中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

中小企業経営のための情報発信。中小企業から日本を元気に

組織の徹底力

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で1785人で、そのうち東京313人、神奈川64人、埼玉114人、千葉92人、愛知86人、大阪323人、兵庫93人、京都26人、福岡23人、沖縄68人、北海道74人、宮城134人などとなっています。日曜敏新規感染者が1700人を超えたのは1月31日以来で、大阪が東京を上回りました。全国的に急増していますが、各地で昼カラ、接待を伴う飲食店などでのクラスターが増えてきているのが原因です。気の緩みとともに歓送迎会など5人以上での会食も増加し、増加スピードは昨年末の緊急事態宣言前の段階に戻りつつあります。ルールを守ってしっかりとした感染対策を徹底するしかありません。

さて、今日は、ダイヤモンドオンラインの「コロナ禍のマネジャーには『徹底力』が必要不可欠な理由」を取り上げます。

以前にマネジャーとリーダーの違いについて触れたことがありますが、厳密にいえば両者は異なりますが、組織運営と顧客創造のマネジメントは密接につながっているので、リーダーにもマネジメントのスキルや能力は必要です。その意味では、マネジャーとリーダーはに近づいていきます。この記事のマネジャーをリーダーと読み替えても問題はありません。

1.リモートワーク下でより重要になる組織の「徹底力」とは何か

 新型コロナの感染拡大の影響によって、マネジャーの役割はより複雑化し、より重要になっています。単なる部署、部門の管理に留まらず、チームをまとめ、みんなの気持ちを奮い立たせ成果を生み出していくマネジャーの仕事には高度のスキルが要求されます。オフィス内での勤務であれば、場の雰囲気や暗黙のやり取りによって言葉によらないコミュニケーション(昨日の言葉で言えば「非言語的情報」によるコミュニケーション)がたくさん行われ、おのずと自社のミッションやビジョン、組織カルチャー、行動規範などが共有されたり、部下の顔色を見て「元気がなさそうだなあ」と気づいてフォローしたりすることができました。

 しかし、テレワークやサテライトオフィスなど時間と場所を共有しない働き方が増えると、言葉によらないコミュニケーションがなかなか成立しづらくなります。マネジャーは、オンライン会議などで部下の顔色や表情など非言語的情報を読み取ることが必要になりますし、これまで非言語的に行われていたコミュニケーションをきちんと言葉にしてみんなに伝えていくということが重要になってきます。特に、自社のミッションやビジョンを理解し、自分たちの現場に合わせた言葉にチューニングし、チームで共有する取り組みは欠かせません。これがなければ、離れた場所で働いている一人ひとりの判断がブレる上に組織の強さを生み出すことができにくくなります。

 組織の強さといっても色々ありますが、この記事では成果を生み出すためには「徹底力」が重要と言っています。ミッションやビジョンの文言の上っ面をなぞるだけの組織と、一人ひとりに腹落ちしている組織では、何かを決めて実行するときの徹底力に違いが出ます。マネジャーがビジョンやミッションを理解しメンバーにきちんと伝え、全体で共有できている組織では「これをやろう」と決めた瞬間から全員が一つの方向に向かって動き出し、徹底して実行されます。

 非言語的なコミュニケーションが難しいテレワークにおいては、マネジャーが中心となり、意識して組織の徹底力を醸成する必要があるのです。

2.強い組織はミッション、ビジョンが日常会話の中で頻出する

 マネジャーがミッションやビジョンの共有を行うためには、まずマネジャー自身が深い水準でそれらを理解しなければなりません。そのためにはミッションやビジョンを制定した経営者の思考を理解する必要があります。

 ミッションとビジョン、それらが作られた背景にある経営者の思考や考え方を知り、腹落ちしたら、次はそれを自分の現場に応じた言葉で表現し、部下に伝え、みんなで話題にすることです。「ビジョンやミッションから考えると、このアクションはどうなるのか?」「この取り組みはビジョンの実現にどのように貢献するのか?」というような会話が日常的に出るようになればしめたものです。そうしたやり取りの中から、自分たちにとって何が大切で、何がどうでもよいのかの価値基準が共有されて行くからです。

 何が大切で何がどうでもよいのかが共有され、自由に議論できる風土があれば、「こんな意味ないことに手間と費用をかけるのはおかしい」と本質的な議論ができ、それに基づいて適切な対応が取れるようになるのです。

 マネジャーやリーダーの仕事というのは本当に大変な仕事です。現在、マネージャーやリーダーであっても部下の管理だけを行っているという人はほとんどいません。部下の管理だけでなく、自分自身もプレーヤーとして動き回っています。特にリモートワークが日常化すると、部下の管理は更に困難になります。

しかし、マネジャーやリーダーがビジョンやミッションを理解し腹落ちして自分の言葉で部下に伝え、全員がそれを共有できるようになれば、部下のモチベーションを高め自発的に動くようになります。そうなれば、マネジャーやリーダーによる部下の管理は軽減されます。そのためにも組織の徹底力の醸成が必要不可欠です。 

休日の本棚 人は見た目が9割

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で2073人、そのうち東京430人、神奈川102人、埼玉124人、千葉97人、愛知58人、大阪386人、兵庫164人、京都32人、福岡38人、沖縄98人、北海道62人、宮城129人、山形45人などとなっています。リバウンドしていることは明らかなようで、花見客や駅・繁華街の人でも暖かい陽気のせいもあってか増えていて更なる感染拡大が懸念されます。

大阪大学名誉教授の宮坂昌之氏(免疫学)は「すでに第4波に入っている」との見解を示し、大阪の増加は「社会に一定数の感染者が残っていて、そこから感染が広がっている」「半分くらいは変異株に置き換わっている」とし「変異株はどうしようもないので、今までと同じことを粛々ときちんとやることだ」と警戒継続を促しました。一人ひとりが気を緩めることなくこれまでの感染防止策を徹底するしかありません。

さて、東京五輪パラリンピック大会組織委員会森喜朗元会長の女性蔑視発言にはじまり、開閉会式の「容姿弄り問題」で演出トップの佐々木宏氏が辞任するという騒動がありました。再び、森元会長の「女性というには、あまりにもお年」発言が波紋を呼んでいます。そうした中、デイリー新潮に「『見た目で判断するな』の声に『人は見た目が9割』著者はどう答えるのか」という記事が載っていました。

そこで、今日は数年前にブームとなった竹内一郎著「人は見た目が9割」(新潮新書を紹介します。

確かに人は見た目で判断されることがあります。先日来話題に上がっていた東北新社の役員であった菅首相の長男がロン毛で髭ということが報道されると「やっぱり怪しい、信用できない」という声が上がりました。

人は見た目で判断するな」と言われますが、実際多くの場面で「見た目で判断されている」というのが実際のところです。

竹内氏は「見た目で差別してはいけないけど、判断基準に『見た目』を持つことや、自己演出の際に『見た目』を考えることも大切である」と言います。

この本のタイトルについて、不謹慎だという批判もありました。

しかし、竹内氏がこの本が言っている「人は見た目」というのは、容姿やルックスを言っているわけではありません。この本の「見た目」というのは、「言葉」以外の情報、つまり「非言語情報」のことで、「声音」「イントネーション」「目つき」「身のこなし」「間の取り方」など、膨大な非言語情報をまとめて「見た目」と言っているのです。こうした要素を「見た目」と表現することが妥当かどうかという問題もありますが、竹内氏はそのように定義づけして使っています。この本の「見た目が9割」というのは、「言葉そのもの」が印象に与える影響はことのほか少なく(せいぜい1割)、他の「非言語情報」が与える影響がほとんど(9割)という意味です。

人は他人とコミュニケーションをとる際に、言葉だけのやり取りをしているわけではなく、表情や動き、イントネーション・話し方などの非言語的情報を含めてコミュニケーションをとっています。

演出家であり漫画原作者でもある著者が、仕事であつかう事例を面白く紹介しながら説明してくれています。演出家の立場で言えば、役者のしぐさ・ヒゲ・衣装の色などが持つ情報、漫画原作者の立場で言えば、背景の書き方や登場人物の表情などセリフ以外の非言語情報を駆使しなければなりません。

私たちは、特に対面でのコミュニケーションの場合は、言語以外の表情や話し方といった非言語情報抜きには成り立っていないと言っても過言ではありません。相手の表情や話し方から、言葉(YES)とは反対の相手の真意(NO)を読み取ったりしています。

人とのコミュニケーションを考えると、言葉だけでなく非言語情報の重要さが見えてきます。相手の非言語情報だけでなく、自分の非言語情報が相手にどのような印象を与えているのかを知ることも重要になるのです。

先ほどの例で言えば、「サラリーマンや役員がロン毛やヒゲをはやしているのは良くない」とは思いませんが(これも個性です)、そのような個性の見せ方をするのであれば、あらかじめどう受け止められるかを計算したうえで行うべきです。「ロン毛やヒゲ」では独創性やワイルドさを演出できますが、地味・保守的・真面目さといった印象を与えるのは難しくなります。相手がどう感じるかは相手次第の面もありますが、そこまで考えて演出しなければならないのです。

第1話 人は見た目で判断する

第2話 仕草の法則

第3話 女の嘘が見破れない理由

第4話 マンガの伝達力

第5話 日本人は無口なおしゃべり

第6話 色と匂いに出でにけり

第7話 世い間、悪い間、抜けてる間

第8話 トイレの距離、恋愛の距離

第9話 舞台は人生だ

第10話 行儀作法もメッセージ

第11話 顔色をうかがう

以上の11話で、心理学、社会学からマンガ、演劇までの知識を用いて「非言語コミュニケーション」のやり方のヒントを与えてくれています。今日は、ネタバレになるので要約はやめておきます。1、2時間あれば読める肩の凝らない面白い読み物なので、興味があれば読んでください。

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休日の本棚 最強の経営学

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で2028人、そのうち東京376人、神奈川117人、埼玉135人、千葉135人愛知64人、大阪300人、兵庫116人、京都20人、福岡28人、沖縄89人、北海道69人、宮城153人などとなっています。2月6日以来の2000人越えで、大阪では1月30日以来300人を超えました。三八五は3日連続で150人を超え深刻な状況です。先日も書きましたが、宮城では飲食店への時短要請の解除並びにGotoイート再開後に急増しています。

菅首相は、予算成立後「新型コロナ対策をしっかりとやっていきたい」と述べた一方で、政府はGotoトラベルの再開は見送ったものの「4月以降、県内旅行について最大7000円まで観光支援する」と発表しました。リバウンドが起き、さらに変異ウイルスの猛威が懸念され、本来なら人の移動を制限し気を引き締めなければならないにもかかわらず、まったく真逆の政策を取ろうとしています。第3波の時に前倒しでGoToトラベルやGotoイートを行い感染拡大を広げた教訓が全く生かされていません。ここまで学習能力がないとは、今の政府は痴呆状態、地に落ちたものです。こうした政府に踊らされて気を緩めはしゃぎ回っている国民も困ったものです。賢明な国民の皆さんは、気を緩めることなくいましばらく我慢しましょう。

さて、今日は、島田隆著「最強の経営学」(講談社現代新書という本を紹介します。経営学と言えば無味乾燥で実務には役立たないというイメージを抱く人も多いのですが、最近の経営学の本は、極めて実践的です。この本も負けず劣らず、実例と最新理論で経営の本質が説かれていて、机上の学問で終わらず実務に役立つ本になっています。

時代の変化に伴って、さまざまな経営理論が唱えられてきましたが、ビジネス・経営の本質は大きく変わっていません。利益があって初めて企業は存続・成長できるとか、キャッシュフローの重要性とか、そもそもリスクをとるとはどういうことかなど、基本的なところは何も変わりません。そうした基本的なことを理解したうえで、さまざまな新しい経営理論を自分なりに整理し位置づけるということが重要です。そういうところがなくては、理論に振り回されるだけで、会社の経営にとっては何のプラスにもなりません。いかに社会が複雑化しようと本質的なところは極めてシンプルです。

この本は、そうした基本的な観点から「経営とは何か」「ビジネスとは何か」を捉え、経営課題に向き合っています。

序章 「情報の4段階」をおさえよう

 さまざまな情報をどのように集め、分析し、経営判断していくかということは、経営戦略の根幹にかかわります。データ分析については先週「会社を変える分析の力」という本を紹介しています。

 ひと口に「情報」と言っても色々な情報があり、「情報過多」で役に立たない情報やエセ情報・フェイクニュースが溢れています。情報ばかりを集めていると、情報の海に溺れ、ITという言葉に騙されて貴重な経営資源を失うことにもなりかねません。

 この本では、企業経営における情報の使い方の基本は、「情報の4段階」を押さえることと言っています。

  1. データ・・・データだけを見ていても意味がない。データは所詮データに過ぎない。経営を考えるとき、データだけではほとんど意味を持たない。データをもう少し加工して、まず「インフォメーション」のレベルに持っていかなければならない。
  2. インフォメーション・・・データをさまざまな角度から集約、加工した者がインフォメーションである。
  3. インプリケーション・・・「それでどうした?」So What?のこと。インフォーメーションだけでは意味がない。それを自分の頭を使って考えるのがインプリケーション。
  4. ジャッジメント・・・インプリケーションに基づく意思決定。データ分析は意思決定に寄与して価値がある。しかし、意思決定しないというのも一つの意思決定である。

第1章 企業経営の「4つのレバー」

 企業経営とは、利益を増やすために売上げを増やす算段はないか、コストを下げる方法はないか、あるいは価格を上げる算段はないかを不断に考えていくことです。マーケットの論理に則りながら、合理的に、ゴーイング・コンサーンとして利益を拡大再生産していく方法論を企業経営のレバーといますが、この本では企業経営のレバーは次に4つに分けられると言っています。

  1. 基礎体質・・・その会社が基盤にどんな体質ー能力・文化、仕組みを持っているかということ。財務体質や営業力と言った基礎体質も重要だが、どのような企業文化があって、社員を動機づける仕組みはどうなっているか、新しい事業にチャレンジしていく仕組みはあるかなども重要。
  2. コスト論・・・コスト削減のための方法論。「標準原価」というコスト管理法や範囲の経済性など。
  3. 売上増・・・利益を上げるために売り上げを増やす方法論。商品開発力を高める、販売力を強化する、マーケティング力を強化する、新しい事業を創造するなど。
  4. ポートフォリオ・・・会社が持っている資源(人的資源や設備などのモノとしての資源を含め)を、どういう事業にどれくらいの比率で配分するのかという資源配分の枠組みを考える、あるいは変えること。

 基礎体質を活かしながら企業の体質をより新しくし、新しい事業にチャレンジできるような体制をどう作るかというレバー。より直接的にコストを下げるためには、どんな手があるのかというレバー。売上を増やすというレバー。そして、ポートフォリオを有効に変えていくレバー。これらのレバーを使いながら、事業の収益性を上げるためにどういう手を打っていくかを考え、意思決定していく、それが企業経営というものです。

第2章 キャッシュフローで読む「日産の教訓」

 ここでは、ケーススタディとして、日産の窮地をキャッシュフローから見ています。日産の具体的分析については、本書に譲りますが、ビジネスというものは、リスクをとってキャッシュをぶち込み、経営努力を傾注してキャッシュの回収を図ること、あるいはキャッシュをもっと増やすことです。

 経営に注ぎこまれるキャッシュはリスクマネーです。こうしたリスクマネーには返済の必要のない自己資本が最も適しています。借金は本来リスクマネーに向いていないのです。日本の多くの企業は、短期の借入金を借り、借り換え借り換えでつないでいくというスタイルをとってきました。トヨタは無借金経営ですが、日産は有利子負債が大きな問題になっていたのです。

キャッシュフローをしっかりと見た経営をしないと、「金は天下の回り物」ではなくなります。企業は赤字になったからと言って、キャッシュが回っていれば倒産することはありませんが、たとえ黒字企業であっても資金がショートすると倒産してしまいます。それほどキャッシュは大事です。

第3章 コストを下げるということ

 ここでは、ゼネラル・エレクトリック(GE)がケーススタデイとして取り上げられています。

 経験曲線というものがありますが、これは競争状態の中でしのぎを削ってきちんと何かを稼ごうと努力していくならば、コストは経験量が増えれば増えるほど下がるというものです。しかし、単位当たりのコストは動態的に変化します。今日のコストと明日のコスト、3か月後、半年後のコストは変わります。このユニコストは変わるということを頭に入れたうえで、価格設定やマーケティング戦略だの、さまざまな意思決定をしていこうというための指標が経験曲線です。

競争のルールはどんどん変わります。その時々で、勝負どころは変わり、コスト要因ごとに低減効果も変わってきます。この事業は今どこで勝負しているのか、それはコスト面でどういう効き方をするスケールカーブに乗っているのか、を事業ごとに見たうえで、コスト戦略、全体の企業戦略を考えなければなりません。つまり、事業ごとにプロダクト・ライフサイクルを考え、各要素のコスト削減効果を考え、経営者はそれらを総合して各事業への資源配分の軽重を判断しなければならないのです。コストを下げるというレバーは、以上のような要素をきちんと見なければ、てことして作用しないのです。

第4章 ポートフォリオ経営学

 ここではミネベアがケーススタデイとして取り上げられています。

 ボストン・コンサルティング・グループ(BBG)によって提唱されたポートフォリオ・マネジメント論が紹介されています。これは、プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPMと呼ばれるもので、縦軸に市場の成長率、横軸に相対マーケティングシェアがとられ、花形(高成長率・高シェア)、金のなる木(低成長率・高シェア)、問題児(高成長率・低シェア)、負け犬(低成長率・低シェア)の4つに区分し、各事業状況を俯瞰するものです。自社内の事業を分類・整理でき、選択と集中に役立つものです。ポートフォリオというのは、経営資源をどのように配分するかというもので、資金をどう配分するのか、どこに設備投資するのか、どの事業にどれだけ人材を配置するのか、これらが重要なポイントとなります。ポ^とフォリオ・マネジメントでは、横軸のマーケットシェアによって「キャッシュフローを稼ぐ力」がおおよそ測られ、縦軸の成長率では「キャッシュを必要とする度合い」がつかめます。さまざまな性格の事業について、おおまかなキャッシュの流れが把握できるのです。

 しかし、相対シェアと成長率という要素が余りにもシンプルなため、一般的な議論しかできず、実際の意思決定にはつながりにくいという欠点が見つかり、最近ではフリーキャッシュフローの観点から、具体的にどれだけキャッシュを稼いでいるか、それに対してどれだけのリスク資産を使用しているかという対比が重視されるようになっています。

第5章 売上増と事業創造

 売り上げをどうやって増やすか、については、

  1. シェア拡大・・・競争者以上にシェアを取ることでさらに売上げが伸びる。戦略的セグメンテーションの技法=セグメントによってニーズの在り方が違うということが分かれば、商品もセールスの仕方も違ってくる。
  2. 事業創造・・・新しい商品やサービスを創造し、それによって売上げを増やす。事業というのも進化する。市場が成熟し、効率化の時代に入ったならば、企業も自らの組織を変えていく必要がある。組織を変えるということは、企業の戦略も変えていくことを意味する。

という2つの方法があります。

 組織変革は人事戦略にも影響します。ただ漠然と「業績主義にすれば人件費を減らせる」「社員は働くはずだ」というのは間違いです。管理するのではなく、人をどう育て、どう動機付けしていくか、人の活用法を考えなければ、事業の根幹は変わりません。社員自身が自ら動くような動機付けの仕組みを作り上げることが重要です。

 売上増のためにも事業創造のためにも、この動機付けの仕組みは非常に大切です。

第6章 デジタル時代の経営学

 企業経営の方法論は時代とともに変化します。新しい時代の風が吹くと。それに適した新しい組織形態や経営の「レバー」が考案されます。

 今やITやデジタル化、DXがもてはやされていますが、その流れは新型コロナ禍で加速しています。企業経営もこれを避けて通ることはできません。しかし、これまで何度も書いていますが、それらは手段にしかすぎません。企業にとっての目的・目標にとって、それらがどのように役立つのかを見極める必要があります。流行りだからと言ってそれに飛びつくことは間違いです。

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一発逆転ではなく、仮決め仮行動・軌道修正が大事

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で1917人、そのうち東京394人、神奈川121人、埼玉113人、千葉98人、愛知79人、大阪266人、兵庫100人、京都24人、福岡28人、沖縄77人、北海道67人、宮城161人などとなっています。更に山形で49人、愛媛で59人と過去最多を更新し、全国的にリバウンドしています。また、変異株に罹患した感染者もも各地で見つかっています。こうした中始まった東京五輪聖火リレーでは、沿道に観覧者が密になって応援していました。公道でのイベントの規制の難しさを感じますが、こうした経験を、実際のオリンピックで公道を使用するマラソンなどの競技の運営に生かしてもらいたいものです。

さて、今日は、ダイヤモンドオンラインの「コロナ時代に絶対に身につけたい『グレー力』まずやるべきことは何か」という記事を取り上げます。

まず、記者が言う「グレー力」ですが、正解が見通せなくても、状況が刻々と変わっていく中で、仮決め仮行動で軌道修正していける力のことを、本記事の記者は「グレー力」と呼んでいます。

新型コロナ禍で、世界や社会が激動していく中で、「このままではいけない。何とかしなければ」と思いながら、何もできないでいる個人や企業がいます。

1.行動できない人が持っている「共通の思い込み」

 行動できない人が持っている「共通の思い込み」を次のようなものがあります。

  1. 失敗してはいけない
  2. 正しい答えを見つけなければならない
  3. 行動するには完璧でなければならない
  4. 一度始めたら成果が出るまで継続しなければならない

 こうした思い込みが行動に移すのを躊躇わせています。コロナ禍のような危機的な状況では、何が正解か分からず、どこへ向かうのか、目指すべき方向が見えてきません。すると、現状維持、とりあえず今までと同じ状況を死守したくなり、何ら効果的な行動に着手せず、ダラダラと1年、2年と時が経過するだけで終わってしまいます。

 先が見通せない状況でも、本当に変わりたいというのであれば、予定調和の日常から一歩踏み出すしかありません。別に「行動する」と言っても、大逆転を狙う必要はありません。「まず第一歩を踏み出す」だけでいいのです。

2.変化の多い時代だからこそ「近道」や「一発逆転」は不要

 「大きなことをしなければならない」と一発逆転を狙えば狙うほど、思考や行動も硬直化してしまいます。ちょっとしたアイデアを思いついても、「この程度のことで一発逆転を狙えないからやっても無駄」と諦めたり行動に移したりできず、言い訳ばかりで行動に移しません。

こうした状態から抜け出るために、この記事では、「仮決め仮行動」を薦めています。

「今はやっていないけれど、自分にとって大事なこと」を仮に決めて行動するということです。仮に決めた行動がしっくり来ればそれを繰り返し、しっくりこなければ別の行動を仮決めして行動すればいいのです。一発逆転を狙うのではなく、自分がやりたい方向に近づくための小さな行動を仮決めし仮に動く、そして動いたことで得られる反応や反響に応じて軌道修正するというのを繰り返していけば、目的にたどり着けます。これが最短方法です。

3.不安だからこそ大切な「グレー力」

 仮に決めて行動を起こしても、思うような結果が得られないこともあります。しかし、それは「失敗」ではありません。ちょっと行動して思い通りの結果が出ないのも、行動した結果得られた成果です。本当の失敗とは、不安を理由に行動を起こさないことです。 不安があるのに行動に移さないのは問題の先送りにしかすぎません。

「不安があるから行動しない」から「不安があるからこそ、まず動いてみる」に変えることが大切です。

4.不安が希望に変わる「ウイークリーノート」

 「不安だからこそ、まず動いてみる」ために具体的に何をすればいいのでしょうか。

 この記事では、「1週間単位」で目標を仮決めし、仮行動して、軌道修正していくという方法を繰り返していけばいいと言っています。これを「ウイークリーノート」と呼んでいます。

5.変化の時代に一番効果的なのは「1週間」を積み上げていくこと

 「週」1回であれば、何とか時間を確保でき、実際に行動できるはずです。「毎日」なら忙しすぎて時間が取れなくなることもありますし、「毎月」となると間隔が空きすぎます。1週間単位で考える習慣を身につければ、年に50回以上も見直す機会が得られます。時代や状況の変化に柔軟に対応できるのです。

 「しっかり考えてから行動に移す」完璧主義者では、ちゃんと計画を立て用意周到にシミュレーションしてから着手しようとしているうちに時間だけが経過し、チャンスを逃すことにもなりかねません。1週間単位で小さく行動する方が、試行錯誤や軌道修正はしやすくなります。

変化の時代には、スピードが命です。初動が肝心です。先ず小さく仮決めし、行動に移す、まず着手することです。1週間単位で小さく考えていくことで物事がスムーズに進むことになります。

これは、個人の行動だけでなく企業においても当てはまるように思います。参考にしてください。 

部下の「隠された意図」をつかむ

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で1921人、そのうち東京420人、神奈川128人、埼玉121人、千葉108人、愛知74人、大阪262人、兵庫118人、京都19人、福岡24人、沖縄68人、北海道81人、宮城171人などとなっています。1900人を超えるのは2月6日以来で明らかにリバウンドが起こっています。大阪も200人を超えるのは2月5日以来で、緊急事態宣言解除による気の緩みが原因でしょう。また、変異株の拡大も影響しているのかもしれません。こうした中、今日から東京五輪パラリンピック聖火リレーがスタートします。沿道での観戦者を極力減らし、万全の感染防止策をとって行ってもらいたいものです。

さて、昨日は「リーダ-は自分の『位置』を考えなければならない」ということを書きました。今日は、それとも関連しますが、現代ビジネスの「部下に『教えてください』と言われても、素直に教えてはいけない『意外なワケ』」を取り上げます。

昨日の話では、上司が部下の相談に乗っていいのは、①「部下の権限では決められないこと」を決めるとき ②「部下が自分で決めていい範囲かどうか」迷っているときの2つだけということでした。部下が自分の権限で決めることができる内容については「突き放す」ということが基本だという話でした。もっとも、思い悩んだ末に決めかねて、部下が上司に相談しているのなら、何に悩んでいるのかを聞き出し、結論への道筋をアドバイスするのは許されると思います。

今日の話もその続きで、部下に安易に解決策を与えたり、仕事自体を引き取ってしまうといつまでたっても、部下は自分で考えて行動するようにはならないということです。

上司は、部下から「教えてください」と素直に頭を下げられると弱いもので、ついつい甘くなって教えてしまいます。それでは部下の成長はありません。

この記事では、部下から「教えてください」と言われたときには復唱と合いの手を貫くのがいいと言っています。つまり部下が「教えてください」と言ってきたとき、上司は「教えてほしいんだね」と復唱し、「それで?」と合いの手を入れて部下の反応を待つのです。「教えてください」という言葉に素直に乗らないことで、部下の感じていることやか㎜が得ていることへの理解を深めることができるかもしれないのです。部下が何に悩んでいるのか、どのような解決策で悩んでいるのかhが分かるかもしれません。また、上司が「それで?」と問いかけることで、部下自らそのことを考える中で、自らの悩みへの解決策を見出すかもしれません。

また、部下が上司に怒られるかもしれないリスクを冒してまで「教えてください」と言ってくるのは、同僚や先輩に相談しても解決できなかったからかもしれません。そうであるならば、「何かあるな」とアンテナを張って、部下の「教えてください」という言葉の裏に「隠された意図」を探さなければなりません。部下の「教えてください」という言葉の裏には、「相談したいこと」や「伝えたい何か」が隠されているのかも入れないのです。

この記事では、部下の「隠された意図」をつかむための具体的な対話のスキルとして、次の4つが挙げられています。

  1. ステップ1:復唱する・・・単純な復唱のコツは、キャッチボールをイメージすること。具体的には相手が投げてきたボール(言葉)を受け取り、それをそのまま相手に投げ返すイメージです。
  2. ステップ2:真意を引き出す・・・部下が本当に話したかったことを引き出す。キャッチボールをしながら、会話の中から部下から言いにくい真意を引き出すこと。何気ない相談の裏に深い「真意」が隠れているかもしれません。
  3. ステップ3:テーマを設定する・・・部下の真意を掴んだら、それを基にテーマ設定すること。相手の言葉を復唱して伝え確認を取ることで、上司と部下はこれから同じ話題について話していくのだというプロセスへの理解が深まります。
  4. ステップ4:合意形成する・・・テーマ設定が完了すれば、上司と部下が同じ話題について話すということについての合意を取り付けること。

ただ、「教えてください」という言葉の中には単に「聞いてほしい」だけということもあります。こういう場合にも無碍に突っぱねてはいけません。

これからのリーダーシップには、相手の感情を理解して働きかけるコミュニケーション力が必要です。

以前にも書きましたが、現代の職場では様々な価値観を持つ人がいて多様化しています。報酬や昇進と言った外的要因ではなくどのような感情を抱くかという内的要因がモチベーション向上に役立つようになっています。こうした機会は部下との信頼関係を構築するためのチャンスであり、これによって部下のモチベーションを高めることにもなるのです。 

 

リーダーは自分の立っている「位置」について考える必要がある

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で1503人、そのうち東京337人、神奈川72人、埼玉136人、千葉74人、愛知63人、大阪183人、兵庫84人、京都14人、福岡36人、沖縄75人、北海道42人、宮城121人などとなっています。増加傾向にある地域が増えているように思います。大阪では緊急事態宣言解除後最多となり、宮城も過去2番目の新規感染者数となっています。宮城では県独自の緊急事態宣言が発動されていますが、政府はまん延防止等重点措置の発令に極めて慎重な姿勢でいます。またしても後手後手の対策となり、何のための「マンボウ」なのかと言いたくなります。マンボウことまん延防止等重点措置は、緊急事態宣言が出ていなくても集中的な対策を可能にするために新設された措置ではなかったでしょうか。感染拡大が続き10万人当たりの新規感染者が全国第1位となり、さらにステージ4を上回っている宮城において、今こそ政府がとるべき措置ではないかと思います。

さて、今日はビジネス+ITの「『1on1』を重視するリーダーがしている盛大な“勘違い”」という記事を取り上げます。

識学代表取締役の安藤広大氏は「リーダーは自分が立っている『位置』について考える必要がある」と言い、多くの企業が取り入れている「『1on1ミーティング』は駄目なマネジメント法だ」と断言しています。

1.リーダーは「お願い」をするな

 組織においてリーダーは部下を評価する立場にあり、正しい評価のために「平等に見ること」が求められます。しかし、「平等」とは、対等という意味ではありません。「位置を明確にしたコミュニケーション」を部下たち全員にできているかということです。部下に仕事を任せるときに、「時間があるときでいいから、資料をまとめておいてくれ」「やりたくなければ断ってもいいが、この仕事やってくれるかな」などというのは。典型的な「位置」を間違えた言い方です。これでは「指示」ではなく「お願い」です。対等な関係や場合によってはお願いされた方が上の立場になるような言い方は絶対やってはいけません。このような「位置」を間違えたコミュニケーションは徹底的になくさなければなりません。

2.「正しいほうれんそう」とは?

 「位置」の概念は知らないうちに忘れがちになります。そうならないために、日常的に上司と部下の「位置」を部下に確認させる方法が必要になります。これが「ほうれんそう」、つまり、報告・連絡・相談による管理です。

 安藤氏は、昨今はやりの「部下が自主的に行動すること」というマネジメント方法は間違っていると言います。これでは「成長する人はどんどん成長し、ダメな人はずっとダメなままになる」と警鐘を鳴らしています。

そして、「ほうれんそうによる管理」は「実行すれば、全員が成長できる」と言っています。なかなか結果が出ない部下には「ほうれんそうによる管理」の回数を増やし、結果が出てくれば回数を減らせばいいのです。部下から見るとほうれんそうは億劫になりますが、それは「できていないと怒られるんじゃないか」「間違っていたら図師湯」などと感情が絡んだ「見えないハードル」があるからです。スムーズに「ほうれんそう」をさせるには、損場でh目たり叱ったりせず、「機械的に事実を聞く」という態度がリーダーには必要だと安藤氏は言います。ほうれんそうで感情的な評価をしてしまうと誰でも、報告も連絡もしたくなくなるからです。

3.1on1ミーティングが「ダメな方法」と言えるワケ

 今。1on1(ワンオンワン)ミーテイングという手法がもてはやされています。部下に対して「最近の調子はどう?」「何か困っているこてゃ内か」と個別にカウンセラーのようにヒアリングをし、モチベーションを向上させようとするマネジメント方法で、リモートワークの導入で活発に採用されています。有効に機能している面もありますが、安藤氏は「1on1ミーティング」は「位置を間違えたダメな方法だ」と断言します。「1on1」というのは「部下に寄り添うこと」を前提としています。部下に寄り添うことが、マネジャーやリーダーの役割だというのは大いなる勘違いだというのです。しかもこれはマネジャーやリーダーに悪気がないので厄介な勘違いです。部下は上司に寄り添ってほしいなどと思っていません。部下が話を聞いてくれるリーd-を求めているのは、できなかったときの言い訳を聞いてほしいからです。これでは、寄り添っているつもりのリーダーが部下の成長を止め、あるいは部下の成長が止まった状態を正当化してしまうことになります。

 上司が部下に確認するのは、あくまでも「情報を吸い上げる」という行為だけです。

4.上司が部下の相談に乗っていいのは「2つ」だけ

 部下の相談に乗ってばかりいると部下の成長は止まります。安藤氏は、上司が部下の相談に乗っていいのは次の2つだけだと言います。

  1. 「部下の権限では決められないこと」を決めるとき
  2. 「部下が自分で決めていい範囲かどうか」を迷ったとき

 相談に乗ってはいけないのは、明らかに部下の権限で決めることができる内容です。これについて、上司が部下の相談に乗り「こうすればいいんじゃない」と言えば部下の責任は「上司の言うとおりに提案すること」に切り替わります。必要以上に相談に乗ることは部下の責任範囲を狭くし、言い訳できる環境を作ります。確かにこの通りですが、部下が自分の責任範囲にある問題を相談に来た時に「突き放す」というのもいかがなものかと思います。部下も自分責任範囲にあることは分かっています。それにもかかわらず、上司に相談するというのは思い悩んだ末に決めかねているからです。部下が何に悩んでいるかを聞き、その解決の糸口は何か、アドバイスすることは上司の役割だと思います。上司が結論を出すのではありません。結論を出すのはあくまでも部下ですがそれへの道筋をアドバイスするのは許されるはずです。

安藤氏が言うように「リーダーは自分が立っている『位置』を考える必要がある」というのも事実ですが、これにあまりにもこだわりすぎると、硬直的になり、かえつて上司と部下との人間関係、組織やチームの関係性にヒビを入れることにもなりかねません。

安藤氏の考えも一つの考え方・方法論と思い、部下とのより良い人間関係を築き上げるために自分の立ち位置を生かしていくというのがよいでしょう。

片隅の変人(PD)を真似ることで組織変革につながる

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で822人、そのうち東京187人、神奈川56人、埼玉60人、千葉97人、愛知31人、大阪79人、兵庫23人、福岡15人、北海道50人、宮城42人などとなっています。検査数の少ない休日のデーターで減少しているように見えますが、先週に比べれば増加しています。横ばいからリバウンドしてきていると言っていいように思います。緊急事態宣言解除を受け、各地の人出は増加し花見を行っている人もいます。2週間後、3週間後が心配です。

さて、今日は東洋経済オンラインの「成果を出せない『コマドリ』組織の残念な思考」という記事を取り上げます。

この記事は、組織改革が失敗に終わる原因や探し出したPD(最悪の状況で成果を上げている逸脱者)の行動特性を組織で共有するためのヒントについて、神戸大学大学院の原田勉教授が解説したものです。

1.悪名高い密輸商人は、なぜ捕まらないのか?

 トルコ民話の登場人物、ナスレッディン・ホジャは悪名高い密輸商人。ホジャは藁を詰め込んだ鞍袋を背負ったロバの隊列とともに定期的に国境を行き来し、裕福になっていきます。税関吏は密輸品があると疑い探しますがどうしても見つかりません。密輸品はロバなのです。

 見えるはずなのに見えないもの、私たちの身の回りはこのようなもので満ち溢れています。なぜ見えないかと言えば、私たちは「思い込み」「常識」「暗黙の前提」など、いわゆる「メンタルモデル」と呼ばれるものを持っているからです。このメンタルモデルは、日常では効率的な意思決定を可能にする一方で、新たな問題に直面したした場合、税関吏のように「見えるはずなのに見えないもの」を作り出します。それによって問題の解決を困難になるのです。

 原田教授は、「この『見えるはずなのに見えないもの』が実は組織変革のカギになる」と言います。

 ゼロベースの抜本的な組織変革は、トップダウンで実施されるもので、トップが組織変革に対する正解を持っていることと技術的問題に限定されるという条件で、うまく機能します。しかし、適応課題と呼ばれる人間の行動変容を要する問題の場合、人間の感情が複雑に絡むので、論理的・機械的に因果関係を特定し、原因を特定することはできません。この場合には必然的に多くの関係者の行動変容が必要なため、トップダウンで行おうとすると組織に混乱をもたらし、問題をさらに悪化させることになります。

2.片隅の変人=ポジティブな逸脱者

 この適応課題に有効なアプローチは、ポジティブデビアンス(PⅮ)と呼ばれるものです。PⅮと言えば、「片隅の変人」のことです。片隅というのは、身近なところにいて、置かれた状況や才能、資質の点で他の人たちと何ら変わるところがないという意味です。しかし、ある部分において他者と異なるところがあり、ポジティブな方に逸脱しているのです。ですから、いい意味での変人です。

 原田教授は「この『片隅の変人』の行動に着目して、それを模倣することが組織やコミュニティの変革につながる」と言います。

 ここではボリビアケチュア族の子供たちの成長障害という問題が例として挙げられています。貧しい家庭の中でも、成長障害の子供がいる家庭といない家庭があります。スープに入っている食材や食事の量も変わりません。スープのすくい方に違いがあったのです。鍋の表面しかすくわなければ子供たちは具材を食べることはできません。ケチュア族には、具材は労働に従事する大人が食べるものとの暗黙の前提、メンタルモデルがありました。成長障害の子供がいなかった家庭は、子供にも鍋の底から混ぜてすくっていたので子供も具材を食べることができていたのです。ケチュア族では、片隅の変人と言っていいPⅮ家庭では成長障害は起こっていなかったのです。成長障害を解決するカギは新たな食糧支援による栄養補給ではなく、今ある食事の中でのスープのすくい方を変えるという簡単なことにあったのです。

3.「見えるはずなのに見えないもの」に気づけない。

 先ほどのPⅮ家庭の母親たちは、自分たちが特別のことをしているという自覚もありません。このようなスープの注ぎ方の違いに注目するというのは、保健専門家や栄養士には難しかったと思われます。彼らは栄養や衛生状態に着目するように訓練されており、それがメンタルモデルを形成しているからです。彼らは、「見えるはずなのに見えないもの」に気づくことができず、大規模な栄養補助食の支援という技術的な問題を提案しました。しかし、この方法では、支援がされている期間は上手くいきますが、支援が打ち切られると元に戻ります。

重要なのは、問題があるにもかかわらず、それをうまく回避している片隅の変人がいるということです。このような片隅の変人を特定し、その行動特性を明らかにするのがPⅮあぷろーちで、「見えるはずなのに見えないもの」に気づくことがカギになります。そのためには、問題を顕在化させる構造に着目するのではなく、その構造を生み出す行動やメンタルモデル自体に焦点を当て、それをPⅮ行動と比較することで違いを見出すことが求められています。

4.コマドリカササギ

 PD行動の特性が明らかになったとしても、それを再びトップダウンで普及しようとすれば失敗します。人間は強制されると反発するからです。新たな行動が業績向上につながることが明らかになれば、人は自発的にそれを採用するようになります。

 ここで挙げられているのが、コマドリカササギの行動特性の違いです。

 コマドリは非常に縄張り意識が強く、比較的孤立して生息しています。その鳴き声は、常に自分の縄張りを主張しています。コマドリとは対照的に、カササギは非常に社交的で、知性を活用しています。

 19世紀後半の英国では、酪農家は顧客の玄関先に置かれた容器にミルクを注いで配達していました。しかし、鳥がこのミルクを盗るようになり蓋が付けられました。少数の賢い鳥がくちばしでつつくと蓋を突き通せることを発見します。この方法はカササギの間では大いに広まり、ほとんどのカササギがこの方法でミルクを盗りました。一方、カササギの行動を見て一部のコマドリは真似しましたが、この方法はコマドリ全体には広がることはなかったのです。

 PDの行動特性が発見されても、コマドリのような集団ではそれが普及することはありません。それを普及させ組織改革につなげるには、カササギの叡智が必要になります。それは社会的な協調であり、決してトップダウンによる押し付けではありません。組織改革に必要なのは、より協調的なボトムアップアプローチなのです。

 

戦略とは自ら作り舵取りするもの

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 おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で1119人、そのうち東京256人、神奈川77人、埼玉79人、千葉88人、愛知34人、大阪100人、兵庫46人、京都11人、福岡34人、沖縄24人、北海道60人などとなっています。宮城は112人と3日連続で100人を超えていますが、いったん2月21日に新規感染者がゼロになった後2月23日からGOTOイートの食事券販売を再開し人出が増え飲食店もにぎやかになったためであると言われています。1都3県の緊急事態宣言解除後にGOTOを再開しようとする動きが水面下で活発化していますが、新型コロナ終息前に再開となると宮城の二の舞で全国的にリバウンド・第4波襲来となってしまいます。緊急事態解除で気を緩み、さらに変異株が拡がるとGW後には東京の新規感染者数が3000人を超えるとの試算もなされています。政府が無策で何もできない以上、一人ひとりが気を引き締め感染防止策に取り組むしかありません。

さて、今日は今日はダイヤモンドオンラインの「戦略とは自分たちの手で作り上げ、自分たちの手で舵取りや方向修正を行うべきもの」を取り上げます。

この記事では、トップが頭の中で戦略を描き、経営のPDCAを回す明国式マネジメントに触れられています。アメリカでは、戦略系のコンサルティングファームに高い金を支払って戦略策定を依頼しますが、トップもコンサルティングファームとのミーティングに加わり、戦略策定プロセスに参加します。戦略が出来上がった段階では、トップが自信が采配を振るうための初期仮説や今後の展開についてのイメージが出来上がっています。こうして出来上がった戦略はトップ自身の口から社内に発信されます。

そして、実施段階においては、戦略における「現状把握」、抽出した「意味合い」、設定した問題の選択し、選んだ打ち手の有効性などの読み間違いがないかを検証し、必要に応じて修正し舵取りします。

しかし、日本企業では、経営トップが戦略策定にアメリカほどコミットしません。「どんな戦略が出てくるか見てやろう。良いものだったら採用しよう」程度のスタンスで、コンサル会社に依頼する企業が少なくありません。また、「有名なコインサル会社に依頼したのだからよいはずだ。よく分からないけれどやってみよう」と金科玉条のごとく採用する企業もあります。

新規分野や未開の領域に挑戦する際には、事前にどんなに精度高く読んでも、必ず読み間違えている部分があるため、自社でかじ取りを行えるようにすることが必要になります。

戦略プランはどんなに精度を高めたとしても、所詮は「初期仮説」にすぎません。昨日の言葉で言えば、「所詮プラモデル」です。

戦略に論理性が求められるのは、その後の方向修正の段階です。「どこに読み間違いがあったのか」「想定していなかったことは何だったのか」など、策定した戦略に戻って修正し、手元にある戦略の精度を高めることが重要なのです。

この記事では「策定した戦略はいわば船出前の海図であり、立案した戦略をゆう古プ活用するこの方法論においては、事業責任者が責任をm載ってかじ取りを行うことが前提になる」と言っています。

トップ自身が、戦略策定段階から参加し、細かく進捗の実態を確認しながら改革の実践を進めていかなければ米国流の農法論が有効に機能することはありません。

パソコンの調子が悪いので、今日はこの程度にします。 

休日の本棚 会社を変える分析の力

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で1524人、そのうち東京342人、神奈川107人、埼玉133人、千葉99人、愛知55人、大阪153人、兵庫64人、京都13人、福岡38人、沖縄66人、北海道51人などとなっています。昨日震度5強地震があった宮城では125人と過去最多を更新し、ダブルパンチで大変な状況だとお察しいたします。「避難所生活もコロナ対策を行って」というのは大変でしょうが、頑張ってください。全国24都府県で先週よりも増加しており、リバウンドが懸念されます。

また、新型コロナ感染拡大防止のため、東京五輪パラリンピックの海外からの一般客の受け入れを見送ることが決定されました。現状からはやむを得ない決断でしょうが、五輪需要を当てにしていた宿泊・旅行関係など観光業界は大打撃です。しかし、そもそも今後再び感染拡大が起き第4波襲来となった場合、開催自体が危ぶまれることになりそうです。政府は是が非でも(無観客でも)開催したいようですが、その割には菅首相に新型コロナ対策にかける意気込み、気概が感じられません。

さて、今日は、河本薫著「会社を変える分析の力」(講談社現代新書を紹介します。

企業を取り巻く経済環境・経営環境・社会環境が大きく変動する中、企業にとってデータ分析の重要性はますます高まっています。それはIT革新によって大量のデータ処理が可能になったためだけでなく、社会や経済が複雑化し直感だけでは意思決定が難しくなったこと、市場化やグローバル化で徹底した効率化が求められるようになったことなど、理由はさまざまです。

ところが、多くの人は「統計分析を勉強したのに分析力が向上したという実感がない」「数学が苦手だからデーター分析には不向きだ」「データや分析結果はあるのに役に立たない」「データベースや分析システムを導入したのに経営に活かせない」と言った悩みを抱えています。これは「データ分析」を数値計算という行為の側面でとらえているからです。昨日取り上げた会計と全く同じです。会計の数値は企業活動の結果を表すもので、企業活動なくしては会計の数値はあり得ません。データ分析も数値処理やデータ処理といった定型的なプロセスに留まるものではなく、どのようなデータをどのように分析すればどのような意思決定に役立つのかを考える創造的な思考プロセスなのです。その意味で、この本はデータ分析について理解を深めるにはうってつけの本だと思います。

第1章 データ分析に関する勘違い

1.データ分析の主役

  • データ分析とはデータで問題を解決すること。
  • ITや分析手法は手段に過ぎない。
  • 数学力がなくても分析できる。 

2.分析の価値

  • 分析の価値とは「その分析により意思決定を改善することで得られる効用」である。分析の価値=意思決定への寄与度✖意思決定の重要性
  • データ分析の目的は、何が分かったか、それは意思決定にどう役立つか、それだけ。分析手法やデータの説明は結果を解釈するためのわき役に過ぎない。
  • 分析結果が本当にビジネスに役立つものでも、意思決定者がそれを採用しなければそのデータ分析は無駄になる。費用対効果の壁と心理的な壁・・・納得してもらうための説明、同感してもらう説明が必要。
  • 分析が意思決定に役立つかは分析者のだけの責任ではなく意思決定者にも責任はある。

3.モデルは所詮プラモデル

  • どんなデータ分析にも分析モデルは必要。優れた分析モデルは現実の問題を再現したモデル。しかし、分析モデルでは現実を再現できないことも事実。所詮はプラモデルに過ぎない。分析モデルで問題解決できることは限られているので、その限界を超えて分析モデルを誤用すると間違った意思決定をしてしまう。
  • 分析モデルは、混沌として複雑な現実を全体俯瞰的に数式で模式化したもの。通常の現象や平均的な現象は比較的よく再現できるが、突発的な現象やまれに起きる現象を再現することは苦手。
  • 複雑なモデルが単純なモデルより優れているとは限らない。

4.ビッグデータとは何か

  • ビッグデータはIT業界の用語で、通常のデータベースでは扱えないほど大規模なデータのこと。
  • ビッグデータを用いた分析もデータ分析の一種にすぎず、どれだけ意思決定に役立ったかでその価値は決まる。
  • ビッグデータを活用した成功事例はあるが、それほどうまくはいかない。①ビッグデータと言っても必要なデータがすべてそろっているわけではない。②ビッグデータ分析では因果関係が分からない。③ビッグデータは打ち出の小槌ではない。
  • 企業の中には手つかずのリトルデータ(ビッグデータに至らない中小規模のデータ)が眠っている。ビッグデータを分析する前に社内に眠っているリトルデータの分析が十分に行われているかを自問せよ。

第2章 データ分析でビジネスを変える力

1.「分析力」だけではビジネスを変えられない。

  • 「ビジネス課題→分析問題」と「知識→ビジネスの意思決定」がなければ、データ分析はビジネスにつながらない。
  • データ分析でビジネスを変革するプロセスは「見つけるステップ」と「解くステップ」と「使わせるステップ」から構成され、それを実行するには、「見つける力」「解く力」「使わせる力」の3つが必要。

2.「見つける力」とは?

  • 見つける力=問題発見力・・・ビジネスにおいてデータ分析を活用するチャンスを見つけること。誰も気づかないようなビッグチャンスを見つけたとき、ビジネス上の大きな競争力になる可能性を秘めている。
  • ヒラメク力=「このビジネスの意思決定において、このデータ分析をすれば役に立つのではないか」というヒラメキ
  • データ分析でビジネスを変革するチャンスを考えるとき、「こんなデータ分析は役立つのでは?」といった分析側からの発想スタイルでは視野が狭くなる。「ビジネスをこのように変えてはどうか?」というビジネス側・意思決定者側からの発想スタイルで考えるべき、そうすれば、データ分析でビジネスを変える芽を見逃さなくなる。
  • 目利きする力=データ分析に着手する前に、思い描いたとおりのデータ分析を進めることができるか、仮に思い通りにデータ分析を進めることができたとしても分析結果はビジネスにどれだけ役立つかを目利きする。「どのようなデータを集めて、どのような分析を行って、分析結果からどのような知識が得られ、それをどのような意思決定にどのように活用すれば、従来の意思決定プロセスと比べてどのような改善がみられて、その結果、どれだけの効果が得られるか」の青写真を描く。

3.「解く力」とは?

  • 解く力=いわゆる分析力・・・ビジネス課題をデータ分析で解決すること ①分析する問題を自分で設計しなければならない。②解き方を発想し、選択しなければならない。③むやみに精度や分析能を高くしても逆効果、複雑になり運用を難しくする。④分析ミスをすると減点ではなく損失になる。
  • 分析問題を設定する力・・・データ分析の場合、試験問題のように問題は決まっていない。分析問題を設定する際に重要なのが分析する目的。問題設定に当たっては、目論見通り問題を解けたとしても、その解は意思決定に活用でき、ビジネスに貢献するか。
  • 現場力で解く力・・・ビジネスでは、解き方は決まっていない。分析に用いるデータも、分析に用いる数学手法も決まっていない。解き方のヒントはビジネスの現場にある。ビジネス担当者とコミュニケーションを図り、解くための手がかりを聞き出す力が不可欠
  • 過不足なく解く力・・・データ分析の価値は「意思決定にどれだけ役立ったか」だけ。「細かく解く罠」や「小さく解く罠」に陥らないように注意し、細かすぎず粗過ぎず解く、小さすぎず大きすぎず解く、それが過不足なく問いということ。
  • 分析ミスをしない力・・・ビジネスでデータ分析をする場合、絶対にミスをしない覚悟で臨まなければならない。分析ミスは間違えた意思決定につながり、会社に多大な損害を与えるかもしれないといった意識を強く持つ。

4.「使わせる力」とは?

  • 使わせ力=実行力・・・データ分析で得られた解を意思決定に使わせること。データ分析の守備範囲はデータ分析を報告するまでではなく、意思決定に使われるまで。①分析結果が意思決定に役立つかどうかを判断すること ②分析結果を意思決定にどのように使えるかを説明すること ③分析結果を実際の意思決定に使いやすいように支援すること
  • 意思決定に使えるか見極める力・・・「どれくらい外れそうか」を推し量るステップと「意思決定は、その外れを許容できそうか」を判断するプロセス。
  • 使い方を伝える力・・・「計算結果」ではなく、「意思決定に使えるかどうか」を伝えることが重要。コミュニケーション力を使って意思決定者の「半信半疑」「面倒くささ」を解消するように努め、機が熟している間にデータ分析がビジネスに活用されるように仕向けていかなければならない

第3章 分析力を向上させるための流儀

1.4つの問いを自問してみる。具体的に、可能な限り金銭換算して。

  1. その数字にどこまで責任を取れるか 
  2. その数字から何が分かったか
  3. 意思決定にどのような使えるか
  4. ビジネスにどれくらい役に立ったか 

2.正しい心構えを持つ。

  • 正しい動機を持とう・・・正しい動機は意思決定を支援すること
  • 懐疑的になろう・・・データ分析で見つけたパターンや関係について、それが真実であるかを完全に論証することは不可能。自らの論証に自信を持つ分析者より、不十分ではないか、反証の余地があるのではないかと懐疑的な分析者の方が信用できる。
  • 謙虚になろう・・・データ分析に謙虚になるとともにKKD(勘・経験・度胸)に対する敬意を持とう。データ分析だけで意思決定できるというおごりを持たず、KKDの重要性を認識したうえで、データ分析の活用を推進していかなければならない。

3.役に立つことに貪欲になる

  • 分析問題だけでなく、意思決定問題にも関心を持つ・・・分析問題は意思決定問題に役立つ知識をデータから得るために設定された問題で、分析問題と意思決定問題は密接な関係にある。分析問題は意思決定問題を介して間接的にビジネスに貢献する。分析者は、意思決定問題に対して受動的な姿勢ではなく能動的な姿勢で関わっていかなければならない。
  • 分析者は、データ分析の使い先である「意思決定問題」をビジネス担当者(意思決定者)に問い合わせて明らかにし、おおもとの目的と照らし合わせることで「意思決定問題」の妥当性を吟味し、必要に応じてビジネス担当者に修正を働きかけるべきだ。データ分析の結果から意思決定問題を改変する、まさに逆転の発想も必要。
  • 次の意思決定問題を見つける・・・一つの成功の近くには別の成功のチャンスがある。

4.良い習慣をつける 分析者9か条

  1. ビジネスの現場に出よう、ビジネス担当者とコミュニケーションしよう
  2. 整理整頓を心がけよう
  3. なぜ?なぜ?なぜ?
  4. データをビジュアル化しよう
  5. 他人のデータを疑おう
  6. シンプルイズベスト
  7. ざっくり計算
  8. 文章を書こう
  9. うまくいかなければ目的に立ち戻ろう

第4章分析 プロフェッショナルへの道

1.分析プロフェッショナルとは

  • 分析プロフェッショナル=統計分析や数理計画などの手法に通じたデータ分析の専門家
  • 分析プロフェッショナルの要件・・・①成果指向 ②実績と信頼 ③売りになる専門性
  • 分析プロフェッショナルに向いている人・・・①論理的思考力 ②右脳的思考力 ③感受性
  • 優れた分析プロフェッショナルは、るライアンとが水漬かないような分析問題を発掘し、クライアントをうならせるような仮説を立てる。優れた分析プロフェッショナルになるには、①課題発見力 ②仮説力を鍛える必要がある。ビジネスの関する専門知識とデータに関する知識を身につける。

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休日の本棚 会計力と戦略思考力

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で1466人、そのうち東京303人、神奈川111人、埼玉135人、千葉129人、愛知47人、大阪158人、兵庫61人、京都9人、福岡40人、沖縄44人、北海道78人、宮城100人などとなっています。3週間前に緊急事態宣言解除となった大阪・兵庫では再び増加傾向にあり、宮城・茨城(38人)・栃木(36人)など大幅に増加しています。明日をもって1都3県の緊急事態宣言が解除されますが、今後の状況が心配です。2,3週間後には大きなリバウンドが見られ、変異株の拡大によって第4波、再び緊急事態宣言発動などとならないことを望みます。そのためには一人ひとりの心構え、感染防止対策の徹底が必要です。気を緩めることなく、頑張りましょう。

今日は、大津広一著「会計力と戦略思考力」(日経ビジネス文庫)を紹介します。この本は、「ポケットMBA ビジネススクールで身につける」シリーズの1つです。この本の帯には「決算書は仮説思考でロジカルに読め」「『WHY?』『SO  WHAT?』の2つのキーワードを駆使して、会計数値から企業活動(経営環境、業界特性、戦略)を読み解く方法を学ぶ」とあります。

以前にも鳥居正直著「戦略と会計のマネジメント」(日本経済新聞出版社という本を紹介し、戦略と会計の融合の必要性を見てきました。

多くのビジネスパーソンが、会計に対して苦手意識や嫌悪感を抱き、ときに無視して、あるいは避けようとしています。それは、

 「会計=会計用語の暗記・会計ルールの理解」

といった無味乾燥なイメージを抱いているからではないでしょうか。

そもそも、会計の数字というものは、無味乾燥な数字ではなく、企業活動の結果を表すもので、その背後には、企業が置かれた経営環境、業界の特性、経営戦略が存在します。会計の数字を見れば企業活動をある程度類推することも可能ですし、逆に企業活動からその企業の会計数津の構造を類推することもできるはずです。両者を切り離してみることはできません。両者を切り離すから、会計数字を無味乾燥な面白くないものと決めつけてしまうのです。

ここで必要なのは、会計数値の作り方や会計用語の暗記、会計ルールの理解といった「会計のWHAT?」ではありません。会計数値の読み方、経営言語としての活用、問題解決への発展といった「会計のWHY?」の追求です。「なぜ?」を突き詰めた先には、本質的な原因が待ち構えています。次に、その本質的な原因から「何が言えるのだろうか?」という問いかけが必要になります。それが「SO WHAT?」です。これは解明された原因から経営の意味合いを導き出すことです。そして、それを問題解決につなげるのです。会計数字を見て「高い」「低い」といった事象だけ見ていても意味がありません。原因を解明し(なぜ低いのか)、意味合いを捉えたうえで(低いのは問題なのか)、問題解決につなげるということで、初めて会計力と戦略力が結びつきます。

第1部 会計力

 第1章 損益計算書(PL)はマトリクスで読む

  • PLの目的は1年間の企業活動が利益を生んだのか損失を生んだのかを明らかにすること
  • PLは「本業か」「本業でないか」と「経常的か」「特別か」という2つの軸によってマトリクス構造に分解できる。
  • 売上原価は「今の売上高に個別的かつ直接的に対応しているもの」。今の売上に直接結びつかない研究開発費は、売上原価ではなく販管費として計上される。
  • 業界によって売上高営業利益率ベンチマークがある。売上原価と販管費に分解しながら、自社のベンチマーク達成の可否を評価しよう。

 第2章 貸借対照表(BS)を読み解く3つの基本法

  • PLが1年間の企業活動の「入」「出」を並べたビデオテープなら、BSは年度末の真夜中24時の瞬間写真。このためPLの冒頭には期間、BSの冒頭には日付が記載される。
  • BSの右側にはお金の入りどころの明細、左側にはそのお金の運用が映し出される。左右の情報の意味は異なるが、左右それぞれの合計金額は必ず一致するのでバランスシートと呼ばれる。
  • BSを読み解く3つの基本原則は、①BSは固まりで読む。②BSは大きな数値から読む。③BSは仮説を立ててから読む。
  • BSの右側で最初に確認したいのは資本金ではなく、利益余剰金。利益余剰金の金額に対して資本金や借入金には反比例の関係がみられることが多い。
  • 間違いを恐れずに論理的な仮説を構築するためのキーとなる質問は「WHY?」「なぜその数値なのか?」と「SO WHAT?」「その数値から何が言えるか?」こうした論理的思考力を啓発する質問を問い続けることが、会計を読み解くうえで重要。

 第3章 企業名から決算書を読み解く仮説・検証のプロセス

  • 企業名から仮説・県s等のプロセスで決算書を読み解くアプローチは、①企業を想像する。②仮説を立てる(決算書をイメージする)③仮説を検証する(決算書を読む)の順。
  • いきなり決算書を上から順番に見るのではなく、まずはその企業や業界に関する知識を言葉にしてみることから始める。見てから考えるのではなく、考えてから読む。
  • 仮説を立てれば、決算書を見る時点で、既に決算書の姿がイメージされている。仮説を検証していくプロセスが決算書を読む姿となる。
  • 仮説構築の際の13のポイントは、①売上・利益は成長しているか ②粗利は高いか ③販管費は多いか ④利益率は良好か ⑤現金は多いか ⑥売掛の回収は早いか ⑦在庫の量は多いか ⑧設備の規模は大きいか ⑨株式や債券の保有は多いか ⑩買掛の支払いは早いか ⑪借金は多いか ⑫資本金は多いか ⑬利益剰余金は多いか です。これらの問いかけに「WHY?」「SO WHAT?」を考えること。

 第4章 決算書の数値から企業活動を読み解く仮説・検証のプロセス

  • 一般的にBSの試算に事業の特徴が現れる。BSのを読み解く3つの基本法則(大局観・優先順位・仮説思考)を意識して、BSを読み解くことが大切。
  • 企業名をブランクにして事業を想像することで、数値から経営環境を読み解く力がつく。決算書の着眼すべきポイント、数値から経営環境に関する仮説構築の力が養われる。さらに、顧客や戦略パートナーの決算書の評価、M&Aや新規事業の立ち上げ時の決算書のイメージなど様々な応用が可能となる。

第2部 戦略思考力

 第5章 「5つの力」で競争環境を理解する

  • ビジネスを考えるスタート地点は、会計の数値ではなく、常に経営の外部・内部環境を的確に把握すること
  • 戦略とは「勝ち続けるための仕組み」。時代が変われば顧客の嗜好も変わる。顧客が変われば企業が勝つための条件も変わっていく。必然的に企業が勝つための仕組みを変えていかなければならない。
  • 勝ち続けるための仕組みを考えるうえでは、業界の競争環境の把握が第一に重要。自社がどのような特性のある業界にいるのか、どのような競争環境にさらされているのか、そして勝つための戦略にはどのような選択肢があるのかを理解することなくして、正しい戦略は作り得ない。
  • 「勝ち続けるための仕組み」を構築するには、勝ち続けることを阻害する可能性を持った5つの要因(既存業者間の脅威・新規参入の脅威・代替品の脅威・売り手の脅威・買い手の脅威)を考察する。ポーターのファイブ・フォース

 第6章 「5つの力」で業界の競争環境と会計数値を読み解く

  ここでは、鉄鋼業界について、5つの力の分析がなされている。内容は省略しますので、詳細は本書で確認してください。

 第7章 バリューチェーン

  • バリューチェーンを用いることで、事業活動の流れを、バリュー(価値)のチェーン(つながり)として分解し、企業がどこに戦略として競争優位性を見出すか、逆に重要性を下げているかを分析できる。
  • 同業他社であっても、戦略が異なれば利益構造は異なる。常に戦略を念頭に置きながら、PLを考察すること

 第8章 バリューチェーンで競合2社の経営戦略を分析する

  • 自社開発製品比率の高い企業は、販管費(研究開発費)がかさむ代わりに、高い売価による販売から高粗利益率を実現できる。自社開発製品比率の低い企業は、販管費を抑える代わりに売値の低さから粗利益率が低くなる。
  • 製造を外部委託することで原価を抑えて粗利を確保し、その粗利を構想に打ち勝つための販管費の特定費目に投資することが戦略となりうる。一方で、そうした製造を受託する企業は、規模の経済によるコスト低減が有望な戦略となる。自社製造によって売上原価の低減を目指すが、コモディティであるため売値が低く粗利益率は低い。しかし自社製品でないため特段の販管費は必要なく、規模の経済によって売上比での低減が実現できる。
  • プロモーション・販売活動に多くのお金を投下することで確固たるブランドの構築に成功すれば、高い売値での販売が可能になる。この場合、売値が高いため粗利は高いが、販管費も高くなる。一方、プロモーション・販売活動への投資を抑える企業は、仮に同じような品質の製品であったとしても、ブランド力や販売力の欠如から高い売値の設定ができない。個のため粗利益率では劣るが、販管費の低減によってそれを補完できる。
  • 直接販売する企業は、自社で販売員を抱えるため販管費における人件費が膨らむが中間マージンを抜かれずに最終価格で顧客に直接販売することから、粗利は高い。間接販売する企業は、自社で販売員を抱えないので販管費は少なくなるが、中間マージンを販売委託先に落とすため売値は安く粗利は低い。
  • 経営戦略が異なれば数値は異なる。数値を決めるのは経営戦略。決算書を分析する者に求められるのは、戦略が数値としてどのように表れているか、表れていないかを認識したうえで、化英英戦略が正しいか否かを判断することになる。
  • 業界の競争環境を理解し、これから起きるであろうことを予測し、その中でどこで競争優位性を発揮することができるのか、定性的な経営環境と定量的な評価から。総合的な判断、そして意思決定が望まれる。
  • 仮に営業利益率10%が自社の目標とする数値になっても、それを達成するための手段、つまり経営戦略は数多く存在する。その差異には、自社のバリューチェ―ンを引いて、どこに競争優位性を築くのか、どこは思い切って重要性を下げるかを考えながら、PLとBSへの影響を考察する。

この本では、会計を取り扱っているとしても、細かいルールや用語は出てきません。会計に抵抗を抱いている人でもすんなりと読める本です。この本を読めば、会計で重要なのは数値や細かいルール・用語ではなくその背後に控えている企業活動、つまり戦略だということが分かるはずです。そして、「WHY?」(なぜその数値になっているのか?)「SO WHAT?」(その数値から何が言えるのか?)を考え続けることで、会計と戦略を結び付ける論理的な思考力も身につくと思います。

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