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ジョブ型雇用、成功と失敗の分かれ道

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で4万6199人で、東京8638人、神奈川3344人、埼玉2452人、千葉1596人、静岡1050人、愛知3074人、大阪5933人、兵庫2483人、京都1320人、広島1569人、福岡2225人、沖縄1309人、北海道1437人などとなり、28都道府県で過去最多となっています。分科会の尾身会長は「ステイホームの必要がない」との発言をし物議を醸しています。これまでの「人流抑制よりも人数制限」との趣旨のようですが、これでは「罹っても怖くない。単なる風邪」と考える若者の行動を規制できず無責任な行動を更に助長することになりかねません。感染者の急増に伴い、若年層だけでなく高齢者や基礎疾患を持った人たちへの感染も増えてきています。こうした人たちは若年者に比べ、重症化リスクも死亡率も高いことは明らかで、今後重症者や死者を増加させることにもなりかねません。ぶんかかいの会長がこのような発言をしているようでは、まん延防止等重点措置の効果は期待できません。

さて、今日は、ITmediaビジネスの「名門企業がこぞって乗り出す『ジョブ型』、成功と失敗の分かれ目は?」という記事を取り上げます。久しぶりに「ジョブ型雇用」の話題です。

1月10日、日立製作所は「ジョブ型雇用」の適用を全社員に広げる旨の発表をしました。日立だけでなく、富士通やNTT、KDDIでも「ジョブ型雇用」適用に乗り出している企業は多くあります。「ジョブ型雇用」には、「年功色の強い従来制度を脱し、変化への適応力を高める」と適用を賞賛する声がある反面、「雇用の安定性を担保できるのか」と不安視する声があるのも事実です。

新しい雇用形態として評価される「ジョブ型雇用」もメリットばかりではなく、デメリットがあることはこれまでにも何度か書いています。いつも言うように、「ジョブ型雇用」にしろ、それは目的ではなく手段です。自社の課題や問題解決に必要・有効ならば適用すべきで、「流行だから」とか「他社が取り入れたから自社も」と飛びつく必要は全くありません。

この記事では、「ジョブ型雇用」のメリットと乗り越えるべき課題と解決策について丁寧に解説されています。

1.そもそもなぜ、各社はジョブ型に乗り出すのか

 この記事では、各社がジョブ型へと舵を切る目的は「年功型賃金制度の変革」と「グローバル化の制度統一」を挙げています。確かに大企業の場合には、そうでしょう。しかし、中小企業の場合には「グローバル化の制度統一」という面はほとんどありませんし、せいぜい「年功型賃金制度の改革」が目的であり、多くの場合社会の動きに流されて何の目的もなく導入しようとしていると言っていいでしょう。

 「勤務年数に応じてポストと報酬を与え、かつ解雇はしない(できない)」という極めて日本的な年功序列と終身雇用が、バブル崩壊とその後の失われた30年によって、企業を圧迫してきたことは明らかです。それは大企業だけでなく中小企業も同じです。日本的な年功序列と終身雇用を変革しない限り、先行きが見通せず混迷するビジネス環境の中で、中小企業も大企業も生き残り、さらに成長することは不可能になりつつあります。そのための救世主が「ジョブ型雇用」といっていいでしょう。

 といっても、ジョブ型雇用はメリットだけではありません。

 ジョブ型雇用は、仕事内容・目的・目標・責任・権限・知識・スキル経験・資格・学歴などを詳細に記載した職務記述書(ジョブディスクリプション)に基づいて雇用する制度で、労働者は職務記述書に記載されていない命令に従う必要はありません。ジョブ型雇用で採用された者は「明示された職務内容以外は担当しなくていい」という意識になりやすく、ゼネラリスト育成を前提とする従来の日本型マネジメントとの相性は極めて悪いと言えます。しかも、仕事には付随するさまざまな業務が存在しますが、職務記述書に記載されていない業務は依頼しにくく、臨機応変な担当業務変更や移動などにも対応しにくくなります。異動や昇進などで担当範囲が拡大する場合、それに合わせて職務記述書を作成し改めて合意し直す必要があり、制度設計の煩雑さが増します。

 メンバー同士が互いにサポートし合って仕事をし、業務や部門の垣根を越えて改善していくような日本的チームワークが根付いている職場において、職務記述書を元にしたマネジメントは齟齬を来す可能性があります。ジョブ型雇用はある意味個人主義的であり、チームワークを前提とする日本型の制度にはなじまないのです。

 それにもかかわらず、ジョブ型雇用の採用に踏み切る企業が増えているのは、職務記述書を詳細に定義して前者で運用すれば、求められることや責任範囲が明確になり、会社と従業員間の「こんなはずじゃなかった」といったミスマッチや未来コミュニケーションを防止でき、努力すべき方向性が明確になり、従業員と組織のパフォーマンス向上に繋がるからです。

2.かつての「成果主義」の轍を踏まないために

 以前にも書きましたが、必ずしも「ジョブ型雇用=成果主義」ではありません。

 それは、成果主義の捉え方によるのです。成果主義を「成果に応じて報酬が支払われる制度」と捉えれば、欧米のジョブ型雇用は成果主義ではありません。欧米では成果を上げることが絶対であり、成果を上げることができなければ減給され最悪の場合には解雇されます。しかし、仕事によってはプロセスも重視され、成果に繋がるプロセスが評価されるのです。

 かつて1990年に日本でも「成果主義」が流行したたことがありますが、これはメンバーシップ型を前提とし、ジョブ型雇用を前提としたものとは異なりました。このときには、成果は上司との相談で決まるといった極めて恣意的なもので、根付くことはありませんでした。

 成果主義において重要なことは、職務記述書において職務内容と成果の定義がしっかりとなされ、客観的に成果を評価できることです。

 ジョブ型雇用を採用するのであれば、職務記述書の作り込みと職務明確化を行ない、すべての職種について職務記述書をそろえ、報酬や評価制度も抜本的に見直す必要があります。これには時間も労力も必要ですが、ジョブ型雇用を行なうには避けて通ることはできません。かつてのように安易な成果主義では何一つ良いことはありません。

3.労働法制の改革も必要

 企業が成果主義導入を行なおうとしても、日本の労働法制が邪魔をします。

 ジョブ型雇用の特徴の一つは、雇用契約が永遠ではないということです。職務記載所に記載されている職務内容の職務がなくなれば、解雇もあり得るということです。ジョブ型雇用のメリットは「適材適所」であり、ポジションやスキルを持たない人や求められる成果を上げることができなければ解雇になるという機動性の高さが生産性向上に繋がるのです。

 しかし、わが国の場合、「現行の労働法制」や「過去の判例」という大前提があり、容易に解雇できないということになっています。更に、労働基準法を含め各種法制も、労務管理は職務の成果ではなく「時間管理」が前提となっています。

 日本において「ジョブ型雇用」を定着させるには、労働法制を含めた見直しが必要ということになりますが、これではいつまでかかるか分かりません。現状では、今ある法制度の枠組み中で、実現を図っていくしかありません。

日本においては、メンバーシップ雇用が強く根付いています。ジョブ型雇用に切り替えるのは難しいと言えますが、敢えて、ジョブ型に切り替える必要もありません。

「日本にあったジョブ型雇用とはどういうものか」「メンバーシップ雇用の利点をどのように残していくのか」を時間をかけて真剣に考え検討し、自社にあった雇用方式を考えるべきです。

メンバーシップ雇用の利点を残しつつ、ジョブ型の利点を取り入れたハイブリッド型の雇用形態が日本には合っているように思います。

この記事では、採用段階から「成果追求型幹部補職」と「ワークライフバランス重視型無期雇用職」といった形に分けることを提案していますが、こうした方法も一つです。各自の価値観にあった雇用方法を設けそれに基づいて雇用するというのも多様化する社会には必要なことではないかと思います。