休日の本棚 昭和史の闇を読む
おはようございます。
令和になり、昭和という時代は遠い昔のように思えます。戦後75年という時を迎え、改めて過去を紐解くことは必要なように思います。歴史は繰り返すと言います。歴史を学ぶということは過去の失敗を顧みてそれを現在および未来に活かすことです。
今日は、戦後直後を振り返ります。日本は、1945年8月15日正午の玉音放送によって終戦を迎えました。連合国軍が日本本土に進駐してきました。日本の占領は、占領軍が日本政府に指示を出し日本政府がそれを実行するという間接統治の形で行われました。日本の占領を支えたのがマッカーサーを司令官とする連合国軍総司令部(GHQ)です。GHQによって日本の民主化が推し進められましたが、経済復興はなかなか進みません。経済復興のため政府が重点産業に大量に補助金を出したり、復員兵を政府、特に国鉄で大量に雇用したために人件費が膨れ上がり敗戦時の基準で200倍にも上る驚異的なインフレになりました。これに対し、米国は銀行家ドッジを派遣し経済復興に当たらせます。ドッジは日本政府に収支均衡予算の編成と徴税の強化を指示し、日本政府は国鉄の大量な人員整理を行いました。こうした中で、下山貞則国鉄総裁の変死事件(下山事件)、三鷹駅での無人電車暴走事件(三鷹事件)、東北本線松川駅での列車転覆事件(松川事件)が相次いで起こります。下山事件はGHQの陰謀、三鷹事件と松川事件は共産党の陰謀とも言われましたが真相は不明です。
下山事件は、戦後史最大の謎と言われています。その下山事件について、「自分の祖父が実行犯ではないか」として詳細に調べドキュメントとして書かれたのが、柴田哲孝著「下山事件 最後の証言」(祥伝社文庫)です。下山事件は、初代国鉄総裁下山貞則が1949年7月5日朝に失踪し翌7月6日に国鉄常磐線の北千住駅ー綾瀬駅間で轢死体として発見されたという事件です。自殺説、他殺説があり、真相が明らかでないままに捜査が打ち切られ1964年に時効を迎えて今に至っています。日本共産党によるものとの情報もありましたが、松本清張氏が「日本の黒い霧」の中でGHQが関わっていたとの見解を示しました。柴田哲孝氏の祖父は、戦時中は陸軍、戦後はGHQの特殊機関員でGHQが関わる「亜細亜産業」に在籍していました。「下山事件 最後の証言」は、事件にかかわったとされる多くの人々の生々しい証言を集め、下山事件の黒幕はGHQ,その実行犯の一人が自分の祖父だとされています。
この作品はドキュメント・ノンフィクションで、「ノンフィクションでは書けないことがある。小説だから書けることもある」として小説形式で書かれたのが、「下山事件 暗殺者たちの夏」(祥伝社)です。ノンフィクションの「下山事件 最後の証言」を読んだ後に小説「下山事件 暗殺者たちの夏」を読むと味わい深く面白いです。
さて、柴田哲孝氏は、小説家として多くの小説を書かれています。いずれも面白い小説なので若干紹介します。まず、戦中戦後に関する小説として「Mの暗号」があります。戦中戦後に消えた莫大な資産、東大特任教授を務める歴史作家の者に一人の少女が訪ねてきます。何者かに殺された少女の父が、祖父から預かっていた謎の地図と暗号文。その祖父は戦後史の闇に君臨した亜細亜産業とGHQ,フリーメーソンにつながる人物だったのです。30兆円という膨大な金塊の行方を求め、行方を追う・・・あとは読んでください。
また、「GEQ 大地震」も面白いです。先日1月17日阪神淡路大震災から25年が経ちました。この小説は、阪神淡路大震災から13年後、日系ジャーナリストのジョージ・松永が知人のメモを手掛かりに取材を続け、大震災の謎を追求していき、あの震災は自然災害ではなくアメリカが仕掛けた人工災害だという仮説を導くのです。6000人からの死者を出した大災害を莫大な経済効果や政治問題を狙った人工地震だという仮説にいくら小説と言えやりすぎとの批判があるかもしれませんが、納得させられる論拠もあって一つの仮説として面白い内容になっていますし、考えさせられる点もあります。
他にも「KAPPA」(祥伝社文庫)「TENGU」(祥伝社文庫)「WOLF」(角川文庫)なども面白いです。