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コロナ禍の働き方改革 「ジョブ型雇用」や「成果主義」は本当に良いのか

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で2388人で、そのうち東京480人、神奈川231人、埼玉144人、千葉111人、愛知181人、大阪308人、兵庫114人、北海道164人などとなっています。東京など日曜日の数字としては過去最多となり、全国的にも平日並みの数字になってきています。重症者も538人と過去最多になっています。神奈川県で、11日に県が用意したホテルで療養中の50代の基礎疾患のない軽症患者が新型コロナによる急性気管支肺炎で亡くなっています。基礎疾患のない50代の比較的元気な世代でも急変して死に至るのかと思うと、新型コロナウイルスを侮ることはできません。それにもかかわらず、各地の繁華街の人出は増えています。政府が言った「勝負の3週間」とは何だったんでしょうか。「我慢の3週間」と言った方がよかったのかもしれません。何を「勝負」するのかもわかりません。「勝負」しなければならなかったのは政府です。しかし、政府はこの3週間で碌な感染防止対策は行わず、相変わらず経済優先で突っ走っていました。政府の分科会から最後通牒ともいえる提言がなされ、ようやく重い腰を上げたものの、東京都と意見が合わず、なかなか前へ進まず、GoToトラベルの東京の一時停止も決まりません。この期に及んで、まだ経済優先で、期間を12月25日まで・対象を23区と主張し、東京都の来年1月11日まで・全都内とする案と対立しています。ズルズルと時間だけが経過し、後手後手に回るだけです。国の事業ですから、国民(と都民)の健康と命を守るために、メンツにこだわることなく勇気を持って英断してもらいたいものです。それがリーダーとしての責務です。

今日は、コロナ禍で変わる働き方「テレワーク」についての記事をいくつか取り上げます。

まずは、NIKKEI STYLEの「テレワークは終わらない 日本の労働生産性アイルランドの半分以下」を取り上げます。この記事では、テレワークと労働生産性について直接触れられていませんが、テレワークは労働生産性向上に資する「攻め」の手段として有効なもので、取り組みを進めることによって企業業績の向上につなげていくことができると考えられています。因みに、経済協力開発機構OECD)加盟国36か国中、日本の労働生産性は第21位で、主要7か国中最下位、トップのアイルランドの半分以下です。

コロナ禍で多くの企業がテレワークを導入しましたが、コロナ第2波が収束し始めると早々と原則出社に戻した企業もかなりありました。テレワークの導入には大きな壁があるのです。日本企業の多くは、就業時間を労働とみなす「時間管理型」の労務制度を採用しています。出社を前提としないテレワークでは出退者記録を取ることが難しく、従業員の労働時間の把握が困難という問題が出てきます。社員が自由に働くことができる裁量労働制高度プロフェッショナル制度もありますが、対象となる社員の年収や職種が制限されています。こうした状況から、多くの企業ではテレワークに関しても時間管理を行おうとする結果、テレワークの良さである柔軟な働き方を害してしまっています。

テレワークの拡大を機に従来の「時間管理型」から、成果に応じて報酬を支払う仕組みに切り変えようという機運も高まっています。これが「ジョブ型」雇用です。

以前にも書きましたが、日本では「メンバーシップ型」雇用が主流です。この「メンバーシップ型」雇用は、社員が転勤や配置転換によって様々なポストを経験していく仕組みで、職務内容があいまいであることが多く、成果を客観的に評価しにくいものです。

一方、「ジョブ型」雇用は、採用時から職務内容や責任範囲を明確にしたうえで最適な人材を充てる仕組みで、欧米では一般的な雇用形態です。

日本で一般的な「メンバーシップ型」雇用は、年功序列終身雇用新卒一括採用と密接に結びついています。一方で、「ジョブ型」雇用は、雇用は永遠ではなく辞めることが大前提となっていて、日本の風土になじまない面もあります。中途半端なジョブ型への移行は惨憺たる結果に終わりかねません。

テレワークや在宅勤務になると仕事をしない社員は益々仕事をさぼります。テレワークで仕事を逐一報告させてもそれをチェックするシステムが完備していません。ジョブ型では、半期や四半期に一人ひとりの社員に求める成果を決め、その達成度を評価し来期の改善点をレビューしなければなりません。これが上司の役目ですが、これに時間と手間をかけ、そのレビューでの合意事項を書面化しなければならないのです。こういう仕組みがあって「ジョブ型」雇用は機能するものです。かなりドライです。家庭的雰囲気を重視する日本の風土にはなじまないように思います。

さて、次はダイヤモンドオンラインの「本物の『成果主義』がやってくる」を取り上げます。この記事でも、「コロナ禍の『テレワーク』は日本の人事評価を変える」として、「『時間管理型』から『成果主義』に移行する」と言っています。

テレワークが拡がると、仕事の能力に対する個人差が誰の目からもはっきり見えるようになり、能力差に応じた待遇をしなければ組織内の公平性が保てなくなるというのです。これまでは「チームワーク」の名の下で覆い隠されていた、能力のある人と能力のない人、成果を出す人とやったふりをする人がテレワークにより可視化されるようになるというわけです。単におべっかを使い上司にゴマをする情実人間は評価されなくなるのです。

成果主義を礼賛できるかは疑問です。成果主義にも多くの問題があります。特に「成果の評価」です。どのような基準で客観的に評価するのかが明確でなければ不公平感や不満が出てきます。また、先ほど述べたように、欧米型の「ジョブ型」雇用が日本の風土になじむかという問題もあります。欧米型の「ジョブ型」雇用をそのまま日本に持ち込んでもひずみは生まれます。欧米型の「ジョブ型」雇用が絶対的に良いとは言えません。日本型の「メンバーシップ型」雇用や年功序列型、終身雇用にも利点はあります。

日本に適した「ジョブ型」雇用とはどのようなものか、「メンバーシップ型」雇用の利点をどのように残していくか、こうした点を時間をかけて検討しながら自社に合った雇用方式を採用すべきです。コロナ禍の働き方改革とか「他社が導入したから自社も」と安易に飛びつくことなく、じっくりと時間をかけて検討し、取り組むべき問題です。