
Ⅱ:違和感は宝箱・・・違和感などの「何となく」感じる情報は、一般的には打ち捨てられる可能性が高いのですが、そこに「新しく」「有用な(価値のある)」発見が隠されているかもしれません。
(9)クリエイティビティを高めるヒント9
 Ⅰ:新しさを見出す・・・何気ない日常や日々のルーティンの中にも、必ず新しい要素は眠っています。単に新しいものに触れることで感度を高めるだけでなく、自分で能動的に新しさを見出す訓練をすることが大切です。
(10)クリエイティビティを高めるヒント10
Ⅰ:感情と感覚にフォーカスする・・・新たな発想の種になる感情や感覚は刹那的です。その情報を脳に留めて活用するために、自分の内面からの感情と感覚に強く焦点を当てることも重要です。
Ⅱ:認知バイアスに気づき上手く付き合う・・・脳は知らないうちに「当然~するべき」と認知します。それは情報処理を早めてくれる一方で、発想や気付きの限定をもたらします。自分の認知倍安の癖や思考に気づき、あえて崩してみるのはクリエイティビティを高める一助になる可能性があります。
(11)クリエイティビティを高めるヒント11
Ⅰ:不確かさを楽しむ・・・日ごろから曖昧、不確かな場面に直面したとき、その場を楽しんだ経験、快感情を覚えた経験が脳部位を強固にしてくれます。
Ⅱ:できた部分、できる部分を見る・・・期待値差分が少ないため、人の注意はできた点に向きにくいものです。できた部分に意識して注意を向け、できない理由ではなくできるための情報を探ることが大切です。
(12)クリエイティビティを高めるヒント12
Ⅰ:身体イメージを伴う想像・・・自分や自分に近しい人の動きを脳でイメージすることが、創造力を育む一助となる可能性があります。
(13)クリエイティビティを高めるヒント13
 Ⅰ:言語バイアスを解く・・・ものごとへの言語による意味付けは、時として情報を大きく限定します。直接的な言語のタグをあえて使わないで表現してみることも役に立ちます。
(14)クリエイティビティを高めるヒント14
 Ⅰ:解除する脳・・・好きなもの、価値があると分かっている者に注意を向けず、むしろ「何となく」の快の可能性に注意を向けることです。論理的、数的な処理を解除し、外界の情報は立ち、内向きの脳内機能を使いやすい状態にすることが、脳の創造プロセスを円滑にします。
2日間にわたり、長々と「ブレインドリブン」という本を紹介しました。コロナ禍やウクライナ情勢でネガティブなニュースが溢れています。入ってくる情報もネガティブなものばかりになると、そこに注意が向きネガティブなストレスが生まれ、脳にはネガティブな情報が刻まれて行きます。そうした繰り返しで、益々ストレスがたまり、精神的肉体的に疲弊していきます。この本によれば、自分の注意の向け方さえ意識すれば、脳の記憶は変わりストレスに打ち勝つことができそうです。本書は、そのための一助となるように思います。