中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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ダボス会議 ステークホルダー資本主義

f:id:business-doctor-28:20200203085100j:plainおはようございおます。

今日は2020年1月21日から24日に開催された世界経済フォーラム年次会議(通称ダボス会議)について触れたいと思います。今年のダボス会議のテーマは、「ステークホルダーがつくる持続可能な結集した世界」とされました。大きく言えば、今年のテーマは、温暖化などの気候変動とステークホルダー資本主義ということになります。

1973年初めて世界経済フォーラムの年次会議がダボスで開催された時、創始者のクラウス・シュワブ氏は「企業は損益以外のものにもっと関心を持つべきだ」とするマニフェストを発表しました。この当時は新古典派経済学フリードマンの「企業の社会的責任は利益の増大にある」とする株主第一主義・社会的責任否定論の立場が主流でした。1970年代という時代は米ソ冷戦構造の真っただ中で、ベトナム戦争、第4次中東戦争が勃発、経済的にもニクソン・ショックオイルショックなど激動の時代で世界的に若者らがデモを繰り広げていました(日本では70年安保闘争)。その後次第に企業の社会的責任論が主流となってきます。今年のダボス会議では、スウェーデンの気候変動活動家のグレタさんや「バイ・バイ・プラスチック・バッグ」のワイゼンさんらが発言するなど若者が気候変動等に危機感を募らせています。約50年前と状況は似ています。昨日も書きましたが歴史は繰り返すのです。

今回のダボス会議の討論で、米セールスフォース・ドットコム(以前(1/24)働きがいのある会社1位で紹介した日本法人の親会社)のマーク・ぺ二オフCEOは「私たちが知っている資本主義は死んだ」と発言しました。そして、「株主の利益だけを最大化しようという私たちの執着が、極度の格差と地球の緊急事態を招いた」「従業員や顧客、地域社会や環境といった利害関係者に貢献するステークホルダー資本主義こそがビジネスを持続可能にする新しい道だ」と主張したのです。

日本においては、昔から近江商人の「売り手よし・買い手よし・世間よし」という「三方よし」の精神があります。しかし、戦後の経済成長、バブル期を経て、欧米流の株主第一・利益第一の資本主義がはびこり、日本古来の精神が失われ、自分さえよければそれでよしという風潮が高まっているように思います。今こそ、新しい世界の流れに乗って「三方よし」の精神を取り戻す時期だと思います。

次に、気候変動問題について、ダボス会議で、グレタさんらの問題提起に専門家らの討論の中で様々な議論がなされました。製造工程でのCO2排出量の削減、電池の性能や耐久性向上、将来の再利用などを目指し、電池にデータを埋め込み、表示させて取引先や消費者に環境への配慮を示す認証制度「バッテリー・パスポート」の規格作りを行うことも決めました。CO2の排出量の削減について排出量に応じた炭素税などの形で課税するという「カーボンプライシング」の考えが主流になってきていますが、各国の政治・行政の思惑があってなかなか進まないという懸念も出されています。

炭素税については、以前のブログ(19.12/22)休日の本棚で「良き社会のための経済学」「21世紀の資本」という2冊の経済学の本を紹介させていただいたときに書いていますので参照してください。

ようやく世界フォーラム・ダボス会議で気候変動と企業の社会的責任、株主第一主義からステークホルダー資本主義への移行が問題提起されましたが、各企業がどこまで真剣にこの問題に取り組むか、又各国が真剣に国家的な課題であると認識し政治的な政策・課題として取り組むかは未知数です。しかし、今この時期に現状を認識して危機感を持って対処しなければ、地球の未来はないかもしれません。

温暖化対策など地球環境への配慮、企業の社会的責任など、大企業だけの問題ではありません。中小企業においても今何ができるのかを考えて少しずつでも社会的責任を果たすよう取り組んでいただきたいと思います。