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休日の本棚 GEQ 大地震

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で7011人で、そのうち東京1809人、神奈川830人、埼玉582人、千葉503人、栃木96人、愛知322人、岐阜89人、大阪629人、兵庫265人、京都140人、福岡411人、北海道191人などとなり重症者は965人と過去最多を更新しています。相変わらず高止まりしている状況で緊急事態宣言の効果は今のところ見られません。

さて、26年前の1995年1月17日に発生した阪神淡路大震災、6434人の方が被災で亡くなられました。当時、私は西宮に住んでいて被災に遭いました。上の写真は震災当日の西宮の状況です。今でも当時のことを思い出します。当時マンションの3階に住んでいましたが、最初は地震とは思わず、ダンプか何かが家に突っ込んできたような衝撃と下から突き上げてくる大振動で恐怖を感じました。家中の家具は転倒しガラス扉は割れ、割れた食器が床に散乱し、外に飛び出すと周りの家が目の前で倒壊し、3階当たりでへしゃげたマンションなど見るも恐ろしい光景が目の前に広がっていました。

2011年3月11日には、東日本大震災が発生し、福島原子力発電所事故と相まって2万人を超える死者、行方不明者が出ています。震災時は出張で東京から帰りの新幹線な中、品川を出た直後に震災に遭い、新幹線の中に10時間閉じ込められました。

阪神淡路大震災では急速に復興しましたが、東日本大震災ではいまだに多くの人が被災難民として他所で生活され、復興も道半ばです。阪神淡路大震災での教訓が活かされたかは疑問です。

今は新型コロナウイルスの感染拡大で、震災時と並んで未曽有の危機的状況にあります。2つの大震災と今回の新型コロナ禍を見てみますと、日本の危機管理能力が余りにお粗末だということが見えてきます。

阪神淡路大震災東日本大震災の経験と失敗(今回のコロナ対策も含め)を後世に伝え、危機管理を考える礎にすべきだと思います。風化させてはいけません。政府は、起こった事象に対する十分な検証を行わず、その場しのぎ・場当たり的な対策でごまかしてきています。これは危機管理としては最悪です。

危機管理のマズさ、お粗末さが、天災の域を超え人災にすらなります。今のコロナの感染拡大・医療体制崩壊の危機はまさに政治のお粗末さによる人災だと言っても過言ではないでしょう。

こうした災害や事故に伴うリスクだけでなく、社会リスクや経営リスクなど多くのリスクが企業を取り巻いています。企業の存続を図るためにも、リスク回避と被害の最小化のためのしっかりとしたリスク管理体制と方策が必要です。

さて、今日は、阪神淡路大震災26年目の日に不謹慎かもしれませんが、柴田哲孝著「GEQ 大震災」(角川文庫)という本を紹介します。

柴田氏はノンフィクション作家として、戦後史最大の謎と言われた下山事件について、「自分の祖父が実行犯の一人ではないか」と詳細に調べ上げた上で「下山事件 最後の証言」(祥伝社文庫を書き、第24回日本冒険小説協会大賞(実録賞)と第59回日本推理作家協会賞(評論その他の部門)をダブル受賞しています。柴田氏は、多くの小説も書かれていますが、もともとはノンフィクション作家であることからノンフィクションの手法を用い、念入りな調査や資料に基づいて、ノンフィクションで書けないことを小説形式で発表されている作品も多々あります。その一つが今回紹介する「GEQ 大地震」です。「事実に基づいたフィクション」であり、もしかしたら真実に近い仮説を立てているのかもしれません。

この小説は、まず、1995年1月17日に発生した阪神淡路大震災の様子を、現場に居合わせた人物たちの視点から語っていきます。この人物たちというのは、瀬戸内海航路を進んでいた大分発神戸行きの定期フェリーの船長、阪神高速道路を運行中の観光バスの運転手、博多行き新幹線の運転士、タクシー乗務員、兵庫県庁の職員、更には村山富市首相、当日「日米防災会議」出席のため大阪に来ていたカリフォルニア大学の地質学者などです。こうした人物の話から物語はスタートします。

その大震災から13年が経ち、日系ジャーナリストのジョージ・松永が、行方不明の友人のメールに導かれ神戸に降り立ちます。そこで待っていたのは謎の女CHISATOです。行方不明の知人のメモを基に、取材を始めた松永は、大震災の謎を次々と追及していきます。

まず、アメリカの船がこれまで寄港地であった神戸港から名古屋港に移っていたことに始まり、飛行機の方が早くて便利なのになぜ船をチャーターしたのか、関西地区最大の貿易都市なのにアメリカ人の犠牲者はほとんどいなかったのか、更に、あの日あの時間に政界や財界の関係者はほとんど阪神地区にいなかったのも不思議だというのです。

当時の内閣の政治家たちの間には「1月16日から18日の間に関西地区で何か『大きな事件』が起きる、だから神戸や大阪には近づかない方がいいという奇妙なうわさが流れていた」とも言われていました。特に被害が大きかった芦屋地区には政治家や財界の関係者が多いのに、その中に、地震の犠牲者は一人も出ていません。本人だけでなく、家族もです。「あの日、あの時間に、政界や財界の関係者はほとんど阪神地区にいなかった。それはどういうことか」松永が取材を進める中でそのような言葉を耳にします。

こうした事実を列挙しながら、なぜ自衛隊への派遣要請が遅れたのか、村山首相周辺では何が起きていたのか、なぜ自衛隊によるヘリコプターによる消火活動が妨害されたのかなどを次々を俎上に上げていきます。

松永の口から9.11同時多発テロアメリカの政権中枢にいる者たちの陰謀であったことが検証されていますが、これもなかなか説得力があります。

そして、松永は、やがて恐るべき事実に直面します。それは、あの震災は自然災害ではなく、アメリカが仕掛けた人工災害だという仮説です。

地震を自然災害ではなく、莫大な経済効果や政治的解決を生み出すものとしてとらえる視点には違和感や嫌悪感を抱く人もいるでしょう。

しかし、阪神淡路大震災には多くの謎があり、池田昌昭著「阪神大震災は権力の陰謀だった」(文芸社)という本も出ています。一つの仮説としては面白い(面白いと言っては被災者には不謹慎ですが)といえそうです。

本書の最後に、次のように語られています。

すべては、”演出”なのだ。今回のオリンピック(北京)の開会式だけではない。世界の紛争、戦争、テロ、経済、そして人々が自然現象と信じる多くの出来事に至るまで、大半は一部の人間により画策された計算の産物なのだ。

阪神淡路大震災』がそうだった。あの地震で日本の国政から、社会党という左派最大の第二政党が消えた。日本はこれを機に更に右傾化に急転換し、自衛隊法も大きく変更された。のちのイラク戦争後の現地への自衛隊法派遣や2008年現在インド洋で行われている多国籍軍への燃料補給はあの震災がなければ決して実現しなかった。

911同時多発テロもそうだ。あのテロで何が変わり、誰が得したのか。それを考えればテロの構造と本質が理解できる。ブッシュ政権はテロによって世論を動かし、タリバンサダム・フセインを強引に結びつけ、イラク戦争に踏み切ることに成功した。若いアメリカ国民の命を引き換えにイラクの石油利権を掌握し、一部の資本家に莫大な富をもたらした。

他にも『パキスタン地震』『バンダ・アチェ』の大地震、『四川大地震』も同じ構造だと言います。

この本は2010年に発表されていて、発生前なので『東日本大震災』については触れられていませんが、『東日本大震災』も、自民党が大敗を期して成立した民主党政権下で起こり、東日本大震災民主党政権は終わり、自民党一強安倍内閣となって更に右翼化し安保法制・自衛隊法改正を強行するなど、『阪神淡路大震災』と同じ構図になっています。自民党が下野した時に限って大震災が起きるというのも奇妙ですが、これも自然災害ではなく人工災害だとすれば空恐ろしいものを感じます。

一つの説得力のある仮説かもしれませんが、フィクション・小説として読めばいいと思います。阪神淡路大震災当時を思い起こしながら、もう一度読んでみようと思います。

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