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休日の本棚 夢を読む

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おはようございます。

新型コロナで奇妙な夢や悪夢を見る人が増えていると言います。ナショナル・ジオグラフィックに「新型コロナで奇妙な夢や悪夢を見る人増加、理由と対処法は?科学者に聞いた」という記事がありました。

新型コロナウイルスの感染拡大により、世界中で多くの人が自宅にこもっています。これまでの普段の環境や日々の刺激がなくなり、「インスピレーション」が不足するせいで、潜在意識が夢のテーマを過去の記憶からより多く引き出すことを余儀なくされているというのです。ストレスや孤立、睡眠パターンの変化によって、通常の夢とは一線を画す否定的な感情の渦に彩られるということです。われわれ人間は、「激しい感情、特に否定的な感情を、レム睡眠や夢を利用して処理している」ので、「今回の新型コロナショック・パンデミックが多大なストレスや不安を生み出し」、それによって奇妙な夢や悪夢を見るようになったというわけです。専門家の話では、夢は幻覚に似ていて、夢を見るということは幻覚剤で引き起こされるものに近いのです。普段はほとんどの人が夢の内容を覚えていませんが、新型コロナのパンデミックのさなか、孤独やストレス、不安が高まるせいで、夢の内容に影響を与えたり、夢を覚えていることが多くなっている可能性があるのです。そして、悪夢には2つのパターンがあると言います。1つは、出来事をそのまま参照したり再現したりするものです。これは、例えばウイルスに感染した夢や感染症に苦しんで死に行く夢などが当たります。2つ目は、トラウマの要素が象徴的に現れる幻想的な夢です。これは、例えば虫やゾンビ、自然災害、怪しい人影、怪物、銃を乱射する人など比喩的な要素に書き換えられるものです。

こうした悪夢を克服する方法として、「夢を操る熟練の技」が苦しみを和らげるといいます。悪夢をどのように変えたいのか、夢の新たな方向性を見つけそれを書き留めておいて寝る前に思い描いてみるというのです。あらかじめ夢の脚本を書いてそのシナリオ通りに思い描くことで悪夢をある程度コントロールできるということです。

さて、今日は、ミチオ・カク著「フーチャー・オブ・マインド 心の未来を科学する」(NHK出版)を紹介します。ミチオ・カク氏は日系アメリカ人のニューヨーク州立大学理論物理学教授です。一般読者向けに最新の科学を分かりやすく紹介し、「超空間」(翔泳社)、「アインシュタインを超える」(講談社)、「パラレルワールド」「サイエンス・インポッシブル」「2100年の科学」(いずれもNHK出版)など日本でも多くの本が出版されています。

本書「フーチャー・オブ・マインド」は理論物理学の権威であるカク博士が自然界最大の謎である「心」の仕組みを解き明かそうというもので、この中でも「夢」を題材として取り上げられています。

精神分析創始者フロイトは、夢の根源を説明する理論を説明しています。「夢解釈」(中央公論新社)の中で、フロイトは夢とは意識下の欲望の表れであり、その欲望は目覚めているときには抑圧されているが、夜になると暴れだすと主張しています。夢は、胸の奥深くにある秘密や自分自身についての真実を暴くものというわけです。

多くの場合、数日前か前の週にじかに体験したことなどの夢を見ていることが多いといわれています。多くの情報が飽和状態になって漂う中で、脳が記憶をよりつじつまが合うように整理しようとして「大掃除」を行っているのが夢ではないかというのです。

夢研究の世界的権威であるハーバード大学医科大学院のアラン・ボブソン博士によれば、夢、とりわけレム睡眠は、脳幹が発するランダムなシグナルを脳が理解しようとするときに生ずるというのです。ボブソン博士によれば、夢には次の5つの特徴があるといいます。

  1. 強い感情…恐怖などの感情を引き起こす扁桃核の活性化による。
  2. 非論理的な内容…論理を無視して目まぐるしく場面が変わる。
  3. 見せかけの感覚がもたらす印象…脳内で生まれた偽りの感覚を与える。
  4. 出来事を無批判に受け入れる…夢の非論理的な内容を無批判で受け入れる。
  5. 覚えておくのが難しい…夢は目覚めてすぐ、数分のうちに忘れられる。

ボブソン博士によれば、夢を見るとき、脳幹内のコリン作動性ニューロンが活性化しだし、PGO(脳橋ー外側膝状体ー後頭皮質)波という電気エネルギーの不規則なパルスを誘発し、このPGO波が脳幹を上って視覚皮質に入り、そこを刺激して夢を生み出すのです。PGO波が脳幹から皮質領域に押し寄せたあと、不規則なシグナルを皮質が理解しようとして、そこから物語が生み出され、それが夢になるというわけです。

いま、脳をスキャンすることによって、夢の謎を解き明かそうという試みがなされています。夢を見て脳の視覚皮質が活動している間、臭覚・味覚・触覚に関わるほかの領域はおおむね活動を停止しています。夢を見ているときに海馬(エピソード記憶を司る)が活動していることから夢が記憶の貯蔵庫を利用していることが分かります。また扁桃核(感情に関わる記憶を司る)と前帯状皮質も活動します。これは夢が強く感情に訴えしばしば恐怖を伴うものであることを意味しています。

京都にあるATR脳情報研究所は、被験者をMRI装置に入れ、10×10ピクセルの枠内にドットを配した白黒画像400枚を見せ、各画像に脳がどのように反応するかをMRIで記録し、画像の辞書を作成しています。被験者が夢を見ている間のMRIによるスキャンデータと白黒画像のデータとを照らし合わせることで、夢に出てきた画像を正確に再現できるというわけです。2011年には、マックス・プランク研究所で、MRIと脳波センサーを使い夢の内容を記録し、更に夢を見ている人と交信することに成功しました。夢を見ている人とコミュニケーションがとれるなら他人の夢を外から変えることもできるのではないかと研究が進められています。

ハリウッド映画「インセプション」ではレオナルド・デイカプリオが他人の夢から秘密を盗み出す泥棒を演じています。他人の夢に入り込んでは金になる秘密を騙し取ろうとするのです。デカプリオが他人の夢に入ると、その人物は夢の中でさらに眠りに落ちていきまた夢を見る、そうして幾重にも層をなす潜在意識の奥底へと落ちていくのです。

現時点では他人の夢の中に入り込むという技術は不可能ですが、他人の夢を見てその内容を変えることはもうすぐにできそうです。恐ろしいとしか言いようがありません。

さらに、人の夢を操ることができるのなら、人の心も操ることができるのではないか、米ソ冷戦時代から人間の意志を操ろうと様々な試みがなされてきています。「フーチャー・オブ・マインド」は①心は操れるのか? ②テレパシー ③念力 ④天才の脳 ⑤意識と精神疾患 ⑥人工知能 なども取り上げ、興味を掻き立てられる内容になっています。

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