中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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休日の本棚 会社を変える分析の力

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で1524人、そのうち東京342人、神奈川107人、埼玉133人、千葉99人、愛知55人、大阪153人、兵庫64人、京都13人、福岡38人、沖縄66人、北海道51人などとなっています。昨日震度5強地震があった宮城では125人と過去最多を更新し、ダブルパンチで大変な状況だとお察しいたします。「避難所生活もコロナ対策を行って」というのは大変でしょうが、頑張ってください。全国24都府県で先週よりも増加しており、リバウンドが懸念されます。

また、新型コロナ感染拡大防止のため、東京五輪パラリンピックの海外からの一般客の受け入れを見送ることが決定されました。現状からはやむを得ない決断でしょうが、五輪需要を当てにしていた宿泊・旅行関係など観光業界は大打撃です。しかし、そもそも今後再び感染拡大が起き第4波襲来となった場合、開催自体が危ぶまれることになりそうです。政府は是が非でも(無観客でも)開催したいようですが、その割には菅首相に新型コロナ対策にかける意気込み、気概が感じられません。

さて、今日は、河本薫著「会社を変える分析の力」(講談社現代新書を紹介します。

企業を取り巻く経済環境・経営環境・社会環境が大きく変動する中、企業にとってデータ分析の重要性はますます高まっています。それはIT革新によって大量のデータ処理が可能になったためだけでなく、社会や経済が複雑化し直感だけでは意思決定が難しくなったこと、市場化やグローバル化で徹底した効率化が求められるようになったことなど、理由はさまざまです。

ところが、多くの人は「統計分析を勉強したのに分析力が向上したという実感がない」「数学が苦手だからデーター分析には不向きだ」「データや分析結果はあるのに役に立たない」「データベースや分析システムを導入したのに経営に活かせない」と言った悩みを抱えています。これは「データ分析」を数値計算という行為の側面でとらえているからです。昨日取り上げた会計と全く同じです。会計の数値は企業活動の結果を表すもので、企業活動なくしては会計の数値はあり得ません。データ分析も数値処理やデータ処理といった定型的なプロセスに留まるものではなく、どのようなデータをどのように分析すればどのような意思決定に役立つのかを考える創造的な思考プロセスなのです。その意味で、この本はデータ分析について理解を深めるにはうってつけの本だと思います。

第1章 データ分析に関する勘違い

1.データ分析の主役

  • データ分析とはデータで問題を解決すること。
  • ITや分析手法は手段に過ぎない。
  • 数学力がなくても分析できる。 

2.分析の価値

  • 分析の価値とは「その分析により意思決定を改善することで得られる効用」である。分析の価値=意思決定への寄与度✖意思決定の重要性
  • データ分析の目的は、何が分かったか、それは意思決定にどう役立つか、それだけ。分析手法やデータの説明は結果を解釈するためのわき役に過ぎない。
  • 分析結果が本当にビジネスに役立つものでも、意思決定者がそれを採用しなければそのデータ分析は無駄になる。費用対効果の壁と心理的な壁・・・納得してもらうための説明、同感してもらう説明が必要。
  • 分析が意思決定に役立つかは分析者のだけの責任ではなく意思決定者にも責任はある。

3.モデルは所詮プラモデル

  • どんなデータ分析にも分析モデルは必要。優れた分析モデルは現実の問題を再現したモデル。しかし、分析モデルでは現実を再現できないことも事実。所詮はプラモデルに過ぎない。分析モデルで問題解決できることは限られているので、その限界を超えて分析モデルを誤用すると間違った意思決定をしてしまう。
  • 分析モデルは、混沌として複雑な現実を全体俯瞰的に数式で模式化したもの。通常の現象や平均的な現象は比較的よく再現できるが、突発的な現象やまれに起きる現象を再現することは苦手。
  • 複雑なモデルが単純なモデルより優れているとは限らない。

4.ビッグデータとは何か

  • ビッグデータはIT業界の用語で、通常のデータベースでは扱えないほど大規模なデータのこと。
  • ビッグデータを用いた分析もデータ分析の一種にすぎず、どれだけ意思決定に役立ったかでその価値は決まる。
  • ビッグデータを活用した成功事例はあるが、それほどうまくはいかない。①ビッグデータと言っても必要なデータがすべてそろっているわけではない。②ビッグデータ分析では因果関係が分からない。③ビッグデータは打ち出の小槌ではない。
  • 企業の中には手つかずのリトルデータ(ビッグデータに至らない中小規模のデータ)が眠っている。ビッグデータを分析する前に社内に眠っているリトルデータの分析が十分に行われているかを自問せよ。

第2章 データ分析でビジネスを変える力

1.「分析力」だけではビジネスを変えられない。

  • 「ビジネス課題→分析問題」と「知識→ビジネスの意思決定」がなければ、データ分析はビジネスにつながらない。
  • データ分析でビジネスを変革するプロセスは「見つけるステップ」と「解くステップ」と「使わせるステップ」から構成され、それを実行するには、「見つける力」「解く力」「使わせる力」の3つが必要。

2.「見つける力」とは?

  • 見つける力=問題発見力・・・ビジネスにおいてデータ分析を活用するチャンスを見つけること。誰も気づかないようなビッグチャンスを見つけたとき、ビジネス上の大きな競争力になる可能性を秘めている。
  • ヒラメク力=「このビジネスの意思決定において、このデータ分析をすれば役に立つのではないか」というヒラメキ
  • データ分析でビジネスを変革するチャンスを考えるとき、「こんなデータ分析は役立つのでは?」といった分析側からの発想スタイルでは視野が狭くなる。「ビジネスをこのように変えてはどうか?」というビジネス側・意思決定者側からの発想スタイルで考えるべき、そうすれば、データ分析でビジネスを変える芽を見逃さなくなる。
  • 目利きする力=データ分析に着手する前に、思い描いたとおりのデータ分析を進めることができるか、仮に思い通りにデータ分析を進めることができたとしても分析結果はビジネスにどれだけ役立つかを目利きする。「どのようなデータを集めて、どのような分析を行って、分析結果からどのような知識が得られ、それをどのような意思決定にどのように活用すれば、従来の意思決定プロセスと比べてどのような改善がみられて、その結果、どれだけの効果が得られるか」の青写真を描く。

3.「解く力」とは?

  • 解く力=いわゆる分析力・・・ビジネス課題をデータ分析で解決すること ①分析する問題を自分で設計しなければならない。②解き方を発想し、選択しなければならない。③むやみに精度や分析能を高くしても逆効果、複雑になり運用を難しくする。④分析ミスをすると減点ではなく損失になる。
  • 分析問題を設定する力・・・データ分析の場合、試験問題のように問題は決まっていない。分析問題を設定する際に重要なのが分析する目的。問題設定に当たっては、目論見通り問題を解けたとしても、その解は意思決定に活用でき、ビジネスに貢献するか。
  • 現場力で解く力・・・ビジネスでは、解き方は決まっていない。分析に用いるデータも、分析に用いる数学手法も決まっていない。解き方のヒントはビジネスの現場にある。ビジネス担当者とコミュニケーションを図り、解くための手がかりを聞き出す力が不可欠
  • 過不足なく解く力・・・データ分析の価値は「意思決定にどれだけ役立ったか」だけ。「細かく解く罠」や「小さく解く罠」に陥らないように注意し、細かすぎず粗過ぎず解く、小さすぎず大きすぎず解く、それが過不足なく問いということ。
  • 分析ミスをしない力・・・ビジネスでデータ分析をする場合、絶対にミスをしない覚悟で臨まなければならない。分析ミスは間違えた意思決定につながり、会社に多大な損害を与えるかもしれないといった意識を強く持つ。

4.「使わせる力」とは?

  • 使わせ力=実行力・・・データ分析で得られた解を意思決定に使わせること。データ分析の守備範囲はデータ分析を報告するまでではなく、意思決定に使われるまで。①分析結果が意思決定に役立つかどうかを判断すること ②分析結果を意思決定にどのように使えるかを説明すること ③分析結果を実際の意思決定に使いやすいように支援すること
  • 意思決定に使えるか見極める力・・・「どれくらい外れそうか」を推し量るステップと「意思決定は、その外れを許容できそうか」を判断するプロセス。
  • 使い方を伝える力・・・「計算結果」ではなく、「意思決定に使えるかどうか」を伝えることが重要。コミュニケーション力を使って意思決定者の「半信半疑」「面倒くささ」を解消するように努め、機が熟している間にデータ分析がビジネスに活用されるように仕向けていかなければならない

第3章 分析力を向上させるための流儀

1.4つの問いを自問してみる。具体的に、可能な限り金銭換算して。

  1. その数字にどこまで責任を取れるか 
  2. その数字から何が分かったか
  3. 意思決定にどのような使えるか
  4. ビジネスにどれくらい役に立ったか 

2.正しい心構えを持つ。

  • 正しい動機を持とう・・・正しい動機は意思決定を支援すること
  • 懐疑的になろう・・・データ分析で見つけたパターンや関係について、それが真実であるかを完全に論証することは不可能。自らの論証に自信を持つ分析者より、不十分ではないか、反証の余地があるのではないかと懐疑的な分析者の方が信用できる。
  • 謙虚になろう・・・データ分析に謙虚になるとともにKKD(勘・経験・度胸)に対する敬意を持とう。データ分析だけで意思決定できるというおごりを持たず、KKDの重要性を認識したうえで、データ分析の活用を推進していかなければならない。

3.役に立つことに貪欲になる

  • 分析問題だけでなく、意思決定問題にも関心を持つ・・・分析問題は意思決定問題に役立つ知識をデータから得るために設定された問題で、分析問題と意思決定問題は密接な関係にある。分析問題は意思決定問題を介して間接的にビジネスに貢献する。分析者は、意思決定問題に対して受動的な姿勢ではなく能動的な姿勢で関わっていかなければならない。
  • 分析者は、データ分析の使い先である「意思決定問題」をビジネス担当者(意思決定者)に問い合わせて明らかにし、おおもとの目的と照らし合わせることで「意思決定問題」の妥当性を吟味し、必要に応じてビジネス担当者に修正を働きかけるべきだ。データ分析の結果から意思決定問題を改変する、まさに逆転の発想も必要。
  • 次の意思決定問題を見つける・・・一つの成功の近くには別の成功のチャンスがある。

4.良い習慣をつける 分析者9か条

  1. ビジネスの現場に出よう、ビジネス担当者とコミュニケーションしよう
  2. 整理整頓を心がけよう
  3. なぜ?なぜ?なぜ?
  4. データをビジュアル化しよう
  5. 他人のデータを疑おう
  6. シンプルイズベスト
  7. ざっくり計算
  8. 文章を書こう
  9. うまくいかなければ目的に立ち戻ろう

第4章分析 プロフェッショナルへの道

1.分析プロフェッショナルとは

  • 分析プロフェッショナル=統計分析や数理計画などの手法に通じたデータ分析の専門家
  • 分析プロフェッショナルの要件・・・①成果指向 ②実績と信頼 ③売りになる専門性
  • 分析プロフェッショナルに向いている人・・・①論理的思考力 ②右脳的思考力 ③感受性
  • 優れた分析プロフェッショナルは、るライアンとが水漬かないような分析問題を発掘し、クライアントをうならせるような仮説を立てる。優れた分析プロフェッショナルになるには、①課題発見力 ②仮説力を鍛える必要がある。ビジネスの関する専門知識とデータに関する知識を身につける。

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